ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で61話目になります!
選んだ道が正しいと思っている拓哉はいつまでこうしているのか。
木綿季達の懸命な行動は実を結ぶのか。


それでは、どうぞ!


【61】波紋

 side詩乃_

 

 

 2025年11月20日13時20分

 

 東京という大都会は田舎から出てきた私に多くの驚きを与えた。溢れんばかりの人の往来…、天高く聳え立つ高層ビル群…、テレビの中でしか見た事のないお店…。

 右を見ても左を見ても初めて見るその光景は私を混乱させるには十分であった。

 

 詩乃「…来るんじゃなかった」

 

 私が住んでいる湯島は東京の中でも人が少なく、地元とよく似た空気を漂わせている。そこに懐かしさを感じた私は高校進学と伴に上京し、今日まで7ヵ月の間、ひっそりと暮らしてきた。

 そして、今日この東京の中心に来たのは理由があり、中学からずっと読んでいる小説の最新刊が出たという情報を聞きつけ、近所の本屋に発売初日に買いに行ったのだが、どこも完売状態となってしまっていた。

 読みたいと考えてしまった後に読めないと思うとどうにも諦めきれない。

 幸い、今日は期末試験中で午前で学校が終わった為、こうして東京の中心まで足を運んだ次第だ。

 

 詩乃「なんでこんなに多いのよ…」

 

 平日の正午過ぎに来てみれば、駅はサラリーマンや観光客で溢れかえり、外に出ればさらに倍の人混みが待っていた。

 さすがは日本の中心と言った所だろうか。東京に来れば買えないものはないとまで言われているのもあながち間違いではないだろう。

 そう感心していても仕方ないので近くの本屋を転々としながらお目当ての本を探した。

 4件目の本屋で見つけた私は思わずガッツポーズを取ってしまい、周りから笑われる中素早くレジで会計を済ませ、店を後にした。

 我ながら馬鹿な事をしたものだと、家路へ着く途中で肩を落としていると、1人の女子学生が声をかけてきた。

 

「あのーすみません!少しいいですか?」

 

 詩乃「え?…あ、あの…私?」

 

「時間は取らせないのでお願いします!」

 

 見る限り私と同年代か年下と思わせる女子学生はハキハキと私に話しかけてくる。頭に巻かれた赤色のバンダナと腰まで伸びた黒髪がよく似合った女子学生が私に1枚のチラシを渡した。

 

「もし何か気づいた事があったら教えてください!電話番号とメールアドレスも書いてますから!」

 

 詩乃「は、はぁ…」

 

 半ば無理矢理渡されたチラシを握らされ、女子学生はまた別の人に声を掛ける為、人混みの中を駆けて行った。

 

 詩乃(「何かのバイト?」)

 

 有無を言わせてもらえなかった為、渡されたチラシを今更確認する。

 すると、それを見た瞬間に私の口内の水分が全て乾いてしまった。

 

 詩乃「え…?」

 

 チラシには似顔絵と集団で撮られた一枚の写真がプリントされており、そこに私のよく見知った知り合いが笑顔で写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 詩乃「…拓哉?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideout_

 

 

 2025年11月20日18時00分 東京都文京区湯島 某アパート

 

 日が沈み、外は街灯と窓から漏れ出る照明によって朧気に照らされている。日用品や食材を買い終えた拓哉は白い息を吐きながら自宅へと目指す。すっかり一人暮らしが板についてきたのか、最近では寂しさを感じなくなった。

 いや、寂しさは未だにある。拓哉自身がそう感じないようにしてきただけにすぎない。

 自宅のアパートに着いても部屋の電気はつけられていない。

 当たり前と言えばそれまでだが、拓哉はアパートを眺めながら歩を止める。

 

 拓哉(「何…やってんだろうな…オレは…」)

 

 木綿季達に迷惑をかけまいと距離を置いたのに、たまに無性に湧き出る消失感に意味を見出そうとする。

 だが、意味などはない。拓哉が選んだ道はそういう道だからだ。誰かが歩いた形跡のない舗装されていない道をただ歩き続ける。

 例え、その先に何もなかったとしても歩き続けるしかないのだから。

 自室の扉の鍵を開け、中に入ろうとすると階段の方からガタンガタンと勢いよく登ってくる音が響いてきた。それが止むと息を切らした詩乃が立っていた。

 

 詩乃「ハァ…ハァ…拓哉…」

 

 拓哉「どうしたんだよ?そんなに慌てて…」

 

 深呼吸で息を整え、何かを決意した様子の詩乃が真っ直ぐ拓哉に歩み寄る。その姿に少しばかりの緊張を覚えながらそれを待った。

 

 詩乃「…あの、少しいいかしら?」

 

 拓哉「あ、あぁ…」

 

 外はこれからさらに冷えてくる為、詩乃を部屋へと案内する。

 エアコンを起動させて、暖かい風を部屋中に広がせながら詩乃と面を向けて座る。

 

