ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という訳で54話目になります。
今回はバトルシーンを書きましたが久しぶりで腕がなまってる気がします。←元々文才ないのに何言ってんの?



では、どうぞ!


【54】歌に乗せる想い

 2025年08月10日14時00分 東京都御徒町 ダイシー・カフェ

 

 七色「あら!中々素敵なお店ね!!」

 

 エギル「こりゃ光栄だな。まさか世界的に有名な科学者から褒められるとは」

 

 拓哉「それより早く何か作ってくれ…」

 

 拓哉達は御徒町の近くで行われた会議が終わり、ランチにしようとなったので近くにあったエギルが経営する"ダイシー・カフェ”に立ち寄った。

 あれから拓哉は七色の助手として住良木と共に東京を右往左往して多忙な毎日を送っている。

 さらに、ALOで開催されるセブンのコンサート用衣装の材料調達にも赴き、さらに過酷な毎日と化していた。

 

 七色「あら?どうしたの拓哉君?」

 

 拓哉「お前…この激務が毎日あるって…見かけによらずに体力バカなの?」

 

 七色「バカとは何よ!私はもう慣れたってだけの話よ。ね?住良木君」

 

 住良木「…ん?あ、あぁ…そうだな」

 

 七色「?…どうしたの?具合でも悪いの?」

 

 住良木「そんな事はない。…それより七色も早く注文しなければ食べる時間がなくなるぞ?」

 

 七色「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!えーと…」

 

 拓哉「…」

 

 住良木と話してから何かとボー…っとしてる時が増えた気がした。

 何か考えているのか分からない拓哉は何も言い出す事はないが、これ以上悪化するようなら仕事に支障をきたしかねない。

 七色に至ってはそのような事は気に止めていない様子だが、いつかは不振に思うだろう。

 注文を取り終えたエギルがキッチンで作業に入っている間、七色が衣装の件で拓哉に話しかけた。

 

 七色「拓哉君、衣装に使う素材はどれくらい集まってるの?」

 

 拓哉「後1つだな。明後日までには何とかなるハズだ」

 

 七色「そう…それならいいけど…」

 

 残り2日で衣装を完成させなければセブンのコンサートは失敗に終わってしまう。チケットは即日に完売し、ALOのプレイヤー達もセブンのコンサートの日を楽しみにしながら待っている。

 それを中止の形で終わらせたくないと思うのは七色や拓哉、住良木はもちろん、ここまで用意してくれた"シャムロック”のメンバーにも悪い。

 

 七色「…決めたわ!!」

 

 拓哉&住良木「「?」」

 

 突然椅子から立ち上がり、拳を握りながら七色が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七色「明日、私も一緒に材料集めに行くわ!!」

 

 拓哉&住良木「「!!?」」

 

 七色「元はと言えば私の衣装なんだし、着る本人が材料を集めないって変な話じゃない?だから、明日は私も行くわ!!拓哉君の友達にそう伝えておいて!!」

 

 住良木「何を言っているんだ七色!!確かに明日の午後は本番前に休暇を取らせるつもりで空けているが、お前には他にやる事があるだろ?」

 

 七色「ノープログレムよ!!スケジュールなら頭にしっかり入ってるし、練習だってみっちりやったもの!!」

 

 住良木「だが…!!」

 

 拓哉「いいじゃねぇか。本人がやりたいって言ってるんだし」

 

 七色「これはもう決定事項よ!!」

 

 ここまで来たら何がなんでも折れないと知っている住良木はため息をついてカウンターに向き直った。

 

 住良木「分かった…」

 

 七色「さっすが住良木君!!」

 

 住良木「だが、俺も行くぞ」

 

 拓哉&七色「「えっ!?」」

 

 住良木「七色のステータスは前線に出られる程じゃない。七色1人行っても足でまといになるハズだ。俺も一緒に行けば成功率も今より上がる」

 

 セブンとスメラギの実力が如何程か分からない拓哉には何とも言えないが、本人がこれだけ自信を露わにしているのだから相当の手練れと見て間違いないだろう。

 明日、拓哉達が最後の材料である"神の絹(ラグ・シルク)”を獲得する場所は鍛冶妖精族(レプラコーン)領の北西にある峡谷だ。

 メンバーとしてはタクヤにユウキ、ストレア、キリト、リズベット、クラインの6人にセブンとスメラギを合わせた8人で挑む。

 鍛冶妖精族(レプラコーン)領と言う事でリズベットにナビゲートを任せているが、目的地である峡谷にはワイバーン系のモンスターが大量に存在するらしく、覚悟を決めて挑まなければならない。

 

 拓哉「とりあえず明日のメンバーには伝えたから明日の13時にアルンの入口前に集合な」

 

 七色「分かったわ!!あ〜なんだかうずうずしてきちゃった〜!!」

 

 エギル「頑張れよ!俺は行けねぇが健闘を祈ってるぜ!」

 

 3人の前に注文した料理が配膳され、今はクエストの事を忘れてエギルの料理に舌づつみをうち、午後の仕事に向けてのエネルギーを蓄えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月11日13時00分 ALO央都アルン入口前

 

 セブン「プリヴェート!私はセブンよ。こっちが助手のスメラギ君」

 

 スメラギ「…」

 

 セブンとスメラギはタクヤに案内されてアルンの正面入口へとやって来た。すると、そこには既にキリトを始めとしたメンバーが集まっていた。

 

 キリト「オレはキリト。こっちから順にユウキ、ストレア、リズ、クラインだ。今日はよろしく頼むぜ」

 

