がっこうぐらし!―Raging World―   作:Moltetra

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なんか気が付いたら夏でした。

長い間、クソお待たせしましたァ!!!!!


27.疑惑

 

 私は、なんの変哲もない普通の家で生まれた。少なくとも私はそう思っていた。両親は共働きで、帰ってくるのはいつも夜遅く。酷い時には次の日の昼に帰ってくる事もあった。

 お腹がすいて、食パンをかじって、でもそれは朝に食べるパンで怒られたりもした。でも仕方ない、私はまだ料理なんてできない。誰も教えてくれなかったんだから仕方ない。

 小さい頃からほとんど1人だった。友達はみんな私を笑う……勉強も、運動もいつも最下位だった私に友達なんてできない。それをお母さんに相談した時、私が悪いとだけ言ってまた出掛けて行った。

 

 だから皆死んでしまったこの世界を、私はとても気に入っていた。血だらけの道を隠れながら進んで、家に帰った時。お母さんは知らない男の人といた。私は……どこまでも馬鹿な私は、生きているべきではなかった……と。どこからともなく声がして。

 私がいたからお母さんは自由になれないと。何もかも私のせいで上手くいかないって、“疫病神”だとやっとわかった。

 

 だから、私は「かわいそうなひと」を助けてあげた。私は疫病神で……新しい場所に迎え入れられても何もできなくて……小間使いやストレスの捌け口としての存在価値しかなかった。どれだけ生きているかもわからなくなった頃、2人の男が新しく迎え入れられた。

 その人達は苗字を名乗らなかった。それどころか、忍と尊という名前すら偽名だと明かす。周りは面白がって、いくらか私から新人2人に興味が移っていく。助かった、と思った。でも同時に、私が受けて来た仕打ちをあの人達に押し付けているとも思った。やっぱり疫病神だ……それ以降私は忍さんの小間使いとして割り当てられた。

 

「お前、名前は?」

 

 忍さんは少しだけ眉を寄せて、埃だらけの服を着る私に名前を聞いてくる。

 

「……忘れた。私なんかの名前は誰も覚えてない、だから皆“ヤク”って呼んでる」

 

「ヤク? ……疫病神のヤクか。あいつら……ッ!」

 

 忍さんは見るからに怒った顔で自室……もう使われなくなった倉庫を出て行く。その時は気にしなかったけど、後から聞いた話じゃ私を疫病神と呼んでいた連中を片っ端からシメていたらしかった。中には主力部隊に割り当てられている実力者もいるのに、ほぼ無傷で完封したとか……

 

「もうヤクなんて名前は捨てちまえ。お前は今から『飛鳥』だ!」

 

 そうして私は“飛鳥”になった。それから、忍さんは実力を買われて主力部隊に入り、小間使いの私も同行する事が多くなった。忙しくない時はいつも「雅」と名乗っていた仲間の話をしてくれていた。私の名前も、その人の言葉から取ったらしい。

 

「あいつは子供ができたら女なら飛鳥って付けたいつってたからな。今じゃもう叶わねぇから、俺が代わりにやってやらねぇと」

 

「……死んじゃったんですか?」

 

「ああ、右腕噛まれてな。ダメ元で切り落としたんだけどさ……ここにくるまでは一緒だったけど、容体が急変してぽっくり逝っちまった」

 

「そう、ですか」

 

「お前は昔のあいつに似てるんだよなぁ……雰囲気っていうか、纏ってる空気っつうかオーラが。でもあいつは、雅はそこから挽回してクソ強くなったんだぜ? もう人間やめてんじゃねえかってぐらい」

 

 雅……忍さんの話すその人は私と同じように疫病神と呼ばれていたらしい。最初こそ復讐鬼になって人の不幸を望んでいたけど、次第に考え直して人の為になろうとした。武器を持てば獣のように、本を持てば学者のように、美味しいご飯の前には犬のようにもなる面白い人。

 私は憧れた。新しい話を聞く度に、胸の奥が温かくなった。私はもう死んでいる男性に恋をしてしまったんだろう。雅と言う人間の半生は波乱万丈で、そのせいで何度も壊れて精神は歪んでいく。その度に自分を作り直して、新しい人間として生きる。

 なんて報われない人なんだと思った。どれだけ頑張って、誰かの為に生きていても、いつも最後は裏切られて……今まで好きで助けていた人に不幸の種を撒く。その人達は皆死んでしまって、いつも1人になる。

 忍さんと尊さんはそんな雅さんをずっと見て、支えてきた。いなくなってみればようやく解放されたと喜ぶどころか、心にぽっかりと大きな穴ができてしまったらしい。そんな忍さんの為にも、私は雅さんを真似た。