 拓哉「で、今日は何の用だ?オレもそれなりに忙しいんだけど…」

 

 詩乃「…あなた、ここに来る前はどこにいたの?」

 

 拓哉「なんだよ、藪から棒に…。別にどこだっていいだろ?プライバシーの侵害だ」

 

 詩乃「今日、少し遠出をしたんだけど…そこでこれが配られてたわ」

 

 鞄からある1枚のチラシをテーブルに置き、拓哉はそれを見て目を見開いた。

 

 拓哉「…これ…は…」

 

 詩乃「詳しい事は知らないし聞かないけど…心配してるようだった。あの人達に何も言ってないの?」

 

 拓哉「…」

 

 ただ黙るしかなかった。木綿季が…みんながこんな事をしてるとは思わなかったし、何よりこんな馬鹿な事を止めたいと思った。

 拓哉が何の為に仲間達と距離を取ったのか、それを根源から覆すような行動をしては拓哉が去った意味がなくなってしまう。

 周りから冷たい視線で見られ、まだある学校生活にも必ず支障にきたす。こんな犯罪者まがいの奴とつながってると思われるのだから。

 

 拓哉「…止めさせてくれ」

 

 詩乃「え?」

 

 拓哉「こんな事しても…意味なんかねぇんだよ。オレは…もう…帰れねぇんだから…!!」

 

 詩乃「…」

 

 体を震わせ、顔をうずくめている拓哉の姿が詩乃にとって初めて見る弱さを見せた瞬間だった。

 心の中で拓哉の佇まいから強い人だと思っていた。何事にも動じず、何者も寄せ付けない強者の姿を勝手に連想させていた。

 だが、今の拓哉はどんな些細な事でも傷ついてしまうガラス細工のように脆く感じ、詩乃はどちらの拓哉が本当の姿なのか分からなくなった。

 そして、弱さを晒した拓哉の姿に()()()()()()()()

 

 詩乃(「やっぱりこの人も…何かを失くして、強くなろうとしている最中なんだ…」)

 

 彼と私は似ている。そう感じた詩乃はおもむろに放置されていた拓哉のアミュスフィアを手に持ち、拓哉に差し出す。

 

 拓哉「?」

 

 詩乃「弱い自分を変えたいなら…私と一緒に戦わない?」

 

 拓哉「何…言ってんだよ…?」

 

 詩乃「GGO(ガンゲイル・オンライン)ってゲームなんだけど、そこで最強になれば現実世界でも強くなれる…。私はそう信じてあの世界で戦い続けてる!

 …あなたももし、今の自分を変えたいのなら…って、思ったん…だけど…」

 

 目を点にしてこちらを見つめている拓哉に気づき、自分らしくない事を言っている自覚した詩乃は頬が赤くなるのを感じながら顔を伏せてしまった。

 

 詩乃「べ、別に深い意味があって言った訳じゃなくて…!!

 どうせ1日中暇してるなら練習相手にでもって思っただけだからね!!」

 

 拓哉「…ツンデレかよ」

 

 詩乃「うるさいっ!!!やるの?やらないの?」

 

 拓哉「…」

 

 あの世界に行けば…仮想世界でなら変われるのだろうか。

 その答えは現実世界(ここ)になくて仮想世界(むこう)にあるのだろうか。まだ自分の選択した道が間違いだとは思ってはいない。

 だが、他にまだ…選択肢があるなら探さなければならない。拓哉にとって仮想世界はもう1つの現実世界なのだ。ならば、探すだけの価値はあるかもしれない。

 

 拓哉「…ガンって言うだけあって、銃がメインのゲームだろ?」

 

 詩乃「!!…えぇ、そうよ。ステータスの振り方によって戦闘スタイルが変わっていくのも特徴ね。銃の種類は多種多様で結構細かくビルドしないと強くなれないわ。…あそこはおそらく、他のVRMMOゲームよりも過酷だと思うから」

 

 拓哉「?」

 

 詩乃の話によれば、GGOは日本で唯一リアルマネートレーディング制度を採用している。簡単に言えばGGOで稼いだ金銭を現実世界にペイバック出来るとの事で、毎月その制度を利用して20〜30万円を定期的に稼いでいるプロゲーマーがいる事から、GGOはどのVRMMOゲームよりも殺伐として実力者しか生き残れないゲームになっている。

 

 詩乃「VRゲーム経験者ならGGOにキャラデータをコンバート出来るからステータス面では問題ないわよ」

 

 拓哉「…いや、コンバートはしねぇ。新しく作るよ」

 

 詩乃「そう?まぁ、私はどっちでもいいんだけど…。じゃあ、明日の17時にグロッケンって街の転移門前で落ち合いましょ」

 

 そう言い残して詩乃は拓哉の部屋から出ていき、自室へと帰っていった。

 

 拓哉「…って、まだGGO買ってねぇんだけど…」

 

 文学少女のイメージの詩乃がまさかミリタリー系の趣味があった事に驚きながらも、拓哉は重い腰を上げて夕飯の準備に取り掛かる。

 

 拓哉「…」

 

 まだ見ぬ仮想世界への好奇心はどんなに沈んでいても押し寄せてきて、拓哉の決意を鈍らせる。

 まだ希望があると思っているのか?まだ誰かの助けを信じているのか?

