もうなんか色々と涙美が可哀想である。
・・・気まずい。本当に気まずい。黙々と歩き続ける涙美、後ろから着いていく俺。
なにこれ?耐えられないんですけど、誰か助けてっ!
15分ぐらい歩いたところで涙美が足を止めた。ボロボロのアパートの前で。
「着いたよ。ここがわたしの家」涙美がアパートを指差す。驚いた。そのアパートは本当にボロボロでベランダなんかは錆びていた。ここに涙美が住んでいるなんて意外だ。このアパートに涙美は一人で住んでるのか...涙美も大変なんだなと思った。ただ、俺が驚いたことはそのアパートの外観だけではなかった。むしろ壁に書かれていた文字がインパクト強すぎて外観が霞むほどだ。
『メゾン・ド・ビッチ』
うん。名前。なんでここにしたの?もっといいアパートあったでしょ?いや、居候させてもらうんだから文句は言わないけどさ。
涙美がそのアパート『メゾン・ド・ビッチ』に向かって歩きだしたので着いていく。何故か『メゾン・ド・ビッチ』を通り過ぎる涙美。すると後ろにもう一つ綺麗な建物が見えてきた。『メゾン・ド・ビッチ』に隠れていたが後ろにもう一つ建物があった。こちらの建物はあちらとは違いすごくきれいでなんかお洒落な感じだった、テラス?見たいなものも付いていた。
あ、ああこっちが涙美の住んでいるアパートか、そっか、そっか勝手に勘違いしてたよ。こっちの建物なら女子大生の涙美が住んでいても全然違和感はないな。むしろ、すごく似合うと思う。
腕を組ながらしみじみとその建物を見上げる俺。壁になんか書いてある。ああ、アパートの名前か。どんなお洒落な名前だろう?少なくともさっきみたいな名前はないだろう。
『チェリー・ボーイ』
マジでか?いやいや、マジでか?...本当に?
涙美がその建物に入っていく。
「ちょっ!待って!あの壁に書いてあるのって誰かのいたずらだよね!?」
「何が?」涙美は不思議そうな顔をしている。そりゃ、そうか。
「いや、あの壁に大きく書いてある『チェリー・ボーイ』ってなに!?」
「ああ、あれね。」涙美がニコニコしている。
「うん。あれ」
「この建物の名前だ...」
「違うっ!」涙美が言い終わる前に大きな声で遮る俺。何も聞こえなかった。よし、大丈夫。
「違わない、この建物の名前は『チェリー・ボーイ』!」俺の口を手で塞ぎながら涙美が叫ぶ。
...叫ばんでいい。
膝から崩れ落ちる俺。え?これかれしばらくは住所書くとき『チェリー・ボーイ』って書かなきゃいけないの?なんのアピールだよ!!!
「誰がつけたんだろうね?どんな奴か顔が見たいよ」涙目。
「さあ?管理人さんとかじゃない?あ、ほらあそこにいるよ」涙美の指差す方向には見覚えがある人物が。
俺の病室に来てた刑事だった。
お前かっっ!!!
つづく