がっこうぐらし!―Raging World―   作:Moltetra

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26.飛鳥

 

 比翼の鳥。と言う言葉がある。

 2羽の鳥がいて、だがそれぞれ1枚しか翼を持たず、単体では飛べない。しかし2羽は力を合わせればそれぞれの翼を使って空を飛べる。有り体に言えば、『1人じゃ半人前でも2人いればそれぞれ補えて1人前』的な意味だ。……良い話だな、だが無意味だ。もしその片方を失えばどうなるか? そんな事、わかりきっている。

 

「悠里っ!!!」

 

「雅さんっ!!」

 

 相手はまともな武器も持たない。その殆どは包丁や工具が主武装で、俺達なら、ましてや銃を使えば造作もない相手だった。それが慢心を生んだ。

 

「退けぇ!!」

 

 金属バットと木刀で武装した男2人に詰め寄る。左手にはたった1本の剣鉈。これでいい、これさえあれば十分だ。―――なのに、俺は前蹴り1発腹に受けただけで怯み、直後に振り抜かれた木刀の横薙ぎでこめかみを打たれる。

 どこまでも吹っ飛ぶ感覚。実際には数十cmも飛んでない。それどころか持ち前の胆力で、踏み止まってすらいた。その所為で敵のリーチの範囲内で……

 

「雅避けろッ!」

 

 忍の声にはっとして圧の感じる方向に目を向ける。バットの突き、本来振り抜かれるものではあるが材質からして威力はお墨付き。それをもろに顎に喰らって遂に倒れてしまう。

 ――――――いつかの日も、俺はこうして顎に喰らっていたな。思考できる時には目はまともに見えていない。霞んで、悠里と少女の叫び声が……

 

 

 

「っ!?」

 

 嫌な夢を見た。記憶にもしっかりと鮮明に残っている。痛みまでもがまだ続いているのに気づき、自然と頭を押さえていた。

 

「どうしたの……!?」

 

 悠里は驚いた様子で俺の顔を覗き込む。その距離はいつもより近く、思わず目を逸らした。

 

「……悪夢を見た」

 

「そう……今まで頑張ってたから、寝ている間も考えちゃうのね」

 

「そう、っすねぇ」

 

 現在、俺は罰ゲーム……じゃなくて、以前約束した『なんでも2つ言う事を聞く』という状況にある。その1つめが、こうして悠里に膝枕されるというものだ。何だそんな事かと思えば、後から追加で『最低3時間』と言われた。それはもう2つ聞いてる事になるんじゃないかと問いただしてみれば、「ん~?」と笑顔で躱され、底知らぬ恐怖を感じたので素直に飲んである。

 というか寝てたのか俺。あれだけ「いや年下に膝枕されるとか屈辱なのでは?」とか言って忍と尊さんに強がっていたのに。

 

「どれくらい寝てたんだ」

 

「えーっと、10分くらいかしら」

 

「嘘だろ?」

 

 あれだけ濃密な夢で10分? ナイトテーブルに置いてある時計を見てみると、10分どころか厳密に数えれば7分40秒。悪夢を見たとはいえ、これで膝枕の連続時間は20分ちょっとか、3時間って長いな。つうか10分で寝たのか、人生でも稀に見る寝つきの良さだ。

 

「雅さんって結構子供っぽい所あるわよね?」

 

「……例えば?」

 

「そうねぇ、頭撫でたらすぐ寝ちゃう所とか。面白くてほっぺたつついてみたりしたのよ?」

 

「悪夢の原因それなのでは? おもっくそ顔面に喰らった夢見たんだが」

 

「あっ……」

 

 悠里のわきわきしていた手が止まる。本当に申し訳ない事したなって顔だな、調子に乗られても困るし当分それでいろ。

 

「それはそうと、俺が膝枕するってのはどうだ? 日々世話になってる訳だし」

 

「ダメ。お世話になってるのはこっちだもの。それに寝ちゃうくらいまだ疲れが残ってるんでしょ? 今度はそっとしておくから、もう少し寝ててもいいのよ?」

 

「いや眠気完ッ全に覚めましたが」

 

「そ、そう……それよりいつもより話し方がおかしくない……?」

 

 しまった。つい素が。ギャグ方面に走ると途端にこれだ。いつも通り、クールに行かねば。

 

「いやまあ、慣れない事されてるとな……」

 

 ほんの少しだけ見える悠里の目を見て、改めて悠里のって大き―――いや暇だし現状の再確認と行こう。現在の必須行動はこの膝枕3時間耐久、場所は寝室、それも悠里のベッドの上。何故俺の方ではないのかと疑問に思うが、まあそりゃ男の臭いってのは結構キツいとも聞くし。