 そんなものはないと分かっているハズなのに、それでも縋ってしまう。

 

 拓哉「…現実世界(ここ)でダメなら仮想世界…か。確かにな…。オレには…そっちの方が合ってるのかもな」

 

 現実世界が生きにくいと感じる時がたまにある。ここには周りの目や人間関係、社会からの圧力など、目に見えない力が終始、牙を向いて襲ってくる。だが、仮想世界はどこまでも自由でどこまでも壮大な世界だ。

 現実世界の(しがらみ)を抜け出し、どこまで進めていける。そんな世界だからこそ見つけられるものがあると信じて拓哉は新たな世界へと旅立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この消失感を埋めてくれる何かを求めて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年11月26日14時30分 東京都御徒町 ダイシー・カフェ

 

 学校の休みを利用して朝から周辺の聞き込みやチラシ配りを行ったがその成果はまだ出ていない。

 小休止としてエギルが営むダイシー・カフェへとやって来ていた木綿季達は午後からの活動について会議を開いていた。

 

 木綿季「もっと聞き込む範囲を広くしたらどうかな?」

 

 明日奈「そうだね。でも、結構な規模になるけど人手は足りる?」

 

 直人「それだとあんまり現実的じゃないですね…」

 

 今やダイシー・カフェは木綿季達のアジトの如く扱われ、経営者であるエギルは舌を巻くばかりだ。拓哉が戻ってきた日にはそれなりの謝礼を用意してもらおうと会議を進める木綿季達の傍らでエギルは静かに誓った。

 そんな中、遅れてダイシー・カフェの扉を開け、黒一色の風貌の和人が入ってきた。

 

 里香「和人遅いわよ!どこ行ってたのよ!?」

 

 和人「あぁ…。ちょっと銀座までな」

 

 珪子「銀座まで何をしに?」

 

 和人「…拓哉の居場所を知ってそうな奴に会ってきたんだ」

 

「「「!!?」」」

 

 カウンターに腰をかけ、エギルにジンジャーエールを注文して一息つく。

 そこに木綿季が隣に座り、和人の様子を伺った。

 

 木綿季「それって…もしかして菊岡さん?」

 

 和人「あぁ。菊岡なら何か知ってるじゃないかって思ってな」

 

 エギル「それで、何か収穫はあったのか?」

 

 和人の前にジンジャーエールを差し出し、それを一口含む。口の中で炭酸が弾けるのを噛み締め、喉を通し、爽快感を得た所で和人が口を開いた。

 

 和人「結果から言うと何も聞けなかった。だが、アイツは確実に拓哉の居場所を知ってる」

 

 直人「その根拠は?」

 

 和人「拓哉がいなくなってから、週一のペースで来ていたバイトがパッタリ途絶えたんだ。多分だけど、拓哉が菊岡にオレに仕事を回さないように言ったんだろうな」

 

 

 

 それは今から3時間前まで遡る。

 和人は菊岡に会う為、彼が待ち合わせ場所にしていた銀座にあるカフェへと向かった。店内は高価な装飾が施されおり、そこに来店している客達からも気品が感じられ、なんとも場違いな所を指定したものだと肩を落としたのを憶えている。

 店内の隅に1人だけスーツ姿でデザートを食べているのを確認して、真っ直ぐそこへ歩を進めた。

 

 菊岡「やぁ、キリト君。わざわざすまないね」

 

 和人「すまないと思うならこんな所に呼ぶなよ…」

 

 菊岡「ここは僕の行きつけのお店でね。話をするにはここの方が割かと落ち着くんだ。それで?今日僕を呼び出したのはどうしてだい?」

 

 店員に席を勧められ、軽く頭を下げて席へと座る。菊岡から無言でメニュー表を渡され、和人は高価な値段に驚きながら3品ほど注文して店員を下がらせた。

 

 和人「単刀直入に聞く。菊岡さん、拓哉の居場所を教えてくれ」

 

 菊岡「何故だい?」

 

 和人「何故って…アンタは知らないかもしれないが、学校中に拓哉の殺人歴がバレて拓哉の居場所がなくなってるんだ。

 …木綿季にまで何も言わずにいなくなってもう1ヵ月以上経ってるんだぞ!?友達なら心配するに決まってる!!」

 

 声を荒らげると周りの客の視線が集まる。それを意に返さない和人を前に、菊岡は静かに紅茶を嗜んだ。

 

