ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で47話目になります。
タイトル通り今回で藍子と直人の物語は終了です。
3話にかけて書いていきましたけど、中々難しいですね。
藍子も本編には全くと言っていい程出てませんし、直人もオリキャラなのでそこをどうくっつけていくか一番悩みましたね。
もしかしたら意味わからんみたいな所もあるかもしれませんがよろしくお願いします!


P.S
UAが30000を突破してました!
これからも頑張りますのでよろしくお願いします!!


では、どうぞ!


【47】踏み入る藍色の少女(後編)

 2025年06月05日 13時30分 ALOイグシティ転移門前

 

 昨夜、思わぬ障害が立ち塞がったがなんとかその日中にアルンへと着いたタクヤ達は時間も夜中の1時を回っていた為、宿屋で解散し、翌日の昼頃再び集合した。

 イグシティにやって来てすぐにクラインと合流した。

 

 クライン「よォ!待ってたぜ!!」

 

 タクヤ「他のみんなは?」

 

 クライン「もうお前のホームに集まってるぜ」

 

 ユウキ「よーし!じゃあ行こうか!」

 

 クラインも交え、タクヤ達はマイホームへと急いだ。

 マイホームに着くなり中からアスナとリズベット、シリカが出迎える。

 

 リズベット「アンタ達遅かったわね?何かあった?」

 

 キリト「ルグルー回廊で海竜に襲われてさ…。

 まぁ、倒したのはタクヤだけどな」

 

 アスナ「あそこのモンスターってかなり高レベルって聞いたよ?

 タクヤ君1人で倒したの?」

 

 タクヤ「いや、オレが来た時にはそこそこ弱ってたからな。

 カヤトとランが応戦してるのをバトンタッチした感じ」

 

 シリカ「ラン…さん?…そちらの方ですか?」

 

 ラン「は、初めまして!ランと言います!

 現実(リアル)でユウキの姉をしてます!」

 

 ランは3人に挨拶を済ませて、立ち話も程々に中に入る事にした。

 各々ソファーに腰を掛け、ユウキとアスナで人数分の紅茶を淹れる。

 そして、全員に行き渡った事でクラインが咳払いをして注目を集めた。

 

 クライン「えー…今日集まってもらったのは他でもねぇ。

 結構ヤバそうなクエストを見つけたからだ」

 

 キリト「ヤバイって何が?」

 

 リズベット「クラインの言うヤバイってイマイチ乗り気になれないのよねー」

 

 クライン「何言ってんでぇ!!これは結構ガチなんだよ!!

 聞いて驚くなよ?特にリズは耳の穴かっぽじってよぉく聞けよ?

 このクエストで手に入る報酬が伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を溶かしてしかゲット出来ない"オリハルコンインゴット"なんだよ!!」

 

「「「「!!?」」」」

 

 全員が紅茶を飲む手が止まってしまう程、クラインの口から出た言葉に衝撃が走った。

 

 クラインの言う"オリハルコンインゴット”とはこのALOで最強と謳われる伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を溶かして入手できる鉱石だ。

 その鉱石は市場で出回る事はなく、ましてや、伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を溶かすような事は熱狂的(コア)なプレイヤーは天地がひっくり返ってもしない貴重な物だ。

 そもそも伝説級武器(レジェンダリーウェポン)は武器の種類だけあり、その武器の中で頂点に位置づけられる物で、入手方法は様々だが並大抵の努力では目で拝む事すら叶わないだろう。

 それを溶かして出来る鉱石がクエストの報酬にあるとはクライン以外誰も想像すらしなかったのは必然である。

 

 シリカ「そ、それって本当なんですか?」

 

 クライン「シリカまで疑ってんのか!?だったらこれを見やがれっ!!」

 

 メニューからクエスト情報をみんなに提示すると、確かにクエスト報酬の欄にしっかりと"オリハルコンインゴット”と記載されている。

 

 リズベット「…マジ?」

 

 リーファ「これってどこ情報なの?」

 

 クライン「シンカーさんが運営してるMMOトゥデイに今日の朝載ってたんだよ!!これで信憑性は高くなったろ?」

 

 シンカーとはキリトとアスナ、ユイがSAO時代に交友を持った人だ。

 今はサラリーマンをする傍らMMOゲームの新情報などを随時更新したりと中々の信頼を勝ち得ていた。

 

 アスナ「シンカーさんの攻略サイト見てみたけどどうやら本当みたいだね」

 

 リズベット「じゃあ本当にオリハルコン手に入るの?