 クライン「うぉぉぉぉぉぉっ!!!!俺の目の前に本物のセブンちゃんがぁぁぁぁぁぁっ!!!!お、オレ!!いつも応援してますっ!!!!」

 

 セブン「あ、ありがとう…。タクヤ君、タクヤ君の友達って少し変ね」

 

 タクヤ「…否定出来ないのがつらい」

 

 スメラギ「…」

 

 エギルから聞いた話だが、クラインはセブンが注目を浴び始める前からファンだったらしく、ファンの集まりである"クラスタ”に属しているようだ。クラスタの特徴としてセブンがいつも頭に被っている帽子の羽を体のどこかに身につけている。

 クラインも首元にセブンとお揃いの羽が身につけられていた。

 

 キリト「スメラギもよろしくな」

 

 握手をスメラギに差し出したキリトだが、その手は交わされる事はなく、スメラギが冷たい視線を向けて言った。

 

 スメラギ「馴れ合うつもりはない。目的の物さえ手に入ればそれでいい」

 

 セブン「ちょっとスメラギ君!!こっちが頼んでるんだからそんな事言わないのっ!!」

 

 タクヤ「みんなも気にすんな!?アイツ、いっつもあんなだから…」

 

 時すでに遅しとはこの事であろう。全員、少なからずスメラギの態度に憤りを感じたが、これから一緒にパーティーを組むのだから仲良くやっていきたいと思うのが勝り、スメラギについて深く言及しなかった。

 リズベットの案内で一同は翅を生やし鍛冶妖精族(レプラコーン)領へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月11日 14時00分 ALO鍛冶妖精族(レプラコーン)領 峡谷地帯

 

 7月の下旬に行われたアップデートで央都アルンと各領地を隔てていた山岳は高度制限内に縮小されて、タクヤ達は一気に鍛冶妖精族(レプラコーン)領の峡谷地帯へとやって来る事が出来た。

 そこには事前に知らされていた通り、ワイバーンの群れが所構わず徘徊しているのが見える。

 なるべく気づかれない為に地上へと降り立ったタクヤ達は徒歩で奥へと進み始めた。

 

 ユウキ「ねぇ、タクヤ…」

 

 タクヤ「どうした?」

 

 ユウキ「セブンってボクの予想よりもずっと子供なんだね?」

 

 タクヤ「あ?あぁ…でも、ユウキより頭いいけどな」

 

 ユウキ「天才って言われてる子と比べないでよ!!タクヤのいじわる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 セブン「あなた、タクヤ君のガールフレンド?」

 

 2人の背後からひょっこり顔を出したセブンがユウキに話しかけた。

 ユウキも頬を赤くしながら肯定するとセブンがニタァとイタズラを仕掛けるような表情になり、おもむろにタクヤの腕を抱きしめた。

 

 ユウキ「!!?」

 

 セブン「ユウキ、タクヤ君を私に譲る気はないかしら?」

 

 ユウキ「あ、あるわけないでしょ!!?」

 

 セブン「タクヤ君って結構頼りになるし、このまま私の助手としてアメリカに連れて帰りたいんだけどー」

 

 タクヤ「おいセブン!冗談はこれぐらいにしねぇとユウキが…」

 

 またしても遅かった。タクヤがユウキに弁解しようと視線を向けた瞬間、ユウキの掌が視界全てを覆い、強烈な一撃をその身に叩き込まれた。

 5m程飛ばされたタクヤは近くの岩を粉々にしながら落ちた。

 

 ユウキ「タ〜ク〜ヤ〜…」

 

 タクヤ「ま、待て!!あれはセブンの冗談であってオレは無実だし、ここ圏外だからダメージ入っちゃうし…」

 

 ユウキ「…遺言はそれだけでいいのかな?」

 

 タクヤ「えっ、ちょ、マジでヤバいって!!?目が座ってるって!!?オレは悪くないって…ぎゃああああああああああああああっ!!!!!」

 

 目も当てられないような惨劇がセブン達の前で繰り広げられていたが、恐ろしくなったのか誰もその光景を見る者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキ「…」

 

 キリト「…大丈夫か?」

 

 小声で話しかけてきたキリトに顔のアバターが真っ赤になったタクヤがジト目でキリトに言った。

 

 タクヤ「大丈夫に見えるか?危うく死に戻りする所だったぞ。テメェら誰1人止めてくれねぇし」

 

 リズベット「だって、止めに入ったら巻き添え食らいそうだったし」

 

 セブン「痛いのは嫌だわ」

 

 タクヤ「元はと言えばセブンのせいだろっ!!?」

 

 タクヤが死ぬ間際でユウキは正気を取り戻し、瀕死のタクヤを置いて先へと向かい始めてしまった。

 慌ててキリトとクラインがタクヤの元に馳せ参じたがHPがあと数ドットという所で踏み止まり、なんとか一命を取り留めていた。

 今はポーションを何本も飲みながらHPを全快にさせている所だ。

 

 キリト「今日はアスナもリーファもシリカもいないから回復が心許ないな」

 

 リズベット「見るからに脳筋パーティーよねー。てか、あのスメラギって人…水妖精族(ウンディーネ)じゃないの?だったら回復魔法は御手の物じゃない」

 

 スメラギ「残念だが、俺は回復魔法は使わん」

 

 リズベット「げ…聞こえてた…」

 

 キリト「なんで回復魔法を覚えないんだ?あれば戦闘でも重宝するだろう?」

 

 回復魔法はこのALOの戦闘にとっても重要な役割(ファクター)だ。

 それ1つで戦略が10にも100にもなったりする。

 