 菊岡「…だからと言って何故僕が拓哉君の居場所を知ってる事になるのかな?」

 

 和人「白々しいな…。オレが居場所を教えてくれと言ったらアンタは何故と問い返した。普通なら知らないと言うか驚く場面なのに…。そうならないのはアンタが拓哉と会って居場所を知ってるからじゃないのか?」

 

 菊岡「ふむ…。流石にSAOでトップランカーを走り続けてきただけの事はあるね。…確かに、僕は拓哉君の居場所を知っている。元はと言えば僕が用意した場所だけどね」

 

 和人「だったら教えてくれ!!…せめて、木綿季だけでもいいから教えてくれ!!」

 

 タイミングよく、和人が注文した品々がテーブルに並べられるが、和人はそれに手を出そうとはしなかった。

 一刻も早く、拓哉を見つけ出して精神的に疲弊しているであろう木綿季に会わせてやりたいと強く願っているからだ。

 だが、無情にも菊岡から出た返事は和人の望んだものではなかった。

 

 菊岡「それは言えない。拓哉君との約束だからね」

 

 和人「!?…なんでだよ!!もうアンタに頼るしか方法がないんだ!!」

 

 菊岡「そう言われてもね…。それに拓哉君がもし、君達の所に帰ってきたとしよう。だが、彼を受け入れる場所はあるのかい?」

 

 和人「!!」

 

 言い返せなかった。拓哉が何の為に和人達から距離を置いたか。拓哉を探す事ばかりで考えもしなかった事だ。拓哉が戻ってきても、和人達以外の学校の生徒達はそれを良しとはしないだろう。

 また同じ過ちを繰り返し、拓哉が傷つくだけだ。

 

 菊岡「拓哉君がそこに戻っても君達以外誰も受け入れてはくれないだろうね。悪い言い方だが、人を殺した者と同じ空気を吸いたくないと考えるハズだ」

 

 和人「お前っ!!?」

 

 怒りに任せて菊岡の胸ぐらを掴むと、流石に周りの客も何かと騒ぎ始める。だが、和人にそんな事は関係なかった。親友を侮辱され、現状維持を推奨する菊岡に物申したいが、菊岡の言っている事も間違いではない。

 第3者として冷静に物事を判断すれば誰でもそう言うだろう。

 

 菊岡「残念だがそれが現実だ。彼らはまだ大人じゃない。人生を狂わされてそれを懸命に取り戻そうと努力しているのに、そこに人殺しなんて不純物は必要ないんだ。誰も望んでいない」

 

 和人「…なら、拓哉はこのままでいいって言うのか。誰とも関わらず、生涯1人で生きていかなきゃいけないって言うのかよ…」

 

 菊岡「…彼が望んだ道だ。外野がとやかく言う事じゃない」

 

 和人「…っ」

 

 拓哉が和人達の為に自らを犠牲にして和人達の生活を守った。

 聞こえはいいかもしれないが、守られた人達の事を考えていないやり方だ。特に木綿季は1番辛いだろう。誰よりも拓哉と共に生き、誰よりも寄り添った木綿季が1番傷つく。そうなってでもいつか幸せを感じられる時が来るだろうと拓哉が出した答えだ。

 

 菊岡「木綿季君の事は僕も気にかけた。それでも、自分といるよりは幸せだと…そう思っての行動だ」

 

 和人「…それは違う。そんな事して木綿季が喜ぶ訳がない!!オレ達だってそうだ!!いつも助けられてばかりで今度こそはオレ達が拓哉を守るんだって…!!それなのに…どうして…」

 

 何もかける言葉が見つからなかった。どちらの言い分も正しいと分かっているからこそ、互いにすれ違い、あらぬ方向へと向かってしまう。

 

 菊岡「…拓哉君の居場所は教えられない。」

 

 和人「…」

 

 何も聞けないならこの場に用はない。和人は菊岡に背を向け、店を後にした。

 

 菊岡「…この役回りはつらいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日奈「結局振り出しに戻っただけか…」

 

 木綿季「さぁ!そろそろ行こっか!ご馳走様エギル!」

 

 エギル「あぁ。お前らも頑張れよ。俺の方も客に聞いてみるからよ!」

 

 代金を支払い、木綿季達は聞き込みを再開させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side拓哉_

 

 

 2025年11月26日17時00分 東京都文京区湯島 某アパート

 

 自宅へと帰宅したオレはベッド脇に置いてあるアミュスフィアに買ってきたGGOのソフトをインストールする。

 どんな時でも新しいゲームを買うとドキドキするが、詩乃との約束の時間はとうに過ぎている。早くアバターを作って行かなければ後でどんな目に合うか考えただけでもおそろしい。

 

 拓哉「さて…。久しぶりだな…」

 

 頭にアミュスフィアを被り、バッテリーの充電が満タンになっているのを確認して久方ぶりの音声コマンドを入力した。

 

