自分……いや、私が転生してから数年の時がたった。私が転生前に幸運の女神エリスに頼んだのは、この世界に一人の赤子として生を受けたいということ。疲れ切っていたから十数年は働きたくないと思い頼んだのだが、自分自身が制御できない赤子というのもなかなかに疲れる体験ではあったと思う。
私は紅魔族という種族に転生した。紅魔族という種族について特徴上げるなら、まずはその圧倒的な知力と魔力が上げられるだろう。その能力ゆえに、この紅魔族の里は魔王の居城のほど近くにあって襲撃を度々受けながらも追い返すことができ、この国の魔王軍に対する最終兵器として名が知られているらしい。
そしてそれら魔法使いとしての才能の他にもう一つ、紅魔族には大きな特徴がある。それは、種族全体が厨ニ病であるということだ。この世界において独特な感性、つまりは厨ニ病的感性をもつ彼らはそれ故に自重というものを知らない。だからかこの里の周辺には危険なモノがたくさん封印されており、しかもそれらの殆どは態々他所から封印を暴いて拉致し、この近くに封印しなおしたものらしい。はた迷惑な話だが、なんでもそれが格好いいのだとか。
「まりとら、めぐみん!ご飯よ〜。」
我が母ゆいゆいに呼ばれてリビングまで行くと、テーブルの上には焼いたネギが全員分並べてあった。
「わがははゆいゆいよ、そだちざかりのわがあねめぐみんのほうがたくさんたべるから、わたしのぶんをはんぶんわがあねめぐみんにたべさせてあげてほしい。」
「まりとら、お腹が空いているとはいえ妹の分をとったりはしません。」
そんなことを言いつつも期待によだれを足らす我が姉めぐみんの口に、私は半分に折ったネギを差し込んだ。
朝食を食べると、私は近所の森の中で一人の女性と合流した。彼女の名前はそけっと、この国一番の占い師である彼女は、修行が趣味の戦闘狂である。
「おはようまりとら、今日もついてくるの?」
「きょうはわがあねめぐみんにちょうしょくのはんぶんをゆずったのだ。わがしそけっとがごはんをくれないとわたしはがししてしまう。」
腹を鳴らしながらいつものようにそう言うと、我が師そけっとは苦笑しながら焚き火で焼いていた肉を私にくれた。
「いつも美味しそうに食べてるけど、調味料も使わないで飽きないの?」
「くうふくはさいこうのすぱいすともいう。それにこうまのさとふきんのれべるのたかいもんすたーはやいただけでもうまいからな、あしたはいちげきぐまがたべたい。」
「はいはい、明日もちゃんとあげるから。」
一撃ウサギの肉を食べて明日の一撃グマを予約すると、次は我が師そけっととの修行である。私の貰ったチート、聖剣エクスキャリバーはどこからか召喚できる、ビームを撃てる、壊れないなど幾つもの能力を持つがその名の通り剣なので、修行しないと使えないのだ。
我が師そけっととの修行を終えて昼食のおにぎりを食べると、私は里の近くにある古代遺跡へとやってきた。これも私の日課の一つであり、この場所は私の秘密基地として利用させてもらっている。しかしまだまだ未発見区画が多くあり、日々そこを探索しては地図に書き込んでいる。
しばらく未発見区画を探索しながら地図に書き込んでいると、電子ロックを見つけた。
『この扉はメラゾーマじゃない火の玉で開く』
どうもこの古代遺跡は過去に転生してきた転生者が作ったものらしく、電子ロックは現代日本人でしか知らない内容が多い。現にこのメラで開く扉以外にも、くぁwせdrftgyふじこlpで開く扉や、ピカチュウで開く扉もあった。どうも制作系のチートを持っていたらしく、色々な古代兵器が安置されていた。……そういえば女神や邪神、破壊神をも捕縛する最強の罠、カミサマホイホイを邪神の封印の近くに仕掛けてあったんだった。明日確認しに行ってみよう。
古代遺跡から帰ってきた後は、両親に内緒で飼っているモンスターたちの世話だ。カモネギのはるぱーと一撃ウサギのもっふるは可愛いし、何よりはるぱーのネギは毎日とっても次の日には新しいものを持っているから無限に食べられる食料源である。めぐみんはご飯を手に入れる努力をせずに邪神の封印された祠周辺で遊びまわっているらしい。……大丈夫だろうか。めぐみんはあれで天才だから、その内邪神の封印を解いてしまうかもしれない。
私は明日邪神の封印された祠に行くことを決め、我が家への帰路に付くのだった。
次回はあの人登場です。
それにしてもFGO二次で師匠の死に際がうまくまとまらん。もうカットにしようかな……