アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止   作:真実の月

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第一章 入学、新刃戦
プロローグ


「くぅぅっ!」

 

胸に浮かぶ《星紋(アスター)》と呼ばれる印から発した熱が全身に広がり、俺の体が《焔》に包まれ、想像を絶する痛みが俺を襲い、俺の体が内側から燃えているような錯覚を覚える。

この光景を写真か絵にして何も知らない人に見せれば「人が燃えている姿とそれを傍観する人を写した光景」と答えるだろう。だがそうではない。人を超える力《黎明の星紋(ルキフル)》を体内へ取り込み《超えし者(イクシード)》へと昇華するための儀式だ。そして、この焔もただの「焔」ではない。

この焔は俺自身の《魂》そのものなのだ。

焔はさらに勢いを強めるが、俺は痛みをこらえてその焔を掴む。

 

「《焔牙(ブレイズ)》……!」

 

少し弱々しいが、俺の《力ある言葉》に反応した焔が強烈な光を発し……

 

「なっ!?」

俺の驚く声と同時に消えた

そして一気に静まり返り、沈黙が俺がいる部屋を包み込む

 

「もう一度、武器の形を頭に浮かべながら《力ある言葉》を発してみなさい。」

 

その沈黙を破ったのは漆黒の衣装を着た少女だ

痛みをこらえて疲れ切った俺は、その指示にこくんと頷いてもう一度《力ある言葉》を発する

 

「《焔牙(ブレイズ)》!」

 

思い浮かべた武器は一番想像しやすかった刀。

再び焔が現れ、俺の右手を包み込み、そして焔が刀の形に変化した

 

「別の形を想像してみなさい。」

 

指示に従って、次は槍を思い浮かべた

すると刀の形をとっていた焔牙(ブレイズ)は形を変え、戦国時代の足軽が使っていたような槍へと変化した

 

「楯に続けて焔牙(ブレイズ)の《形状変化(フォルムチェンジ)》、今年だけで二人目の《異能(イレギュラー)》ですわね。」

 

俺が不思議そうな顔をする。それを見た少女は俺に俺が《異能(イレギュラー)》である理由を説明してくれた

それによると、《焔牙(ブレイズ)》というのは魂を具現化した武器。これが基本に来るが、この時点で一人目のイレギュラーとやらは防具である楯を具現化しているという点で《異能(イレギュラー)》だという。

俺の場合、武器の形をしているという点では《異能(イレギュラー)》ではないが、問題は「その形状を思い通りに変化できる」という点だ。かなり先の話だが、ある条件の下で武器の形をある程度変化させられる場合があるらしい。しかし、俺は無条件で焔牙(ブレイズ)の形を変えられる。このような報告は未だに出ておらず、目の前の少女曰く俺が初めてらしい。

 

「さて、その《形なき焔牙(ブレイズ)》が貴方をどのように導き、どのような形を作るのか、観察させてもらいますわ」

 

少女はくすくすと笑いながら部屋の外の闇の中へと消えていき、その後には先ほどのような静寂と俺が残された。

そして俺は一つの紙を取り出す。

 

「お前の記憶を見つけたくば昊陵学園に来い」

 

犯罪予告の紙の様に、様々な雑誌から切り抜かれた文字でそう記されている。そしてその下には、俺の名前……「荒巻風麗」と記されている

そう、俺にはある出来事までの記憶がない。失われた記憶を探すため、ここにやってきた。俺自身を表すなら《旅人(トラベラー)》と言ったところだ

 

「これで……俺の記憶が見つかるのか?」

 

不安を感じながら、俺は光の方へ進んでいった

 


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