「リンクスタート!!」

 

 音声コマンドと共に視界がクリアになり、ゲームの初期設定エリアに転移する。ふと、ホロキーボードに指を触れる前にそれを止めた。

 

 拓哉「名前…どうするかな…。もし、万が一木綿季達がGGOしないとも限らないし…」

 

 SAOやALOでは現実世界と同じリアルネームに設定していたが、やはり、現実世界(リアル)の情報は出来る限り隠した方がよいだろう。

 名前の設定に四苦八苦する事10分。ようやく名前も決め終わり、また視界がクリアになった。

 目を開けるとそこはALOの広大な自然とは対照的の廃れたビルが建ち並ぶサイバーチックな世界観だった。微かに火薬の匂いを漂わせているこの街には明るさなどはまるでない。

 あるのは屈強の大男達や、ネオンが輝くカジノ、分厚い雲に覆われた空。

 それだけで肌がピリピリするような緊張感を漂わせ、オレの心を昂らせる。

 

「ALOと違ってみんな血の気が多そうだなぁ」

 

 転移門から階段を下ろうとすると思わず階段を踏み外し、豪快に転んでしまった。

 

「いてて…。なんかしっくりこないな…このアバター」

 

 やけに建物や行き交う人が大きく見えるが、まだこの世界に慣れていないからだろうと別段気にしなかった。

 そんな事よりもここで待ち合わせしている詩乃を探す。

 しかし、当たり前だが詩乃もこの世界(GGO)では現実世界の朝田詩乃の姿ではない。探しても意味がないと思っていると、周りの男達の笑い声が聞こえてきた。

 どうやらオレを見て笑っているようだが、まだ自分の姿を確認してない事に気づき、近くにあるショーウィンドウで自身の姿を確認した。

 出来る事なら強そうな顔立ちになっていればいいなと思っていると、そこには小学生ぐらいの男の子が写し出されている。

 右に振り向いても左を振り向いてもウィンドウに写った男子小学生はまったく同じ動きをした。

 

「嘘…だろ…?」

 

 今度は自分の目で手や足、体を見るが、明らかに現実世界の茅場拓哉より小さくなっている。頬はやけに柔らかいし、瞳もあどけなさが抜けきれていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんじゃこりゃァァァァァァっ!!!?」

 

 

 オレのGGOでの姿は誰が見ても小学生の子供の姿だった。おそらく、先程の男達もオレの姿を見て子供がいる事に笑ったに違いない。

 屈強な戦士を願ったのも束の間、どこを見ても軟弱そうな少年の姿がオレを絶望の淵に追いやった。

 

「こんなのってアリかよ…。いくら、ランダムに設定されるって言っても限度があるだろ!?距離感とかまるで掴めないし、こんな体じゃ銃なんかもって走れねぇだろっ!!?」

 

 いくら嘆いてもこのアバターが成長する訳もなく、アバターを作り直すのも馬鹿らしい。仕方ないと諦めて詩乃を探す事に決めた時、背後から肩を叩かれ後ろを振り向くと、碧髪にマフラーを巻いた少女がいた。

 

「僕、迷子なの?」

 

「ぼ…!?オレは僕なんか言われる歳じゃねぇ!!」

 

「え?いや、でも…そうは見えないけど…」

 

 碧髪の少女が言う事も的を得ており、誰が見てもそう疑ってしまう。

 

「今日初めてこのゲームやって、そしたらこんなアバターになっちまって!!詩乃に見られたら確実にバカにされる…」

 

「え?…もしかして、拓哉…なの?」

 

「え?」

 

 無言の時間が流れ、互いに思考が停止した。

 

「もしかして…詩乃?」

 

「ふ…ふふ…ふははははははっ。何よアンタそのアバター!現実世界(むこう)とは大違いね」

 

「笑うなっ!!オレだって好きでこんな格好してる訳じゃねぇんだよ!!」

 

 ひとしきり笑い終えた自分がマフラーを振り払い、右手を差し出す。

 

 シノン「私はこっちじゃシノンって名前でプレイしてるの。改めてよろしくね。えーと…そう言えばアナタ名前は?」

 

 ユウヤ「ユウヤだ。色々とレクチャー頼むぜ、シノン」

 

 ユウヤという名前はふと頭によぎった少女の名前から自分の名前と合わせた名前だ。入力して我ながら未練がましいと思ったが、ここでアイツと会わないと思ったのでこの名前にした。

 

 シノン「ユウヤね。じゃあ、まずは装備を1式揃えないとね。…って、始めたばっかりだから所持金も初期設定だったわね」

 

 メニューウィンドウを開き、自身のパラメーターを確認すると、確かに所持金が1000クレジットとバリバリの初期金額だった。これでは、銃はおろか防具すら買えない。

 

 ユウヤ「カジノあるし、そこで資金調達出来ねぇの?」

 

