がっこうぐらし!―Raging World―   作:Moltetra

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全キャラ分書こうとすると長くなってしまうので2分割です。
ラッキースケベはありません。ポロリも当然ありません。


15.お風呂・前編

 「で、順番どうすんだ? 早い所決めないと雅がキレるから、さっさと決めようぜ」

 

机を囲んだ一同は、それぞれが重苦しい表情のまま腕を組むなり唸るなり……

一名は読書に励んでいるが、ほぼ誰もが重大なその順番に際し悩んでいた。

 久し振りの入浴。日頃から体を拭いたり髪を洗ったりはしていたが、使っていたのは雨水か川の水。

冷たい所為で泡立ちも悪く、特に洗剤も易々と使えない為に何日かごとに制限があった。そんな状態で風呂に入ればどうなるか?

 軽く言えば、いい出汁が取れるに違いない。

 

「常識的に考えれば一番の功労者で尚且つお湯を沸かしてくれた雅が最初に入るべきだよな」

 

「そうね、でも彼は入らないらしいわよ」

 

「え、なんで?」

 

「傷があるからって。それに入ったとしても皆入りきる頃には湯冷めしちゃうわ」

 

「あぁ、そっか」

 

 だとすると、男が先か女が先か。二番目の功労者としては悠里かイツキ、次点で胡桃自身。

そう考える胡桃だが、些か男が入った後の湯船に浸かりたいか、と考えると……イツキには悪いけど、ちょっと気になる。

 けどあたし達が浸かった残り湯を堪能されるとなると……それも嫌だ。イツキならそんな事はしないとわかっているし、胸を張ってないと言い切れるけど。

けど! なんか嫌だ。

 

「じゃあここは王道的にじゃんけんで!」

 

「いや待て由紀。ここはよく考えないと……」

 

「あの……私が来てからもう10分以上経ってるから……」

 

「でもよく考えないと!」

 

「じ、じゃあですね。こうしましょう!」

 

 自分が渦中にある。そう悟っていたイツキは、意を決して今にも暴れ出しそうな胡桃に進言する。

 

「僕 は 入 ら な く て い い で す」

 

「却下ぁ!!」

 

「なんで!?」

 

 自ら身を引く。私の為に争わないで的な事を言うには気が引けたが、イツキは暖かいお湯に浸かるチャンスを文字通りドブに捨てた勢いだった。

なのに、渦中へと引きずり込んだ張本人とも言える胡桃がそれを弾いた。それはいけない、人間的にどうか、と。

 

「イツキはあたし達を守る為にいつも巡回や警戒、遠征? にでてくれてるだろ? だから入らないなんて言われたらあたし達が入りにくくなる。気持ち的に」

 

「えぇ……」

 

 何より残り湯を気にする人が言う台詞ではない。イツキは心から真に感じる矛盾を短い反応で示すと、悠里達を苦笑させた。

 

「胡桃? 私達は学園生活部、部員は家族みたいなものでしょ? 胡桃だって雅さんを兄貴みたいだとかイツキ君を弟みたいだ―――」

 

「あああああぁっ!! それは言うなって! そ、それに家族でも異性が入った後は気にするもんだろ!?」

 

「全然? なんなら一緒に入ってもいいけど」

 

「ない! それは絶対にない!」

 

「えー。胡桃ちゃんはイヤなの? 私は弟がいたら一緒にお風呂入ってるよ? いないけど」

 

「私もです。勿論ある程度成長したら一緒には入りませんけど」

 

 風呂の順番を決める話し合いはどこへやら。女子というものは目的を忘れて話し込む割合が高い。

それが世の井戸端会議という情報網の発達に貢献し、主婦の恐ろしさを際立てる。

 そんな馬鹿みたいな話を、イツキは以前雅から聞いていた。女を舐めるな、奴らは怪物だ。

そこらの心霊スポットより身近で、破傷風より酷い有様を何もしなくても引き起こす。

 ……本当だ。現に、今彼女達は外で待つ雅さんの事も忘れて兄弟がいたらどうなるのか、みたいなガールズトークに発展している。

肩身が狭い思いをしながら、唯一あまり話の輪に入らずおどおどする悠里さんに目配せしてみる。

 私だってどうにかしたい。むしろどうにかしてくれ、というような……というか半分くらい涙目になった悠里さんはむしろ助けを求めてきた。無理です。

 

「まずだな、兄貴がいたとしても雅みたいな性格には絶対ならない! つうかどんな経験したらあんな風になんだよ? 文武両道、みたいなさ!」

 

「さあ、聞いてみたらどうですか。多分はぐらかされておしまいだと思いますけど」

 

「私もお兄ちゃんなら雅さんみたいな人がいいな! あ、でも可哀相だから腕はあった方が良いけど……」

 

「そりゃそうだろ……というかそれはタブーだ。でもだからこそ渋いというか……あ、いやなんでもない」

 