 おかげで滅茶苦茶甘ったる……いのはいいとして、忍には敷地内から外地の偵察を行って貰っている。尊さんには悠里がやる予定だった食糧やそのほかの在庫状況の確認、美紀と胡桃は未完了だった部屋の掃除、由紀と美波にはあの子の遊び相手、イツキや坂上には武器の整備。

 完璧だ、これぞ円滑なサバイバルライフ。これぞ我が生きる糧。何の支障もなく円滑に事が進めば進むほど俺の士気は最高潮に達し指揮能力も上がるというものよ。完璧過ぎないか? 天才か俺は、いや天才か。最高かな俺。この景色も乙なものだが。

 

「あの……そんなにみられると恥ずかしいんだけど……」

 

「え、見てた?」

 

「すっごい目が合うわね」

 

「いや逆にどこ見ろと?」

 

「えっ、いえ別にどこ見てもいいけど……」

 

「じゃあ目でいいですか」

 

「……あ、はい」

 

 はいガン見。眼球をここで固定して、瞬きをしながら視界を切り捨てて思考に集中しよう。

 ―――とは言え皆に働いて貰っている中俺と悠里はこうして休んでいる、というのもおかしな話だ。悠里はともかく、俺は……いや休んでてもいいか許可もう取ってるし。そうだとしてもこうして一緒に休んでいるのはおかしな話……でもないか、自室2人共ここだし。……あれ?

 まあそれはそうとしてこうして膝枕をして貰って悠里に負担を強いるというのはいかがなものだろうか? ……でもこれ悠里の命令の1つめか、じゃあ問題ないか。

 脳内であらゆる疑問にヘルメットを被った猫が「ヨシ!」と指さし確認していく。それと同時に俺の思考材料も減っていき、やっと気付いた。

 

 俺、嵌められてない? ことごとく逃げ場を失っている気がする、と。

 

「また難しい事考えてない?」

 

「……いや、まあ」

 

「今くらい何も考えなくてもいいのに」

 

「まあ、確かに? でも無心ってのもそれまた難しい話でな。常に何か考えるのが癖なんだ。せめて何を考えたらいいかお題でも出してくれ」

 

 まあ、いいか。こうなってるのも俺の日頃の行いってやつだ。言葉や意識の穴を突いて何度も逃れてきたんだ、念入りに逃げ道を潰されていてもおかしくない。むしろよくここまでやったと褒めてやるべきかもしれない。

 それに、俺自身何度もこれが終わったら休もうなんて思ってたんだ。ようやく休める機会ができたと思えばこれもまた。

 

「そうねぇ、じゃあ恋バナでもしましょうか」

 

「随分乙女だな、というかそれ話題じゃないか」

 

「乙女だもの。1人で考えるより、話してた方が気が紛れるでしょ?」

 

「まあな」

 

 膝枕されてる状況で恋バナって、中々にシュールな画だ。こんな事、一生に一回と経験できないぞ。

 

「雅さんの好きな女性のタイプってどういうの?」

 

「……どんなだろう、わからん。少なくとも料理はできて欲しいな」

 

「見た目は?」

 

「特に拘らない。中身重視だな」

 

「……性格は?」

 

「気が合うならどんなでも」

 

 悠里は膨れた。無論わざとやってる訳じゃない、俺自身そういう所はよくわかっていないのだ。だが忍曰く、俺の好みはとりあえず髪が長くてしっかりしていて若干子供っぽい性格が好みらしい。………それを思い出して、俺は真っ先に奏楽が思い浮かぶ。

 

「悠里の好みは?」

 

「そうね……やっぱり頼れる人かしら」

 

「そうか」

 

 それ以降、俺は何も聞かない。聞いた所でどうにもならない、聞けば聞く程俺とは外れた人物像になるとわかっているからだ。

 

「それだけ……?」

 

 だから狸寝入りを決め込む。目を閉じていれば眠れるかもしれないしな。そんな子供染みた作戦に、悠里は見事に引っ掛かる。まるで母親の様に……すっかり伸びて目を覆い隠していた前髪を優しく退けた。

 普段は視界が通るようにある程度別けていたものの、目が合ってないとはいえ顔を見られてるかもしれないと思うと少し気恥ずかしい。

 頬を撫でる手がくすぐったくて、思わず片目だけ開けて不満を見せる。そんな俺を見て、悠里は幸せそうに微笑んだ。

 

「2人共幸せそう……ところでそれ、誰ですか?」

 

 温かな雰囲気から一転、全身を凄まじい悪寒が駆け巡った。一瞬で心臓が跳ね上がり、身体が臨戦態勢に入る。悠里がその声の主に気付くよりも前に、俺は転げ落ちる様にベッドから離れる。勿論自分のベッドに置いてあったナイフは既に握っているどころか、口も使って鞘から抜き放っていた。

 

「あぁ、そんなに驚かなくても……」

 