 スメラギ「単に俺には必要ないと言うだけだ。そこまでの強敵に会った試しがないからな…。あの火妖精族(サラマンダー)の両手剣使いでさえ俺にとって敵ではなかった」

 

 クライン「も、もしかしてそりゃあ…ジンの旦那の事じゃあ…」

 

 クラインによれば先日ALOでも強豪と言われているユージーンが無名の水妖精族(ウンディーネ)決闘(デュエル)をした。

 激戦の末、軍配が上がったのは水妖精族(ウンディーネ)の刀使いであり、その上その水妖精族(ウンディーネ)はHPをグリーンに留めたままユージーンを降したとALO中に噂が流れているようだ。

 

 キリト「すごいな…。今度オレとも戦ってくれよ」

 

 スメラギ「…お前達の事はよく知っている。"SAO帰還者(サバイバー)”と呼ばれ、あのデスゲームで2年間に渡り戦いを興じられていたと聞く。だが、俺は自分で見た事しか信じない」

 

 タクヤ「つまりは戦ってる所を見ないと決めらんないって事ね。遠回しすぎなんだよなー言い方が」

 

 キリト「だったら、とりあえず前のモンスターを蹴散らせばいいって事だよな?」

 

 先行していたユウキとストレアがタクヤ達の元まで戻ってくると、それを追いかけて10匹以上のワイバーンの群れが滑空しながら牙を向いた。

 

 タクヤ「よしっ!!スメラギはセブンのサポートに回れ!!ここはオレ達がやる!!」

 

 ユウキ「いくよっ!!」

 

 セブン「みんな頑張ってー!!」

 

 クライン「よっしゃぁぁっ!!見ててくれよセブンちゃん!!」

 

 リズベット「調子乗ってヘマなんかしないでよ」

 

 ストレア「クラインならやりそうだよね〜」

 

 クライン「ヘマなんかすっかよっ…ってテメェら抜け駆けはズリィぞ!!?」

 

 クラインが刀を構えた時にはタクヤとユウキ、キリトが前に出ていた。

 遅れながらクラインとリズベット、ストレアも前へと出る。

 

 タクヤ「そらぁっ!!」

 

 腰に携えた片手用直剣を瞬時に抜き、低空で攻めてくるワイバーンに斬り掛かる。

 首筋を斬られたワイバーンが荒々しい悲痛を雄叫びを上げるが、さらに2撃目のユウキの剣閃がワイバーンの首を断ち切った。

 アイコンタクトで確認を取り、2人は群れの中へと駆け込んでいった。

 

 キリト「オレも負けてられないな…!!」

 

 黒い刀身を露わにしたキリトは岩壁に向かい飛翔し、それを足場にワイバーンの1匹に刹那の一撃を浴びせた。

 

 クライン「負けてられっかよっ!!」

 

 刀が鮮やかな赤色のエフェクトを撒き散らし、襲い掛かってくるワイバーン目掛けてそれは弾けた。

 

 

 刀ソードスキル"浮舟”

 

 

 火炎と化したエフェクトがワイバーンの斬り口からメラメラと燃え上がり、やがてポリゴンとなって四散した。

 

 クライン「どうーセブンちゃーん?俺の活躍見ててくれたー?」

 

 セブン「前!!前!!」

 

 クライン「へ?」

 

 振り返ると2匹のワイバーンがクラインに急接近していた。刀を振るよりもワイバーンの牙がクラインを噛みちぎるのが早い。

 多少のダメージを覚悟していたクラインの前を2つの影が飛び出し、ワイバーンに蹴散らした。

 

 

 片手長柄ソードスキル"トリニティ・アーツ”

 

 

 両手剣ソードスキル"メテオフォール”

 

 

 轟雷と爆炎がワイバーンを包み込み、そのエフェクトが消えるのと同時にワイバーンもポリゴンへと消えていった。

 

 リズベット「だから調子乗んなって言ったのよ」

 

 ストレア「あはは〜クラインまぬけ〜」

 

 クライン「くっ…。こ、これからだっての!!」

 

 リズベット「ちゃっちゃと終わらせないといけないの本当に分かってるんでしょうねぇ!!」

 

 クライン「分ぁってるよ!!さぁ、来やがれ…って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「何してんだ?もう終わったぞ」

 

 クライン「何ぃぃぃぃっ!!?」

 

 各々武器を懐に仕舞い、先へと再び進み始めた。

 クラインだけが何故か渋々だったが、これから先もまたこういう戦闘に入るだろう。今のままの強さなら問題はないが、レアアイテムがあるフィールドであの程度の強さのワイバーンだけではないのは明白だ。

 

 ユウキ「いやぁスッキリしたぁ!!」

 

 タクヤ「ユウキ!!オレの獲物横取りすんなよ!!」

 

 ユウキ「早く倒さないからでしょー?早い者勝ちって言葉知らないのー?」

 

 キリト「はは…。どうだ?オレ達も結構出来る方だろ?」

 

 スメラギに不敵な笑みを浮かべたキリトだが、冷静なスメラギに一蹴される。

 

 スメラギ「あの程度のモンスター相手に鼻を高くするのは勝手だが、高が知れるぞ?」

 

 ユウキ「言うねー君。じゃあ、次はボクと2人だけでワイバーンをどっちが多く倒せるか勝負しない?」

 

 スメラギ「…興味─」

 

 ユウキ「逃げるの?」

 

 スメラギ「!!…いいだろう。その勝負受けてやる」

 