 また最初から聞き直して、言動に思考に戦い方まで。どれだけ忠実に再現しようとしても、やっぱりどこか違う。忍さんは体格と性別を挙げた、そしてなりきらなくていいとも。

 それでも私は研究を続ける。しばらくして、私はやっと2人をして本物と同等と言われるぐらいにまで達した。そしてその瞬間を待っていたんじゃないかと思うくらいのタイミングで噂が飛び込んだ。

 

 ―――隻腕の男。黒髪で前髪が長く、目は殆ど隠れていて、両手用の斧を片腕で振り回して無双する亡霊の様な男。足音はせず、目で見ていてもふらりとどこかに消えてしまう。

 

 忍さんは噂を聞いた瞬間、きっと雅だと確信していた。生きていた頃に目撃していた数少ない人達も、同じく雅だと思っていた。

 そしてランダルコーポレーションと名乗る人達が接触してくる。

 

「噛まれても転化しない人間を知っていたら教えてほしいと言ってきた……俺は1人しか思い当たらない。雅さえいれば、この世界が救えるかもしれない」

 

 避難所は浮足立った。すぐに捜索隊が編成されて、出発直前になった時、誰かが聞いた。その人間に何をするのかと。

 

「………ほんとこの世界はあいつに優しくねぇよな。今まで散々な仕打ちを受けさせておいて、今度はモルモットだ。本当に―――クソ喰らえ」

 

 捜索隊の隊長は、これまでの実績や経験から忍さんが選ばれた。そこには今の懲罰部隊にいる人達の殆どが混じっていた、私も含めて。

 私は、その部隊の副隊長。主に後方支援を担当していてその時雅さんとは接触しなかったけど、行動パターンの分析は忍さんと議論してほぼ確立できていた。そのおかげで雅さんの逃げる先もわかった。だからこうして、私は―――

 

「飛鳥ちゃん! 飛鳥ちゃんっ!!」

 

 汚い色をした声が私を起こす。目を開けた瞬間、急に吐き気がしてお気に入りのコートを汚してしまった。

 

「起きた! ―――ってうわああぁぁりーさんゴミ箱ゴミ箱!!」

 

 すぐに差し出されたゴミ箱に残りを全部吐き出す。おでこに何かがある気がして探ってみると絆創膏みたいな物が貼ってあった。ああそっか、私負けたんだ。

 喉がじりじりと焼けている。初めて見るツインテールの人にお水を貰って、口の中のすっぱさを無理矢理流し込む。ゴミ箱の中には溶けかけの変な薬と、茶色の変な汁。……これのせいで吐いたんだとわかった。今まであんまり体調がよくなかったのも、全部これのせいだ。

 

「飛鳥ちゃん、よく聞いて!」

 

 さっき雅様とイチャイチャしていた女が私の肩をがっしりと掴んでくる。距離が近いのがいやで振り払おうとしても、ものすごく強い力で私じゃどうにもできない。

 

「さっき雅さんと互角に戦ってたあなたなら……2人を助けられるわよね!?」

 

「……互角なんかじゃない。雅様は……やっぱり強かった。打ち合う度にどんどん目が虚ろになっていって、全部見透かされてた……」

 

「でも私より強いでしょ!? 2人を……雅さんと忍さんを助けてっ!!」

 

 こんな顔した人、いままで見た事ない。気絶してる間に何故か足だけ縛られてるのは意味が分からないけど、なんとか窓際まで行って外を覗いてみる。

 

「え……?」

 

 押されてる……? 金属バットに木刀を持った仲間の2人が、弓矢の援護を受けながらだけどじりじりと2人を追い詰めている。素人目で見たら雅様は寸での所で躱して、忍さんは適度に距離を取って、むしろ全部見透かしてるようだけど。

 矢はともかく、あの2人が木刀の一撃を躱す? 雅様だけならまだいいけど、同じ武器どころか強化されている忍さんまでもが回避に徹するのは……受けたらただじゃすまない程力が、技量があるってこと?

 もしこのまま放っておけば……最悪の結末が待ってる。先に忍さんが倒されて、数的不利を前にして崩れ落ちる雅様の姿が視える。

 

「……紐切ってください」

 

「助けて……くれるの?」

 

「そうですよ? じゃないと雅様が……私の王子様が死んじゃいますから」

 

 2人は一瞬嫌そうな顔をするけど、構わず私の足に巻かれたバンドを切ってくれる。

 

「私のナイフは?」

 

「待ってろ、今持ってくる」

 

 ツインテの方が私のナイフを拾ってきてくれた。刃先にまだ少し赤い染みが残っているのを見て、無意識に舐めた。

 

「なにしてんの……?」

 

「あのナイフ、雅さんの血が付いたのよ。さっきも舐めてたけど……」

 

「うわぁ……」

 

 ほんの少しの鉄の味。それにほのかに甘く感じる……のは多分気のせいだと思う。でも、こんな少しだけの血なのに……私の身体は大喜びして鈍かった頭もどんどん澄み渡っていく。あぁ……ダメかも、すっごく疼いてきた……でも今は我慢しなきゃ。