 やったぁぁ!!これでリズベット武具店がさらに繁盛するわ!!」

 

 キリト「オレ達も新しい剣が手に入るな」

 

 タクヤ「オレはそこまで欲しいって訳じゃないんだけどな」

 

 クライン「でも、貴重なレアアイテムが報酬だ。クエスト内容はどえらいハードなもんだぜ…」

 

 さらに続きを読むと、オリハルコンインゴットは"月の欠片”というアイテムと指定数集める事で交換できるようなのだが、肝心の"月の欠片”がどこにあるのか、はたまたどのモンスターからドロップするのか書かれていなかった。

 

 シリカ「どこに行けば見つかるんでしょうか?」

 

 ストレア「う〜ん…。指定数って事はやっぱりモンスターからドロップするんじゃない?」

 

 ユウキ「モンスターって言ってもALOにはすごいいっぱいモンスターいるしなー…」

 

 ただ闇雲に探しても体力と時間を消費するだけで効率が悪い。

 何も書かれていないという事は()()()()()()()()()()()()()()に隠されているともとれる。

 

 カヤト「月に因んでるんでしょうか?」

 

 キリト「月ってもなぁ…。そんなモンスターいたっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラン「ウサギ…」

 

 

 

 

 ユウキ「え?」

 

 ランが無意識に口から出た言葉に全員の視線が集まった。

 

 ラン「…え?な、何か…?」

 

 ユウキ「姉ちゃん、今なんて言ったの?」

 

 ラン「え、だから餅つきしてるウサギが頭に浮かんだんだけど…何かまずかったですか?」

 

 キリト「いや…可能性はあるかもな。サクヤさんにも最近各種族領地に凶暴なウサギ型のモンスターが現れたし…」

 

 実は昨日までキリトとリーファがサクヤに招集されていた原因がそれなのだ。

 領地周辺を徘徊しているウサギのせいで初心者も迂闊に圏外に出れなくなっており、困っていると。

 そこでそのウサギを討伐するようにサクヤから頼まれた次第だ。

 

 リーファ「確かに、あのウサギ結構強かったけど"月の欠片”なんてアイテムはドロップしてないけど?」

 

 キリト「その時は多分近くでそのクエストをしていて何匹かが溢れたんだろうな…。領地周辺のフィールドは初心者向けに設定されてるハズなのにあのウサギの強さは異常だと思ったが…これなら説明もつく」

 

 カヤト「じゃあ、クエストを受領してそのウサギを倒していけばオリハルコンが手に入るんですね?」

 

 リズベット「そうと決まれば早速行くわよぉ!!クライン!!

 そのクエストが受けられるNPCはどこにいるの?」

 

 クライン「世界樹前の階段の所にある露店だけど…」

 

 リズベット「じゃあみんな!!行くわよぉ!!」

 

 リズベットは興奮気味なのか鼻息を荒くして、ホームから飛び出ていった。

 

 タクヤ「あんなに興奮する事ないんじゃないか?」

 

 シリカ「リズさんは鍛冶屋もしてますから私達よりもテンションが高いんですよ」

 

 アスナ「とりあえずリズを追いかけなきゃ!!」

 

 リズに遅れて残りのメンバーもホームを後にした。

 その時、ランはクラインを呼び止めた。

 

 クライン「どうしてぇ?ランちゃん」

 

 ラン「あの…クラインさん。…私に刀の使い方を教えてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年06月05日 13時55分 ALO央都アルン 世界樹前

 

 クラインの言った通り、露店には1人のNPCがいた。

 キリトがそのNPCに声をかけてクエストアイコンが表示されるとみんなの同意を得てこれを承諾、受注した。

 

 キリト「それじゃあ、今回はオレがパーティーリーダー…と言いたいけど、パーティーを3つに分けよう」

 

 ストレア「どうして〜?」

 

 キリト「さっきも言ったけどあのウサギはめちゃくちゃ強い。

 オレとリーファも途中から来たサクヤさんのシルフ隊の援護がなかったらヤバかった程だ。

 かと言って、ドロップ率も分からないモンスター相手にアイテムを集めようとしたら膨大な時間がかかると思う」

 

 タクヤ「じゃあどうすればいいんだ?」

 

 キリト「だから、3隊に別れるんだ。

 救いにもあのウサギには弱点があった。

 魔法攻撃の後、物理攻撃を食らわせればダメージ量が違う。

 それを意識して戦えばこの人数でもいけるハズだ」

 

 ユウキ「じゃあ、パーティー編成しなくちゃね。ボクは当然タクヤとだよ!!」

 

 ストレア「私もタクヤと組む〜!!」

 

 パーティー編成はなるべく戦力を均等化しなければならない。

 もし、戦力が薄いパーティーがあればそこから全滅なんて事も考えられるからだ。

 

 キリト「じゃあ、タクヤとユウキ、ストレアに…シリカが入ってくれ」

 

 シリカ「は、はいっ!!」

 

 シリカが多少顔を赤くしていたのは誰も気づかなかったがキリトはさらにパーティーを編成していく。

 

 キリト「ランはまだ始めて日が浅いからな…。カヤトとリーファ、それにクラインもついてくれ」

 

 リーファ「了解だよっ!」

 

 クライン「よろしくなっ!!」

 

 ラン「よ、よろしくお願いします…」

 

 そして、最後に残った3人でパーティーを組み、計3隊が編成された。

 