 数分もしない内に話の趣旨が変わってきた。やっぱり、女子というのは恐ろしい生き物なんだな……とイツキは学習した。

それより、男がいる内に女子会みたいな話題を出さないでほしい。

 そもそも何故残る唯一の男である僕の前でそんな顔を赤らめたり照れたりするのか? わかっているけど悲しいし、野暮ってものだ。

かといってこの場を立ち去ろうとすればそれはそれでまた波風が立ちそうだ。だからと言ってここに残れば、それもそれで波が立つ。

 結論からして、諦めるしかない。

 

 

 全てを諦め瞬きと呼吸のみに精神を集中したイツキと、暴走した胡桃達をどう抑えようか困惑する悠里。

そしてあえて何も言わず適当に楽しむ美紀に、完全に勢いに飲まれ目的を忘れた由紀。

 

「……なにこれ」

 

 そんな喧噪を窓の外から眺める雅の頭には微かに雪が積もっている。

遅い、遅すぎる。燃料と水も無限ではない。いつになったら最初の1人がくるのか?

そう思い立って言いに行こうか迷って5分。

 ぱちんと薪が爆ぜた音で心を決めてずんずんとここまで来たが、この混沌とした現場を見て若干の苛立ちも忘れてしまっていた。

 

『おいゴルァ!! 出てこいやオルァ! タオル持ってんのか!? おう、石鹸は? よおし最初の1人こいやオルァ、俺の背中に付いてこい』

 

 と、若干キレた様子でからかってやろう。若干眉を寄せた状態のまま、小声で予行演習してたのに。

 

「おい」

 

 コンコンと窓を叩くが、ヒートアップしている一団はそのような音には気付かなかった。

イツキの視線はこっちに向いている、だから気付くはずなのに、うんともすんとも反応しないどころか目が死んでいる。

 

「おーい」

 

今度はもう少し強めに、4回程叩いてみる。すると美紀がこちらに気付き、目が合った。

 

『いまかいぎちゅうです』

 

「いや、会議たって時間かかり過ぎなんだよ。風呂冷めちまうぞ」

 

『くるみせんぱいにいってください』

 

「じゃあ胡桃にこっち来いって言ってくれ」

 

 拙い読唇術を使って美紀と意思疎通する。美紀は俺の言葉にこくりと僅かに頷くと、ぴっと俺の居る窓を指さす。

すると、1人興奮状態だった胡桃の顔がこちらを向き、目が合った。

 

「―――!?」

 

いやなんでそこまで驚くし。つうか顔赤くね?

 

 ずかずかと窓まで歩み寄った胡桃は窓の鍵を開け、割れるんじゃないかと思うくらいの力で開く。

 

「なっ、な、なんだよ!!?」

 

真っ赤な顔で獣が吠えるが如く凄まれた。そのおかげで、俺が計画していた文章はすっぽりと抜け落ち、柄にもなく「いや、あの」と詰まる。

 そして最終的に口に出たのが……

 

「はやくして?」

 

という情けない嘆願だった。

 

 

 

 数分後、お風呂セットを携えた1番手が露天風呂『雅』へと訪れる。

 

「ごめん、お待たせ……」

 

「何してたんだ、えらい遅かったな」

 

「うん……ごめん」

 

 ぼそっと謝罪した胡桃は、惜しげもなく服を脱ごうとし始めた。

 

「あっ待て!」

 

「え?」

 

「まず湯につかる前に体と髪を洗って貰う。臨時の衝立作っといたから、その向こうで適当にやってくれ」

 

「え、これ作ったのか?」

 

 洗濯物を干す支柱に物干し竿をセットしてシーツをかけただけ。そんな簡単な物をいくつか設置できる位に暇だった、というだけだ。

半ば嫌味みたいなもので作ったが、思いの外役に立つとわかった。

いくら見る気もなければそっぽを向いているとは言え、振り向けば桃源郷の状態は実に勿体ない。

 日本人特有の勿体ない精神を発動させない為にも、一苦労掛けてじゃなきゃ拝めない状態を作り出したのだ。それに彼女達もいくらか気が休まるだろうしな。

建物の壁際にV字に設置したそのスペースであれば、もう覗けるのは空に浮かぶ星くらいなものだ。

 風呂自体もそうしてやりたかったが、生憎資材も足らなければ引火すれば大惨事になる。

この風呂はバスタオル可なのでどうか許してほしい。

 布1枚を隔てた空間。そこそこの距離があるというのに、この静かすぎる空の下では衣擦れの音1つ1つこの地獄耳が捉えてしまう。

ああ、チャックの音、ホックを外し、タイを外したか。

 音だけでも制服の構造が手を取るように分かってしまう。嫌だな、何故よりによってこんな才能が突出してるんだ?

