アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止 作:真実の月
無事《資格の儀》を通り抜けることができた俺は、一人ゆっくりと教室に向かって歩いていた。
「体は疲れてないのにこの倦怠感はなんだ……」
理事長が説明した通り、体の傷は全くと言っていいほどない。体力も《
「ここか……?」
事前に指示されていた教室の前にたどり着いた。中からはすでにたくさんの人が入っているのか、ざわめく声が聞こえる。
俺はできるだけ目立たないように中に入ると廊下側一番後ろの空いている席に座った。
「はぁ、寝よ……」
荷物を横に置いて机に寝そべろうとした瞬間、ダン!という音とともに窓から黒い人影が飛び込み、教壇の上に立って自己紹介を始めた。
それもなぜかメイド服にうさ耳とかいうどこかのメイドカフェにいそうな服装。そして見た感じは俺たちと同年代かそこら。名前は月見璃兎というらしい。
「あれれぇ?もしかして私に見惚れているのかなぁ?」
「見惚れてないしむしろ引いてます。ていうか本当に教師ですか?」
唖然としていたクラスメートが一斉に俺のほうを向いた。
「なんだ?何か言っちゃいけないことでも言ったか?」
「「「いったも何も先生泣き崩れてるよ!」」」
息の合ったツッコミに従って前を向くと、膝をついてショックを受けている先生が。少し言い過ぎたか。
「すみません、言いすぎました」
「わかってくれたらよし!」
「で、なんで見惚れてると思ったんですか?」
「みんながじっと見つめてたから!」
「は、はぁ」
この人が担任で大丈夫なのか、とクラス全員が思っただろうなと考えながら、俺はもう一度机に寝そべろうとすると
「じゃあ今度は君たちの番!君からどうぞ!」
「ふぇ!?」
思わず変な声が出てしまい、クラス中で失笑が起こった。
あの教師、俺が寝ようとしてたのを見越して最初に選んだな
「はいはい、荒巻風麗です。いじょ……」
「ああ!キミが噂の『二人の《
十分教室中に聞こえる以上の声量で、生徒たちにとっては意味不明な単語を言ったためにクラス中の注目が再び俺に集まる。
その注目を別のほうに向けようと思った俺は、そのもう一人について聞いてみようとしたが
「片割れってことはもう一人いるんですよね」
と、俺の言葉を代弁するような発言がどこかから出た。
「うんうん!そのもう一人は……あそこの超目立つ銀髪ちゃんの隣の地味~な男子だよ~!」
同時に俺に集まっていた注目が先生が指さした男子に集まる
ごめんよ、まったく知らない人。ありがとう、まったく知らない人……と、心の中で言い、俺は眠りについた。
見えてきたのは炎に包まれる建物と無数の死体。その少し手前には研究者のような人影と焔をまとった剣を持った人影がある
『○○が!くそ、早く逃げろ!』
研究者たちが叫び。その後を剣を持つ人影が追う。初めて見る光景のはずなのに、その光景をどこかで見たことがあるような気がする。
それは何処だ?……だめだ、思い出せない
『ぎゃぁああああ!』
無言で振りぬかれた剣は、二人の研究者を同時に火だるまにしてしまう。
「やめろ……」
無意識につぶやいていた。
『何を?』
夢の中のはずなのに、人影は応えた。
振り向いた人影は顔がなかった。しかし、怪しく光る眼は俺の体を凍り付くような錯覚を感じさせるほどに冷たい。
「なんで罪のない人を!」
『お前が望んだことだろう?』
即答。望みとはなんだ?一体何のことだ?
『お前の望みは俺の望み。俺の望みはお前の望み。だから俺は《壊す》』
「どういうことだよ!」
『お前の《
そう言い残して、人影は俺から遠ざかっていく。
「まて!!!」
「うわ!?」
「……あ、ゆ、夢?」
目の前に広がっていたのは、夕日が差し込む教室だった。俺の目の前には、目立っていた(と思われる)二人の生徒が残っていた。どうやら残ってくれていたらしい
「結構うなされていたようだけど大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だ。少し嫌な夢を見ただけだよ」
「トール、もうそろそろこの棟が施錠される時間です。この方を連れて寮へ戻りましょう。」
「ああ、そうだな」
「あ、もうそんな時間なのか?」
「そうだ、お前が寝てた間にいろいろ説明があったんだ。移動しながら説明するよ。」
二人が教室を出るのに続いて俺も教室を出てその後を追う。
「とりあえず自己紹介からしよう。俺は九重透流。九重でも透流でも好きなほうで呼んでくれ」
「ユリエ=シグトゥーナです」
「なら改めて自己紹介を。荒巻風麗、風麗と呼んでくれ。」
「フレイ……北欧に伝わる神話の豊穣の神の名前ですね」
「北欧神話か?確か有名なのはオーディンとかロキとかだったかな」
「ヤー。フレイは神話の神々の中で最も美しいとされていますので、私の国では美しく育ってほしいという願いを込めて子供の名前に付けられることがあります。」
「へー、なら出身はヨーロッパ?」
「北欧にあるギムレーという国です」
「へー、いつか行ってみようかな」
「もういいか?」
話の切れ目を見て透流が割って入ってきた。そういえば何が説明されたのか聞くのを忘れていたな。
「すまん。で、どんな説明があったんだ?」
「まず《
「他には?」
「《
「へー、じゃあお前はユリエさんとか」
「そうだよ。まさかの学校でたった一組の異性ペアだ。おかげでいらない釘まで刺されたよ。で、お前に関しては入学者が奇数になったせいで仮の《
さすがにそれは厳しいな
あぶれでもしたら授業とかで支障が出そうだ
「仕方ないな。あぶれないようによさそうな人を見繕っておこう」
「じゃあ、早く寮に戻って夕食にしようか」
「そうですね、トール」
「俺も賛成だ」
そうして俺たち三人は食堂に向かい、それなりの夕食を食べて部屋に戻った
二人部屋を前提に設計されている部屋は一人にはとても広く、寂しいものだったが、近いうちだれかが入るだろうと言い聞かせて、風呂に入ってからベッドに横になってそのまま寝ることにした