 キリト「じゃあ、2時間後に途中経過も兼ねてホームに集まろう!」

 

「「「おぉっ!!」」」

 

 3隊はそれぞれ散り散りになり、クエスト対象である"イレイザーラビット”を狩りにフィールドへと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現時点パーティー編成

 

 A.キリト(リーダー)・アスナ・リズベット

 

 B.タクヤ(リーダー)・ユウキ・ストレア・シリカ

 

 C.クライン(リーダー)・リーファ・カヤト・ラン

 

 

 side.A_

 

 

 2025年06月05日 14時20分 中立域 平原フィールド上空

 

 リズベット「ねぇアスナ?」

 

 アスナ「どうしたのリズ?」

 

 アルンを出てしばらくしてキリト率いるA隊は中立域の空を飛んでいた。

 その時、アスナはリズベットから名前を呼ばれ顔だけを向けて応対する。

 

 リズベット「ラン…だっけ?ユウキの姉さんの…。

 あの子、終始元気がなかったんだけど何か知らない?」

 

 リズベットに言われてアスナはやっぱりと思った。

 実はアスナも今日会ってから元気がないとは感じていたが、その理由がなんなのかは分からないでいた。

 

 アスナ「私もそう感じて飛び立つ前にそれとなく聞いてみたんだけど、何でもないの一点張りで…」

 

 リズベット「うーん…。昨日何かあったんじゃないかなー…。

 ねぇ!キリト!ランの事、何か知らない?」

 

 前を飛んでいたキリトがアスナとリズのいる所までスピードを落とし、横につける。

 

 キリト「何かって?」

 

 リズベット「ほら!昨日海竜に襲われたって言ってたじゃない?

 その時に嫌な事でもあったんじゃないの?」

 

 キリト「うーん…オレ達が駆けつけた時はランがカヤトを庇ってる所しか見てないしな…。その前に何かあったんじゃないか?」

 

 アスナ「キリト君にも分からないんじゃしょうがないね。

 でも、少し心配なんだ…。あの子、何か無理してるんじゃないかって」

 

 キリト「…」

 

 アスナの心配する気持ちも分からないでもない。

 だが、こう言えば厳しいかもしれないがそれはランが自分で解決すべき問題だとキリトは考えていた。

 言われた通りにしか出来ないようではこの先も辛い事がきっと起こる。

 その時に自分自身で正しい選択をしなければ自分だけでなく、周りの仲間達にも被害が出てしまうからだ。

 例え、ゲームの世界だと言ってもその考えはまかり通る。

 

 リズベット「ユウキと違って大人しいから自分の意見を内に塞いでるんじゃないかって思ったんだけど…」

 

 キリト「…今は分からない事を考えても仕方ない。

 それにその為にランにはカヤトを一緒に組ませたんだから。

 カヤトならなんとかやるさ」

 

 アスナ「…そうだね。私達よりカヤト君に懐いてるみたいだったし」

 

 リズベット(「アレって懐いてるって言うのかな…?」)

 

 ホームへやって来た時、ランは終始カヤトの裾を掴み、離そうとはしなかった。

 カヤトから離れること無くそのまま別れてきたのだが、リズベットには懐いているというよりカヤトがいないと生きていけないと言った強迫観念地味たものを感じ取っていた。

 おそらく、キリトやアスナのような鈍感な感性の持ち主には分からないだろう事は長年親友を張っていたリズベットにはお見通しだ。

 いよいよ、カヤトだけが頼りだと思っていたその時、地上に"イレイザーラビット”が数体ポップし、キリトの指示の元、狩りに飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side.B_

 

 

 同年同時刻 ALO中立域 浮島フィールド

 

 タクヤ率いるB隊はアルンの上空を浮遊している浮島に赴き、既に"イレイザーラビット”の討伐を開始していた。

 

 タクヤ「シリカ!!バブルブレスを頼む!!」

 

 シリカ「はい!!ピナ!!バブルブレス!!」

 

 すると、イレイザーラビットを包み込むようにピナのバブルブレスが放たれた。

 キリトの情報通りなら今なら物理攻撃をが通るハズだ。

 タクヤとユウキ、そしてストレアが一斉に斬り掛かる。

 イレイザーラビットは雄叫びを上げながらそのままポリゴンとなり消滅した。

 

 ストレア「よしっ!まずは1匹目だね〜!!」

 

 タクヤ「シリカ、ピナ、ナイスアシストだったぜ」

 

 シリカ「ありがとうございます!!よかったねピナ!!」

 

 頑張った御褒美としてピナの好物であるナッツを1つあげると、ピナは嬉しそうにそれを食べ、可愛らしい鳴き声を上げた。

 

 ストレア「あ〜…やっぱり1匹目じゃドロップしなかったね〜」

 

 シリカ「それにこのウサギすごく強いですよ。

 4人がかりでもキツイですね」

 

 タクヤ「そうだな…。これでドロップ率も低かったら相当辛いぞ」

 