 

「なあ、雅」

 

「なんだ、胡桃」

 

小石で地面に数字を書いてみた。2、3、5、7、11、13、17、19。やがて手が届かなくなる所まで書いて、ようやく足音に気付き視線を上げる。

 そこには橙色の光を浴びても尚、白いと言えるような肌の色をした足。綺麗な物だ、だがよく見れば所々擦りむいた痕やマメの痕がある。流石元陸上部、と言えるな。

そこから上は、陸上部ならではの筋肉を付けた脚……うん、これならあの速さも納得だ。

 そんな感想だけを頭で考えて、ようやく白いバスタオルが視界に入った事に安心して胡桃の顔まで見た。

 

「い、今足見なかったか?」

 

「そりゃなぁ、もしタオルがなかったらヤバいだろ? それより……体冷やすぞ、さっさと入れ」

 

「それより!」

 

「それより?」

 

 体が冷える事より大切な話があるらしい。ハイキングシューズの靴底で素数達を消し去ると、いつもの真面目な雰囲気で胡桃の言葉を待つ。

もじもじ、ちらちら。可愛らしい仕草だな、だが奥底には恐れ……恐怖も混じっている。

 

「あの……とりあえず、見て欲しい」

 

「悪いが子供の体には興味無くてな」

 

「う、うっさい! いいから見ろって!」

 

 さっきよりも気迫のある凄みを受け、俺は若干引き気味で言葉に従った。

胡桃は右腕に当てていた手をどかすと、そこにあるまだ新しい傷口を見せてくれる。

 

「……なっ」

 

柄にもない。この俺が、面食らってしまうなんて。

この時が、こんなにも早く来てしまうなんて。そう絶望しかけて、俺はその違和感に気付いた。

 その傷は、新しくもあり、古い。通常噛まれるなどして感染すれば、1日と持たずに“成る”。

だから傷が治癒しかけている……もとい止血済みの傷はあり得ない。

なのに、胡桃の傷は血が止まっていて―――それも皮膚が治癒している。それはどういう事か?

感染していないのか? 噛まれただけで、運が良かったのか?

 

「触ってみて」

 

 いつの間にかすぐ目の前で見つめていた俺の手を取り、首へと触れさせてくれた。

……冷たい。まるで雪の様な、でも脈は微かにある。完全に冷めきっているかと言えばそうでもなく、よく集中してみれば微かな温かさはあった。

 

「雅も、冷たいな……ずっと外にいたからか?」

 

「いや。俺も似たようなものなんじゃないか?」

 

「……たまにさ、自分が自分じゃなくなる時って、ない?」

 

「それは、どういう?」

 

 いまいち芯を掴めない。そんな反応を見て、胡桃はふふっと笑った。

 

「……じゃあ大丈夫。雅は、大丈夫」

 

「待て、どういう意味だ? 胡桃!」

 

 すぐさま手を放して離れて行ってしまう胡桃に再度手を伸ばす。だが、それも躱されて風呂を挟んでせめぎ合う形になってしまった。

 

「あたし風呂入るから」

 

「あ、ああ……なら入りながらでいい、今の意味を―――わからないんだ、だから教えてくれ。お前は一体何を考えている」

 

 もうもうと立ち昇る湯気の先に見える胡桃の笑顔は、酷く儚かった。やろうと思えば、このドラム缶を押し倒して火も踏み越えて胡桃に聞きに行く。

皆には土下座してまた明日風呂を沸かせばいい。

そうしてやろうかと手を伸ばす。だが、その途端胡桃の顔は哀し気に歪む。これ以上近寄るな、そう言われている様で……俺は胡桃が引いた一本の線を越える気になれない。

 

「やめてよ、そういう顔。あたしなんかにそう必死そうな顔すんのさ」

 

「なんかとは何だ。俺はお前の為なら必死こいてやる、いくらでも……仮に死ぬとしても」

 

「駄目じゃん。雅がそうしようとした瞬間あたし怪我しに行くからな、そしたらコート貰うって約束しただろ」

 

「そんなものくれてやる。コート一枚でお前が生き残れるのなら安いものだ。残りの腕だろうが足だろうが、両目抉られてでも俺が護ってやる」

 

「……やめてよ、そういうの」

 

「いいや止めない、俺が死ぬまでこの体いくらでも使い潰してやる。その為に俺は―――」

 

「やめろって言ってんだよっ!!」

 

 悲痛な叫びは、怒号として出そうとしたものだったらしかった。

 

「あたし! あたしもう殆ど感覚がないんだ……寒さも、痛みも、眠る度に悪夢も見て!」

 

ぼろぼろと涙を流しながら、今まで溜め込んでいた物を吐き出していく。そんな姿を、俺はただ無表情で見つめていた。

 悲しそうにすればいい? それとも優しく微笑むのが正しいのか?

