なぜこんなことになってしまったんだろうか……。目の前には罠にかかって目を回しながら簀巻にされている邪神(仮)、そして周囲には何か巨大な爆発の余波を受けたようになぎ倒された木々とモンスター。本当に、なぜこんなことになってしまったんだろう……。私、まだ歩き初めて1年も立っていない三歳児なんだが。
時は、数時間前に遡る。
邪神の封印を確認しに行くことを決めた私は、朝から我が姉めぐみんを尾行していた。我が姉めぐみんは里を出たあとモンスターのうろつく森を慣れたように進み、邪神の封印された祠、邪神の墓へとたどり着いた。
「~♪」
我が姉めぐみんが普段何をしているのかと思ったが、どうやら彼女はいつも邪神の封印で遊んでいたらしい。確かにあれはパズルだが、邪神の封印だと我が姉めぐみんは気づいていないんだろうか?まあ大丈夫そうだし、私は少し離れてレベル上げでもして来ようと判断して森に入ることにした。
レベルと職業、それはこの世界に存在する特異な要素である。この世界では、冒険者カードというものを作ることでレベルとスキル、職業を取得することができる。モンスターを倒して経験値を貯めればレベルが上がる。そしてレベルが上がればステータスが上がり、スキルポイントを得ることができる。そしてスキルポイントを貯めれば、魔法をはじめとしたスキルを取得することができる。また、職業とはRPGにおけるジョブの概念と同じものであり、職業によって得られるスキルも大幅に変わってくるし、職業に就くのには条件として一定のステータスを必要とする。紅魔族が最強の魔法使い種族と呼ばれる所以は生まれたその時から魔法使い系の上位職、アークウィザードになることができるからなのだ。そのため紅魔の里では子供が生まれたときに、アークウィザードとして冒険者カードをつくる慣習が存在したりもする。
そんなレベルを上げるため、私は森の中でモンスターを倒していた。三歳児とはいえ成長が早い私はすでに運動も十分にできる私だが、流石に聖剣を振り回すことはできないためそけっととの修行でも使っているのは軽量化の魔法をかけた木刀だし、モンスターを倒す手段はもちろん聖剣からのビームである。
「ーこれは、モンスターとの戦いである
ーこれは、強者との戦いである
これをもって、二つの封印を解除する」
二つの封印を解除した聖剣は金色の光を纏い、発射されたビームはこちらを伺っていた一撃ウサギの群れを薙ぎ払った。
封印を解除するのに詠唱が必要なのは面倒だが、実際この聖剣エクスキャリバーは強い。戦う相手と戦う状況によって九つの封印が全解除されれば、おそらくこの世界において最強の武器であるのだろう。まあ、魔王と戦うという条件もあるので対魔王戦でなければ全解除はできないのだが。
周辺のモンスターを倒してきた私は、再び邪神の墓へと戻ってきていた。
「もうすこし、あとひとつです。」
「えぇ〜」
なんと我が姉めぐみんが本当に封印を解きそうになっていた。これは止めた方がいいのだろうか。しかし、私としてはこの近くに仕掛けたカミサマホイホイの効果を確かめてみたい。めぐみんはかなり賢いし、紅魔族のなかでも特に魔力が多いためこの付近の強力な魔物でさえめぐみんを進んで襲おうとはしない。やはり、しばらく待ってみようか。
我が姉めぐみんが封印解除に熱中しているのを眺めながら考えて事をしていたら、いつの間にか我が姉めぐみんが居なくなっていた。
「やっと出られたわ。アクシズ教徒め、いつか復讐してやろうかしら。」
おっと、女性が祠から出て来た。邪神はもともとアクシズ教徒に封印されていたらしいし、アクシズ教徒に恨み言を述べている彼女が邪神で間違いないだろう。あとはカミサマホイホイに引っかかるかだが……。
祠から出て来た邪神(仮)を追いかけていると、我が姉めぐみんが漆黒の豹に襲われていた。いや、あれは猫か?そして邪神(仮)は睨み合う我が姉めぐみんと漆黒の獣の間に割り込むと、魔法の詠唱を開始した。あの詠唱はいったい……。
「エクスプロージョン!!」
黒い獣は吹き飛び、邪神(仮)が何かをすると光となって祠に封印されてしまった。我が半身とか呟いていたし、あれと合体して真の姿が明らかになったりするのだろうか。
「ありがとうございました!!」
我が姉めぐみんが漆黒の獣を吹き飛ばした魔法を教えてほしいと頼み込んで爆裂魔法とやらを教えてもらっていたが、ようやく終わって移動することにしたらしい。ふむ、この不自然な動き、やはりカミサマホイホイは作動しているらしいな……。
あ、かかった。
私が簀巻になって宙吊りにされた邪神(仮)を眺めていると、邪神(仮)はまた魔法を唱え始めた。
「デストラクション!!」
うわっ!なんだこれ!?
衝撃により意識を失った私が目を覚ますと、辺り一帯が吹き飛んで邪神(仮)も気絶していた。
まあとりあえず……、
「とったどおおおおおおぉ!!」
今日のところはひとまずこれまでです。感想が来たことに狂喜乱舞しつつ寝ますので、おやすみなさい。