 

「じゃあいきますね」

 

「……お、おう」

 

 早歩きで部屋を出てみたけど、どっちが出口かわからない。屋根裏から来たのもあって内部構造とかは……やっぱりわかんない。

 

「部屋出て左の階段降りたら玄関だから」

 

「あ、どうも」

 

 言われた通りに歩いてみると、広々とした階段を見つけた。降りてみると、外からでも見えていた豪華な玄関の扉が見えてくる。

 

「みやびさま……いまいきますから」

 

 準備は整った。頭の中はからっぽで、もうなにもかんがえられなかった。

 

 

 ―――ヤバい。非常にヤバい。見くびっていた訳ではないが、こいつら……というかこっちの射撃担当は何やってるんだ……? まさか潜入してきたのは飛鳥だけじゃなくて、イツキと坂上は水面下で行動不能になってるんじゃないだろうな?

 

「ミヤ、もう一回仕掛けるぞ……!」

 

「そう何度も同じ手は通用しない。初回の時点で弓の照準も精確だった、次は当てられるぞ」

 

「チッ……それもそうか。つまり俺達は……」

 

「詰んでるな」

 

 あの2人は最初の場所からあまり動こうとはしない。基本的に防衛型だが、射程に入っている限りは高火力かつ精確な一撃がくる。それを打開するのに一番手っ取り早いのは射程外からのアウトレンジになるんだが、肝心の射撃班が動かない。……それとも動けないのか?

 敵2人があの場所から動かない理由。門を正面としてV字型の敵射線。それだけでも確認できているのは4人だ、事前に尋問していた情報が合っているかどうかは別として確認できる敵数が少なすぎる。

 それに弓を所持している人数が2人だけというのも……しっかりと見た訳ではないが、弓は恐らく自作だ、2本作れるならそれ以上あってもおかしくない。俺なら部隊の半数、いや3分の1は射撃班にする。それの確証になるかはわからないが、放たれる矢も手製だ。しかも援護射撃にも躊躇がない。つまり残弾はたんまりあるか、出し切ってでも殺したいという事だ。

 こちらの射撃班は動けず、敵の射撃班は2名だけしか見えない。相手の前衛は動かない、もしくは動けない? この状況になるまでに何があった?

 

「考え事か? 舐められたもんだな」

 

「そっちこそ、うちの相棒が考え事してても攻めてこないんだな?」

 

「行くまでもないからな」

 

 行くまでもない、か。虚勢でもなんでもない、自信のある言葉だ。……もう一度、もう一度考え直せ。

 相手2人は動かないか動けない。敵の射撃班は確認できる限り2人だがもっといる可能性の方が高い。相手が攻める側なのに懐に入ったきり攻めてこないどころかこれ以上攻める必要がない。

 ―――1つずつ考えるな、全てを同時に……頭の中でマップを広げろ。もう少し、もう少しで答えが見えてくる筈だ。

 

「―――わかった」

 

「お? 終わったかミヤ。で、解析結果は?」

 

「この勝負、このままじゃ10割負ける」

 

「はぁ!? ……って『このままじゃ』だろ? じゃあやり方を変えたら勝率いくらだ?」

 

「3割いかないな、25%ってとこだ」

 

 忍が頭を抱える。少しの間うんうん唸って、吹っ切れたのか笑顔で俺の右脇腹を小突いてきた。

 

「なーに、四捨五入したら30%だろ?」

 

「それをまた四捨五入すればゼロになるが」

 

「そう、っすねぇ……じゃあやめるわ四捨五入。でも25あるんだろ? ソシャゲの最高レアの確立よりよっぽどあるぜ」

 

「これが慣れってやつか……現代人は超低確率を攻め過ぎてるな」

 

「なぁに、任せとけって。運だけなら誰にも負けねぇ自信あるぜ? で、なにすりゃいい?」

 

 俺達の会話を敵2人は余裕綽々といった感じで眺めている。油断というのは余裕がある所に生まれるものだ、その隙に入り込むには鋭利で細い切っ先が要る。俺と忍、特に忍はそれには合わない。こいつは大剣で叩っ切るような性格だからな。

 ここは適材適所、俺達もあいつらと同じ戦法を取って応戦するしかない。

 

「屋上に行け。恐らく敵が陣取ってるか、弓で釘付けにされてるだろう。イツキさえ自由になれば俺達は勝てる、なんなら射撃位置の変更も視野に入れてくれ。ある程度何か壊れてもいい」

 

 小声で耳打ちすると、忍は頷く。

 

「わかった、じゃあしばらくの間時間稼ぎ頼むぜ」

 

「ああ。だが、別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「お? やれんのか? いいぜ、俺の努力無駄にしてみせろよ」