 ガスッと天井にナイフが突き立てられる。人1人が出入りできる穴を作ろうとしているんだろう、かなり強引に、天板がくり抜かれていく。

 

「悠里、下に―――」

 

 はっとした。あの悪夢の光景が脳裏を過ると同時に、この敷地の内外に無数の敵がいる事に気付く。なんの証拠もない、ただそう“感じる”だけ。今まで敵の殺気を感じ取った事は何度かあるが、ここまでの感覚は初めてだった。

 言いかけたとはいえ、悠里は俺の意図を汲み取って慌てて部屋を出ようとする。

 

「待てっ! やっぱりここに残れ。……入り込まれた以上、下手に動かない方がいい」

 

「そ、そうなの……? でも……」

 

「ここまで回りくどく侵入してきたんだ、事と次第に依れば穏便に済ませられるんだろう?」

 

「流石雅様、全部お見通しですねぇ」

 

 ……さま? 初対面なのによくわからない敬称をつけられ変に引っ掛かるが、綺麗に四角に切り抜かれた天板が外され真っ黒の服を着た女が足から降りてくる、が。

 

「あっ」

 

「……あら?」

 

「………」

 

 鳩尾辺りまで出てきた所で止まってしまう。俺達の前には無様にも穴が小さすぎて引っ掛かってしまった侵入者の足があり、ナイフの切っ先でつついてみようとすると悠里があり得ないレベルの力で手を掴んで止めてくる。

 

「いやこれ今しかないって……! 殺るなら今だって……!」

 

「ダメよ……! 可哀想でしょ……? それにほら、よく見て。この子すごく小さいのよ?」

 

「いや確かに足はちっさいけど」

 

 上を見上げるとまだ引っ掛かってもがいている少女。どうやらコートのボタンか何かが引っ掛かっているらしい。改めてその全身像ならぬ半身像を見分していると、いきなり悠里が俺の目を塞いでくる。

 

「え、何!?」

 

「この子スカートなの!」

 

「この寒い中で!?」

 

「えっそっちですか!?」

 

 俺の反応が予想と違ったのか、思わず侵入者がツッコミをいれてくる。なんだこのネタキャラ、この状況で目を塞いでくる悠里と言い……まともなのは俺だけか!?

 そして一度足やら何やらが天井に吸い込まれて消えると、改めてナイフが突き立てられ足りなかった分の範囲が切り取られる。勿論切り抜いた天板は回収。僅かに粉が落ちたのみである。こいつ解体業者か何かか?

 二度目のチャレンジで、侵入者は勢いよく飛び降りて来た。が、途中でガッとどこかぶつけた音がした。着地までは堪えていたようだが、結構痛かったのか胸元を抱くように押さえている。ついでに若干泣いてる気がしないでもない。

 

「だ、大丈夫?」

 

 もう悠里は持ち前の母性を発揮し侵入者の肩を抱き始める始末。これじゃもう客同然だよ。

 

「大丈夫です、ほんとに。大丈夫なんで……」

 

「なんだコイツ」

 

 ほんともうなんだこいつ。何、その程度の技量でカチコミにきたの? 悠里いなきゃお前今頃死んでるぞ。もう5回くらい殺せる機会あったのに。……まあ罪悪感は半端ないだろうが。

 ようやく顔まで拝めてからわかる。こいつは朝に忍の言っていた『性格超残念少女』に違いない。性格どころか頭まで残念な仕様になっているのは置いておくとして、忍の言った通りかなりの低身長だ。俺の顎までもない。だというのに……

 

「何食ったらそんなになるんだ」

 

「こら」

 

 悠里に叱られつつも、コートの上からでもわかってしまうその膨らみには首を傾げざるを得ない。由紀が見たら泣きそう。押さえてるのにあれか、やべぇな。悠里とそう変わらない感じだが、身長差から随分大きく見えてくる……ってそこは分析しなくていい。いや必要か、胸があるって事はそこに刃物も隠せる。

 女スパイの胸元にデリンジャーがあってもおかしくないのと同じで、何が隠されていてもおかしくない。心配そうにしている悠里を引き離そうと肩に触れる。

 

「そいつが忍の言っていたリーダー格で間違いない。迂闊に近寄るな」

 

「でもこんな小さな子なのに……悪い事をするようには思えないわ」

 

「……頼むから、今は離れて―――」

 

 無理矢理引き剥がそうと、抱き寄せるような形で距離を取らせた時。少女の眼が俺達を捉えた。

 

「っ!?」

 

 神速の居合い。そう思えてしまう程に、何の躊躇いもなく夜戦様に黒く塗装されたナイフが俺の首元を通り過ぎる。

 慌てて悠里ごと後ろに飛び退くが、やはり自分だけではない為に行動が遅れた。尻もちをついた悠里が小さな悲鳴を上げ、俺は首元にある微かな痛みにはっとする。

 

「……浅いな」

 

