アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止   作:真実の月

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ティータイム

授業が終わり、俺はリーリスに言われた通りに校舎と学生寮の間にある小さな庭園に向かう。毎日手入れされているであろう整った花園の中心に、彼女はティーセットを用意して待っていた。

 

「来たわね」

 

「で、提案ってなんだ?」

 

「簡単な話。貴方と踊りたいのよ」

 

「踊る?ならこんなところじゃなくて体育館とかのほうがいいんじゃないか?」

 

「踊る」という言葉をごく普通にとらえ、常識の範囲内で答える

 

「例えよ。貴方と、ある舞台で邪魔のないペアダンスを踊りたいの」

 

「その舞台は?」

 

「2年生の《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》の時間」

 

「はぁ!?」

 

「踊る」舞台にしてはずいぶんとんでもないだ。だが邪魔のないっていうのはどういう事だろうか?

 

「邪魔のないってのはどういう意味だ?」

 

「相手と私たち以外いないってこと」

 

あまりに無謀な考えすぎて声も出なくなる。

正直に言うと無茶苦茶だ。《位階(レベル)》が上の生徒だっているのにどうやって二人で戦うというんだろうか

 

「信じられないって顔ね」

 

「そりゃそうだろ。前に聞いた《咬竜戦》の過去の戦績は二年生選抜と一年生全員でも二年生の方が圧倒的に勝率が高いんだぜ?それこそ開幕直後に不意打ちで何人か潰さなきゃ」

 

「私たちなら真正面から闘っても負けないわ」

 

「……理由は?」

 

強すぎる自信に俺はあきらめてそう考える理由を聞く

 

「《焔牙(ブレイズ)》」

 

するとリーリスはわかっていたような口調で《力ある言葉》を言い、その手に《焔牙(ブレイズ)》を具現化させる。

 

「そいつは……《(ライフル)》?」

 

「ええ、私の《無二なる焔牙(アンリヴァルド・ブレイズ)》よ。あなたの《無形》と同じ、ね!」

 

存在しないはずの《(ライフル)》の《焔牙(ブレイズ)》の銃口が俺にむけられ……直後に放たれた弾丸は俺の顔を避け後ろにいた誰かに直撃し、ガサガサという音とうめき声が聞こえた

 

「一応聞くけど、何をした?」

 

「2年生っぽかったから情報が漏れないように念のために撃ったわ。多分関係ない2年生だと思うけどね」

 

「……まあ、死んではないから流す」

 

「それで、どうする?」

 

「……俺はお前の《絆双刃(デュオ)》だ。放っておくわけにはいけないな」

 

「決まりね。なら決行は2年生の《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》の時間。そこで殴りこむわよ」

 

「分かった。お前は相変わらず我儘で活発だな……?」

 

そんな言葉が俺の口から飛び出す。リーリスは一瞬驚いた顔を見せると、俺に詰め寄る

 

「フレイ!私がどんな人か言ってみなさい!」

 

「え……あ、ああ。イギリスからの転校生で、今日から俺の《絆双刃(デュオ)》で、我儘で、活発的で、《特別(エクセプション)》で……」

 

戸惑いながらも言われた通りに、リーリスと言われて思い当たる事を挙げていく

その最中、映像が脳裏に浮かんだ。

此処と似た庭園、ベンチに座って花を見ている少女……は多分リーリスだろう。

そして映像の彼女は呟いた

 

(私ね……好きな人がいるの……)

 

何でこんな映像が浮かんだのかは分からないが、リーリスといて思い浮かんだと言うことは多分彼女に関することなのだろう

 

「恋人がいた気がする」

 

「やっぱり……記憶が少し蘇ってるわね」

 

「は?」

 

「あのね、私今のあなたの前では我儘を言ったことは無いし恋人がいるなんて一言も言ってないわよ」

 

「え?」

 

「じゃあ次、あの事件より前の事はどう?思い出せる?」

 

もう一度、今度は深く考える。

しかし、映像はおろか単語の一つさえも思い浮かばない。

 

「こっちは無理……まあそう都合よく行くわけないわよね」

 

「ごめん」

 

「謝らなくていいわよ、ほんの少しでも大きな進歩だから。じゃ、後で部屋で会いましょ」

 

「ああ。後でな」

 

俺は席を立ち、寮へと向かう。

そういえば2年の《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》って次はいつだろう?そう考えた俺は少し前にリーリスに撃たれた人のところへ行き先を変える。買い物をした帰りだったのだろうか、クレジットカードを兼ねている学生証が手元に落ちていたのを見る

 

「うわ、ほんとに2年じゃん」

 

学生証ケースを開くとカードの上に日課表が挟まれていた、 それによると次の《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》は来週のようだ

 

「さて、起こすか」

 

学生証をもとの通り戻して起こそうとするが頭に当たったのか起きない。仕方なく先生に連絡して運んでもらうことにし、俺はその場を離れた

……来た教師が三國先生に連れ去られたように見えたのは気のせいだと信じて。


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