 

 最後に俺の肩を叩いて、全力で建物に戻っていく

 

「ほう、1人で俺達に勝てるのか?」

 

「さあ、あいつはともかく俺は運が最悪だからな。だが……不運ってのは時に実力でカバーできるもんだ」

 

 ちらっと屋上の方を見てみる。屋上自体行った事はないからわからないが、あの前衛2人の位置……あそこを撃つには上半身の殆どを晒さなきゃならない。

 

「うわっ」

 

 後ろで忍の悲鳴が聞こえる。何事かと少しだけ振り返ると、玄関の扉の向こうにはコートを脱いだ飛鳥が立っていた。

 

「お前何で―――」

 

「じゃまです」

 

 飛鳥は忍の肩を軽く押して、それでできた僅かな隙間をするりと通ってくる。今回はその無駄にデカい胸が引っ掛かる事もなく、えらくスムーズだ。コート脱いだからか?

 

「何故ここに?」

 

「いまはいいでしょ」

 

 あー、スイッチ入ってらっしゃる。でも甘い感じだな、まだ足りてない。というかこいつのスイッチってどうやって入るものなのか。

 感覚的に数十秒程考える。そして飛鳥が持っているナイフを見て確信した。―――こいつ、超ド級の変態だ。しかしそれが使えるものならば使わなきゃ損だ、あまりやりたくはないが……

 

「飛鳥」

 

 ナイフを口に咥えて、手の甲に軽く突き立てる。勿論血が出るし、軽くとは言え切れ味がいいのもあって勢いもそこそこだ。とはいえ数分もすれば止まるだろう。

 そんな様子を見た飛鳥は、あの時と同じく目をキラキラと輝かせる。そんなに血が好きか、俺も好きな方だが……どう好きかは絶対に違うだろうよ。

 

「前払いだ」

 

「いいんですか……!?」

 

「頼むから我は忘れないでくれよ」

 

 飛鳥は差し出された手を、まるで壊れ物に触れるかの様に両手で優しく包む。そして零れそうになった血にすぐさま口を付けた。

 ……うわー、すっごい夢中で吸ってる。いやそれだけ吸えば出る分の血もなくなって止まるだろうが……すっごい舌這ってんなぁ。気持ち悪いというか、見た目小さい女の子に血を吸わせてるってヤバい。背徳的というか、これ最早犯罪だ。

 

「ぷはっ……はぁぁ……」

 

 堪能しました。そう言いたげな蕩けた顔を俺に向けてくる。底の見えない井戸の瞳は少しだけ人間らしさを取り戻して、正に生きていると実感してますって瞳をしている。

 

「……もういいか?」

 

「もうちょっと……」

 

 いやもうでないって、あーあこれほっといたら吸い尽くされるんじゃなかろうか。こいつは吸血鬼か何かか?

 最後の一口。吸い尽くされようやく自由になった手を見ると、傷口は血が滲むどころか綺麗に舐め取られて肉本来の色が見えている。若干引くわ。

 

「もういいよな?」

 

「はぁい……」

 

 おい腹をさするな。しかもなんか震え始めてるし若干どころかドン引きだぞ。

 

「なにやってんだお前ら」

 

 何やってんでしょうね俺ら。でもこれ必要な事なんですよ、この超絶ド変態娘を制御するには畜生と同じく餌付けが有効なんです。その手っ取り早い餌が血液なだけで。

 しかし自分達のリーダーが目の前で敵側についているというのに、こいつらぴくりとも反応しない。まるでそれが当たり前の様に……違うな、わかっていたという訳でもなさそうだ。

 

「にしても生きてたか、お前もしぶといヤツだなぁ? “ヤク”」

 

 ぴくり。飛鳥がヤクと呼ばれ顔を伏せる。おいおい、折角その気にさせたのに気力を削がれるなよ。

 

「ヤクぅ? 飛鳥じゃねえのか」

 

「そいつの飛鳥って名前は忍が付けた名前だ。なんでも、昔一緒だった仲間が娘に付ける気だったらしいが? その仲間ってのはお前の事か、隻腕」

 

 ………そういえばそんな事言ったっけ。あれは酔った勢いでお互いテンションが狂ってた時の与太話だったんだが。そうか、つまり飛鳥は……忍め、中々粋な事しやがる。

 

「疫病神。長ったらしいからもっぱらヤクって呼んでたのによ、忍がキレてからは一文字増えやがった。まあ裏じゃ忍も含めてヤクって呼ばれてたけどな」

 

「―――今なんつった?」

 

「あ?」

 

 聞き捨てならない言葉だった。びくびくと震え、腕を抱えてしまっている飛鳥を見て……もっとイラついてくる。怒り? いやいや、そんな生温いもんじゃない。

 

「疫病神、つったな? この子を……忍をッ!!!」 

 