 辛うじて切っ先が掠った程度。だがその位置はしっかりと動脈を捉え、もう少し踏み込まれていたら確実に死んでいた。豹変した少女に悠里も恐怖を覚えたのか、俺の傷を見てから後ずさりしてしまっている。

 

「私以外の女に触れるなんて……それどころか……」

 

 さっきのネタキャラっぷりはどこへいったのか。言葉の節々から明確な憎悪が見えている。さっきの眼も……まるで底の見えない井戸だ。どれだけ奥を覗き込んでも何も見えなかった。

 

「ふふ、でもいいんです。おかげで貴方の血が……」

 

 切っ先に微かに付着している俺の血を、あろう事かぺろりと舐め取ってしまう。―――こいつ、性格が悪いってレベルじゃない。そもそも感性が、人格が破綻してやがる。

 俺も悠里も、まるで成す術のない怪物を相手にしたようにその場で固まってしまう。どうするのが正解なのか決めかねているというより、単純な恐怖に飲まれている。……恐怖? 俺が、こんな子供相手に怖がっている?

 

「……目的は?」

 

 戦闘の基本は情報収集。ここは基本に則って堅実に攻めていくしかない。

 恍惚とした表情で余韻を味わっている少女は、話し掛けられた事が余程嬉しかったのかまるで好物を前にした犬の様に明るくなる。

 

「私は飛鳥って言います。本当は脱走者の追跡なんですけどねぇ、でもそんなの……もうどうでもよくなっちゃった」

 

 体中に走る危険信号は目の前にいる子供がとてつもなくヤバいと何度も教えてくる。手、足、果てには視線の動かし方。彼女の一挙手一投足全てに得体の知れない要素が十二分に含まれている。

 

「ずぅ……っと見てたんですよ? 忍さんのお話を聞いて、忍さんが逃げて、あのスーパーで合流した皆さんも」

 

「……あの1人だけの男は?」

 

「あー、あれは……貴方の反応が見たくて、いちばんよわかったのでいかせました」

 

 こいつはヤバい。この子供1人で俺達は壊滅する。どれだけ強固な城に、強力な武器を揃えようと……いつの間にか後ろに立っていてもおかしくない。―――そうか、これは。

 

「お前。俺を―――」

 

「ふふふ……気付いてくれたんですねぇ。……私は強くなりたくて、近くに在った強い人を真似したんです。実際には会った事がなくても、忍さんが教えてくれました。貴方の事を聞いた時、すっごく嬉しそうに話してくれたんですよ? 強くて、脆くて。でも堅い意思を持った人の話」

 

「脆いのに真似たのか」

 

 俺なら不完全な存在は許せない。自分なりにアレンジを加えようとするか、そもそも真似なんてしないだろう。

 

「はぁい。だって私が好きになった人ですよ? 身も心も、その人になりたくて仕方ないのは……自然じゃないですか」

 

 それは“好き”とは呼ばない。こうして大元になった俺が違和感を感じる時点で、ただの猿真似に過ぎないのは明白だ。人として生まれて来た時点で、遺伝子と同じ様に人格もまた固有の物になる。例え双子に同じ光景、同じ生活をさせたとしても……どこかで相違点があるのと同じで。

 

「なんですか、その目は。なんで私をそんな目で見るの」

 

「確かに……会った事もないのによくそこまで近付けたもんだ。だが、お前が聞いた“俺”は過去の俺だ。今と昔じゃ半分も……いや3分の1以上違う。―――お前は俺にはなれない」

 

 性別も身長も住んでいた場所も違う。こんな世界になってからは周りに居た人間も違う。例えどれだけ上手くコピーしようが、俺が今まで積んで来た経験までは真似られない。さっきの居合い抜き、ここまできた方法、それらは過去に俺がやってきた事だ。

 しかしこいつは天井で引っ掛かったし、一撃で俺を仕留められなかった。そこが俺との違い、真似ただけじゃ所詮下位互換程度にしかなれない。

 

「……なんで、そんな事言うんですか」

 

 次第に声が小さくなっていく。ぶつぶつと独り言を呟くその節々には「こんなに好きなのに」とか「ずっと待ってたのに」だ。勝手に真似て、勝手に期待して、勝手に裏切られたと思っている。……憐れだな。

 

「……そんなの、私が目指した人じゃない」

 

 ほら出た。こういうの特有の結論。痛いほどわかる、本当に耳が痛い。だって……昔の俺はこうだったんだからな。

 

「殺してやる……」

 

「いいぞ、来い。女だからと言って容赦はしない。片腕もぎ取られようが鼻を折られようが後悔するなよ」

 

 あぁ、また彼女の……飛鳥の眼が変わった。どす黒い……へどろの様で、いつまでも纏わりついてくる嫌な眼だ。瞳孔の奥に光なんてない、それは俺も同じだが……こいつの眼は本物である俺より本物らしい眼をしている。

