タイラントドラゴン、それは最強の生物兵器にして、最凶のドラゴン。
そしてその卵こそ、今私の抱えている黒い塊の正体である。
「まあくっそ硬い上にコロナタイトぶち込んでも孵化しないくらい孵化に大量のエネルギーが必要らしいがな。」
「いや、卵がどうやってコロナタイト食べるのよ。」
一度実際にやってみるか………、
「よし見せてやろう。見逃すなよ………?」
黒曜石のような漆黒の卵を、近くにあった生物兵器へとぐいぐい押し付ける。
そうすると、卵が鈍く光ってゆっくりと生物兵器を取り込み始めた。
「うわあ………」
「魔法も吸収するし、衝撃とかも吸収するから盾としても使えるぞ。何より使い魔契約すれば私が死んだときに一緒に死ぬからな。後世に遺恨を残すこともない。」
「へえ〜、意外といろいろ考えていたのね。それにしても先生、ちょっと面白くなってきたわ。」
そんなことを言いながら卵を生物兵器に押し付けまくる怠惰の化身ウォルバク。
まあここに悪意ある何者かが侵入したときの為に、生物兵器群は纏めて排除しておこうと思っていたからちょうどいいか。
「そういえば、今回どうして先生を連れてきたのかしら?貴女なら一人で十分だったでしょうに」
「いや……、生物兵器を一掃するのに爆裂魔法使って貰いたくてな……。」
「貴女実は馬鹿でしょ!!」
まあ流石にそれは冗談として……、
「怠惰の化身ウォルバクよ。我が姉めぐみんの連れていたクロ、アレはお前だな?」
「っ!そう………、気づいていたのね」
まあ、私は怠惰の化身ウォルバクの半身を見た事があるからな。
「どうするつもりだ?力の残滓の影響は既に出ている。怠惰の化身ウォルバクの力で抑えられてはいるが、直に表面化するぞ。」
「それは…………」
そもそも怠惰とはなすべきことをなさないこと。それはつまり先延ばしに過ぎず、溜め込まれた力はいずれ暴発する。
「…………」
怠惰と暴虐とはつまりそういう意味であり、実際に怠惰と暴虐の女神ウォルバクの加護とはそういうものだ。力の蓄積と解放、それを本質として持つ女神の力がここまでばら撒かれ、何も起きないとは考えづらかった。
「……………」
そもそもあの黒猫を取り込んで全てを制御すれば、怠惰と暴虐の女神ウォルバクは封印から復活するであろう独身の魔神と同格に渡り合えるはず。未だに言葉を発しない怠惰の化身ウォルバクは、どんな考えを持っているのだろうか。
「………………」
「………………………………」
「…………………………………………………」
「どうしようかしら?」
「『カースドライトニング』!」
ぶっ殺してやろうかコイツ。
猫耳神社、それは里の中でも中心部に近いところにある、怠惰と暴虐の猫神を祀った神社。すなわち、邪神ウォルバクを祀った神社である。
「というわけで頼んだ。ちょくちょく見に来るから妙な事はするなよ。」
「わかってるわよ。貴女には恩もあるしね。」
そこは怠惰の化身ウォルバクの住居であり、間違いなく危険物であるタイラントドラゴンの卵を隠すのには丁度いいだろう。
「早くお前を孵してやるからな、ちょいさー。」
呼びかけながら魔力を送れば、縁側に置かれたちょいさーが小さく震えた気がした。
ちょいさーはちょむすけの名前候補の一つですね。使い魔契約の時に名付けました。そして猫耳神社の祭神は原作でもウォルバク様っぽいです。
それにしても、だんだん文章が短くなってるきがする…