 1匹目では流石に"月の欠片”がドロップするとは思っていなかったが、それを100個で1個のオリハルコンと考えればある程度のドロップ率の低さも分かる。

 それに加えてイレイザーラビットは強力で名前の通り、消えたかと思わせる程速かった。

 ピナのバブルブレスで動きを封じれているが、それも複数回やらなければ倒せない程に硬い。

 

 ストレア「本当にオリハルコン貰えるかな〜?」

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「どうしたユウキ?さっきから黙ってるけど…」

 

 みんなと別れてから戦闘中に至るまでユウキは集中力に欠け、どこか上の空だった。

 咄嗟にそれを感じ取ったタクヤはユウキを後衛へと下げ、様子を見ていたのだ。

 

 ユウキ「ん?ちょっと、姉ちゃんの事考えてて…」

 

 シリカ「ランさんをですか?そう言えばランさんは初心者でしたよね?」

 

 ストレア「でも、カヤトにリーファがいるから安心だよ〜」

 

 タクヤ「そこにクラインも入れてやってくれ…」

 

 妹が姉を心配するのは当たり前だ。

 ましてや、慣れていない仮想世界での初めてのクエストがこの難易度では心配にならない訳がない。

 

 タクヤ「ランにはカヤトやリーファ、クラインだって付いてる。大丈夫だよ」

 

 ユウキ「うん…そうなんだけど…姉ちゃん…何か焦ってるみたいで…」

 

 シリカ「焦ってるって…やっぱり初心者だからみんなに付いていけるか不安になってるんじゃ…」

 

 確かに、いきなり初心者を連れて挑むクエストではなかったかもしれない。

 ちゃんとした段取りを踏ませてから挑みたかったが、ランからも参加させてくれと強く言われてしまい、断る理由も見つからず今に至る訳だが。

 

 ストレア「やっぱりお姉ちゃんが心配?」

 

 ユウキ「そうだね。小さい時からボクの為にいろいろ無理してたし、姉ちゃん引っ込み思案だからこういうみんなで遊ぶって事なかったんだよね。いつも1人で本を読んでたな…」

 

 タクヤ「ユウキとは正反対だな」

 

 ユウキ「小さい時はボクも外では遊んでたけど、友達なんていなかったよ?…友達を作ったらいなくなった時悲しくなっちゃうからさ」

 

 タクヤ「…」

 

 以前、まだタクヤ達がSAOに囚われていた時、ユウキから自分の事を打ち明けてくれた時があった。

 昔、木綿季と藍子は両親を病気で亡くし、身寄りのなかった2人は陽だまり園に引き取られた。

 その頃から2人はなるべく人と関わらないように生きてきた。

 また、大切なものを作ってしまえばそれが消えた時の悲しみを経験してしまったからだ。

 藍子はそれが尾を引いて今でも通っている学校で友達と呼べる者が1人もいない。

 唯一、陽だまり園以外で親しくなっているのは拓哉の弟である直人だけであった。

 

 ユウキ「カヤトがいるから大丈夫だと思ったんだけど…」

 

 シリカ「ランさん、カヤトさんの側から離れようとしませんでしたもんね…」

 

 ストレア「そりゃあランがカヤトの事大好きだからだよ〜」

 

 シリカ「えぇっ!!?そ、そうなんですかっ!!!」

 

 タクヤ「まだ確証はねぇけどな」

 

 タクヤは現実世界である日、直人に藍子の事どう思ってるのか聞いてみた。

 

 

 

 直人『どうって…別に何とも思ってないよ。

 藍子さんは兄さんの彼女のお姉さんってだけだよ』

 

 拓哉『そんな風に思ってる奴と一緒に出掛けたり、面倒見たりしねぇだろ』

 

 直人『兄さんの言ってる意味が分からないけど…()()()()()()()()。それに誰だって相談されたら応えてあげるだろ?

 それと一緒だよ。僕がやってるのは単なる善意からだ』

 

 拓哉『…あっそ』

 

 

 

 ふと、そんな話もしたなと思い出すとタクヤはそれと一緒にある事を思い出した。

 子供の頃、直人には友達と呼べる者がたくさんいた。

 クラスの中の中心人物とはいかなかったが、それなりに友達はいたハズだ。

 友達の家に泊まったり、どこか遠くへ一緒に行ってみたり、大抵の子供がする遊びだってした事があるハズだ。

 何より、あんなに()()()()()()()()を取ったりはしなかった。

 友達に辛い事があれば、自分の事のように辛く感じ、涙を流すような感情豊かな少年だった。

 だが、拓哉がSAOから解放されてから久しぶりに会った直人には変化が生じていた。

 何に対しても無気力でそのせいで部活を転々としたり、子供の頃とはまるで別人のような振る舞いだった。

 

 タクヤ(「アイツも…やっぱり…」)

 