 一瞬にして目が見開かれた。それは突進の合図、走り方も、ナイフの構えも同じ。違う所は片方の腕があるかないかだけ。

 

「がうっ!!」

 

 まるで獣だ。白と黒の刃が室内に火花を散らす。甲高い金属音以外には飛鳥の唸りと息遣い以外何もない。そこもまた俺とお前の違う所だ。

 剣戟はほぼ互角のまま。20、30とナイフが打ち付けられる。しかし凄い、こいつの動きは本当によくできている。古い鏡を見てる気分だ。

 

「ふふ、ふふふ……やっぱり一緒だ! ほら一緒ですよ!? ほら、右、右、次は左で、フェイント入れて下から……」

 

「よく読めるもんだ」

 

 俺達は一切防御なんてしていない。たまたま攻撃するところが同じで、角度も、持ち方も全てが同じ。だから必ず互いのナイフが弾かれる。なるほど、確かに一緒かもしれない。

 

「ぜんぶいっしょ……私たちは、おなじなんですっ!」

 

「そういう所だぞ」

 

 全部同じなんてある訳ないだろ。その証明の為にも、一息で距離を詰める。ナイフすらまともに振れない、本当に触れる程の距離。身長差もあって、彼女の違う意味で見開かれた目を俺が見下ろす。

 そしてナイフを逆手に持ったまま、振りかぶってすらいないアッパーが顎に直撃する。勿論刃は自分の方に向けてある、こういうのを単に殺してちゃ面白くないからな。

 

「あぐっ……!?」

 

「ほら」

 

 目の前に来た額に全力の頭突きを入れて、更に前髪を掴み横腹に膝蹴り。重心がブレた所に足払い。完全に体勢が崩れた少女の髪を掴んだまま足も使って床に叩き付ける。

 衝撃で苦しそうに肺の空気を外に出した瞬間、更に腹にストンプ。横腹を蹴って転がして悠里との距離を稼ぐ、と俺なら転がりながらなんとか立つと思って一歩踏み込んでの後ろ蹴り。予想通り起き上がろうとした少女の側頭部に命中する。

 

「雅さんっ!! やり過ぎよ!!」

 

「加減すればこいつの為にならん。それに最初に言った筈だ、容赦はしないと」

 

 とはいえこれだけ打ち込んだんだ、勝負あっただろう。落ちていた鞘を拾いナイフをしまうと、ぴくりとも動かなくなった少女の様子を見る。……死んでないよな? いやでも結構手応えあったし本気ではないにしても急所に入れまくったしな……どっか折れててもおかしくないどころか内臓逝っててもおかしくない気がしてきた。

 首元を触ってみると、変わらず脈がある。戦闘後故に滅茶苦茶早いな。……むしろどんどん早くなってる?

 

「寝てりゃ可愛い顔してんのに、なんであそこまで狂ったのか」

 

 どくん、と少女の脈が跳ねた。こいつ―――

 

「がぁっ!!!」

 

 文字通り飛び起きた飛鳥の手には変わらずナイフが握られている。その狙いは確実に俺の首、今度は間違いなく殺しにきている。……が、甘い。

 俺がナイフを持っていない素手の状態ならば、むしろ関節技が使えて無力化には丁度いい。手首を掴んでやると無理矢理リストロックに持ち込む。筋力が弱い分、この技は効きやすい。

 狙い通りにナイフが手から離れたと思ったら、そのまま突っ込んできてラリアットをしてくる。体重がない分威力は皆無だが、真の狙いはその後だったらしい。

 

「貴方は絞め技ってご存知です?」

 

 ラリアットで首に手を回すと、即座に背後に回り膝裏に蹴りを入れられて体勢を崩される。膝立ちの状態になってしまったがまだ肘打ちで脱出できる。息が続く内に左腕を動かそうとすると、飛鳥は俺に背負われる形で密着してきた。脚もしっかり脇下に回し、可動域を奪ってくる。

 こうなるともう脱出方法は限られる。さっき落とさせたナイフを使うか、どちらかに倒れ込むか、顔面があるであろう位置に向けて殴るか。無力化する、という目標もあり最初のは無しだ。

 

「あ、そこの人近付かないで。少しでも動いたら首折るよ」

 

 となれば、一番確実でやりやすい選択肢を選ぼう。膝立ちから上手い事立ち上がり―――

 

「うわっ!?」

 

 そのまま前方向に倒れ込む。深くお辞儀をする様に、飛鳥の頭が俺より高い位置にあるのを利用して―――

 

 ごすんっ。鈍い音が立て続けに2つ響く。俺の頭には凄まじい衝撃が加わり、文字通り星が見えた気がする。首を絞めてた方も、これの半分は痛い思いをしてるだろう。流石に2人分の体重を片方に集中すれば頭が弾けるかとも思って最初に自分の頭で衝撃を吸収したが……威力が弱かったか? 滅茶苦茶痛いし。

