この紅魔の幼女に聖剣を!   作:海洋竹林

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皆さんいつも誤字報告ありがとうございますm(_ _)m

今回はめぐみん視点です。



めぐみん視点


この生徒達に四時間目を!

ーー 四時間目 体育

 

 校庭とは名ばかりで炎の魔法で草を焼き払っただけの、学校の前にある広場。

 

 そこでは担任のぷっちんがマントを羽織り、三時間目の間からずっと何かを焚き上げていた。

 登校した時にはもう準備ができていたようなので、担任はこのために朝早くから出勤していたのだろう。

 焚き上げの白い煙が登る空には、先程からずっと暗く垂れ込めた雲が広がっている。

 

 恐らくこのバカ担任は高価な雨呼びの護符を焚いて、この授業のためだけに前持って雲を呼んでいたのだ。

 空の雲が満足のいく大きさに成長したのか担任は頷くと、

 

「よし!ではこれより体育改め戦闘訓練を始める!我々紅魔族において、戦闘の上で最も大切なモノは何か。ではゆんゆん!答えなさい!」

「わ、私!?えと……、えっと、戦闘で……。れ、冷静さ!何事にも動じない、冷静さが大事だと思います!」

 

急に指されたゆんゆんは大事だという冷静さのカケラも感じない様子でそう答えたが、

 

「五点!次はめぐみん!」

「五点!?」

 

担任に酷評されたゆんゆんが、五点……と呟きながら落ち込んでいる。

 戦闘に大切なものなんて、最初から答えは決まってる!

 

「破壊力です!全てを蹂躙し尽くす力!火力こそが最も大切だと思うのです!!」

 

どうだ、とばかりに担任をみる。

 

「五十点!確かに火力は必要だ。十分な破壊力を持たないのであれば紅魔族の戦闘は成り立たない。しかし違う!それではたったの半分だ!」

「な……!この私が、たった五十点……!?」

「私なんて五点よ……」

 

落ち込む私とゆんゆんに対し、担任が成績上位者のクセにお前らにはガッカリだ、とばかりに地面に向かって唾を吐く。

 

「ぺっ」

「「ああっ!」」

 

それを見て声を上げる私達を無視して、憎たらしい担任は私達に次ぐ実力者の生徒を指した。

 

「あるえー!お前ならわかるはずだ!その左眼を覆いし眼帯が似合うお前ならば、紅魔族の戦闘において何が最も大切なのか!」

 

 左眼に眼帯を装着したクラスメイト、脱いだら凄いと評判の、同い年とは思えない体格を持つあるえがまえに出た。

 人差し指で、眼帯を下からクイッと持ち上げ

 

「格好良さです」

「満点だあるえ!さすがだな、スキルアップポーションをやろう!格好良さだ!我ら紅魔族の戦闘は、華がなければ成り立たない!では今から、それがどういう事かを自演するぞ。……『コール・オブ・サンダーストーム』!」

 

 担任が雷雨を呼ぶ魔法を唱えると垂れ込めていた黒い雨雲の合間に、稲光が見え始めた。

 よほど大量の魔力を込めたのか、不自然な強風が吹き荒れる。

 クラスメイト達が風の強さに悲鳴を上げて髪を抑える中、担任は用意していたらしい杖を取り出して高々と天に掲げた。

 

「我が名はぷっちん。アークウィザードにして、上級魔法を操る者……」

 

 担任が名乗りを上げると、杖の尖端を目掛けて雷光がはしる。

 そして担任がマントを翻すと、風がそれをなびかせた。

 

「紅魔族随一の担任教師にして、やがては校長の座に付く者……!」

 

担任の声に呼応し、担任の背後へ一際大きな雷が墜ちる。

 その稲光を背負い、担任が杖を構えてマントを翻した体勢のまま動きを止めた。

 

「「「「か、格好良い!!」」」」

 

クラスメイト達が一斉に歓声を上げる中、隣を見るとゆんゆんだけが真っ赤になった顔を両手で隠して震えていた。

 

「は、恥ずかしい……!」

 

独特な感性を持つゆんゆんがおかしな事を言っているので目を逸らし、まりとらを探す。

 

「Zzz………」

「ね、寝てる………!?。」

 

この雷雨と強風の中立って眠るなんて、あの子はかなりの大物なのかもしれない。

 

