アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止   作:真実の月

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第三章 無形なる焔の牙
臨海学校


体に吹き付ける潮風の香りが鼻をくすぐる。

太陽の光が一面に広がる青に反射して幻想的なきらめきを見せ、その中に白い泡が混じる。

そして俺達が立っているのは鉄の床、それが波に揺られ縦に揺れ動く。

俺達は現在、臨海学校の目的地である昊陵学園所有の南の島へこれまた昊陵学園が所有する船で向かっているところだ。

そして俺は今、その船の後部デッキにいるのだが……

 

「うぅ……」

 

絶賛船酔い中である。

 

「大丈夫?」

 

「ま、全く……うぇっぷ」

 

港で船に乗った直後から続く船酔いのせいで吐きそうになるが、すでに散々吐いてしまったために何も出て来ない。吐けば治るとか聞いたことがあるが、全然良くならない

おまけに酔い止めは全然効かない。遅効性にも程がある

 

「全く、ほら、横になりなさい。寝れば治るわ」

 

俺の《絆双刃(デュオ)》、リーリスが座って膝を叩く

 

「あ、ありが……と……」

 

俺は言葉に甘えて横になり、そのまま眠りについた

 

 

 

 

 

「相変わらず船だけは弱いんだから……」

 

私の膝を枕にして眠るフレイの頭を撫でながら呟く

 

「あ、リーリス」

 

「あら、貴方も?」

 

船室とデッキを隔てる扉の方から、二人の人影が私たちに近づいて来る。

腰まで届く髪が特徴的な少女の方は相方の肩にもたれかかるようにしているとこから、目的は同じと見抜いた

 

「リーリスも船酔いか?」

 

「失礼ね、私じゃなくてフレイよ。彼、昔っから船だけは弱いから」

 

「大変だな……」

 

「そっちはユリエが?」

 

「ああ。隣、いいか?」

 

「いいわよ」

 

二人は私の右隣に座った

 

「そういえば、《位階昇華(レベルアップ)》したらしいわね。おめでとう」

 

「ありがと」

 

「周りの話を聞くからに最高記録らしいわね」

 

「俺もまさかこんなに早く《(レベル3)》まで行くとは思ってなかったよ」

 

「まあ、それでも彼女や私に勝てないのは見過ごせないけどね」

 

「言わないでくれ……」

 

透流が《位階昇華(レベルアップ)》してから何度か私とユリエが相手をして《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》をすることがあるのだが、戦績は今のところ透流の負け越し。

位階(レベル)》の差が戦力の徹底的差では無い……というのが改めて証明された

 

「ま、いいわ。これから頑張ってもらうだけだし」

 

「善処します……」

 

「……ん?誰かいるのか?」

 

ちょっと煩かったのか、風麗が目を覚ました

 

「おはよう。煩かった?」

 

「いや……んー!」

 

「あ、フレイ!起き上がったら!」

 

制止が遅く、起き上がって伸びをしてしまうフレイ。

案の定、また私の膝を枕に横になってしまった

 

「透流!風麗!何処だ!集合だぞ……って、何してるんだ?」

 

そこに前部デッキに繋がる通路からトラがやって来る。

気付けば船のスピードが落ちてきていた。時計を見ると、日程の「停船」の時間がきている。これからの説明の為の集合なのだろう。でもなければ停船する意味がないから

 

 

「何って言われても……」

 

「船酔いで潰れた《絆双刃(デュオ)》の看病だけど?」

 

「ならいい。集合時間だ、早く来いよ」

 

そしてトラは戻っていった

ならいいってこの状況を見て何してると思ったんだろう……

 

「リーリス、肩貸して……」

 

「はいはい。全く、世話が焼けるんだから……」

 

「申し訳ない……」

 

始まって早々にグロッキーになっている《絆双刃(デュオ)》の姿に不安を抱きながらも、私たちは集合場所の前部デッキへ向かった


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