病院から退院して従姉 『加藤 涙美』の家に向かう。風が気持ちいい。そう、今俺はママチャリの荷台に乗っていた。時速40㎞ぐらいのスピードの。
寒っ!風が冷たい!というかイタい!通行人の目がイタい!...何故かというと涙美が号泣しながらママチャリを漕いでいたからだ。詳しくは涙美は教えてくれなかったが今朝、涙美の愛車がお亡くなりになったらしい。南無。
「あの、涙美さん?スピード出し過ぎですよ?二人乗りも危ないですし...」
刺激しないように精一杯、丁寧に話しかける俺。
「いいから乗りな!」
「いや、もう乗ってるから。ていうか前見て!!」
と言ってる側から電柱にぶつかり、ママチャリから転げ落ちる俺と涙美。
むくりと起き上がる涙美、まるで何事もなかったかのようにママチャリを起こし跨がる
が、フレームが曲がりまっすぐ走れる状態ではなくなっていた。ああ、ママチャリもか。
「...どうしようか?」
「よし!歩いて帰ろう!」涙美は元気だ。
「そうだね。歩いて帰ればこれ以上壊れるものもないし」
壊れたママチャリを転がし涙美の家へと向かう俺と涙美。うん、気まずい。
そうだ、これからしばらくは御世話になるんだしお菓子か何か買っていこう。
涙美に家族の人数を確認しないと。
「お菓子でも買っていきたいんだけど、今何人で住んでるの?」
「え?いいよ、いいよ、そんなに気を使わなくても」
「いや、でも居候させてもらうんだし家族の皆にも迷惑かけちゃうから...」
「あれ?言ってなかった?わたし一人暮らしだよ?」
「え!?」
一人暮らし!?俺はてっきり涙美の実家に御世話になると思っていた。あれ?不味くないか?女子大生の部屋でこれから二人で住むの?親戚っていっても俺は記憶がないから初対面みたいなもんだし不味くない?
ちょっと困惑している俺を見て察したのか涙美が一言。
「大丈夫だよ。従姉どうしなんだし」
んー、涙美が言うならいいのか?でも涙美には恐らく彼氏もいるだろう、もし俺のせいで勘違いされたら涙美に迷惑がかかるからやめておこう。住み込みのアルバイトでも探してしばらくはそれでなんとかしよう。
「やっぱり俺遠慮しとくよ、住み込みのアルバイトでも探してなんとかするよ」
「え!?わたしと二人暮らしは嫌なの?」
「いや全然そういう訳じゃないんだけど...」
「じゃあ、どうして?」
「涙美さんも一人暮らしで大変だと思うし、俺のせいで彼氏さんとかに勘違いされたら嫌でしょ?」
「彼氏?」やばい、涙美の目がまた死んでる。
「そう、彼氏」
「昨日、振られたけど」
つづく