 持っていたナイフを一瞬にして投げる。本来なら回転させて投げる手法を取るが、つい無回転で投げてしまった。そこそこの速度で相手から見れば点が向かってくるようなものだと言うのに、木刀を軽く振ってナイフを弾かれてしまう。

 

「なんだ、キレてんのか」

 

「キレてる……? んな生易しい感情じゃない。―――だがまあ最ッ高にキレてるよ。おい飛鳥ッ!!」

 

 俺の声に、隣でただの少女と化していた飛鳥が一際大きく震えた。恐る恐る顔を上げて、俺の顔色を窺ってくる。目が合った瞬間、その瞳は恐怖に染まった。

 

「お前それでいいのか? 何の為にそこまで強くなった、どうして俺を真似た? 強くなりたかったんじゃないのか?」

 

「わたし、は……」

 

「強くなって見返してやる。疫病神って呼んだ事を後悔させてやる。地べたに頭擦りつけて、泣いて謝るまで許さない……いや謝ったって許さない、生まれてきた事すら後悔させてやる。……そうは思わなかったのか」

 

「そ、そんなこと……思ってない!」

 

「じゃあ俺とは違うな。どうせこうだ、“自分が大嫌いだったから自分を捨てる為に誰かに成りきろうとした”。違うか?」

 

 飛鳥は再び顔を伏せる。唇を噛み、一筋の血を滴らせて。

 

「ほらみろ、俺とお前じゃ根本的に目指した地点が違う。かくいう俺も最近まで忘れてたが、始まりはただの復讐だった。……お前が俺に負けたのも、お前と俺の考え方の違いからくる誤差だ。それとお前が“女”だったのもある」

 

 俺が懐に飛び込んだあの瞬間、飛鳥は完全に狼狽していた。俺の血を飲んであそこまで蕩けていたのを見るに、早い話ときめいていたのかもしれない。単純なナイフの技量では片腕の俺が劣る。その差を埋めたのは、他でもない性別……こいつの言う「好き」という感情だ。

 

「血を飲んでも俺には近付けないぞ。もし近付きたいのであれば……疫病神と言われた瞬間、お前は怒るべきだった。自分を否定した奴は全員殺す、お前が聞いた頃の俺はそう考えてたんだけどな」

 

「そんな……雅様は……そんな汚れた人じゃ……」

 

「残念ながら元は自分勝手な感情だったんだ。……妹を失くして、自分の価値も意味も全部潰された。“疫病神”と言われ続けて、耐え切れなかった俺はそれまでの自分を崖下に突き落としたんだ。それが今更完全に這い上がってきてやがる。もう吐き気すら感じない―――目の前にある全部が憎くて仕方ない」

 

 なのに悠里に膝枕されて、俺は少しばかりの安息に浸っていた。奏楽に似ても似つかないあの少女すら、過去を思い出させるからと視界から外すだけ。―――ああもう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。何を考えればいいのか、何をすればいいのか整理する余裕すらない。

 ただ鉛筆で誤字をぐちゃぐちゃに隠すかの様に思考も言葉も記憶も掻き乱される。考えちゃいけないのか? まさかまだ何か忘れてる事があるんじゃないのか? なんでここまで考えさせてくれないんだ? 一体誰が邪魔してるって言うんだ。

 

「ほー、そこのクソガキ以上に効くじゃねえか。―――だからお前は疫病神なんだよ、さっさと死んだ方が仲間の為なんじゃねえの?」

 

「……っせぇな」

 

 ―――殺せ、今すぐ飛び込んで首にナイフを突き立てて抉ってその返り血を浴びよう。そうしたら絶対気持ちいい。

 

「うるさい……」

 

 ノイズはやがて言葉になる。文字でもなく、声でもなく。自分が思った事の様に勝手に浮かんでくる。この殺し方のイメージ通りにやれば……きっと殺せる、確実に殺せる。少し力を抜けば、次の瞬間にはイメージが現実になる。

 でもそれは駄目だと、何かが止める。でも最初の計画でも皆殺しが前提だった。殺してはいけないなんて決まりはない、むしろ殺すべきなんだ。でも、それでも駄目だとなにかが動くのを止めていた。

 これはなんだ? 理性とでも言うのか? 今まで散々殺してきたのに、何を今更止める必要がある。生きていようと死んでいようと、これまで俺はお構いなしに障害を排除してきた。この手はもう汚れている。一体何がいけないと言うんだ?

