「ねえまりとら、今日は何処を探すの?」
放課後、私は怠惰の化身ウォルバクを誘って里の近くにある古代遺跡を探索に来ていた。
「今日は地下第二十三層だな。排気口を通って隔壁を回避するルートを見つけたんだ。」
「確か隔壁は魔法障壁で破れなかったのよね?」
「ああ、探索に入った里の大人達も何もできずに帰ってきた。隔壁の解除パネルが見つからない以上、排気口を通って行くしかないだろう。」
エレベーターらしき装置の内部に繋がる排気口に入ったが、何故か怠惰の化身ウォルバクがついてこない。
「あの、先生胸がつかえて通れないんだけど。」
「『カースドライトニング』」
「………どうして先生はいきなり上級魔法を撃たれたのかしら?」
黒猫へと変化して通って来た怠惰の化身ウォルバクは若干焦げていた。
「うざかった」
「うざっ…!貴方ねえ………」
「いいから行くぞ。」
停止しているエレベーターの上に飛び降りて上の蓋を開けて中を覗いていると、ドスンという音がした。
「大丈夫か?」
「いてて、先生最近運動不足だから着地失敗しちゃった。」
しかし凄い音だったな。エレベーターの天井も若干凹んでいるし、どれだけ重かったんだか…
「まりとら………?」
「別に怠惰の化身ウォルバクの体重が気になってなんかいないぞ?」
「「『フレイムスピア(カースドライトニング)』!」」
危なかった。こんな閉鎖空間で上級魔法撃つとか怠惰の化身ウォルバクは頭でもイカれたのだろうか。
「まりとら……?あまり体重のことには触れない様に」
ふむ、そういえば前世で女性の体重は触れてはいけないタブーだと聞いたことがある。謝らなくてはなるまい。
「すまなかったな。怠惰と肥満の化身ウォルバク。」
「「『クリスタルレイン(カタトゥンボトゥルエノ)』!」」
魔法の相殺にここで見つけた古代魔法まで使うことになった。一体何が悪かったのだろうか?
角の先には警備用ゴーレムが一体配置され、どのような手段を使っているのかエネルギーが切れることもなく、不規則に周囲を見回している。
これまでの経験からするとアレは超高感度のセンサーが積まれており、半径5メートル以内に近づけば魔力弾を放って攻撃してくる。
「(せいっ!)」
円盤型のセンサーの下に搭載された砲台、その砲口を塞いでしまえば魔力を充填することも出来無くなり、無効化することができる。
あまり古代の遺物を破壊したくはない、うまく当たればいいんだが………、
「よし当たった。」
「流石まりとらね。先生関心しちゃうわ。」
そうだな、怠惰の化身ウォルバクは火力厨の脳筋魔法使いだからな。
そんなこんなで数十分ほど古代遺跡の地下を進むと、ようやく目的の場所へと辿り着いた。
「ここが目的地、第二生物実験区画だ。」
「えっと、先生まだまりとらの目的を聞いてないんだけど、何を探しに来たの?」
そういえば言っていなかったな。
「もう少しだ。この奥だな。」
次の扉を抜けると、大量の生体ポッドとその中に浮かぶ肉塊が並んでいた。
「なに、これ…………!」
「文字通りの生物実験区画だ。ここは保管庫だな。まあ安心しろ、人体実験区画は地上三階らしいからな。」
「やってなかった訳じゃないのね……。」
ここか。あまりに危険過ぎて時間停止の封印をかけて封印した者たちが眠るという、生物兵器封印保管庫。
「そ、そんな危険な物を取りに来たの!?」
「そうだ。私の目的はこの研究所でも最高クラスの生物兵器。
ーー神や悪魔、強大な力や特性を持つ存在を捕食するモノ
ーー何処までも成長し、最後には世界を喰い尽くす最強の竜
ーー暴食竜タイラントドラゴン
その卵が、私の目標だ。」
カタトゥンバってのは川の名前で一秒に1つ以上の雷が発生するベネズエラの危険地帯だとか。トゥルエノってのはスペイン語で雷の意。つまりは大量の雷を前方に発射するオリジナルの魔法ですね。上級魔法以上爆裂魔法以下の魔法として、オリジナル魔法を古代魔法としてこれからも幾つか出していきます。