 シノン「カジノを1000クレジットで稼げる訳ないでしょ。いいわよ。お金くらい貸してやるからお店に行きましょ。付いてきて」

 

 言われるがままにシノンに付いていくオレは周りの景色を見渡しながらここが仮想世界である事を実感する。周りからは姉弟が仲良く歩いていると思われているのか野次馬からのヤジが飛び込んでくる。

 だが、シノンはそれらを無視して真っ直ぐ武器屋へと向かうのでオレも気にしないようにした。

 数十分歩いた先に街灯がチカチカ光り、今にも潰れそうな店へとやってきた。

 

 ユウヤ「GGOってなんかスラムみたいな所だな」

 

 シノン「まぁ、不時着した宇宙船の素材で創った街って設定だからね。色々とツギハギなのよ。さて…ユウヤは前のゲームじゃステータスはどうだったの?」

 

 ユウヤ「えっと…AGI(アジリティ)優先で次にSTR(ストレングス)上げてたかな…。って言ってもこっちじゃまだ0の状態だけど…」

 

 シノン「最初はレベリングをしてステータスを強化する所からか…。なら、中古の銃を買いましょ。ステータスを強化してから本命を買うといいわ」

 

 コンバートすればそのような手間が省けるのだが、1から鍛えた方が楽しいし、また違った遊びが出来て悪い事ばかりではない。

 シノンの資金で中古のハンドガン一丁と手榴弾、防具を1式を選び、会計ロボに精算する。

 ふと、店の奥で人だかりが出来ており、シノンにあれが何なのか尋ねた。

 

 シノン「あれはミニゲームよ。あの奥にガンマンがいるでしょ?アイツにタッチ出来たらあそこに貯まってるクレジットが全額貰えるのよ」

 

 ユウヤ「全額って…53万って表示されてるけど、あれ全部?」

 

 シノン「言っておくけど無理ゲーよアレ。だって7m地点から反則じみた早撃ちするんだもの。それでも、あーやって馬鹿共は集まるけど」

 

 ユウヤ「面白そうだな。…試しにこのアバターでどれだけ動けるか試してみるか」

 

 ミニゲームの前まで行き、ゲートの横でクレジットを支払うとブザーと共にゲートが開かれた。

 

「小僧!頑張れよー」

 

「小っせぇからイイトコまで行けるんじゃねぇかぁっ?」

 

 ユウヤ「小っさい言うなっ!!?」

 

 勢いよく飛び出したオレは一直線にガンマンに突撃をかけた。すると、ガンマンが銃を構えた瞬間、目の前に一直線の赤外線が出現した。

 

 シノン「それは弾道予測線(バレットライン)よ!その線に沿って銃弾が撃たれるの!」

 

 ユウヤ「なるほどね…!」

 

 ならば、これら全てに触れさえしなければ被弾する事はないという訳か。

 幸い、このアバターでなら狭い道幅でも横に避ける事が出来る。

 放たれた銃弾はオレの傍らを通過して、被弾を逃れる。リロードする間に一気に距離を縮めに向かったオレは早撃ちに切り替わるという7m地点まで進んだ。

 すると、シノンの言う通り先程よりも早く銃を構え銃弾を発射した。

 

 ユウヤ「うおっ!?」

 

 紙一重の所で躱したオレは足を止める事なく、前に進む。

 

「おぉ!!アレを避けやがった!!」

 

「小っちぇから避ける範囲が広いんだよっ!!」

 

 シノン「嘘…」

 

 そして、あと3mと言った所でガンマンがさらなる早撃ちを見せた。何とか避けたが、リロードする時間も短縮され、その場で銃弾を躱す事に必死になって前に進めない。このままでは確実に被弾する事を予感したオレは一か八かの賭けに出た。

 リロードする瞬間に、地面を思い切り蹴り、空中へと飛んだ。

 

 

「飛んだっ!!?」

 

 シノン「バカっ!!空中じゃ身動きなった取れないわよ!!」

 

 だとしても、距離は一気に稼ぐ事が出来る。弾道予測線さえ見極めれば53万クレジットが手に入り、シノンへの貸しも返せる。

 案の定空中に飛び上がったオレ目掛けて銃弾が乱射された。

 

 ユウヤ「っ!!」

 

 弾道予測線に当たっている箇所を見極め、空中で独特なポーズを取りながら何とか避けたが、あと1mという所で隠し持っていた銃が現れた。

 

 ユウヤ「!!」

 

 不敵に笑みを浮かべたガンマンは躊躇わず引き金を引いた。

 だが、その弾がオレに当たる事はなかった。オレはホルスターから先程買ったハンドガンに薬莢を入れ、誰もいない壁に向かって撃った。その反動で小柄なオレの体は空中で横へと逸れ、そのままガンマンにタッチする。

 

 シノン「そんな…バカな…!!?」

 