 そんな不安も、首に回されていた腕がだらりと垂れ下がったのを見て払拭される。ゆっくりと背中から退かすと、額から血を流している。

 

「やり過ぎたか……?」

 

 今度は完全に気絶している。脈はあるが、脳震盪で済んでいないかもしれない。

 

「でもこうしなきゃ殺されてたわ……仕方ないわよ」

 

 悠里が俺の額をハンカチで拭う。そっちにもべっとりと血が付いていて、見た目だけでは俺の方が重傷だ。

 そして流石に暴れ過ぎたのか階段を駆け上る音。次の瞬間には勢いよく扉が開き血相を変えた忍と胡桃がこの惨状を見て目を白黒させている。

 

「誰その子!?」

 

「やっぱ飛鳥かぁ」

 

 2人共言葉は軽く思えるが既に臨戦態勢に入っている。双方目が血走り、忍に至っては黒い方のナイフを部屋の隅に蹴って俺のポーチから結束バンドを取り出し拘束の準備に入っていた。

 

「足だけ縛れ。シノ、監視はどうした?」

 

「クッソ寒いんで休憩中だった恵比寿沢達とお茶してた」

 

 こいつッ……まさか忍を突破して来たのかと心配した俺が馬鹿みたいだ……まあ無事なだけマシか。

 見るからにイラッとした俺を見て、忍は申し訳なさそうに俺を見る。

 

「すまん、俺が見張ってればこいつが入ってくる事もなかったんだよな……」

 

「いや、いい。お前じゃこいつには勝てなかった」

 

「うそ、俺の信用なさすぎ……?」

 

「違うって。こいつ滅茶苦茶強かったんだって」

 

「でも勝ってんじゃん」

 

 見るからに辛勝の状態だろ。あと一歩及ばなきゃ確実に首取られてた自信あるってのに……ああそれより現状確認しなきゃ。

 

「くるみ―――」

 

「坂上とイツキ以外は食糧庫に避難してる。イツキは玄関、坂上はリビングの窓を警戒中だぞ。あたし達の武器も部屋の外に置いてある」

 

「……パーフェクトだ胡桃」

 

「へへっ」

 

「感謝の極みって言えよ」

 

「えっ、なんだそれ」

 

 これがジェネレーションギャップって奴かぁ、悲しいなぁ。いやでも、あれもそこそこマイナーな部類に入る作品だし仕方ない気もする。

 

「あの……皆?」

 

 顔だけガチで軽口が出てくるこの豪胆さに、悠里が困惑している。俺と忍がこれなのはともかくとして、胡桃までもがこうなっているのはヤバい。こうなってはもう一端の兵士と言っても過言ではない。

 戦闘中はこの世の終わりに直面していたかの様な顔をしていた悠里。この場の雰囲気に飲まれて落ち着きを取り戻したのか、いつの間にか窓際で外の様子を伺っていたらしい。

 

「……男の人が2人きてるわ」

 

「ん? 人質の交渉か?」

 

 確認の為にも悠里を少し下がらせて片目だけ窓から覗かせる。窓の外、正面の門を乗り越えてきたんだろう。金属バットと木刀を持った男2人が余裕綽々といった面持ちで近付いてきている。

 

「あいつらは……」

 

 顔までは覚えていないが、あの得物……夢に出て来た奴らと同じだ。

 

「知ってるの?」

 

「いや知らん。だが油断はできない」

 

 立ち振る舞いからもわかる。ただの凡人とは思えない。今まで生きてきた以上どいつもこいつも普通じゃないのは当たり前だが、夢でボコボコにされたからここまで警戒している、という訳でもない。あれは……そこで伸びてるヤツよりはマシだろうが忍の戦力と同等、もしくは少し劣るレベルだ。

 

「シノ、これから一戦交えるかもしれない」

 

「いいけどさ、ミヤは大丈夫なのかよ。肩の怪我に加えて消耗してんだろ? 一先ず俺だけで様子見るってのは―――」

 

「無理だ。数的優位を取られてる上に速攻掛けてくるタイプにしか見えない。それに戦力の逐次投入は愚策だろ?」

 

 忍は少し考えると、「まあな」と言って廊下に出て武器を取ってくる。相も変わらず武器は俺が補強と改造を施した木刀。改良した3本の中で一番出来のいい真打ちの様な扱いでもある。

 それが未だに使われてると思うと……感慨深いな。今度新しく作ってみるのも悪くない。

 

「そういやミヤのは折れたんだっけ」

 

「俺は扱いが雑だからな」

 

 ボヤきながらもコートやらポーチやらといつもの装備を装着する。そして斧を手に取ろうとした時……

 