 ユウキ「そうこなくっちゃ!!」

 

 ユウキに乗せられた事に今更気づいたスメラギだが、既に遅く再びワイバーンの群れが襲い掛かってきた。

 

 ユウキ「みんなは手を出さないでね!!」

 

 キリト「オレもやりたかったな…」

 

 ストレア「頑張れ〜ユウキ〜!!」

 

 セブン「スメラギ君も頑張りなさーい!!」

 

 1匹のワイバーンの咆哮を合図に2人が前へと駆けた。

 腰から抜いた刀を握り締め、スメラギがワイバーンと対峙する。

 下から振り上げられた刀がワイバーンの翼を断ち、態勢を崩した隙に腹部を突く。

 

 ユウキ「やるね!!だったらボクも…!!」

 

 数匹のワイバーンが一斉に襲い掛かるが、ユウキは動じる事なく、ワイバーンの背から背へと飛び移り、離れ際に剣閃を繰り出す。

 そして、1箇所にまとまった所を青白いエフェクトと共にユウキが駆けた。

 

 

 片手用直剣ソードスキル"ヴォーパル・ストライク”

 

 

 一閃がワイバーンを貫き、激しい爆風と共にポリゴンが爆散した。

 

 リズベット「いやーやっぱり迫力と言うか、凄いわねー」

 

 タクヤ「…そうだな」

 

 スメラギ「…!!」

 

 さらにワイバーンの数は増えていくが、(ことごと)くユウキとスメラギがポリゴンへと姿を変えさせていった。

 最後の1匹となり、それを同時に攻撃を繰り出した事で勝負はついた。

 

 ユウキ「タクヤ!!ちゃんと何匹倒したか数えてた?」

 

 タクヤ「数えてるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …この勝負は引き分けだな」

 

 スメラギ「…」

 

 ユウキ「えぇー…結構イケたと思ったのにー!!」

 

 互いに17匹ずつ倒し、もしかすればこの一帯のワイバーンは狩り尽くしたんじゃないかと言うぐらい凄惨としている。

 

 ユウキ「くやしいなー…また今度やろうね!!」

 

 スメラギ「…あぁ」

 

 タクヤ「もうそろそろ最奥部だから気ぃ引き締めろよー」

 

 セブン「いよいよね…!なんだかワクワクしてきたわ!!」

 

 スメラギ「セブンは前に出るな。俺達でどうにかする」

 

 "神の絹(ラグ・シルク)”はこの峡谷の奥に住みついた巨大なワイバーンのドロップアイテムらしいのだが、住処としている巣にも確率で落ちている事があると情報がある。

 そのワイバーンが強大で今まで狩りに来たプレイヤーも20人を優に超えるレイドを組んで挑んだとの事だ。

 

 クライン「おいおい!そんなヤバそうなヤツ相手にたったこれだけの人数で戦ろうってのか?」

 

 リズベット「確かにねー…。アスナやリーファの回復支援もないし、シリカとピナの陽動も出来ないしね」

 

 タクヤ「それでもやるしかねぇ!!これがラストチャンスだ!!絶対ぇ勝つ!!!」

 

 瞬間、激しい地鳴りがタクヤ達に襲い掛かった。

 しばらくすると地鳴りは止み、奥から獣の息遣いが微かに聞こえてきた。

 

 タクヤ「…行くぞ!!」

 

 峡谷の最奥部へとたどり着いたタクヤ達は、目の前で翼を翻し、突風を発生させながらゆっくりと起き上がる巨大なワイバーンと対峙した。

 

 クライン「デケェな…!!」

 

 ストレア「すご〜い!!」

 

 リズベット「凄すぎるわよっ!!?」

 

 セブン「いかにもラスボスって感じよね!!?」

 

 タクヤ達の10倍はあろうかという巨躯と鋭利な鱗がこのモンスターの強さを物語っている。

 ワイバーンがタクヤ達に気づくとHPバーが6本現れ、固有名"エンシェント・ドラグーン”なるネームドモンスターが雄々しい咆哮を上げて前足で踏みつけようと動いた。

 それを瞬時に見抜いたタクヤとキリトが全員に指示を出して散開させる。

 

 キリト「みんな!!オレとタクヤでタゲを取るからその隙に弱点を探してくれ!!」

 

 タクヤ「はぁぁっ!!!」

 

 翅を羽ばたかせエンシェント・ドラグーンの頭上へと駆け上がると翼を翻しながらエンシェント・ドラグーンも飛翔する。

 峡谷には天井は存在しない為、どこまでも高く飛べるが体の大きさ、馬力が桁違いなモンスターと競えば、当然モンスターに軍配が上がる。

 

 タクヤ「くそっ!!」

 

 完全にタクヤにターゲットを絞ったエンシェント・ドラグーンはタクヤの頭上を位置取るや否や翼を畳み、重力に逆らう事なく落ちてくる。

 横の幅が狭い峡谷で降下などすれば逃げ場などはない。

 咄嗟に片手用直剣を抜き、最終源のダメージでエンシェント・ドラグーンを受け止めた。

 

 タクヤ「ぐぐ…!!!このヤロウ…!!!」

 

 ユウキ「タクヤ!!」

 

 クライン「このままじゃ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スメラギ「俺が行く…!!」

 

 セブンの護衛をクラインとリズベットに託し、急降下するエンシェント・ドラグーン目掛けて飛翔した。

 合流する途中で自身に強化魔法を幾重にもかけ、両手で握り締めた刀に全神経を注ぎ込む。

 すると、刀を青白いエフェクトが包み込み、次第にそれは人間の腕を模した形状へと変化していく。

 