 答えはおそらく合っている。

 むしろなぜ気付かなかったのか不思議でならない。

 あの時は拓哉も切羽詰まり、思考回路が乱れていたせいもあるが、自分だけじゃないと改めて理解したのだ。

 

 ユウキ「タクヤ?」

 

 タクヤ「!…な、なんだ?」

 

 ストレア「今度はタクヤがぼ〜…としちゃってどうしたの?」

 

 シリカ「どこか気分でも悪いんですか?」

 

 タクヤ「そ、そんなんじゃねぇよ!!ほら!!ウサギもリポップしたし狩りを再開させるぞ!!」

 

 タクヤは再びポップしたイレイザーラビットに逃げるように走った。

 

 ユウキ「ちょっと待ってよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side.C_

 

 

 同年同時刻 ALO中立域 密林フィールド

 

 クライン率いるC隊はジャングルが生い茂る密林フィールドへと足を運んでいた。

 

 リーファ「なんか…ジメジメするね、ここ…」

 

 カヤト「密林フィールドですからね…仕方ないですけど…。

 本当にこの先に穴場があるんですか?」

 

 先頭を進んでいるクラインに問いかけると野武士ヅラをこちらに向けてニコッと笑って言った。

 

 クライン「あぁ!間違えねぇ!仕入れた情報じゃここに出るウサギはそこら辺のよりドロップ率が高いんだ!!」

 

 どこで仕入れた情報かは知らないが、かれこれ20分は草木を手で避けながらただひたすらに前に進んでいる。

 開けた場所もましてやイレイザーラビットなど影すら見えない。

 

 リーファ「熱い…」

 

 ラン「喉が…」

 

 カヤト「2人共、これを飲んでください。

 冷えてますから多少熱さや喉の乾きがなくなりますよ」

 

 そう言ってカヤトはストレージから2本のエールを取り出し、リーファとランに手渡した。

 

 リーファ「いいの?カヤト君」

 

 カヤト「万が一に備えて買っておいたんですよ。

 まだありますから欲しくなったら言ってください」

 

 ラン「ありがとうございます」

 

 クライン「おーい!俺にも1本くれー!」

 

 冷えたエールを受け取ったクラインが早々とボトルを空にしていると、密林が拓けた場所へと着いた。

 そこには大量のイレイザーラビットが徘徊しており、クライン達に気付くも攻撃してくる素振りを見せなかった。

 

 カヤト「…攻撃してきませんね」

 

 リーファ「元々、イレイザーラビットはこっちから何もしなきゃ襲っては来ないんだよ。

 でも、初心者がそんな事知らないから誤って攻撃しちゃったりするんだ」

 

 クライン「シルフ領でもそうだったのか?」

 

 リーファ「はい。後気を付けて欲しいのは仲間が殺られるとアクティブになるからやるなら各個撃破です」

 

 目の前には少なくても10以上ものイレイザーラビットがいる為、一気に攻められれば全員生きては帰れないだろう。

 

 カヤト「じゃあ、1匹ずつ僕が誘導しますから3人は討伐お願いします」

 

 クライン「まかせとけっ!!」

 

 リーファ「気を付けてね!!」

 

 早速、獲物となる1匹を誘導する為前に出ようとすると、背後から押し戻す力が加わった。

 

 カヤト「?…ランさん?」

 

 ラン「わ…私も…囮になります…」

 

 クライン&リーファ「「!!?」」

 

 カヤト「…ランさんはまだ始めて間もないし、スキルや熟練度だって低い。ここは僕に任せてクラインさんとリーファさんと一緒に…」

 

 

 

 

 

 ラン「私は強くなりたいんですっ!!!!」

 

 

 

 突然の怒鳴り声でイレイザーラビットも警戒を強める。

 それより驚いたのはカヤトだ。

 こんなにも感情を高ぶらせた姿を見た事がなかった。

 

 カヤト「ど、どうしたんですか?」

 

 ラン「私は…強くなる為に仮想世界(ここ)に来たんです!!

 あんなモンスターぐらい私が…!!」

 

 全てを言い切る前にランは刀を抜き、イレイザーラビットの群れへ先行した。

 

 クライン「っ!!カヤト!!!!俺らも行くぞっ!!リーファっちは後衛で回復頼むっ!!」

 

 リーファ「は、はいっ!!」

 

 ランを追う形でクラインとカヤトも前に出た。

 イレイザーラビットの警戒心も最高潮に達し、唸り声を上げながら威嚇する。

 だが、そんなもの今のランには関係のないものだ。

 強くならなければならない…。

 ただそれだけを考えて刀を構える。

 イレイザーラビットの横腹に陣取り、刀を大きく振り切った。

 ダメージを受けた事でイレイザーラビットからうめき声が上がり、さらに1撃、2撃と連続で斬り掛かる。

 

 カヤト「待ってください!!ランさん!!」

 

 クライン「不味いぞ!!他のウサギも興奮してきちまってる!!」

 

 ラン「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 無我夢中で刀を振り、反撃されようとも今まで見た事のない身のこなしで次々と避けては斬りつけていく。