 ガンマンは膝から崩れさり、それと同時にオレの頭上から大量の金貨が降り注いできた。それを自分のストレージにしまい、シノンの元へと戻る。

 シノンと周りのプレイヤーが目を見開いているのを見て不思議に思った。

 

 ユウヤ「どうした?鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」

 

 シノン「あ、アンタ…あれって…」

 

 ユウヤ「あぁ。このアバターの総重量って30kgそこらだからさ。撃った反動で空中でも少しは動けるんじゃないかって思ってよ。いやぁ、何とかなって儲けたぜ」

 

 シノン「普通やろうと思ってもやらないわよ。…まったく、キチガイにも程があるわ。反射神経も化け物地味てるし」

 

 ユウヤ「反射神経は元々だ。っと、ほら。さっき借りてた金」

 

 ストレージから先程借りた金額のクレジットをシノンに返してオレ達は店を後にした。帰り際、またしてもミニゲームに挑戦しようとプレイヤーが押しかけてきたが、次来る時にどれだけ貯まってるか見ものだ。

 ショップから出たオレ達はフィールドでモンスター狩りをしてレベルを上げようと話し、グロッケンから出た荒野にやってきた。

 辺り1面は地盤が隆起し、草木も枯れ果てた言葉通り何もない場所だった。殺風景と言えばそれまでだが、遠くまで目を凝らすと半壊したビルや廃村などもあり、世紀末を感じさせる。

 

 ユウヤ「何もない」

 

 シノン「あっちの方に比較的弱いモンスターが出るわ。今のアナタのステータスじゃそれすら倒せるか不安だけど、私がサポートするから安心しなさい」

 

 ユウヤ「了解、教官殿」

 

 10分程歩くとGGOで初めて見るモンスターが荒野を徘徊していた。やはり、ALOとは違い、モンスターなども世界観にあった姿をしている。

 どちらかと言えば現実世界の野犬に近い風貌がオレの緊張を幾ばくか和らいでくれた。

 

 シノン「じゃあ、行くわよ。まず私が手本見せるから見てて」

 

 そう言って岩陰から颯爽に飛び出し、シノンは腰に携えたハンドガンに手にかけた。銃口を向けた瞬間にモンスター達もシノンの存在に気づき、荒々しい雄叫びと共に牙を向いた。

 

 シノン「…死ねっ!!」

 

 バァンと複数回の銃声が辺り一帯に響き渡る。その弾はモンスター達の眉間に的確に放たれ、一瞬でポリゴンの花吹雪にしてみせた。

 

 シノン「ヘッドショットなら大概のモンスターはレベル関係なしに仕留められるわ。常にヘッドショットは心掛けておいた方がいいわよ」

 

 ユウヤ「とは言っても、この弾道範囲(バレットサークル)だっけ?この円の中にランダムで命中するんだろ?」

 

 弾道範囲(バレットサークル)とは、銃の引き金に指をかけた瞬間に緑色の円が心拍数に比例して大きくなったり、小さくなったりするシステムアシストだ。この円の中に銃弾がランダムに命中する為、初めてプレイする者に立ちはだかる最初の難所と言った所か。

 

 シノン「落ち着いて撃てばサークルも定まるわ。最初は四苦八苦するだろうけどそこはもう慣れるのみね」

 

 ユウヤ「初心者(ニュービー)にはつらい注文だな」

 

 シノンからレクチャーを受けていると1匹のモンスターがリポップし、すぐさまこちらに気づいた。

 

 シノン「じゃあ、教えた通りにやってみて」

 

 シノンの言う通り銃を両手で構え、反動に耐える為の姿勢に入る。

 一直線にオレに襲いかかってくるモンスターの眉間に神経を集中させ、弾道範囲(バレットサークル)を固定させていく。

 落ち着いてきたからなのだろうか、円の収縮スピードが緩やかになった。

 眉間に的が絞られるまで粘っているとモンスターが左右に揺さぶりをかけ始め、照準がうまく定まらない。

 

 ユウヤ「動くなよっ!!」

 

 シノン「無茶言わないで…。相手は止まってる的じゃなくて、動くモンスターなんだから」

 

 一旦、銃を腰の位置まで下げ、オレは地を蹴り、モンスターに自ら近づく。

 モンスターも一瞬だが怯み、そのタイミングで再び銃口を向けた。

 弾道範囲(バレットサークル)も既に落ち着いていた為、構えた瞬間に引き金を引いた。

 撃鉄の火花と火薬の匂いが舞う中、オレの撃った銃弾は眉間から数cmズレ、モンスターの左眼に貫く。

 痛みが前に進もうとする足を止め、その場でバタバタと痛がる。そこに銃弾を3発放つと、モンスターは息を引き取り、ポリゴンとなって四散していった。

 

 ユウヤ「なんとか倒せた…」

 

 シノン「まぁ、初心者にしては上出来なんじゃない?」

 

 ユウヤ「そこは素直に褒めてくれてもいいじゃねぇか」

 