どちらも確証がない。だから俺は今見ている現実を、ありのまま受け入れる。

感情なんて、思考を乱すだけだ。怒りは効率性を失う原因になり、幸福感は慢心と油断を生む。

喪失感は自棄になるし、じわじわと弱っていく自分への感想も……まあなるようになる、くらいしか思っていない。

 

「どんどん人間じゃなくなっていく……このままじゃきっと、奴らみたいに! あんなのになったら……もうりーさん達やお前といられないっ! そんなの……いやだよ」

 

 やがて幼子のように泣き出した胡桃を前に、どうしたものかと髭剃りをサボってチクチクする顎をさする。

こういう風にありのままの感情を出されると弱い。殴り掛かってくるならともかく、頭を使って正解を導き出すには向いていないからだ。

 

「言いたい事はそれだけか」

 

「……な、に?」

 

「それで終わりか? 溜め込んでたもの全部吐き出したか? それなら結構だ、順を追って解いていこう。まあとりあえず風呂に入って体を温めるといい」

 

 鳩が豆鉄砲食らったような顔で、胡桃は渋々風呂に入った。その前に俺は視線を火に移していたし、入る様子は全く見ていない。

当然だ、足場は作ったとはいえ入るにはそれなりに大きな動作が必要になる。その際に緩んでたタオルがはらりと落ちてみろ、俺は死ぬ。

 

「感覚がない、というのは厳密にどういうものかわからんが、俺も心当たりがある。寒さ、痛み、悪夢。俺もある、お前だけじゃない」

 

「悪夢……は聞いてたけど、痛みも?」

 

「寒さは確かにあまり感じないな。痛みは元々鈍いのもあるからどうだかわからない。……一番は空腹感、食欲だ」

 

「食欲……」

 

「そうだ、俺は1日1食しか食べない。それしかいらないし、必要がない。味も前よりか薄くしか感じないな、胡桃は?」

 

 落ち葉をいくつか火に放り込む。胡桃は度々鼻をすすりながら、うーんと考えた。

 

「あたしも、あんまり」

 

「なら大丈夫じゃないか? 俺も医者じゃないから言い切れないが、少なくとも俺とほぼ同じ状態にある。もしかしたら、成る時は一緒かもしれないな」

 

「それ、りーさん滅茶苦茶困ると思うんだけど……」

 

「確かにそうだな、戦闘員が一気に2人も死ぬとかなりヤバい」

 

 2人して冷ややかな笑いで誤魔化しながらも、また本筋に戻る。正直、今自分がどんな状態なのかはさっぱりわからない。

もしかすれば、明日にでも意識を喪失して仲間を喰いに掛かるかもしれない。

逆に、今後死ぬまで若干人間止めてる状態のままかもしれない。

 文字通り手探りだ。それを嫌い、しっかりと検査が受けられる場所を探すとすれば……それは件の組織、ランダルコーポレーションへと繋がる。

となれば、道は1つ。

 

「……まあ、なるようになるさ」

 

「適当だなぁ」

 

涙を拭いながら、胡桃は苦笑した。俺の適当さ加減に呆れたのか、小さな笑いが後から零れてくる。

 

「それしかない。出来る限り皆と一緒にいられるように……星に願ってでもみるか?」

 

「流れ星でもあればするかな」

 

「俺は祈らないなぁ、趣味じゃない。困った時の神頼み、だなんて言うし、祈るってのは諦めた奴がする事だと思うから」

 

「なにそれ、なんか恰好いいな」

 

「だろう?」

 

 2人して空を見上げてみる。胡桃の言う、人間から離れていく感覚。自分が人ではなくなり、そこらをのそのそ歩くあいつらと同じになる……そう考えると、確かに怖い。

解決策はあるか? あの薬をまたキメりゃいいのか? 全く分からない。

それこそ、このウイルスを作った奴らか神くらいしか知らないだろう。

 そんな状態で、俺達にできる事なんて……逃避するか諦めるか、俺の場合諦めてる訳だが。

 

「……星、綺麗だな。あ、あと月……とか?」

 

「ああ。……月? 今新月で月は見えないぞ」

 

「あ、あーそうだな、うん。そうだった」

 

「大丈夫か?」

 

いきなり月が見えるとか言い始めたら本格的にヤバいと思ったぞ。

ともあれ、なんか落ち着いた状態にはなったけど実はヤバい事をカミングアウトされたんだよな……

 胡桃は、感染している。だが俺と同じ様な薬を接種し、奴らの様にはならない。

もし俺の前で噛まれてたら薬があったとしても取り乱してただろうな……ある意味、幸運だった。

 どうにか危機は潜り抜けたと、大きく深呼吸をする。舌でも噛み切られるかとヒヤヒヤしてたが……でも、俺は問題を先送りにしただけに過ぎない。

だからって、どうすればいい? 頭もそれほどいい訳じゃない、ここまで生き残っていられたのもほぼ運だけと言える。

 胡桃の心配はもっともだった。そしてそれは、気にしていなかった……いや、気にしない様にしていた俺にも圧し掛かってくる。

 

「……はぁ、きっつ。ははっ、参りましたと手を上げれば、許してくれるもんかね」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

