アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止   作:真実の月

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あけましておめでとうございます
更新を楽しみにしていた方々、昨年末は申し訳ありません。医者いわく何かのウイルス(多分ノロ)に感染して数日動けなかったのです

皆さん、体調管理はしっかりしましょう(教訓)

それでは、今年も本作と作者をよろしくお願いします


船上の集会

集合場所の甲板は、すでに生徒でいっぱいになっていた。と言っても、船の大きさのわりに人数は対して多くはないためかなり余裕はある。他にも何人か船酔いを起こしている様で、並んでいる後ろで救護の先生が診ていた。リーリスに肩を借りてここまで来た俺もそこに連れていかれ、座ったところで集会は始まった

 

「よしよしよーっし!全員揃ったねー?」

 

うさぎ耳にメイド服というおおよそ先生とは言えない姿の担任が甲板を見渡しながら大声で話す

 

「さてさて、この船は間もなく目的の島に到着しまーす!あそこに見えるあの島だよ!で、船がもうすぐ止まるから、みんなは降りる用意をするよーに!なお、みんなの荷物はスタッフが運んでくれるから安心してね~♪」

 

行事名は臨海学校だが、本質的には強化合宿となるこの学外授業は、学校の敷地では出来ない本格的なサバイバル訓練が行われる。噂によると、船酔いを起こしていても問答無用で参加させられるらしい

それはさておき、当然《危険性(リスク)》もあるわけで、サポートスタッフとして《(レベル3)》の先輩が何人か同行している

 

「月見先生。いくらスタッフとは言え、先輩方に荷物運びをさせるわけにはいきません」

 

「気にしない気にしない、あっちも仕事なんだから。それより今からこれ配るから、名前を呼ばれたら取りに来てねー!船酔い組は救護の先生から受け取ってねー!」

 

そういって頭上に掲げられたのは時計の様な何かだった。

 

「何ですか?それ」

 

透流が質問を投げかけた

 

「GPSアーンドきゅーなん信号スイッチ他いろいろ機能がついたアームバンドだよー!本気でやっばーい!って思ったら押してねー。GPSは付いてるけど、マジで死ぬ前に、ね。オッケー?」

 

一瞬ざわめきが起こる。そんなものが用意されるほどハードなのか、と言うのが大半だ

ただ、《(レベル3)》の《超えし者(イクシード)》がスタッフとして同行していることを考えれば、それだけ厄介で危険なものなんだろうと納得もいく

 

「これは実際に学校の警備員が使っているのと同じもので結構頑丈にできてるからよほどの事が無い限り壊れないからそこまで心配しなくても良いよっ!値段は……言えないけど」

 

配りながらそんなことを月見は言う

どう考えても一つ当たり200万位はありそうな代物だとは思う。島についたら理事長に聞いてみよう。答えてくれないとは思うが

 

「みんな着けたかな?それは臨海学校が終わるまで絶対に着けておく事!じゃ、今から荷物を纏めて、今は1時半だから……40分に後部デッキに集合!って事で待ってるねー♪」

 

月見は後部デッキへ去っていった。

残されたクラスメイトは船室に戻るのが半分、月見に続いて後部デッキに行くのが半分と言った位に分かれて動き出した。俺はリーリスと合流して船室に戻る側に着いていく

そして荷物を纏めて後部デッキへ向かう。船はもう止まっている様で、さっきまで聞こえていたエンジン音もかなり小さくなっていた

そして今更になって船に乗る前に飲んだ酔い止めが効きだしたのはここだけの秘密だ。

 

「……ちょっと待て、何かおかしくないか?」

 

「うん。私も思った」

 

「「ここ、普通に海の上じゃねぇか!」じゃない!」

 

てっきり停泊しているのかと思えば、普通に海の上だった。しかも目的の島は遥か数キロ先に見える

そして呆然とする俺達の後から透流達が出てきた。

 

「……なあ、風麗」

 

「うん、言いたいことは分かる」

 

後から来た透流も同じ事を思ったようだ。

そのまま俺達は日陰で涼む月見の前に行き事情を聞こうと話しかけた

 

「なあ、月見……先生」

 

呼び捨てにしかけたところで見た目からは想像できないほどの殺気が飛んで来る。慌てて先生を付けると殺気は消えた

 

「何で陸が無いんだよーーですか!?」

 

「泳げって事♪」

 

「まさかとは思うがここからじゃないよなーーですよね!?」

 

「当然。身の着のままね!」

 

「「制服来たままかよーーですか!?」」

 

「表裏ある性格ってのも大変だな《異能(イレギュラー)》と《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》……言いにくいから今度からイレギュラーズでいいか」

 

お前が言うな腹黒兎。そしてまとめるな

 

「さーってみんな集まったかなー?もう感づいている人もいると思うけど、今回の臨海学校は着衣水泳の実地訓練から始めるよー!島についたら、島の中央にある合宿所を各々目指すよーに!」

 

そしてこの切替である

月見の発言に当然ながら驚きの声が上がって来るが、これぞ昊陵学園のやり方。

戦闘訓練に始まり応急医療、サバイバル他諸々といった、普通の高校とは違うカリキュラムが特殊技術訓練校たる昊陵学園の特徴だ。だからといって覚えたての技術をいきなりやらされるのは勘弁だが。

 

「ま、死ぬ気でやった方が身につくってもんだ。精々頑張れよ、くははっ」

 

他の生徒には聞こえぬように本性を見せる月見。ただこっちも入学直後から2度命の危機にあっているからこのレベルならまだマシな方だ

これで襲撃された時は本格的にセキュリティを強化した方がいいと進言したい。殺されかけるのはもうまっぴらだ

 

「ま、襲われるよりかはまだマシだな……」

 

「何してんの?行くわよ!」

 

「今行く!」

 

俺は覚悟を決め、海に飛び込む。

島まではかなりある。無理に泳がず海流を利用して島へ向かおう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これで施術は済んだ。これなら《装鋼(ユニット)》の最大出力にも、開発中のアレにも耐えられるはずだ」

 

「無理を言ってすまんのう」

 

「なに、《原初の焔牙(オリジナル・ブレイズ)》を手に入れる為の投資と考えれば何でもないさ」

 

ストレッチャーに横たわる少年を挟んで、白衣の男と老人が話し合う

少年は立ち上がると服を纏い、老人の後ろに立った

 

「しかし、貴方も不思議なことを考えるものだ」

 

「《装鋼(ユニット)》の調整も終わり、数も部隊全体に行き渡ったからのう。後は最終段階、というわけじゃ。そのためにもこやつには《力》を持ってもらわねばならぬ」

 

「私はいささか過剰とも思えるぞ?」

 

「なぁに、大は小を兼ねると言うじゃろ」

 

「それもそうだなーー上には私から報告して許可を取っておく。こちらの事は気にせず、作戦と《装鋼(ユニット)》にだけ頭を向けるといい」

 

「重ね重ねすまんのう」

 

「気にしないでいいさ。私も、今回の作戦に期待している一人だからな」

 

「ふ、さてーー作戦名(オペレーションネーム)品評会(セレクション)》を始めようかのう」


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