しかしこの邪神(仮)起きないな……。バケツ取ってきて水でもかけてみるか。
何度か水をかけていると、ようやく目が覚めたらしく顔を振って水を飛ばしながら、話しかけてきた。
「あのあなた、お姉さんに何をしているのかしら?」
「ようやくおきたか、じゃしんかっこかり。」
邪神(仮)はビクッと震えると、目線を逸らしながらしらばっくれた。
「じゃしん?イッタイナンノコトカシラ、オネエサンハコウマノサトニキタタダノカンコウシャヨ」
「しらばっくれなくてもいいじゃしんかっこかりよ。じゃしんかっこかりがふういんのほこらからでてきたことはかくにんしている。」
あ、暴れ始めた。なんか元気だなこいつ。この縄はチート持ちが作った奴だから絶対千切れないし、さっきの魔法で魔力も全部持ってかれてるはずなのに。
「あきらめたか……。」
「ねえあなた、お姉さんをどうするつもりなの?また封印するとかはやめてほしいんだけど。」
「とりあえずさとにもっていくか……。」
今邪神(仮)を縛っている縄は何も無いところで浮かんで彼女を宙吊りにしているが、普通に手で押せばそのまま空中を滑るように移動させることができる。私はそのまま邪神(仮)を紅魔の里に持って帰ることにした 。む……、手が届かない。仕方ないから木の枝で押して移動させるか。
紅魔の里に帰る途中、邪神(仮)が話しかけてきた。
「ねえあなた、名前はなんて言うの?」
「まりとら」
「そうなの。それでまりとらちゃん、さっきからお姉さんの事を邪神(仮)って呼んでるけど、お姉さんには怠惰と暴虐の女神ウォルバクっていう名前があるの。だからそっちで呼んでくれないかしら?邪神ってのは蔑称みたいなものだし。」
それは悪いことをしてしまった。しかし、そうだとするとなんて呼べばいいのだろうか。
「普通にウォルバクって呼んでちょうだい。暴虐の方の私はさっき封印しちゃったし。」
「りょうかいした。たいだのけしんうぉるばく。」
「いえ、間違ってはいないんだけど……。」
何か言いたそうな怠惰の化身ウォルバクを無視して私は自宅への帰路についた。
「わがちちひょいさぶろーよ、うちでこのたいだのけしんうぉるばくをかいたい。」
私が尋ねると私が父ひょいさぶろーは縄の方に興味を示しつつこう答えた。
「もといた場所に返して来い。というかどこから連れてきたんだ。」
「じゃしんのはか。ふういんがとけてでてきたところをこだいいせきにあったわなでつかまえた。」
村人を集めての緊急村会になった。
会議というものは、往々にして進まないものである。現代日本だとそれを踊ると表現したのだが、この世界ではなんというのか。
「踊ってるわね、会議。」
この世界でも踊るであっているようだ。
「そけっと」
「今日辺り貴方が何か凄いものを連れてくることは見えていたけど、逃げ出そうとしていた邪神を捕まえるなんてお手柄じゃない。」
そういえばそけっとはこの国一番の占い師だった。それではこの後どうなるのかも占えるのだろうか?そう聞くと彼女は首を横に振った。
「確かに私は大抵のことは見えるけど、流石に神の未来は見えないわよ。そもそもこれは悪魔の力を借りるスキルだしね。」
そけっとはそう言って会議の場へと視線を戻した。
「門番はどうだ。」
「使い魔にしたい。」
「邪神の守る村ってのには惹かれるな。」
「けど信仰した際の恩恵は魅力的だぞ。邪神を崇める村ってのは止めたほうがいい気もするが。」
「それなら教師はどうだ、邪神より伝わりし禁呪とかかっこよくね?」
「どうでもいいからおっぱい揉みたい。」
カオスだった。そして最後の奴は周囲の女性陣にフルボッコにされていた。
とりあえず再封印という選択肢はないらしい。色々と意見はあるが、信仰するものは一定数いるようだし多分家は猫耳神社だろう。御神体も猫耳フィギアよりは断然マシだし異論はないが……。結局すぐには決まらず、眠気に負けた私は家へと帰って床についたのだった。
数日後、結局怠惰の化身ウォルバクは里の学校に教師として赴任し、邪神より伝わりし禁呪とか神業とかを教えることになったらしい。そんな訳で私は怠惰の化身ウォルバクに会いに猫耳神社に来ていたのだが…。
「まあ信者も増えたしいいんだけどね。貴女が入学したらビシビシしごいてあげるから覚悟しなさい。」
解せぬ。
あと我が姉めぐみんが何かものすごい衝撃を受けていたのだが、いったい何だったんだろうか。
ウォルバクさんは合体しただけで生きてるのに魔王城の結界維持が途絶えたのは分離してから魔王軍に入ったから。ということだと筆者は思ってます。