ふと漏れてしまった弱音は胡桃でも聞き取れたらしい。

 

「独り言だ。それより、湯加減はどうだ?」

 

 適当に誤魔化して話題を逸らすと、胡桃は遥か彼方に見える星空を眺めながら体を伸ばす。

 

「んー! 極楽極楽。風呂に入るのも久し振りだから、すっごい気持ちいい」

 

「そうか、なら意味はあったな」

 

「当然だろ? なんかこう、この短期間に次々と色々あったけど……ようやく一区切り、って感じかな」

 

「そうだな……」

 

 彼女達からしてみれば、まず隻腕の男を仲間に引き入れて後にリーダーの異変。

その後イツキの加入と、俺の昔馴染みに追っかけられると。

最後は完全に俺が引き込んだ厄介事だが、確かに色々あった。なんだか一生分のトラブルが一気に来た感じがする。

 

「これからは細々と、あんまり目立たない様にいかなきゃな」

 

「……だな。どこかに拠点でも設けようか? いつまでも根なし草はまずくないか?」

 

「あー、それなんだけど」

 

「ん?」

 

 風呂の中でくるり、と体の向きを変えた胡桃は、頭と両腕だけをこっちに見せて苦笑している。

なんぞや? その姿勢に意味はあるのか? 髪もひとつに束ね、妙に色っぽく見える姿に若干動揺しつつ。

「人と話す時は目を見て話せ」と昔教わったままに胡桃の目を凝視していた。

 

「詳しい事はりーさんに聞いて貰うとして、実は―――」

 

そこで俺は、初めて“避難先”を探している途中だと知った。

 聞けば、彼女達のいた高校は火事で焼け落ち、拠点としての機能をほとんど失ってしまったと言う。

その前にめぐねえ、彼女達の教師は2つの道を残した。1つは大学への道、もう1つは、ランダル。先日の事からランダルへの道は途絶えたと見て……大学か。

 地図上でも度々見掛けたが、そこそこ規模のある施設らしい。周囲を比較的低いビル群や大通りで囲まれ、一見望み薄に感じるが。

 

「ふむ、なら問題はこれだな」

 

 指で右腕をつつくと、胡桃は苦笑した。

 

「うん、そうなんだよな。あたしはぱっと見わかんないけど、雅はすぐわかるし……あたし自身、ずっと隠せるとは思えない」

 

感染しているとわかれば、そいつらを安全な場所に置く理由はない。それどころか日頃の鬱憤を『化物』に向けてくる可能性もある。

 口よりも手を動かす方が得意な連中は意外と多い。男は無残に殺され、女は色んな使い道があるが感染していれば話は別だ。普通に死ねれば御の字だろう。

そうなる可能性があるとすれば、候補は2つ。俺と胡桃が部から離れ、残るメンバーを避難所に残すか。

 

「やっぱり、ダメかな」

 

「……ああ、厳しい。いくら人のままでいられるとは言え確証はない。それどころか……『その薬を持ってこい、さもなければこいつらを殺す』」

 

嫌味の籠った棒読みで言われそうなセリフを口に出す。

その瞬間胡桃の顔はむっとした様に強張ったが、そうなって当然……と感じたのかすぐに諦めたような顔になる。

 

「だよなあ」

 

「まあ、そうなるな。そんな夢の様なモノ、欲しくない訳がない。それさえ接種すれば、少なくとも感染して死ぬ事はない……実際どうか知らんがな」

 

 仮にそれを理解していたとしても、一抹の希望に縋ってしまうだろう。いつ死ぬか分からない、こんな世の中じゃな。

 

「はぁー、なんかのぼせてきた。そろそろ上がるかな」

 

「そうか。そういや風呂の順番は?」

 

「あぁ、あたし由紀美紀りーさんイツキの順」

 

「了解、由紀にさっさと来いって言っといてくれ」

 

「あいよ」

 

 胡桃が立ち上がり水が滴る音が聞こえてくる。ぴちゃぴちゃと衝立のある方向へ足音が移動し、その内服を着る音もしてきた。

2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、40。……ん? 40って素数か? 偶数の素数は最初の2以外にないはずじゃ。

 

「ほんじゃ、またな」

 

 肩をぽんと叩かれて当てのない思考から覚める。完全に髪を降ろした胡桃はひらひらと手を振り、寝間着にジャンパーを羽織った状態で歩いて行った。

……驚いた。何故普段から髪を結っている女子は降ろすと途端に魅力的になるのだろうか?

