アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止 作:真実の月
空も暗くなり、《新刃戦》も中盤を迎えた。
時間の経過とともに生き残りも減り、今では片手で数えるほどしかいない。そして主戦場も校舎内へと移動し、暗さも相まって緊張感も高まっている
「さあどこからくる……?」
前後左右を見渡しながら月の光が差し込む廊下を進む。ただ光があるとはいえどこに潜んでいるかもわからないほどには暗く、トラップだってあるだろう。
「見えない」という状況が人を不安にさせるということを感じさせられるこの状況で、俺は廊下の先に見えたのものらしき青色の線を見逃さなかった
「今のは《
俺はその後を追いかけることにした……が、後ろから近づいてくる気配に気づいて飛び退く。
同時に目の前を空気を切り裂く音と共に刃が通りすぎた
(刀……いや薙刀!?)
月の光に照らされた長い柄を見て、とっさにもう一歩下がる。
「はぁっ!」
「っ!《
暗闇の中から突き出されたカタールをとっさに出した《
ここで失敗した事に気がつく。とっさに防いだは良いが、その形は手先から二の腕の半ばほどの長さの横棒の片側の端近くに持ち手。写真で見たことがある、こいつは沖縄の古武術の武器、トンファーだ。
「防ぐことが前に出過ぎたようだな!」
「やってくれたな……トラァッ!」
もう一度、今度は強引に後ろに飛び退いて間合いをとり直す。
相手はタツとトラ、俺との距離は5メートルほど。相手の武器は薙刀……いや、よく見るとあれは偃月刀というやつか。それにカタール、リーチが最大でも拳プラス30cmほどと短いトンファーは明らかに不利だが、《
(ここは逃げるか……?)
「ははっ!いいカモがいるじゃねぇか」
どこかで聞いたことがあるような声が聞こえ、振り上げられた鋸のような刃が見えたかと思った直後、それがタツに向けて振り下ろされる。
「タツ!?」
ズドンという轟音が校舎に響き、そこにいたであろうタツの姿が消えた
「殺しちゃいねぇから安心しろよ」
そう言って巨大な剣が持ち上げられる。そこにタツはいた。しかしその手に《
「どういうことですか先生……いや、月見璃兎!」
光に照らされ、その姿があらわになる。月見の手には少し前に見た青色の線の入った《
「どういうことかって仕事だよ。有望そうなやつを始末するだけの簡単な仕事さ」
「貴様、なぜタツを!」
「なぜかって?ちょうどいいところにいたからさ」
「ふざけるな!」
「待てトラ!」
俺の止める声も聞かず、トラはカタールを前に突き出し月見に突撃を仕掛ける。
しかし、月見が飛んでいる蚊を払うかのような動作で《
「トラ!?」
「馬鹿なやつだなぁ。邪魔しなきゃ殺さないでおいたのによぉ」
床に倒れ伏せるトラのもとに駆け寄ると、制服の白い部分が赤く染まっているのが見えた
「血……!?どういうことだ!」
「それは《
「っ……!人を傷つける『意志』か!」
「そういう事だ《
そう言って俺に背を向ける月見。そのままトラに向かって《
「なに!?」
「ふざけるなよ月見……!」
ガァンという音が廊下に響き、月見と俺のお互いの《
「はっ!おもしれえじゃねぇか!」
「余裕ぶってられるのも今のうちだ……!」
押す力が段々と増していく。
月見は卒業生ということもあって当然ながら俺よりも《
(力じゃ不利……だが!)
「ふっ!」
「なに!?」
体をほんの少しずらし、上から掛かる月見からの力を横に逃がす。
単なる受け流しだが、校舎全体を揺らすほどの威力を持つ一撃を受け流したことで月見はそのままの勢いで頭から壁に突っ込んだ。
「クハッ!まさか受け流すとはなぁ。ならこれはどうだァッ!」
大きく振り上げられた剣が俺に向かって振り下ろされ、当然のように俺は防御姿勢をとる
「甘いんだよ!」
しかし衝撃は上からではなく右から加わり俺は受け身をとる暇もなく廊下にたたきつけられた
「う……くそぉ!」
すぐに立とうとするが、骨が折れたのか右腕に力が入らない。
「あれだけほざいてこの程度かよ。興醒めだ興醒め!」
腹部を蹴り上げられ、廊下を転がる。
そして月見は《
「恨むんならテメェの無謀さを恨むんだな」
そう言って無慈悲に振り下ろし、そこで俺の意識は途絶えた