「まあ待てよ、今回斧は置いてった方がいいと思うけどな」

 

「ん? まあ対人だしな、威力より手数がある方が有利ではあるが」

 

「ミヤは元からナイフ向きだろ?」

 

 いきなりなんだ? 持っているナイフも殆どが長くても刃渡り20cm程度で戦闘にはあまり使えない。最近手に入れたばかりの剣鉈も、やはり元が鉈というのもあって重さも運用方法も違う。

 

「こんなのがあるんだけどよ」

 

 取り出す時、ちゃり……と金属音を出しながらいくつかの黒い布製の束を出してくる。受け取ってみると思ったより重量があり、それが1つや2つではないとわかる。

 巻物の様に束ねられた3つをベッドの上に広げてみる。……それらはいくつもの持ち手が付いている様に見えるが。

 

「ほう」

 

 その中の1本を抜いてみると、思わず声が出てしまった。重量も重心も考えられた、諸刃のナイフ。刃渡りはかなり、というか超長めの25cm程で、投げれば上手く回転してくれるとわかる。

 

「5本で1束、俺も持ってはいるけど使いこなせなくてなぁ。使ってみたけど耐久性も切れ味も保証するぜ?」

 

「いいじゃないか。投げナイフは威力の面で劣るが痛みを怖がる奴にはよく効く、それが15本ともなれば投げずともかなり怖いな」

 

「ミヤなら1本で必殺だろ?」

 

 流石にそれは買いかぶりだ。……でもこれがあれば、もしかすれば勝利への切っ掛けにはなるかもしれない。

 

「……1本プラスアルファなら、行ける」

 

「じゃあもう必殺だな! よっしゃ行こうぜ。あ、ついでにこれもやるよ」

 

「まだあるのか」

 

 忍はまた違う大きさの袋を渡してくる。歩きながらも中を覗いてみると、10枚綴りのオーソドックスな手裏剣。

 

「いいねぇ……ノーコンだけど数撃ちゃ当たるとも言うしな」

 

 それに手裏剣は過去に投げた事がある。搦め手が使える程の技量はないが、単なる牽制かはったりにはなるだろう。

 投げナイフに手裏剣、それぞれを身体中に括り付けていく。ただでさえポーチやライトなんかが付いてると言うのに、こここまでくると人間武器庫なんて言われてもおかしくはない。右腕に付けていたL字型のライトをバッグのベルトに付け替え、空いた場所に1束のナイフを付けてみる。というかこれ重い、間違いでも脚なんかに巻いたらいつものスピードは出ない。

 

「……なんか降ろしたらどうだ?」

 

「これでも最低限必要な物しか付けてないんだけどな」

 

「最低限……? つか装備重量どんだけあるんだよそれ」

 

「重くても15kgくらいじゃないか?」

 

 忍は呆れている。一昔前なら俺は本当に最低限の装備が主流だった。それは最低でも2人で行動する事が基本で、尚且つ拠点があって食事や睡眠はそこに戻ればいいという環境だったからだ。

 しかし1人になってからはそうもいかない。時期も時期でほぼ漁り尽されている地域もあり、常に移動しなければならない。戦闘も自分の苦手な所は誰かに任せるなんて当然できず、嫌でも万能にならなければいけなかった。

 雑貨や消耗品に医療品、リーチと威力のある長物に閉所用のナイフ。本当の最低限はこの程度になってくるが………確かに持ち過ぎかもしれない。でも重いとは言え今はこの重さに慣れている。スピードもスタミナも従来と変わらないぐらいだ。

 

「ん? さっきノーコンって……じゃあナイフも無理って事か?」

 

「ナイフは別にいけるが。というか棒状ならいける」

 

「なんだその限定解放スキル、ピーキー過ぎんだろ」

 

 そんなの今更言う事じゃないだろ。俺をパラメーターで表せばかなり尖った性能になるのは分かり切っている。苦手な分野も火力や勢いで乗り切ってるようなもんだ。低コストで高火力だけどHPが低い、加えて特定の状況になると火力が上がったり即死したり……客観的に言えば博打過ぎて使いたくない。

 

「そんじゃ、待たせるのもアレだし……行きますかミヤさん?」

 

「だな。久し振りの共闘だ」

 

「かっこいいとこ見せましょ」

 

 どちらからともなく拳を突き出し、フィストバンプをする。そんな俺達を見て、胡桃と悠里はくすりと笑った。

 

「っしゃ! じゃあ今回はあたしも……」

 

「気合い入れてるとこ悪いが、今回胡桃はお留守番だ」

 

「はぁ!?」

 

 胡桃はずかずかと俺の目の前まで詰め寄ってくると、顎先で「なんでだよ!?」と抗議してくる。

 

「お前人殺せんの?」

 

「こ……殺す、のか?」

 