 それがあの若干男勝りな胡桃でさえも、その魔力は適用されるらしい。

 

「……ふむ、素晴らしいな」

 

某赤くて3倍速いキャラの真似をしながら、小枝を火に放り込んでみる。

 湯加減はどうか? 手を突っ込んでみると、さっきよりちょっとぬるい。いかんな、もう少し温度を上げよう。

そう思い立って燃料を増量していると、バチンと大きく爆ぜた火の粉が手に掛かる。

 

「あっつい!」

 

 舌打ちをして火傷した個所を舐める。ヒリヒリと痛む所を見るに、これはちょっと長続きするタイプだ。

火傷の痛みだけは勘弁だ。溜息を吐いて乾燥した唇を舐める。

 

「あ」

 

 そこで気付いてしまった。俺は今何をした? 火傷したからってその個所を舐めた、その個所とは手の甲であり、火傷の前湯に突っ込んだ場所である。

 ヤバい。俺は今不可抗力とは言えとてつもなく変態的な事をしでかしたぞ。しかもその前に髪を降ろした胡桃可愛いなとか思ってたんだから、状況証拠は揃っている。

いいや違う、間違いなく現行犯だ。目撃者はいない、もみ消そうと思えば黙っているだけで水に流せる。

 なんて事をしてしまったんだ、と罪悪感に苛まれる。残り湯を舐めるだと? キモい、キモ過ぎる。俺にそんな趣味はないのに。

 

「あぁ……終わった。どんな顔して胡桃に会えばいいんだ……?」

 

「笑えばいいと思うよ?」

 

「!?」

 

 唐突に背後から声を掛けられ、俺は座っていたブロックから転げ落ちる。転ぶ先もしっかりと調整して火に突っ込むような失態は犯さず、しっかりと土の上だ。

 

「だ、大丈夫!?」

 

派手にすっ転んだ俺を心配した由紀は慌てて駆け寄ってくる。

差し出された手を掴みあまり当てにせず立ち上がると、由紀はコートに付いた土を払ってくれた。

 

「ごめんね? 考え事してたのに……驚かせちゃった」

 

「い、いや構わんよ。着替えと、あと風呂に入る前に向こうで適当に体を拭いてくれ。適当に、というのは適切に、という意味だからな?」

 

「うん、わかったー」

 

 風呂桶に一通りの道具を入れた由紀は衝立の向こうに潜り込んで行くと、胡桃の時と同じような衣擦れの音が聞こえてくる。

いかんいかん、素数を数えねば。地面に枝で数字を書いていこうと思った時、やましい音を打ち消す様に由紀の声が響く。

 

「あぁっ!」

 

「どうかしたか!?」

 

 その声に思わず突入しそうになる体をぐっと押さえ、由紀の返答を待つ。

 

「胡桃ちゃんゴム忘れてってる!」

 

「あ、あぁ……なんだ、忘れ物か。帰りに持って行ってやれ」

 

「うん、そうするー!」

 

…………ヘアゴムだろ? そんな安直な引っかけは通じんよ。そもそも「ゴムゥ!?」と驚いても由紀が理解する訳もないし、教える必要もない。

 何でまたこんな事で動揺しているのか。アホらしい。恋する年頃の学生じゃあるまいし。

 

「あのね、みゃーくん」

 

「んー?」

 

温度を確かめながら燃料を足したり灰を掻き出したり。所々シワや汚れのある白壁を挟んだ俺達はちょっと大きめの声で会話する。

 

「私もっと皆の力になれないのかな? いっつも留守番して、待ってばかりで、何もできてなくて……」

 

「お前は今でも十分力になっている。俺も、いつも助かっているのは間違いない」

 

 不安そうな声に、俺は少しだけ微笑んで返してやる。気休めじゃない、事実の言葉だ。実際に俺は由紀の無垢さに救われている。

返り血を浴びて身も心もどす黒くなった時。悠里は服を、由紀は心を洗ってくれる。

おかえりなさいと笑顔で迎えられる喜びがあるのだと、今更気付いたんだ。

 

「でも……みゃーくんや胡桃ちゃん、いっくんはいつも頑張ってて、りーさんはご飯と家計簿を頑張って、みーくんは勉強して皆を助けてるのに」

 

「自分は何も出来てないと?」

 

 無言の肯定。するりとシーツが捲られた音と共に、由紀の小さな足音が近付いてくる。

 

「それは違う。人には気力という……まあ分かりやすく言えばスタミナがある。戦闘も料理も勉強も、ただ無為に生きるだけでもスタミナは減る。なくなれば生きる意味を失い、死ぬか死人同然となる」

 

 すぐそこまで来て止まった足音は、黙って俺の話を聞いていた。俺は何故こうも偉そうにご高説を垂れ流しているのか?