 シノン「アナタって褒めると調子に乗りそうだから」

 

 ユウヤ「あっ、そ…」

 

 シノン「しばらくこの辺りでモンスターを狩りましょうか」

 

 それから3時間、オレはシノンのサポートを受けながらモンスターを狩り続け、レベルアップによるステータスポイントをAGIを優先的に上げた。

 

 シノン「どうでもいいけどSTRも上げておかないと碌な銃持てないわよ?」

 

 ユウヤ「ヘッドショット出来れば大概のモンスターは倒せるだろ?それはつまり、プレイヤーにも当てはまる。

 AGIを優先的に上げれば、それだけ動きが素早くなるからな。懐に潜り込んで脳天にズドンって訳…」

 

 シノン「…馬鹿みたいな戦略ね。狙撃手(スナイパー)相手にはどう戦う気よ?最低でも200mは離れてるのよ?」

 

 この周辺のフィールドは見晴らしがよく、狙撃手(スナイパー)が隠れられるような場所はない。

 だが、廃ビルや岩壁の上に隠れられようなフィールドではシノンの言う通り、接近戦は圧倒的に不利である。

 

 ユウヤ「まぁ…その時はほら?直感的なものでやり過ごせば…」

 

 シノン「直感にそこまでの信頼をおけないわよ!」

 

 ユウヤ「オレの直感は使い込まれてるからそこまでの信頼があるんだよ。あっ、いい事思いついた!銃弾で銃弾を撃ち落とすなんて事出来ねぇかな?」

 

 オレがアイディアをシノンに提案してみると、シノンは呆れ顔で顔を横に降った。

 

 シノン「そんなの出来る訳ないでしょ!!弾道予測線(バレットライン)はあくまで狙撃手を視認しないと出てこないの!!そんな事してる内にアンタが先にやられるわ!!」

 

 ユウヤ「えぇ…いいアイディアだと思ったんだけどなぁ…。うーん…この世界にも剣があれば何とかなりそうだけど…」

 

 シノン「バカな事言ってないで次行くわよ!!」

 

 もうすっかり夜になってしまったが、シノンは夜間でもレベリング出来る場所に案内し、そこで2時間程狩り続けた。

 狩りを終えた頃には22時を回っており、今日はここまでにして続きはまた明日という事で解散した。

 明日は日曜日でシノンのバイトも休みであり、13時に今日と同じ場所で落ち合う約束をしてログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideout_

 

 

 2025年11月26日22時10分 東京都文京区湯島 某アパート

 

 自宅のベッドで覚醒した拓哉は冷えきった体を数回震わせ、暖房をつける。徐々に暖かい風が部屋に吹き始めると、昼から何も食べてなかった事に気づき、近くのコンビニに行こうと身支度を済ませ、玄関を開けた。

 すると、同じ考えだったのか隣の部屋からも詩乃が厚着をして出てきた。

 

 詩乃「もしかしてアンタも?」

 

 拓哉「近くのコンビニにメシを買いに行こうと思ってな」

 

 詩乃「あっ、そ…。…じゃあ、私と同じね」

 

 そうして夜空が輝く中、2人で夕食を買いにコンビニに連れ添った。

 行く途中で会話はなく、静寂に包まれながらコンビニに到着し、一言も発する事なく、アパートまで着いてしまった。

 気まずい空気が終わると安心した拓哉は扉のドアノブに手をかけ、部屋に入ろうとすると、詩乃から声を掛けられた。

 

 詩乃「その…GGO…楽しい…?」

 

 遠慮がちに聞いてくる詩乃に拓哉は間を置いて応えた。

 

 拓哉「あぁ…。誘ってくれてありがとう…」

 

 礼を言い、そのまま部屋へと消えていった拓哉を詩乃は最後まで見届け、仄かな笑みを浮かべて自室に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴の人生が終了するまで約3週間。このまま何事もなく過ぎていけば良いが、奴の仲間がそうはさせまいとあちこちに出向き、妨害しようとするだろう。

 だが、こちらにはもう()()()()()()()()()がいる。奴等がどれだけ足掻こうとこちらが劣勢になる心配はない。()()()も何やら動き出している。アイツのやる事に興味などないが、出来る限り奴等を巻ぞわせるように事を運んでほしいものだ。

 もうすぐ…もうすぐだ。奴に正義の鉄槌が下されるまでもうすぐだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、楽しみに待ってて…兄さん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
今回までの話で罪と罰編は第1部として締めさせて頂きます。今回のオリジナルは少し短めに書いていこうと考えていたのでこの形をとりました。
そして、罪と罰編第2部はしばらくお休みで、その間に入るのは原作のGGO編となります。こちらはSAO編、ALO編と同じ内容量だと考えて頂けたら良いかと思います。
新たな脅威が拓哉達に牙を向く…!!


評価、感想などお待ちしております!


では、また次回!

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