 キリト「あれは…!!」

 

 セブン「いっけぇー!!スメラギくーん!!!」

 

 ALOにはSAOを参考にしたソードスキルが数多く実装されているが、それとは別にALO独自のシステムとして採用されたものがある。

 それは自らの剣技をソードスキルに昇華できるというものだった。

 スメラギはそれを使い、唯一のソードスキルを作り上げたのだ。

 

 

 OSS(オリジナルソードスキル)"テュールの隻腕”

 

 

 巨大な隻腕が力任せにエンシェント・ドラグーンに振り下ろされた。

 激しい斬撃音と衝撃が入り、エンシェント・ドラグーンが態勢を崩しながら岩壁へと叩きつけられる。

 

 タクヤ「すげぇ…」

 

 タクヤも翅を羽ばたかせ、スメラギの元へと駆け寄った。

 

 タクヤ「助かったぜ。今のOSSすげぇな!!あれでユージーンを倒したのか?」

 

 スメラギ「ゴチャゴチャとうるさいぞ。まだ奴は倒れていない」

 

 スメラギによる攻撃もエンシェント・ドラグーンのHPを3割程度削った程度に留まり、岩壁から出ようと強引に翼を翻す。

 瓦礫を落としながら脱出してきたエンシェント・ドラグーンが鼻息を荒くしスメラギを凝視する。

 

 スメラギ「どうやらタゲは俺に移ったようだな」

 

 タクヤ「らしいな。どうする?」

 

 スメラギ「このまま倒すに決まっているだろう。それ以外に選択肢などはない」

 

 タクヤ「お前らしいな…。だったら、オレも一緒にやる!」

 

 スメラギ「あんな無様な醜態をさらしてお前に何が出来る?はっきり言ってお前の力は俺よりも下だ。余計な手出しはかえって邪魔になる」

 

 タクヤ「そんな堅ぇ事言うなよ。言い訳するつもりはねぇけど本気出すからさ」

 

 メニューウィンドウを開いて片手用直剣を装備から外し、代わりに両拳に朱色に輝く装甲手(ガントレット)を装備する。

 リズベット武具店謹製の"無限迅(インフィニティ)”を軽く慣らすと両拳を打ちつけて火花を散らす。

 

 スメラギ「…それが本気か?」

 

 タクヤ「あぁ。やっぱりコッチの方がしっくりくる。さぁて…名誉挽回といきますか!!」

 

 タイミングを見計らっていたのかエンシェント・ドラグーンが2人に近づき翼を広げ、見るからに殺傷能力が高い羽根を撃ち始めた。

 

 キリト「タクヤ!!スメラギ!!」

 

 ユウキ「危ない!!!」

 

 だが、タクヤは無限迅(インフィニティ)で、スメラギは刀で撃ってきた羽根を悉く叩き落としていく。

 

 リズベット「スメラギって人…化け物地味てるわ…」

 

 セブン「!!…リズベット、スメラギ君達がタゲを取っているうちに巣で"神の絹(ラグ・シルク)”がないか探しましょ!!」

 

 リズベット「そうね!クライン!!ストレア!!アンタ達もついてきて!!」

 

 ストレア「りょ〜か〜い」

 

 クライン「おうよ!!セブンちゃんは俺が守ってやるから安心しな?」

 

 リズベット「そういうのはいいから!!ユウキはタクヤ達のサポートに回ってやって!!」

 

 ユウキ「分かった!!」

 

 リズベット達がエンシェント・ドラグーンが元いた巣へと走り出し、ユウキがキリトの元へと飛び立った。

 エンシェント・ドラグーンの攻撃が止むとタクヤとスメラギ、加えてキリトとユウキが突撃をかけた。

 

 タクヤ「うらぁぁぁっ!!」

 

 ユウキ「やぁぁぁっ!!」

 

 

 体術スキル"エンブレイザー”

 

 

 片手用直剣ソードスキル"ホリゾンタル・スクエア”

 

 

 拳打と斬撃を交互に叩きつけると、呻き声を上げながらもエンシェント・ドラグーンが反撃にかかる。

 だが、紙一重の所で回避し、その隙をついてキリトとスメラギが前へと出た。

 

 

 片手用直剣ソードスキル"バーチカル・アーク”

 

 

 刀ソードスキル"残月”

 

 

 スメラギの"残月”のおかげで仰け反り(ノックバック)が生じ、そこをタクヤが上空からスピードを乗せてエンシェント・ドラグーンに向かって急降下してきた。

 

 

 ナックル系ソードスキル"アキュート・ヴォールト”

 

 

 推進力も上乗せされ、威力は通常の2〜3倍まで上がったタクヤの拳が深々とエンシェント・ドラグーンの腹部に突き刺さった。

 堪らず体中の酸素を吐き出し、そのまま地上へと落ちていった。

 

 タクヤ「おーい!お前らそこにいると巻き添え食うぞー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セブン「ないわねー…」

 

 リズベット「巣に落ちてるのは確率だから今回はないのかもね…」

 

 ストレア「ここすごくフカフカで寝心地がいいよ〜」

 

 クライン「ストレアっちもちゃんと探そうぜー…って、みんなここから離れろ!!!」

 

 セブン&リズベット&ストレア「「「え?」」」

 

 クラインが指差した上空を見上げると空を覆わんとばかりにエンシェント・ドラグーンが背中から落ちてきていた。

 

 セブン&リズベット&ストレア「「「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!?」」」

 