 

 リーファ「…本当に初心者…なの?」

 

 カヤト(「でも、いつまでもそれが続く訳じゃない…!!」)

 

 確かに、今のランの動きなら簡単には攻撃を食らわないだろうが、()()()()()()()()と言い切れる。

 何故なら、ランはまだ始めて数週間という初心者で尚且つVRMMOはこれが初めての経験だからだ。

 キリト達のように仮想世界やゲームに慣れているならまだしも今のランでは歯が立たない事は明白であった。

 案の定、攻撃を捌ききれず直撃に至らないまでも刀を貫いて傷が目に付くようになった。

 

 クライン「ランちゃん!!一旦下がれ!!」

 

 ラン「やだ!!負けない!!負けたくない!!ここでまで…負けたくない!!」

 

 カヤト「っ!!」

 

 だが、ランがどれだけ負けたくないと思ってもイレイザーラビットが弱くなる訳でもなく、ランがいきなり強くなる訳でもない。

 徐々に劣勢を強いられていくランを他所にカヤト達も助太刀しようにも興奮したイレイザーラビットの壁の前に防戦一方を余儀なくされていた。

 

 カヤト「くっ…!!」

 

 ラン「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 カヤト「…」

 

 何故こんな事になったのだろう。

 何故ランはあんなに苦しそうな表情を見せるのだろう。

 ランが抱えているものを一緒に背負いたいとか助けてやりたいと思った事はない。

 ただ、それらに立ち向かう為の力を得る機会を与えただけだ。

 そこからは何もしていない。最低限の知識を教えただけで後はランがここまで歩いてきた。

 

 

 

 

 間違った道だとは知らずに…。

 

 

 

 

 

 リーファ「くっ…回復が追いつかない!!」

 

 リーファのMPもあと数回の回復魔法でそこがついてしまう。

 だが、イレイザーラビットの数は減る事なくカヤト達のHPを減らしていく。

 空中へ逃げようにもイレイザーラビットの巨躯の前ではハエのように叩き落とされてしまう。

 どこか1箇所だけでも穴を作り出せればこの危機を脱する事が出来るのだが。

 

 クライン(「穴を作ろうにもコイツら硬すぎだろっ!!」)

 

 カヤト(「それに…今のランさんは逃げるなんて考えてないだろうし…どうすれば…」)

 

 瞬間、カヤトの背後にいたイレイザーラビットが勢いよく吹き飛ばされた。

 

 カヤト「!!」

 

 背後には刀を振り、尚且つ初期魔法を放つランの姿があった。

 

 リーファ(「魔法の詠唱を言いながら刀を振ってる!!?」)

 

 クライン「な、何じゃそりゃ!!?」

 

 カヤト(「理屈としては可能だけど、まさかランさんが…そこまで…!!」)

 

 刀でイレイザーラビットの体を浮かし、その瞬間に闇魔法"シャドーボール”を放ち、そのまま彼方へと飛ばす。

 まるで芸者が舞台の中央で華やかに舞踊っているかの如く、人々を魅了する姿であった。

 

 クライン「…!!カヤト!!今の内に脱出するぞ!!」

 

 カヤト「は、はいっ!!」

 

 カヤトはランの元に駆けつけ、体を支えて翅を羽ばたかせる。

 

 ラン「いやっ!!離してください!!私はまだ…!!」

 

 カヤト「いくらなんでも無理があります!!その内殺られてました!!」

 

 ラン「!!?」

 

 ランがいくらイレイザーラビットを吹き飛ばしてもHPはほんの2割程度しか削られていなかった。

 つまりは、まだ死んでいないイレイザーラビットが再度襲い掛かってくる事を示している。

 

 カヤト「冷静になってください!!今のじゃアイツらは倒せない!!」

 

 ラン「…」

 

 ランも流石に堪えたのか暴れずにカヤトに担がれながら遠く離れた草原まで飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2025年06月05日 16時10分 央都アルン 世界樹前

 

 タクヤ「おぅ!そっちは遅かったな」

 

 クライン「まぁ、ちょっとな…」

 

 3隊が別れて2時間が経ち、途中経過を報せる為に再度元いた場所へと戻ってきていた。

 

 キリト「オレ達は20匹狩って月の欠片が…2個だな」

 

 ユイ「やっぱりイレイザーラビットから月の欠片がドロップする確率は約10%ですね」

 

 タクヤ「オレ達は31匹狩って5個だったぜ」

 

 リズベット「たった2時間でそんなに狩ったの!?」

 

 タクヤ「今回はシリカがMVPなんだぜ?

