ーー 三時間目 国語
「さてあなた達。紅魔族に取って文法や言葉というのはとても大事よ。なぜだかわかる?……めぐみん!紅魔族にとってなぜそれらが大事が答えてみなさい。」
怠惰の化身ウォルバクの指名に、我が姉めぐみんはその場で立ち上がり。
「素早い詠唱、正しい発音が、魔法の制御に影響するからです。」
「不正解よ。零点ね。」
「れ、零点!?」
我が姉めぐみんが呆然としながらフラフラと席につくと、隣の席のぼっちのゆんゆんが指名された。
「次はゆんゆん!貴女はわかる?」
「は、はいっ!古に封印された魔法や兵器には、古い文字が使われています。禁呪といった類いの魔法の解読には、それらの勉強が必要不可欠だからです!」
「二十点ね。確かにそういう側面もあるけど、今回の質問の趣旨とは違うわ。」
「二十点……、二十点かあ………。」
ぼっちのゆんゆんが我が姉めぐみんに勝てて嬉しそうな、しかし思ってたのと違うというような微妙な表情で席についた。
そんな二人を何か微笑ましい者を見るような目で見ていた怠惰の化身ウォルバクが、一人の生徒を指名した。
「あるえ!クラスで三位の実力者であるあなたなら、もうわかっているわね?」
クラスで三番目の成績だという彼女は、その場に立つと胸を張る。
「爆炎の炎使いなどのような、おかしな通り名を防ぐため。そして、戦闘前の口上をより格好いいものにし、場の空気を熱くさせるためです。」
「正解よあるえ!そう、紅魔族の通り名はとても大切なもので、あなた達もこの学校を卒業する頃には考えなくてはならないわ。そして場の、というより自分の気を高めること、これは紅魔族にとって何よりも大切なことなのよ。理由は今から説明するわね。」
そう言うと、怠惰の化身ウォルバクは黒板に人の図を書いた。
「この間そこのまりとらと古代遺跡の探索にいった時に見つけた資料に書いてあったのだけど、紅魔族というのは古の魔導大国、それもあのデストロイヤーを創った研究者が産み出した、人為的に魔法使いとしての能力を高められた人造種族だったのよ。」
「「「「「ええっっ!?」」」」」
驚くクラスの一同。しかしバーコードやナンバリングまであるんだ、私も自然に生まれた種族ということはないだろうとは思っていた。バーコードやナンバリングの理由は予想外だったが……。
「あなた達の体にも数字に見えるホクロや幾つかの線に見えるホクロがあるでしょ?あれがその証で、線の方はバーコードっていってその魔導大国で使われていた情報媒体なのよ。」
「あれにそんな意味が………。」
「禁忌の実験によって生まれた種族。カッコイイ…!」
はしゃぎ始める一同を他所に、怠惰の化身ウォルバクは紅魔族の特徴を図に書き込んでいった。
「まああなた達の祖先はカッコイイからと望んで改造されたみたいなんだけど、それ故にリクエストで付与された幾つかの能力が存在するわ。興奮すると目が光るのもそれの一つね。」
「一つということは、他にも隠された能力があるということですか!?」
「さすがめぐみんね。その通りよ。」
「「「「「おお〜〜〜〜!!」」」」」
更にヒートアップする教室で、怠惰の化身ウォルバクはその隠された能力を説明し始めた。
「まずは通り名ね。実は、魔法発動の前に通り名、名前を名乗ってキーワードを口にすると魔法の威力が倍増するのよ。紅魔族じゃない私がやっても意味はないけど、私なら怠惰と暴虐の女神、ウォルバクの名において勅令す!………って詠唱の頭に付ける感じね。これが一つ目の能力。」
教室には一言一句聞き逃すまいと熱い静寂が広がり、火力至上主義の我が姉めぐみんなどはノートにもの凄い勢いでナニかを書き込んでいた。
「そして二つ目は、瞳が紅く輝いている時の魔法威力の上昇よ。普通の魔法使いでも精神が高揚した状態では魔力が活性化して魔法の威力が上昇するものだけど、紅魔族の場合はそれとは比較にならないくらいの強化率らしいわ。これが通り名と戦闘前の口上の重要性ね。もちろん里の大人達にも伝えたから、今頃は他の能力を探して古代遺跡を探索しているんじゃないかしら。」
マジか。一応欲しいものは自室にしまっておいたんだけど、正解だったな。
しかしみんながここまで喜んでくれるなら、怠惰の化身ウォルバクも巻き込んで探索して正解だったな。
私の心には、心地よい満足感が広がっていた。
厨ニ心が疼いて仕方がなかったんや!
しかし、これで紅魔族の戦力と厨ニ力がだいぶ向上しましたね。さすがは紅魔族、まさか厨ニ力と戦闘力が比例していたとは………。
余談ですがカズマが後に見つける書類はこのあとダストボックス的な機能を使って地下格納庫内に放り出されました。
まりとら視点は書いてて楽しいんだけどまりとらの関心の有無や入学二日目進級初日ってことで情報の偏りがあったり描写できない行動も多いんだよなあ。逆にめぐみん始めその他視点だと原作により易いけど描写もしっかり入れられるし情報もばんばんぶっこめる。…………まだ二作目だしバランスが難しいなあ。