 一目散に巣から退避し、間一髪の所で難を逃れたセブン達は安心したのも束の間、次第に怒りがこみ上げタクヤを怒鳴りつけた。

 

 タクヤ「悪い悪い。夢中になってたもんだから」

 

 リズベット「悪い悪い…じゃないわよ!!こっちは危うく死ぬ所だったんだから!!」

 

 ストレア「そ〜だよ〜!!ちゃんと言ってくれなきゃ!!!」

 

 セブン「こんなに心臓がバックバクしたの生まれて初めてなんだけどっ!!?」

 

 クライン「テメェコノヤロー!!ちったぁ周りを見や─」

 

 瞬間、土煙が天高く舞い上がり、地響きと共にエンシェント・ドラグーンが立ち上がってきた。

 

 スメラギ「文句は後にしろ。まずは奴を片付けてからだ」

 

 キリト「さっきの攻撃で7割方HPは削れたな」

 

 ユウキ「この調子ならなんとかなるかもね!」

 

 すると、雄叫びを上げながらエンシェント・ドラグーンは自らの翼で体を覆い、その場を微動だにしなくなった。

 数秒経過すると、周りから煙が立ち込め、全員の息が上がり始めた。

 

 セブン「なんだか暑くない?」

 

 ストレア「水浴びしたい気分だよ〜!!」

 

 キリト「まさか…」

 

 タクヤ「どうやら…そのまさかみたいだぜ?」

 

 周囲の気温が上昇していくのを感じるとエンシェント・ドラグーンが顔を出し、口を大きく開け空気を体内へと貯め始めた。

 

 ユウキ「もしかして…ヤバいんじゃない?」

 

 スメラギ「…来るぞ!!」

 

 瞬間、口を前方に向け、一直線にタクヤ達目掛けてブレスを吐いた。

 火炎が周囲を覆っていき、タクヤ達は空へと緊急退避を余儀なくされた。

 

 クライン「ウッソだろお前っ…!?」

 

 セブン「地上が…炎に呑まれた…!」

 

 キリト「これで常時アイツの得意な空中戦に持っていかされたな…」

 

 火炎の中を平然と歩行するエンシェント・ドラグーンは上空に視線を定め、翼を翻し飛翔する。

 その際に火炎を身に纏い、鱗が紅色に美しく輝き始めるとエンシェント・ドラグーンがスピードを上げてタクヤ達に迫り来る。

 

 スメラギ「くっ」

 

 タクヤ「スメラギ!!」

 

 咄嗟に交わして見せたが、退避が遅れたセブンを庇い、ダメージが入った。

 

 セブン「スメラギ君!!」

 

 スメラギ「狼狽えるな…。ただの擦り傷だ」

 

 とは言ったものの、スメラギは火傷状態の阻害(デバフ)が付与され、HPが独りでに減少していっている。

 

 ユウキ「早く治さないと…!!」

 

 ユウキはストレージから火傷用のポーションを取り出し、スメラギはそれを受け取って一気に飲み干した。

 

 スメラギ「…ダメだな」

 

 キリト「!!…呪いか」

 

 リズベット「じゃあ、あれを1度でも食らったら治せないって事!?」

 

 セブン「ごめんなさい!!私が躱すのを遅れたばっかりに…スメラギ君が…」

 

 スメラギの腕の中で涙を流したセブンに普段聞かない優しい口調でセブンに言った。

 

 スメラギ「泣くな。俺は問題ない…。セブン、おまえは俺達"シャムロック”のマスターだ。自分の仲間を信じろ。…ここにいる者の事を信じろ。絶対にお前の期待は裏切らない…!!」

 

 セブン「スメラギ君…」

 

 タクヤ「だったら、さっさと片付けるしかないな!!」

 

 ユウキ「だね!!全力でぶつかるよ!!!」

 

 セブン「タクヤ君…みんな…!!」

 

 涙を腕で払い、セブンは一歩下がって全員に祈りを捧げる。

 

 セブン(「みんな、私の為に全力で戦ってくれてる。…私もみんなの役に立ちたい!…私に出来る事は…」)

 

 雄叫びを合図に最後の攻防戦へと踏み切った。

 HPがイエローに変わっている事から攻撃パターンが変わる事は分かっている。案の定、先程まで使わなかった尻尾を使い、周囲に無差別攻撃を繰り出している。

 

 リズベット「これじゃあ近づけない!!」

 

 キリト「くっ…」

 

 エンシェント・ドラグーンに近づけない事に苛立ち地味たようなものを感じているとどこからか心が穏やかになるような優しい歌が聴こえてきた。

 

 ユウキ「これは…」

 

 ストレア「綺麗な声〜…」

 

 スメラギ「…セブン」

 

 声がする方へ視線を向けると、金色の淡い光に包まれながらセブンが歌を歌っていた。

 

 キリト「そうか…。セブンは音楽妖精族(プーカ)だから歌自体に支援(バフ)が発生してるんだ!!」

 

 クライン「おぉっ!!すっげぇ強化されてるぜ!!しかも、生でセブンちゃんの歌が聴けるなんて感動もんだぁぁっ!!!」

 

 タクヤ「呑気な事言ってる場合か!!今の内にアイツを叩くぞ!!」

 

 ユウキ「でも、近づこうにもあの攻撃が邪魔で…」

 

 ユウキが言い終わる前にタクヤは1人、エンシェント・ドラグーンに突撃をかけた。

 タクヤの接近に気づいたのか、不規則な攻撃がタクヤの頭上に振り下ろされる。

 

 ユウキ「危ないタクヤ!!!」

 