 シリカとピナがいなきゃここまで狩れなかった」

 

 シリカ「そ、それ程でもないですよ…!!」

 

 キリト「で、クライン達はどれぐらい集まったんだ?」

 

 キリトがクラインに尋ねるとクラインの表情に何か後ろめたさを感じ取った。

 よく見るとクラインだけでなく、カヤトやリーファ、ランも顔を下げ一言も口を開かない。

 

 ユウキ「どうしたの?」

 

 

 

 クライン「…俺達は…1匹も狩れてねぇ…」

 

 

 

 アスナ「え?」

 

 思わず声に出てしまったアスナは口を手で覆い、その理由を聞いた。

 

 クライン「それは…」

 

 タクヤ「?」

 

 カヤト「すみません!ちょっと僕がドジしちゃったせいで全然狩れなくて!!」

 

 クラインが口を開く前にカヤトが前に出てみんなの前で頭を下げた。

 

 クライン&リーファ&ラン「「「!!?」」」

 

 キリト「そ、そんなに気にする事じゃないぞ?

 誰だって調子の悪い時があるんだし…」

 

 ストレア「そうだよ〜。次頑張ろ〜!!」

 

 カヤト「ありがとうございます…」

 

 ラン「…なんで」

 

 ランが前に出ようとすると横にいたリーファに止められた。

 

 そして、また2時間後に今日の収穫を報告して解散するように言って再びイレイザーラビットを狩りに飛び立った。

 キリト達が飛び立ったのを確認してクラインが1度話をする為、近くの広場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クライン「さて…ここら辺なら誰も聞いちゃいねぇな」

 

 噴水がある広場の隅に設けられた質素な椅子に腰を掛け、本題に入る。

 

 クライン「ランちゃん、さっきの事で何か言う事はあるか?」

 

 ラン「…すみませんでした。…みなさんにご迷惑かけて」

 

 頭を下げて謝罪するもクラインの表情は何一つ変わらなかった。

 それもそのハズだ。

 クラインはこのパーティーのリーダーを務めている為、仲間の行き過ぎた行動や、作戦指示に従わない言動の責任を一身に背負っている。

 ランの先程の行動はパーティー全滅の可能性だって充分に考えられたものだ。

 謝っただけではいそうですかといく訳にはいかない。

 

 クライン「もちろんさっきみてぇな行動は今後も遠慮する所だ。

 だけどな…それ以上にランちゃんはさっきの事で自分の事しか考えてなかった。パーティーメンバーがいるのにも関わらずだ。

 厳しく言えばそういう奴にはパーティーから抜けてもらう」

 

 リーファ「クラインさん!!それはちょっと言い過ぎですよ!!

 ランだってランなりに一生懸命に…!!」

 

 クライン「一生懸命にやれば何をしても許されるってかい?

 そいつは違ぇぜリーファっち。

 仲間の安全が第一になってくるパーティー戦じゃどこで不測の事態に陥るかわかんねぇ。だから、リーダーを立ててそれを管理するんだ」

 

 クラインの言い分は何も間違っていないし、ランが行き過ぎた行動をしてみんなを危険に晒してしまったのは紛れもない事実。

 リーダーの視点から物を言えば、当然こうなる。

 内心リーファもそう思っている所がある。

 だが、まだランは初心者でパーティー戦だってこれが初めてだ。

 何かと分からない事もある。

 ランはそのまま立ち尽くしたまま拳を強く握った。

 

 クライン「それにカヤト。おめぇもだ」

 

 カヤト「!!」

 

 クライン「さっきおめぇはランちゃんを庇って自分のミスだとみんなに嘘をついた」

 

 リーファ「それはランの事を思ってやった事じゃないですか…!!」

 

 クライン「それがダメなんだよ」

 

 いつものお気楽な性格とは正反対に真剣な表情で説明を繰り返す。

 

 カヤト「…」

 

 クライン「カヤト…おめぇはこれから先もランちゃんが失敗した時、それを肩代わりする気か?」

 

 カヤト「それは…」

 

 クライン「そんなんじゃいつまで経ってもランちゃんは成長しねぇし、おめぇも一生そのまま何も変わらなくなっちまうぞ」

 

 自分のまいた種は自分で責任をつけろ…。

 クラインはその言葉の意味がこの中で誰よりも分かっている。

 あの世界でタクヤやキリト達と肩を並べて戦い抜いた彼はそれが分かった上でカヤトとランに言っているのだ。

 

 クライン「…ランちゃんはどうしてこの世界に来たんだ?」

 

 それはこの話の確信に触れる話題だった。

 危険に晒されたクラインからすればこの事を聞く権利がある。

 

 ラン「…私は…現実世界じゃ内気で、意見も言えないような弱い人間だからです。

 だから、この世界で強くなれれば現実世界でも強くなれる気がしたから…私は…」

 

 クライン「だから、強くなりたいってか…。確かにな。

 キリトのヤローも言ってやがったな。

 ここでの経験は必ず現実世界に還ってくる…。

 それは否定しねぇ。SAO帰還者(俺達)もいろんな経験をしてここまで成長出来た。

 だけどよ…その経験は1人じゃ出来ねぇんだぜ?」

 

 リーファ「…」

 

