序章『すごい、綺麗!目の前の景色が、緋色に輝いてる!』
ああ、不幸だ。某超人気ライトノベルの主人公が言う不幸なんて比にならいほど俺は不幸だ。
ん?どのくらい不幸かって?
そうだな、まず軽いジャブからいこうか先週父親が援助交際で逮捕された。相手は俺の片想いのクラスメイトのA子ちゃん...親父ィ
もう1つ、今朝起きたら母親からの置き手紙が置いてあった。「捜さないで下さい。各々頑張りましょう」とか書かれてた。
ね?半端じゃないでしょ?ああ、不幸だ。死のうかしら。
まあそんな度胸も俺にはないんですけどね?
で、極めつけなんだけど、今俺ん家が燃えてるんだよね。めちゃくちゃ綺麗!あ、ヤバイ意識が...
...
ーここはどこだ?体がダルい。俺はベッドに寝かされているようだ。ああ、病院か。
でも、なんで?記憶がない。
俺に背を向け看護師さんがカーテンを開けていた。起き上がろうとしたが体が言うことを聞かない。
すると看護師さんがこちらに気がついた。
「あ!よかった、意識が戻って」
どうやら俺は意識を失っていたらしい。
「おはようございます、俺は・・・やばいなんにもわかんない」
「少し落ち着いて、今先生が来るから」
5分ぐらいで医者が到着した。
「はい木村さん。大丈夫ですか?どこか痛みはありますか?」小太りの医者が呼び掛ける。
木村?ああ、俺のことか。
「大丈夫です。少し体にダルさはありますが。ところでなんで僕はここにいるんですか?」何があったのか、更には自分の名前さえも俺は覚えていなかった。
医者と看護師は顔を見合わせる。
「はい、木村さん、ご自分のお名前わかりますか?」小太りの医者に聞かれる。
「木村、・・・拓也?」俺は答える。
「えー、『木村 攻人(きむら こうと)』さん。あなたはショックで一時的に記憶を失っているようです」・・・いや、違うなら違うって言ってよ!ん?ショック?なんの?
「あの?事故か何かに僕はあったんですか?」
「あなたの家が火事にあって、あなたはガスを吸って気を失っていました。幸いなことに火傷などの外傷は殆ど見られませんでした」俺ん家が火事に?ということは他の家族はどうなった?
「あの、僕の家族は無事ですか?」
医者と看護師が言いづらそうにしている。
ああ...、悟ってしまう俺。しかし、
「あの家には君しか住んで居ませんでしたよ」
と急に一人のスーツの男が入ってきた。
「どなたですか?」
スーツの男は胸ポケットから手帳?を取りだし、開いて見せた。
「刑事の竹内です」
け、刑事?
「・・・」
「すみませんでした」
とりあえず謝っておくことにした。
つづく