 

「よーし!それでは好きな者同士でペアを作れ!お互いに格好良い名乗りを上げてポーズの研究に励むのだ!」

 

 担任のその言葉に、ゆんゆんビクッと震えた。……何かの本で読んだことがある。ぼっちにとって好きな者同士でペアを作れという言葉は、死刑宣告に等しいモノがあるとか。

 ぼっちのゆんゆんもその例に漏れず、きっと担任の言葉は死刑宣告と同等に感じたのだろう。

 ゆんゆんがまりとらを涙目で必死に起こそうとしているのを見ていると、

 

「めぐみん、組む人はいる?いないなら私と組まないかい?」

 

 振り向くと、私と同じ十二歳とは思えないほどの巨乳が目に飛び込んでくる。

 ……………イラッとした。

 

 と、私の後ろでまりとらの名を呼ぶ声が聞こえてくる。

きっとゆんゆんだろう

 

 私に声をかけてきた巨乳、あるえは準備運動のつもりなのか、首を何度か捻ったあと、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 胸が………、遅れて弾むだと…………!?

…………………こいつは敵だ!この場で叩きのめさねば!!

 

「いいでしょう。私の調べた統計学的に言えば、あなたは将来凄腕の大魔法使いになる確率が高いです。ならばいまここで、どちらが上かを決めておきましょう!!」

「そんな統計学があったのっ!?」

 

 まりとらが目をこする中ゆんゆんが律儀に突っ込んでくるが、今の私にかまってる暇はない。

と、担任が声を張り上げた。

 

「ペアは決まったかー?そろそろ始めるぞー!!」

 

……………。

 

「あるえ、今日はなんだか調子が悪く、体育は休ませてもらいます。先程貰ったゆんゆんの弁当に一服盛られていたのかもしれません。」

「ええっ!?」

「なら仕方ないね。私はゆんゆん達のところに混ぜてもらうとするよ。」

 

あるえは私の言葉にショックを受けているゆんゆんのところへ歩いていった。

 

「先生、具合が悪いので今日の体育も休ませて貰います。」

「またかめぐみん。ダメに決まっているだろう。お前はまだ一度まともに体育の授業を受けていないじゃないか。今日の体育は大事な授業、仮病はゆるさんぞ。」

 

頭の硬い担任の前で、私はうめき声を上げながら地面に座り込んだ。

 

「ダメだ。この俺にそんな手は通じな………」

「ぐっ、目覚める……!このままだと、私の体に封印されたアイツが目覚めて……」

「なっ、めぐみん!まさかお前の体に封印されたアイツが目覚めるのか……!?仕方がないな。ちゃんと保険の先生に封印してもらうように。」

「承知しました。それでは失礼します。」

 

ちょろい。

 私はそんな雰囲気で許可を出す担任が大好き………いや、それはないか。

 

 

「よし!それじゃあ始めていいぞー!」

 

 そんな担任の声を背に、私は保険室に向かった。

 体育の授業なんかでせっかくゆんゆんから貰ったカロリーを消費するなんてもったいない。

 

 私は保険の先生から封印の力が込められた伝説の市販栄養剤を貰い、いつもふかふかのベットへと寝転がった。

 そして静かな保険室のベットの上で、布団を首まで引っ張り上げた私は担任の言葉を思い出した。

 

ーー爆発魔法はネタ魔法。 カッコ悪い。

 

私は布団を頭までかぶると、そのままふて寝するかの様に。

 

「せ、先生ー!雨が!雨が強くなって……!ていうかもう土砂降りですけど!先生の格好良いところはもう見たので、この雨を止めてください!!」

「校長先生の大事にしている花壇が水没しましたよ!」

「い、いかん!そういえば今日は、魔力の源たる月が最も高く昇る日だった!抑えられていた俺の魔力が溢れ出してしまったのか……!ここは俺が雨を収める!俺のことはいいから早く校舎の中へ!」

 

「エクスキャリバー!!」

 

「ああ!まりとらちゃんがなんか凄い技で雲を吹き飛ばした!?」

「助かったわ!!」

 

その日は何故か、まりとらが魔王を倒す夢を見た。




めぐみんが爆裂魔法について悩む重要なシーンですが、今作ではまりとらの事も多少混じってます。


喉いてえ……。風邪かな?

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