情けなくなってくるが、由紀が自信を取り戻せるなら恥を掻くくらい造作もない。

 

「それを回復させるには……美味い飯を食ったりだとか好きな人と居たり、友達と遊んだりゲームをしたり。所謂娯楽だとか趣味が必要だ」

 

「……みゃーくんなら、どうやって回復するの?」

 

「それが、俺は回復させる手段を持たない」

 

「え……?」

 

 どういうことなのかわからない。そんな声色で疑問符を浮かべる由紀は俺の視界の隅でパチパチと爆ぜる火を見ている。

 

「俺は火が点くと燃え尽きえるまで突っ走るタイプでな、加減を知らない。その状態で、何度も燃え尽きてぶっ壊れた。そんな俺がどうして今の今まで生きているか?」

 

タオルを体に巻いている由紀が、胸元を押さえながら振り返る。見てしまうのは心苦しいが、目も合わさずに会話をするのは難しい。

 

(ひとえ)に、お前のおかげだ。いつもおかえりと笑ってくれるお前に癒されている。この状況で、お前がいなければ俺どころか悠里達も生きてはいない。これは確信できる」

 

 きゅっと胸元を押さえていた手が握りしめられた。目元もいつもより少し下がり、心底安心しているような面持ちだ。

そんな雰囲気にいつもと違う違和感を覚えていると、由紀は若干気味の悪い笑い方をして照れ始める。ふへへ、なんて笑い方をするな、中身が入れ替わったのかと勘違いするだろ。

 

「そ、そう? 私ちゃんと力になれてるのかな?」

 

「ああ、そうだ。家事も手伝ってるんだろ? なら俺と胡桃、イツキは外の役割を持つとすれば、お前、悠里、美紀は中の役割を受け持っている。見事なチームワークだ」

 

「そう、なのかな?」

 

「そうさ。―――さぁ、早く風呂に入れ。そんな恰好じゃ風邪ひくぞ」

 

 コンコンとドラム缶を指先でつついて入浴を促す。由紀は大きく頷くと、俺とは反対側にある足場から風呂に入った。

 

「熱くないか?」

 

「うん! 丁度いいよ!」

 

「ならいい、気が済むまでそうしてろ。もっとも、あまり長風呂し過ぎると後のメンバーが怒るだろうけどな」

 

「う……そうだよね、程々にしとかなきゃ」

 

「とは言え、せめて15分は入っていけ。久し振りの風呂だ、しっかり温めなければ意味がない」

 

 由紀はしばらく浸かっていると、鼻歌を歌い始める。それが控えめなハミングに移り変わり、やがて可愛らしい歌声になっていく。

由紀は歌が上手い。それがわかっただけでも大収穫だ。緊迫した状況で、歌は感情を表に出す鍵となる。

 勇ましい歌は勇気と希望を、悲しい歌は気持ちを鎮めて溜め込んでいたモノを涙として外へ出す。楽しい歌を仲間で歌えば、信頼関係も築ける。

遥か昔から残るだけあって、その効果は凄まじい。今じゃ何をするにも歌や音楽は切っても切れない関係になっているんだからな。

 

「みゃーくん」

 

 いつの間にか1曲歌い終えていた由紀は、ドラム缶の縁から身を乗り出して聞いてくる。軽いおかげで倒れる事もなく、念の為支えているが問題ないとわかり力を緩めるが、一応手は添えておく。

 

「なんだ」

 

「もし、私が……つらくて、本当に苦しくて。イヤになっちゃったら……どうしよう?」

 

「どうしよう、とは?」

 

 上機嫌に歌っていた時とは大違いだった。感情の浮き沈みが激しいヤツだと思ってしまうが、それは違うとわかる。……まさか?

 

「私、どうしたらいいんだろう? 笑顔しか取り柄がないのに、笑えなくなっちゃったら」

 

「……」

 

どうすればいいんだろうか。まず笑顔しか取り柄がない、という時点で間違っている。由紀は俺達には掛け替えのない存在だ。

 それは笑顔があるからでもあるが、それがなくなったら用済みになるのか?

それは違う。由紀の声も、綺麗な目も、小さな体も、全部ひっくるめて愛されている。

確かに笑顔のないヤツなんて、愛想がないし付き合いにくいかもしれない。でもそれだけで疎まれるか? そういう奴もいるだろうが、そうじゃない奴もいる。

 ……悠里達は、笑わないからって追い出したりはしない。それは俺で証明済みなんだ。

 

「ねえ、みゃーくん……私もう……」

 

「大丈夫だ」

 

 手にぽたぽたと暖かな雫が落ちたのを見計らって、俺は断言する。

 

「例えお前が笑わなくなろうと、1日20時間眠らなきゃ生きていけなくなろうと、1日5発人を殴らなきゃ発狂する状態になろうと、皆見捨てない」

 

「……みゃーくん」

 

微かに視線を上げると、そこには由紀の顔があった。前髪からぽたぽたと雫が落ち、その一粒がまた手に当たる。

 

「でも、5発も殴ったら流石に皆イヤになっちゃうと思うよ……?」

 

 絞り出した様な微笑は実に儚く見える。今にも消えてしまいそうで、頬を伝う雫は風呂の湯なのか涙なのかはわからない。

でも、とりあえず優しく拭ってやった。

 

「いやいや、殴った後礼として撫でればいい。強く殴ったならその場所にキスでもしてやればむしろ喜ばれるに違いない」

 