「当たり前だ。場所が知られてるのに生かして帰せるか。もう既に少数が報告に戻ってるかもしれないが、数を減らしておくという面でも……皆殺しにしなきゃならない」

 

 俺達の中で生身の人間を殺した事があるのは知る限りでも3人。俺と、イツキと、忍。ああ、前悠里がナイフで滅多刺しにしてたか……でもあの1回限りで、実際に止めを刺したのは俺だからノーカンだな。

 そして本当の意味で殺したのは俺と忍だけ。イツキは銃だからノーカンだ、指さえ引いて狙いが正確なら一瞬でケリが着く。だがナイフや鈍器で殺すのは、銃とは比べものにならない。肉の感触、相手の呼吸が止まる瞬間、何より死んだ後の表情、全部降りかかってくる。

 

「シノは? 殺せるのか?」

 

 忍は何も言わず、明後日の方向にある虚を見る。……つまりこの中で割り切れてるのは俺だけかもしれない。精神状態が悪化すれば内乱の切っ掛けにもなる。嫌がる事を強要すれば人望も落ちてしまう。

 せめて、「あれは仕方なかった」と思えればマシだが、平和な世界を知っていた分抵抗も大きい。

 

「……殺せる」

 

 その言葉を発したのは、他でもない悠里だった。全員の眼が悠里に集まる。肩を抱き、怯えながらもなんとか振り絞った言葉だとわかる。

 

「もう……見てるだけなんていや……」

 

「さっきのか。あれは俺も加減してたから負けかけたんだ。それに誰が殺せると言っても、俺は忍とイツキ以外に人殺しをさせる気はない。そういうのは自分か、自分より弱い奴が今にも死にそうな時だけでいい」

 

「でも―――」

 

「客を待たせてるんでな、今回胡桃は留守番、これは決定だ。行くぞシノ」

 

 無理矢理話を終わらせて足早に部屋を出る。忍も少し遅れて出てくると、急いで俺の隣に並んできた。

 

「いいのかよ、あんな強引で。つうか変わんねえな、一度決めたらてこでも動かねえの」

 

「じゃあ女に人を殺せって命令しろと? 俺はそこまで落ちぶれてねえよ」

 

「初めて殺した時……ミヤは何にも気にしてなかったよな。狂ってると思ったぜ、でも実際は違った」

 

「……昔の話だ」

 

「2人目には笑ってた」

 

「なんだ? 喧嘩売ってんのか?」

 

 流石の俺でもイラついて睨むと、忍の瞳は憐れみが浮かんでいた。なんだその瞳は。

 

「殺したくねえなら他の道もあると思うけどな」

 

「ねえよ。他人を信用できる程聖人じゃねえからな、面倒事を避けるならいっそいなくなってくれた方がマシだ。無秩序状態の今、生きてる人間ってだけで面倒な臭いがプンプンする。有益な情報だけ貰ってなっがい休暇くれてやった方がいいだろ」

 

 俺は変わらない。それがわかったのか忍は憐れみのこもった瞳を伏せる。

 

「はぁ~……ったく神はいねえのか」

 

「休暇取ってベガス行ってんだろ」

 

「担保はこの世界か?」

 

「ボロ負けしてんだろうよ、じゃなきゃこうはならない」

 

「ハッ、笑えるぜ……」

 

 全く笑ってないが。

 冗談を言い合っている内に、俺達は扉の前に立つ。大きくて、立派な観音開きの扉……これがあの世への扉になるか、栄光への扉になるか。

 

「どっちだろうな」

 

「あぁ? 何の……あー、いや。アレだな、そういうのは自分で掴み取るもんだぜ、ミヤさんよ」

 

「取りこぼしそうだ。なんせ片腕だからな」

 

「いんやちゃんと両腕あるぜ? ―――俺がお前の右腕になるっつったろ」

 

「……そうだったっけ? シノが言うなら多分そうなんだろうけど」

 

「多分じゃなくてそうなんだっつの、これだから孤高気取ってる中二病は……」

 

 軽く膝裏に蹴りを入れてやると扉に手を掛ける。これにて余興は終了、そしてこの扉は……少なくとも俺達か敵への地獄の扉になる。

 

「ぶちかまそうぜ、ミヤ!」

 

「まあやるなら本気でやろうか? そっちの方が……」

 

「楽しいだろうからな」

 

 頷き合うと、2人一緒に扉を開く。

 

 

「撃て」

 

 

 そして号令は唐突に―――




がっこうぐらし終わっちゃいましたね……私は今日最終巻を買ってきました、まだ読んでいませんが。

果たして雅は悪夢を打開できるのか? 次回も早めに出したい所ですが期待なさらぬようお願いいたします。

と言う事で次回「27.比翼の鳥」は雅と忍の連携が光ります。
そして遂に雅の本気が出てきますので、熱い感じになったらいいですね。

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