 タクヤ「おらぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 刹那、タクヤは体を捻らせ、エンシェント・ドラグーンの攻撃を回避し、すかさず尻尾を掴んだ。

 

 タクヤ「うおぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 STR(筋力)を全開にしてエンシェント・ドラグーンの巨躯を小柄なタクヤが振り回し始めた。

 エンシェント・ドラグーンも動揺を隠せず、手足をバタつかせている。

 だが、無意味な行動だと言わんばかりにさらに回転を上げ、大人しくなった所を見計らって岩壁へと投げ捨てた。

 勢いよく叩きつけられた為一時的行動不可能(スタン)になり、それを待っていたのかタクヤが峡谷に響き渡る程叫んだ。

 

 

 

 

 タクヤ「ラストアタックだ!!!!行くぞぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

 

 

 

「「「おぉっ!!!!」」」

 

 

 セブンを除く全員の武器にエフェクトが発生し始めている。

 だが、その中でも特に異質な光を発しているのがあった。

 

 スメラギ「お前も…OSS持ちか…?」

 

 ユウキ「そっちだってあんな凄い一撃はズルいよ…!!」

 

 一時的行動不可能(スタン)が切れた瞬間、エンシェント・ドラグーンはブレスを放とうとするが、それは無残にも阻止され嗚咽を吐いた。

 

 

 刀ソードスキル"禊椿”

 

 

 片手長柄ソードスキル"アダマン・ブレイカー”

 

 

 両手剣ソードスキル"レイ・ブランディッシュ”

 

 

 片手用直剣ソードスキル"ノヴァ・アセンション”

 

 

 ナックル系ソードスキル"シルバー・ヘッドバット”

 

 

 5人の最上位ソードスキルが次々とエンシェント・ドラグーンに直撃していき、HPも残すは1本という所まで追い込めた。

 

 タクヤ「ラスト頼んだ!!!」

 

 スメラギ「うぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

 OSS"テュールの隻腕”

 

 

 巨大な刀がエンシェント・ドラグーンの片翼を斬り刻み、跡形もなく消滅させた。

 

 ユウキ「楽しかったけど…もう終わりだよっ!!!!」

 

 紫色に輝くエフェクトが周囲を照らし、ユウキもまるでいつも傍にいたかのように懐かしく、暖かい、大切なものを守る為の力を振るった。

 

 

 OSS"マザーズ・ロザリオ”

 

 

 マザーズ・ロザリオによる怒涛の11連撃が全て直撃してエフェクトが爆散すると、遅れてエンシェント・ドラグーンのHPが全損し、周囲をポリゴンの欠片で覆い尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 

 歓喜を上げたユウキを筆頭に互いに労をねぎらいながら、地上へと降り立った。

 ユウキの元にエンシェント・ドラグーンのドロップアイテム"神の絹(ラグ・シルク)”が入っていた。

 

 ユウキ「タクヤ!!ドロップしてたよ!!」

 

 タクヤ「よくやったなユウキ!!最後のマザーズ・ロザリオ、凄かったぞ!!」

 

 ユウキの頭を撫でながら褒めると、ストレージから神の絹(ラグ・シルク)を取り出し、タクヤへと渡す。

 

 タクヤ「これで材料は全部集まったな。先に帰ってアシュレイの所に行くか…。セブン、さっきはありがとな!明日、衣装を持っていくからな!!またな!!」

 

 ユウキ「あー待ってよタクヤー!!」

 

 ストレア「私も行く〜!!」

 

 タクヤとユウキ、ストレアは一足先にアシュレイの元へと峡谷を後にして行った。

 

 セブン「お礼…言いそびれちゃったね」

 

 スメラギ「…」

 

 キリト「じゃあ、オレらもそろそろ帰ろうぜ?」

 

 セブン「うん!!みんな、今日まで私の為にありがとう!!お礼って訳じゃないけどタクヤ君経由でみんなの分のチケットを送らせてもらうわ!!」

 

 クライン「まじかよっ!!?よっしゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 リズベット「楽しみねー!!」

 

 こうしてセブンのコンサート衣装に必要な材料は全て集め終わり、タクヤはそれを持ってアルンで店を構えているアシュレイの元に赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月11日 18時20分 ALO央都アルン アシュレイの店

 

 扉を開くと頭上で鈴の音が鳴り、奥の部屋から奇妙なメイクを施したアシュレイが現れた。

 

 タクヤ「よ、よぉ…」

 

 ユウキ「お邪魔しまーす…」

 

 アシュレイ「あらぁっ!!!タクヤ君にユウキじゃないっ!!!!久しぶりねぇっ!!!!アスナから話を聞いてずっと待ってたのよぉ!!!!」

 

 再会後すぐにフォールドされたタクヤとユウキは体を軋ませながら再会を喜んだ。

 別にアシュレイの事を嫌っている訳ではないのだが、アシュレイの性格と風貌が相まって苦手意識を持ってしまったのだ。

 

 ストレア「2人に意地悪しちゃダメ〜!!」

 

 アシュレイから2人を引き剥がしたストレアが珍しく怖い表情でアシュレイを睨んだ。

 

 アシュレイ「あら?あなたも凄く可愛いわね!!」

 

 ストレア「え?本当?」

 

 アシュレイ「本当よ。私、生まれてきて1度も嘘をついた事ないの!私が可愛いって思ったのは紛れもなく本当の事よ!!」

 

 ストレア「えへへ〜ありがと〜!!あなたって良い人なんだね〜!!」

 