「それは……変態さんだね」

 

「そうだな。でも人間は誰しも変態なんだよ」

 

「みゃーくんも?」

 

 大方予想はしていたが、マシな回答を用意できていなかった疑問が飛んでくる。

 

「あー……そう、かな? 刃物の素晴らしさとか、ライフリングを見てると興奮したり……しなかったり?」

 

「あ! そっか、みゃーくんは匂いフェチだった」

 

「な、なに?」

 

ニヤリ。由紀は獲物を前に早くもしてやったりの顔になる。ヤバい、フォローの入れ方をミスった。

つうかさっきまであんだけ本気で落ち込んでたのに何故ここまで元気になってるんだ。

背筋に冷たい予感が走るのを感じるが、逃げられはしない。

 俺は火防、この火を絶やさない様に今まで頑張ってきたのに、弄られたからと言って放棄する事は出来ないのだ。

 

「初めて会った時、みゃーくん『こんな甘ったるい場所にいられない』って言ってたでしょ?」

 

「……言ったな。今はもう慣れたよ、至近距離にこられない限りは」

 

 正直今も若干甘ったるい匂いがする気もするが、湯気のおかげか弱まっている。

日頃から一緒にいるのもあって慣れた感じがしないでもないが、それでも車内にいる時は今でも甘いと感じてしまう。

情けない話だが、これは男として仕方がない。そう割り切っていたらいつの間にか気にしなくなっていた。

 

「そういえば……みゃーくんは匂いしないね」

 

「そうなのか? 汗臭くないならそれでいいけどな」

 

 ほぼ毎日走り回ってるんだ。汗臭いだとかこの歳で加齢臭がするだとか言われたらショックで記憶喪失になる自信があるね。

その点で言えば、胡桃は汗の臭いがしなかったな……当然か、あの体温では冷やす必要もない。むしろ動き続けなければ動きが鈍くなりそうだ。

 

「うーん、汗臭いとは思った事ないよ? でもたまに、お父さんみたいな匂いはする」

 

「それは加齢臭……ではないよな?」

 

「ううん、違うよ? 優しくて温かいいい匂いだよ」

 

父親の匂い、か。それはどういうものなんだろうか? そもそも、父親とはどういうものなのか。俺にはよくわかっていない。

 一生わからなくてもいいし、わかりたくもない。第一前提として俺は……人を嫌っているんだ。そんな奴が親どころか、恋人も作れる訳がない。

前々からあった思いを掘り起こしてみると、何故だかどこか引っ掛かりを感じる。どこがとは言わないが……まあ、いい。

 

「みゃーくん?」

 

「ん、ああ。何の話だったか、俺から加齢臭がするんだったか?」

 

「しないって! もう、みゃーくん匂いに敏感なの? やっぱり匂いフェチ?」

 

「……もうそれでいいです。人よりかは敏感な方だし」

 

 釈明も面倒になって投げ出し、水も滴るなんとやら――なんて諺を思い出しながら由紀から視線を外した。

いくら子供っぽいとは言え、目に毒だ。それに、嫁入り前の女性を凝視するのは失礼に当たるからな。そういうものだ、そういう事にしておこう。

 

「むぅ……みゃーくんってたまに冷たい……私もっと仲良くなりたいのに」

 

これ以上仲良くなってどうするというんだ。俺にとって、お前はとうに友人として上限に達しているというのに。

 口に出そうか迷ったが「迷うくらいならやめておけ」の教えの元、口を噤む。由紀はそれが面白くないのか、更に「むぅ」と唸った。

 

「下ばかりじゃなく上も見ろ。折角の星を見ないでどうするんだ」

 

下を向く奴が言っても説得力は皆無だぞ。自分にツッコミを入れながら、小枝を放り込む。

 パチパチと爆ぜる音が心地いい。でもどこか寂しくもある。その後由紀が風呂を上がるまで……由紀はもう歌ってくれなかった。




四捨五入すれば約1万4千字。確認の為に一通り読んでみると短いと思えてしまいます。20分かからないし。
でもいいんです、ちょっとした空き時間に読める様に調整してあるから(妥協)


かなり久し振りですが特に書く事も思い付きませんので主人公の頭のスペックについて解説を。

口調や振舞いから知的に見える雅さんですが、実際はかなりの脳筋(バカ)です。
ただし興味のある事には突っ走る傾向が功を奏したのか、燃え尽きるまでに会得した技術や知識は殆ど忘れていません。
トラウマでもあるフラッシュバックを上手く使い、本を読む前にタイトルを同じ場所に重ねて書くなどして、そのマークを鍵として使っています。
それを用いて必要な時に記憶を呼び出していますが、その前後のトラウマも引き出してしまいますので諸刃の剣となっています。

書く場所は手や腕で、先の尖った物で刻んでいたのが異常さを物語っていますが……
ちなみに雅さんは左利きです。なので刻んだ鍵は全て失っています。

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