アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止 作:真実の月
なんだかんだで時間は進んで《新刃戦》当日。
午前中に先生と事務に一人で戦う旨を報告した俺は、木に登り息をひそめて開幕の鐘を待っていた。
「時間まであと二分……」
今回、生き残ることを第一に考えて極力相手をやり過ごし、かつ狙えそうなら奇襲をかけて一人ずつ潰すという作戦をとることにした。ただ制服が思いのほか目立つので見つかりにくくするために黒のジャージを買って来たが、効果があるかと言えば条件的には微妙だ。
「3、2、1!」
カウント終了と同時に鐘が鳴る。
そしてその音の中にどこからか《
「ラッキーなのかアンラッキーなのか……」
ザク、ザク、という音がゆっくりと近づいてくる。どんなペアかはわからないが、林という地理的条件上、少なくとも大型武器ではないと考え足元を見ながら奇襲のタイミングを待つ。
「どこにいるのかしら?」
足元できょろきょろとあたりを見渡す女子生徒の姿が見えた。
俺は木に登る前に拾ってきた小石を隣の木に向けて軽く投げる。小石は狙い通りに木の幹にあたり音を出す
「なに!?」
「もらった!《
注意が別の木に向かった瞬間、俺は木を飛び降り、《
「これで終わり!」
隙だらけの体に胴を打ち込む。もろに受けた女子生徒はそのまま倒れこんでしまった。俺はそれを確認してすぐに逃げる。その場に残るのは気絶した二人の女子生徒だけ。できるだけ痕跡を残さず離れ、次の隠れ場所に向かうのがこの後の作戦だ。
こう考えると、一人で挑むのも面白い。見つからないように動き、的確に相手を討つ。どこぞの伝説の傭兵のような動きだ。
「なかなか面白いじゃないか!」
俺は気分が高揚するのを感じながら次の隠れ場所を探しに向かう。
太陽は西の空でオレンジ色に輝きながら、月と星に交代しようとしていた
某所・研究室のような場所
「なぜだ……なぜあそこにいる!」
パソコンに映る資料を見て、部屋の主である研究者の白衣の男は事務机を強くたたく。その衝撃でお茶がこぼれるが、白衣の男は全く意に介さない。
「アレはもう目覚めないはずだろうに!」
白衣の男は騙されていたことに対して憤慨する。
過去、極秘に行われたある実験。書類上では10の実験例のうち、成功は0。6人は死亡、4人も長くて1年後には全員死亡という結果だけが残った実験。しかし目の前にはいるはずのないたった1人の生存者がいる。死んだと聞かされていたのに、だ。
「まさかアレを死んだと思わせ、孤児に仕立て上げ養子縁組させて別人に仕立て上げていたとはな……!」
白衣の男はどこかに電話を掛ける。2コールで出たのはあるものを開発している研究員だ。
「○○の完成度はどうなっている!」
「形は完成しています。後は実験を重ね、問題点を修正するだけです」
「急げ!」
「はっ!」
電話は切られる。白衣の男は静かに部屋を出、部屋に残るはパソコンに映し出されたままの資料と静寂だけだった。