 先程までの表情は綺麗に消え去り、会って数秒で意気投合したストレアとアシュレイはハグを交わした。

 とりあえず本題に入る為、アシュレイはタクヤとユウキをテーブルへと案内した。

 

 アシュレイ「さっきも言ったけどアスナから大体の事情は聞いてるわ。早速材料とイメージ図を出してくれないかしら?」

 

 タクヤ「あぁ。これで頼む」

 

 テーブルの上に出されたのは先程まで採取した"神の絹(ラグ・シルク)”を始め、"緋色の貴石”、"乙女のヴェール”、"キューティングハット”、"シャインヒール”、"シルファリアの花”の6種類だ。

 

 アシュレイ「…よくもまぁこんな豪華なアイテムを1週間足らずで集め切ったわね。正直感動してるわ…」

 

 ユウキ「中々大変で…さっきまで神の絹(ラグ・シルク)を取りに行ってきたんだよ」

 

 アシュレイ「それは御苦労様だったわね。で、明日の昼までにこれを完成させればいいの?」

 

 タクヤ「あぁ、明日の13時からコンサートが始まるからそれまでにはセブンが着ている状態じゃねぇと…」

 

 13時からは本番と同じ流れでリハーサルをしたり、衣装に合わせてセットを変えなければいけなくなるかもしれない為、明日の午後には衣装が出来ていなければいけない。

 

 アシュレイ「ふふっ。そんなの私にかかれば御茶の子さいさいよ!!軽く徹夜するけど必ず完成させてみせるわ!!」

 

 タクヤ「ありがとうアシュレイ!!」

 

 ユウキ「よかったねタクヤ!!」

 

 アシュレイ「お代は結構よ。タクヤ君には1つ貸しね!」

 

 瞬間、背筋に寒気が生じたが、ぐっと我慢した。

 ユウキも横で哀れみの笑みを浮かべていたが気にしないでおこう。

 

 タクヤ「じゃあ、オレ達は帰るよ」

 

 ユウキ「またね〜」

 

 ストレア「今度私が作った服持ってくるからね〜」

 

 アシュレイの店を後にした3人はその足でイグシティにあるホームへと帰り、疲れを癒すかのようにベッドの中で眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年08月11日 19時30分 東京都品川区 某ホテル

 

 住良木は自室に入り、鞄から携帯を取り出してある人物に電話をかけた。

 数コールして出たのは陽気な口調で応対する男性。

 

「もしもし、今日も1日ご苦労だったね」

 

 住良木「いえ、仕事ですから…。それで報告なんですが…」

 

「うんうん。君の感じた通りに言ってみたまえ」

 

 住良木「…七色はおそらく、あなたの研究には手を貸さないと思います」

 

「理由は?」

 

 住良木「七色は確かにVR技術の研究には全力で臨む姿勢です。ですが、あなたの研究は七色が願っている理想と相反するものです。あの娘はまだ幼く、自制心というのも発展途上でまだ危うい所があります。それに…」

 

 七色は()()()N()P()C()()()()()()()()()()()()()()絶対に首を縦に振らないだろう。

 七色はVR技術でいろんな人の笑顔を望んでいる。その研究に悲しみや怒りなどの負の感情があってはならないのだ。

 

「なるほど…。まぁ、十中八九そういう返事が来ると思ってたけどさ、無理強いさせる訳にはいかないからね。この計画ばっかりは…」

 

 住良木「すみません」

 

「謝らなくてもいいよ。別に君が悪いなんて思ってないからさ。それで、()()1()()()()は?」

 

 口調が変わり、住良木に妙なプレッシャーを与える。

 住良木もそれを感じ取ったのか気を引き締め続けた。

 

 住良木「…奴もおそらくは協力的ではないでしょう。むしろ、それを知れば絶対に阻止しようと画策してきます」

 

「コッチもかぁ〜…。正直彼に断られたらこの研究も随分な足踏みをさせられるんだけどね〜…。まぁ、それはまたおいおい考えるとするよ。報告ご苦労だったね。今日をもって君への指令は終了するよ」

 

 住良木「ありがとうございます。では俺はこれで…」

 

「あっと…最後にいいかな?」

 

 住良木「?」

 

「君は僕の研究をどう思ってる?やっぱり人道的じゃないかな?」

 

 しばらく考え、住良木はこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 住良木「正直言えば…胸糞悪い事この上ないですね…」

 

「…ありがとう。参考にさせてもらうよ」

 

 電話を切り、窓から東京の夜景を眺めながらふと考えた。

 本当にあの研究が実を結ぶ時が来るのだろうか。それが成されれば人間にとってはリスクを背負わずに、社会にとっては自国の拡大の為に大いに貢献するだろう。

 だが、人間の感情の面ではどうなのだろうか。

 笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだりと喜怒哀楽があるのが人間である生物の根幹に触れる部分だ。

 ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 住良木「俺なら耐えられないな…」

 

 この考えは不毛だと悟り、電気を消して自室を後にしようとする。

 ジャケットを羽織りながら何気なしに携帯の画面に目を入れた。

 

 住良木「奴は…拓哉なら、アンタの研究を否定するだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 菊岡さん」

 

 

 

 

 

 

 

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如何だったでしょうか?
スメラギ君のOSSって範囲広いし、スメラギ君自体MP高いからチート地味てるよね。
マザーズ・ロザリオも撃てたし書いてて個人的には楽しかったです。
次回はとうとうコンサート本番!さらにその後にもイベント発生!
…とかハードルを上げにいく作者。

評価、感想お待ちしてます!


では、また次回!

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