 クライン「そもそもここは安全なゲームの中だ。

 SAOみたいに殺伐とした所じゃねぇ。

 1人でやるよりダチと一緒にゲームする方が面白ぇし、経験もたくさん積むんだ。ランちゃんは強くなりたいって願うならそれはダチである俺達の願いでもあるんだ!1人で抱え込むな!みんながついてるんだから変に気張る必要なんざねぇよ!!」

 

 ラン「…はい!!」

 

 リーファ「クラインさん…ちょっと見直したかも…」

 

 クライン「見直したって…普段から俺はこういう男の前なのっ!!」

 

 普段見ているクラインの表情になり重たい空気を払う為、再度密林フィールドへと飛び立とうしすると、クラインが何かを思い出したようにランに言った。

 

 クライン「ランちゃんの剣捌き見てな…ありゃあ俺が教えてもいみないぜ?俺より剣捌きがいい娘っ子を教えるなんて事ぁ出来ねぇからな」

 

 ラン「え?」

 

 リーファ「そう言われてみれば、ランは剣道とか舞踏とかやってたりするの?」

 

 ラン「いえ…基本はカヤトさんから習いましたけど、それ以上の事は何も…。だから、刀を使っているクラインさんに使い方を教えてもらおうかと…」

 

 クライン「…かぁー!やっぱ姉妹だなー!!」

 

 ラン「え?」

 

 クライン「いやな、タクヤとユウキちゃんに初めて会った時な…。

 SAOにはソードスキルって技があったんだけどよユウキちゃんも1発でマスターしちまってよ。俺なんか何べんやっても上手くいかなかったのに…。そういう所は姉妹で似るんだな!」

 

 今思えばあの出会いは奇跡だった。

 あれから2年半。まさか、ここまで交友を築けるとは夢にも思わなかった。でもだからこそ、今がある。

 今があるからその先もあるんだ…とクラインは涙を滲ませながらいるかも分からない神様に感謝した。

 

 リーファ「クラインさん?」

 

 クライン「な、何でもねぇ!!さっ!!さっさとウサギ狩ってさっきの名誉挽回と洒落こもうぜ!!」

 

 リーファ「おぉっ!!」

 

 カヤト「行きましょう…ランさん」

 

 ラン「カヤトさん…。さっきはすみませんでした。私の為に…」

 

 翅を羽ばたかせながら密林フィールドを目指している途中、ランはカヤトに謝罪した。

 

 カヤト「…実を言うと、ランさんには失礼に聞こえると思うんですが、初めはランさん…藍子さんの事は顔見知り程度にしか捉えていませんでした」

 

 ラン「え!!?」

 

 カヤト「兄さんの彼女の姉ってだけで自分には関係ない…。

 関係を作る必要はないと思ってました。

 だって関係を作るって事は自分の心の中にその人がいるって事ですから。

 …僕はそれが嫌だった。大事なもの程壊れやすく消えていくから…」

 

 ラン「…!!」

 

 カヤトの…直人の中にも大切な者がいたのだ。

 それはおそらく、両親と長男である茅場晶彦だろう。

 それをほぼ同時に亡くした時のショックは計り知れない事を同じ境遇で生きてきた藍子には痛い程分かる。

 藍子や木綿季も両親を亡くして陽だまり園に引き取ってもらってから今でも友達と呼べる者はいない。

 木綿季はSAOの中で友人を作り、恋人に巡り会えたが、藍子の前にはそういう者は現れなかった。

 だから、木綿季が藍子の元に帰ってきてその事実を知り、藍子は少しだけ木綿季の事が羨ましくなった。

 いつか自分にもそういう人と巡り会えるのだろうか。

 はたまた一生このまま1人で生きていくのだろうかと時より考えるようになった。

 

 カヤト「だから、どの人とでも一定の距離を保ち続けた。

 深入りしたらダメだ…。これ以上先にはいけない…。

 僕は…1人の方が楽になれると考えました」

 

 ラン「…」

 

 カヤト「でも、藍子さんは少し違った…。

 なんて言うか放っておけなくて…一緒にいるだけで落ち着くというか、懐かしい感覚に囚われるんです…」

 

 ラン(「私と一緒だ…」)

 

 だからこの人が気になった。

 だからこの人に好意を持った。

 だからこの人を好きになった。

 互いに引き寄せられ、出会った2人。

 何でもない繋がりも太く、強く、想いを乗せればどんな事があろうと決して切れない強固な絆が生まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カヤト「藍子さん…これからも一緒にいてくれますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラン「…はい。ナオさんが私で満足してくれるなら…喜んで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またここに1本の強固な絆が生まれようとしていた。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
ちなみに付け加えるとこの後、イレイザーラビットの親玉が現れてみんなでそいつを倒しておしまいというすごいありきたりな展開なんですが、あくまで藍子と直人に視点を当てたかったのでそこの部分は省きました。
だってこれ以上書くと1話の話が長くなるもーん

評価、感想あればどしどし送ってください!


では、また次回!

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