 

「雅さんっ!」

 

 飛び出す為に重心を移動させようとした時、飛鳥が右側から突っ込んでくる。倒れた時の衝撃で我を取り戻し、ぐつぐつと煮え滾っていた殺意をどうにか抑え込みながらも動かない飛鳥を見る。

 

「飛鳥……?」

 

「は、はい……生きてます……よね?」

 

「生きてるな」

 

「え? あっ、掠り傷で済みました」

 

 飛鳥が押さえたのは右の横腹。大きな胸のすぐ下には服が裂かれて赤い血が滲み始めている。よし、軽傷だ。本当に掠っただけらしいな。

 だが少し痛そうに眉をしかめる飛鳥を見て、俺の胸の奥が痛む。

 

「……動けるか」

 

「はい、全然大丈夫です」

 

「ごめんな」

 

 傷口から溢れた血を、親指で拭う。それも少し痛かったみたいだが、次に俺がした事の方が衝撃的だったらしく目を見開いていた。

 

「飛鳥。お前、俺の物になれ」

 

 口の中には血の味が広がっている。久しく……いやつい最近も味わったが、この感覚は久し振りだ。今俺の中では太く、決して折れない鉄柱の様な信念が通っている。あの時、学園生活部について行くと決めた日の様な、決意の感覚だ。

 ―――俺は護ると誓ったんだ。ただ憎くて殺す、そんな在り方じゃ何も護れない。正義の味方なんて俺には似合わない……だからせめて手の届く範囲の奴らは護る。その為にも、護りたいと思った相手は近くに置いておかなくちゃな。

 

「へぇぁっ!?」

 

 飛鳥は自分の血を舐められた事と最悪プロポーズにしか聞こえない言葉に狼狽えている。ほらそういう所だ、だからお前は駄目なんだ。

 

「極意を教えてやる。お前はもう疫病神じゃない、誰かの為にあろうとする限り疫病神にはならないんだ。人の為に泣いて、人の為に笑え。自分なんか要らないと思うくらいなら人の為に使い潰せ。……そっちの方が綺麗だろ? だから俺は“雅”なんだ」

 

 遠い昔に言い聞かせた言葉を、今また一言一句違わず声に出す。要らない人間なんていない、そんな綺麗事を言うつもりはない。必要な人間がいて、不要な人間も必ずいる。現に俺も不要な人間の1人だ。

 だからこの言葉で縛った。本当に誰かの役に立てたなら、もう不要とは言えない。必要とまでは行かなくともどちらかと言えば要る人間になれる。

 だから俺は汚くとも人の為に動く。だから俺は恨まれようと人の為に動く。とんだエゴイストだ、人の為と言っても結局は自分の考えで動く。まだ機械の方が人の為になるだろうに。

 だから、それでも―――正しくなくとも俺は自分が間違ってないと証明する為にこの言葉を使う。

 

「俺は飛べなかったよ、だからせめて自分の子供には飛び立ってほしいと願って“飛鳥”と名付ける。そう考えたのかもしれない。お前はどうだ?」

 

「……私も、飛べないです。だって、翼がないんですもの」

 

「俺を目指してそこまで強くなったなら、辛うじて片方の翼はある。―――比翼の鳥、って知ってるか」

 

 どうやら知っているらしい。俺の途中で途切れた右腕を見て、はっとしている。

 

「ついてこれるか?」

 

「……はいっ!」

 

 飛鳥の瞳から生気が溢れ始める。どうやら気持ちは固まったらしい。

 

「遠慮はしない、全力で行くぞ。お前の戦い方は古い。見て覚えるんだな」

 

 新しいナイフを抜いて、飛鳥に手渡す。今思い付いた戦法が使える保証はない。仮に使った所で飛鳥が対応できる保証もない。どれもこれもぶっつけ本番、俺の思い通りに事が進めば10分と経たずに全員殺せる。

 ……最高だ、これから人を殺すというのにここまで満ち足りた気分になるとは思わなかった。さっきまでの疲労も、鈍った頭も全部リセットされている。

 

「こいよ、疫病神」

 

 それはもう効かない。俺も飛鳥も、軽く鼻で笑って同じ姿勢を取る。まるで鏡合わせの様に、他の誰にも真似できない事をしてやろう。

 

「挟撃する。お前は右だ」

 

「はい」

 

 突っ込む前の重心移動。その動きも全く同じだ。そして合図もなく、目を見開いて駆けだした。

 飛鳥はもう吠えなかった。ただ静かに、弓の援護射撃も最低限の動きで躱して目標をじっと捉えている。敵が2人以上いる場合、俺はあえてどちらかに隙を見せる動きをする。というか俺が1人である以上1人にしか攻撃できない。

 勿論攻撃中は隙だらけだ、だが目で捉えているか、ほんの直前まで見てさえいればどうくるか予測する事は出来る。そしてどう躱すかも―――

 

「ぐっ……」

 

 俺の突きを躱したバット持ちの男が、背後から来た飛鳥の突きを太腿に受ける。しっかりと深くまで突き刺し、捻じる手間も加えて最高効率の一撃になった。更に駄目押し、躱されたナイフを逆手に持ち替えて左の脇腹に突き刺す。これで1人あがりだ。

