どうやら俺は一生童貞で人生の幕を閉じるらしい。...やだ、泣きそう。
俺は『邪道 心(じゃどう こころ)』を全力で追っていた、が一向に距離が縮まらない。だって、俺は全力で走っているけど彼女?はビックスクーターに乗っていて爆走だもの。
ていうか、もう見えません。あの人、中学生じゃないの?
すると、後方から涙美の声が聞こえてきた。
「攻斗ー!早く乗りなー!!」力強く言い放つ涙美。...いやいや。変わらん。ママチャリじゃあ、あの爆走してるビックスクーターとの距離は縮まらん。
「もう!早くしないと間に合わなくなるよ!?」と涙美。だからってママチャリに乗ってこられても...。
一向にママチャリに乗らない俺に涙美は呆れたように溜め息をつき、ポケットから携帯をとりだし誰かにかけだした。3分ぐらい電話の相手と話している涙美。一体、誰と話しているんだろう?
おっ?電話が終わったようだ。
「誰と話してたの?」涙美に尋ねる。
「心ちゃん」即答。なんで?
「なんか心ちゃん、許してくれるって」
おっ?急にどうしたんだろう?
「攻斗のこと色々話したら、なんか許してくれるって!」色々?
「色々って、なに話したの?」
「ああ、記憶がないってこととか叔母さん、叔父さん、家のこと」それはもう、全部じゃん。憐れみだよね?多分憐れみで心ちゃんは許してくれたんだよね?
「あ、そうそう今日の夜、マスターが歓迎会兼、送別会開いてくれるって言ってたよ」マスター、俺が結局、死ぬって思ってるよね?まあ、結果的には歓迎会のみになるわけだからいいとしよう。
チェリー・ボーイに戻ろうと言う涙美。...なんか深い意味があるように聞こえるがチェリー・ボーイとはアパートの名前だ。雑談をしながらチェリー・ボーイに戻る俺と涙美。ふと思い付いたことを涙美に話す。
「邪道 心(じゃどう こころ)ちゃんは本当にキャラ濃いよね。それに比べてあの男二人はキャラ薄すぎるけど大丈夫?」男二人とは眼鏡を掛けた高二「佐藤 瞬(さとう しゅん)」と掛けていない「鈴村 進(すずむら しん)」高一のことだ。
「男二人って?進君と...」そうそう、進君ともう一人。
「マスターのこと?」いやいや、マスターはキャラ濃いでしょうが心ちゃんに次ぐぐらい濃いでしょうが。まさか、涙美にも忘れられるほどなのか?瞬は。だとしたらもう南無。
「いや、瞬のこと忘れてない?」瞬の存在を促す俺。
すると、涙美は何を言っているのかわからないといった表情をしている。
「え?瞬ちゃん?」ん?ちゃん?
「瞬ちゃんは女の子で、薙刀の達人だよ?ちなみにマスターの姪だよ?キャラ薄いかな?」
...え?瞬って女の子だったの?ていうか整理するとこういうこと?
『佐藤 瞬(さとう しゅん)』
・高校二年
・性別 女
・僕っ娘&眼鏡っ娘
・ボーイッシュ
・マスターの姪
・薙刀の達人
キャラが濃いっ!!!そしていよいよ、進の立場がない。
つづく