 

「お前ら……ッ!?」

 

 仲間が瞬殺され、木刀持ちが若干狼狽えた。その隙も逃さず後ろ蹴りで新たな隙を作ろうとするが、男も前蹴りをしようとして特撮の様に双方の足が交叉した。それも立派な隙だ、即座に膝で相手の足を絡め取って地面に引きずり落とす。

 そこに飛鳥の突き。首を狙った一撃だが、相手が一枚上手なのもあって木刀で防がれる。4cm程突き刺さった切っ先はそう簡単に抜けない。抜こうとしてしまった飛鳥の顔面に男の渾身の左ストレートが入った。

 

「はぁっ、いったぁ……」

 

 怯みながらも武器を放さないのは評価できるが、そのおかげでナイフは抜けたがフリーになった木刀が高く構えられようとしている。上段からの打ち降ろしだ、頭に当たれば砕くのも陥没させるのは造作もない。

 咄嗟に距離を詰め、ヤケクソ気味で突きを入れる。ドラマで見るお手本の様な突進は、容易く躱されてしまった。

 

「気を抜くな」

 

 乙女の顔面を殴ってしまいには木刀を打ち込もうとするのかと言いたくなるが、俺さっきアッパーいれて頭突きまで入れたしな。というかほぼリンチだったから文句を言える立場じゃない。

 怯んだ飛鳥の胸にラリアットするような形で敵から更に距離を取ったのはいいものの、相手は完全に体勢を立て直している。

 

「あいつと近距離で殴り合うのは得策とは言えないな……使いたくはなかったが」

 

 レッグポーチから銃を取り出す。今まで使わなかったのはいくつか理由があるが、一番は銃声で第3勢力に悟られるかもしれないという不安からだった。しかしこれ以上被害を増やすのもよろしくない。ここはちょちょいと片付けて、新手がきたらこいつらの弓を使って排除すればいい。

 

「銃……!? おい弓隊なにしてる!! 距離があるうちにさっさと殺せ!! 包囲してる奴らも全員かき集めろ!!!」

 

「そいつは無理な話だな」

 

 先程まで敵の射撃班が顔を覗かせていた場所から、最早聞き慣れた声と共に忍が顔を覗かせる。

 

「!? し、忍……!?」

 

「久し振りだな、元気だったか?」

 

「まさか……この短時間で……?」

 

 忍が塀を乗り越えてくると、その後にも続々と包囲していたらしい大人数が続いてくる。総勢13人……聞いていた数より少なくなっている。

 

「こいつらは降伏し俺達の側に回るそうだ。皆殺しにする必要はもうないぜ」

 

「信じられるのか」

 

「さあ、実際どうなのかはわからねぇけどな。こいつらは皆顔馴染みだ。つうか前お前と会った時のメンバーだしな」

 

 ……なに? つまり忍と尊さんを追っていた奴らは殆どが逃がす為に協力していたのか? じゃあ、俺が殺したあの若いのは……

 

「良い報せと悪い報せがある。そこの2人と残りはまた派閥が違う、完全に上からの指示に絶対の連中だ」

 

「その残りってのは?」

 

「外で拘束した。―――それで悪い報せだけど」

 

 今のが良い報せだったのかよ。まあ拘束してあるなら確かに良い報せと言えるか。

 

「少し騒ぎ過ぎたらしい。大人数でこいつらが移動したのも合わさって、いくらか感染者が集まって来てる」

 

「それこそ良い報せじゃないか。都合の悪い人間を楽に消せる」

 

 忍の人望に集まった奴らがざわつき始める。俺の話を聞いていたかはわからないが、少なくとも評価は今のでガタ落ちだろう。まあ問題ない、この程度で反旗を翻すような奴はこの先黙っていられるような奴じゃないからな。

 

「まーたお前の悪い癖が出たな。もう少し人に優しくできねぇのかよ?」

 

「しなくていいだろ。赤の他人にまで分けてやれるほど俺の優しさは多くねえよ」

 

「はぁ……まあいいや。それで? お前はどうする。この人数差でもまだやるか? そこで余命数分の奴と同じ運命を辿る事になるけど」

 

 忍は素手の状態で木刀持ちの男に歩み寄っていく。なんて無警戒なんだ、それともそういう所にここまで多くの人間がついてくるのか? 俺じゃ考えられない、あり得ないやり方なのに、俺よりも多くの人間を従えている。

 別に競ってる訳じゃないが……こういうのを見せつけられると劣等感を感じさせられるな。

 

「俺は……降参だ、流石にこの人数に太刀打ちできるとは思わない」

 

 木刀を持った男は自慢の武器も地面に投げ捨て、両手を挙げる。

 

「いいだろう。―――こいつの対応は俺に任せて貰ってもいいんだろ?」

 

「さあな、最終決定は悠里だ。だが、そいつは知り過ぎた。それも含めて、今後話し合えばいい」

 

 忍はしばらく考えた後、「OK」とだけ言って周りの取り巻きに拘束を命じる。ああやって一瞥するだけで指示をこなせる人間になりたいと一瞬思ったが、周りの人間を見てその考え方は浅はかだと理解する。

 誰かを思い通りに使役する。そういう“在り方”に疑問が生じるのも確かだが、それ以前に俺はあそこまでのカリスマ性は持ち合わせていない。やろうと思っても、あそこまでの信頼を勝ち取るのは俺には無理だろう。

 しかし、何故屋上に行ったはずの忍が正面から出てきたのか。当然無理な話ではないが、どんな経緯でこうなったのかが気に掛かる。

 

「とりあえずミヤちゃんは休んでろよ、飛鳥もな。ついでに部長に報告しといてくれ。あとこいつら中に入れても問題ないよな?」

 

「駄目だ」

 

「……一応聞くけど、理由は?」

 

「俺はそいつらの事を知らない、悠里や胡桃もそうだ。見ず知らずの男が大人数来たら流石に怖がる。あと流石に場所が足らない」

 

「……ま、妥当か。つう訳でわりぃ、しばらく外で待機だわ。勿論焚火くらいはいいんだよな?」

 

「ああ、ただし薪は敷地外から集める必要があるからな」

 

 それも忍はしぶしぶ頷くと、俺と飛鳥は屋敷の中へと戻る。扉を閉じて、鍵もしっかりと掛けた。窓を割られれば意味はなくなるが、物騒な音を立てなければ入ってこれない以上アドバンテージにはなる。それより……いくつか根回しが必要になったな。

 

「……はぁ、面倒な事になったなぁ」

 

「す、すみません……」

 

 申し訳なさそうに俯く飛鳥の頭を雑に撫でると、嬉しそうにほんの少しだけ寄り掛かってくる。だがそこまで構ってやる時間はない。靴を脱いでさっき飛鳥が天井に大穴を開けた部屋に戻ると、出た時と同じく悠里と胡桃が訝し気な面持ちをしながら話し込んでいた。

 

「なあ、雅……」

 

 おかえりの挨拶もないままいきなり本題に入ったらしい。まあ俺も悠長に雑談してる気分じゃないし、むしろ有り難い。

 

「―――お前の仲間、本当に信用できるのか?」

 

 そして、今まさに俺が抱いている疑念をストレートにぶつけてくる。

 いつもならきっぱりと怪しいから追放するか処刑すると言う所だが、相手が忍なだけにほんの少し考えてしまう。正直、戦っていた時とその後……ぞろぞろと引き連れてきた時の忍には違いがある。それはどんなに平和ボケをしていようと違和感を感じる変わり様だった。

 屋上に行ったはずなのに、塀の外から現れたのも。つい数時間前まで死ぬ気で逃げていたのにあっさりと許してしまうのも。ちょっとやそっとの情報ではそうはならない。きっと何かしら重大な事があったはずだ。

 そして、あいつなら俺に休めと言った時に話があるとでも言うだろう。それがないという事は、俺に関する何かを吹き込まれて寝返ったか、そもそも―――味方にはなっていないか。

 あれも違うこれも違うと、ありとあらゆる予測が頭の中を飛び交う。そのどれもが、可能性が高いとも言えない程の小数点以下だ。まず情報が足りない。

 

「昔の仲間を疑うのは辛いだろうけどさ……」

 

 だが、現時点で言える事は―――

 

「―――忍と尊さんは、信用できるとは言えない」

 

 きっぱりと、自分の中で出た結論を告げた。

 

 

 

 




時間の流れというのは、時に残酷なものです。
記憶は風化し、それは日々の行いすらかき消していきます。砂漠のどこかに書いた文字のように。

要するに完全に忘れてました。「明日やろうは馬鹿野郎」の意味が今ならわかります。「そのうちやろうはクソ野郎」だとも言えるでしょう。
WoWsの造船ミッションでハゲかけていた時、ふと「いや待て最後に出したのいつだっけ?」と思い出したのが切っ掛けです。大部分はできてたのに何故完成させなかったんだい?

多分小説のファイルが一挙に吹っ飛んだ時に萎えていたんでしょう。復旧するだけして力尽きて逃避していたに違いない。

動画編集してみたりTRPGしてみたいと思うものの相手がいなかったりApexしたりWoWsで潜水艦だヒャッホーゥ!!してました。これだけサボってたら半年経つのも当たり前です。忘れない様に善処します……

―――ここから今回の話の補足―――

ちなみに前回の終盤で「撃て」と言われてましたが銃じゃなくて弓です。詳しくは次回に出てきますがバッチリ回避している、とだけ明言しておきます。

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