ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という訳で36話目になります。
今回は区切りのいい所で終わらせていますのでいつもより文字数は少ないですがご了承ください。


では、どうぞ!!


【36】予選決勝戦②

 2025年05月11日 14時30分 妖精剣舞予選会場

 

 

 Dブロック決勝戦_

 

 

 クラインとエギルはキングを前に慣れ親しんだ緊張感に支配されていた。

 

 エギル「クライン…これは…」

 

 クライン「あぁ!ビンビン伝わってくるぜ!!

 まるで…SAOん時のフロアボスを前にしてる気分だ…!!」

 

 キングというプレイヤーが放つ殺気は控え室にいた時とは比べ物にならない。

 もしくは、今のキングこそが本当の姿なのか。

 クラインとエギルは愛用している武器を構え、キングに決闘(デュエル)を申請する。

 

 

『それではDブロック決勝戦を開始致しマス!!』

 

 

 カウントが進み、緊張感は極限にまで高められていく。

 クラインとエギルはSAOの攻略組の中でも指折りの実力者だ。

 仮想世界での戦闘経験はおそらくキングより多いハズだ。

 

 

 3…2…1…0

 

 

 クライン&エギル「「!!?」」

 

 何が起きたのか分からない。

 しばらくして腹部に痛みが走った。

 ここに来てようやく2人は斬撃を食らった事を知った。

 

 キング「…」

 

 エギル「な、何が起きた…?」

 

 クライン「全然…見えなかったぞ…」

 

 HPは残っているもののたった一撃で3割以上削られている。

 だが、驚くべき所は攻撃力よりもむしろ移動スピードの方だ。

 クラインとエギルはSAOで最も速いと謳われたアスナやユウキ、キリト、そしてタクヤなどSAOで攻略組を引っ張ってきた強者と肩を並べて戦っていた。

 そこで目が慣れ、周りが速いと言うスピードでも彼らが見たら遅いと感じてしまうだろう。

 だが、クラインとエギルはキングの速度に目が追い付かないどころか、何をされたかも一瞬では分からなかった。

 

 クライン「エギル…アイツは…」

 

 エギル「あの速さは…タクヤの修羅スキルよりも速かった…。

 何がどうなってるか俺にも分からん…。

 だが、やる事は変わらない…!!」

 

 クライン「…そうだな!!」

 

 エギルはクラインの前に立ち、両手斧の腹を見せながら徐々にキングに近づいた。

 

 エギル(「目で追いきれないなら武舞台の端に追いやってスピードを殺すしかない…!!」)

 

 キング「…」

 

 キングは一瞬でエギルの前に立ち塞がり、両手剣を振り下ろす。

 

 エギル「ぐっ!!」

 

 両手斧を盾がわりにしながらもキングは容赦なく両手剣での斬撃を続けた。

 

 クライン「エギル!!」

 

 エギル「お前は出てくるな!!巻き添え食う…」

 

 エギルの言葉は途切れ、代わりに小さな炎となってクラインの前に落ちた。

 

 キング「…つまらん」

 

 クライン「え…エギル…!!」

 

 クラインは目の前の現状を理解出来ず、手足が硬直している。

 

 キング「…目障りだ…消えろ」

 

 両手剣を下から振り上げられ、クラインの体は真っ二つとなり、残り火(リメインライト)となってしまった。

 

 

『…しょ、勝者!!キィィィングゥゥ!!!!』

 

 

 キングは予告した通り30秒でクラインとエギルを倒してしまった。

 会場もキングの勝利に素直に喜べない。

 開いた口が塞がらず、何と表現したらいいか分からないからだ。

 ただ、一言だけ言うのだとしたらキングはただとてつもなく…強い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「…」

 

 タクヤ達はDブロック決勝戦の試合を観ていたのだが、そのあまりの凄さに言葉を失っていた。

 

 リズベット「あんなの…アリ?」

 

 リーファ「強すぎるよ…」

 

 アスナ「キリト君…」

 

 キリト「…前戦った時より…強くなっている…!!」

 

 タクヤもキリトの意見と同じだ。

 この大会のルールとして1人での出場者は他の出場者全員の平均値がステータスに反映されてしまう。

 その為、いくら予選前に鍛えようと大会が始まれば、それは水の泡と化してしまう。

 だが、キングはその逆に明らかにステータスが上がっていた。

 

 ユウキ「どういう事なのタクヤ?」

 

 タクヤ「オレにも分からない…。だけど…」

 

 すると、ユウキはタクヤの表情を見て驚いた。

 タクヤは笑っていたのだ。

 キングの強さに感動し、早く戦いたいという衝動に駆られていた。

 

 ストレア「なんで笑ってるの?」

 

 タクヤ「とてつもなく強い…からかな?

 戦うその時までテンションが下がらねぇよ…!!」

 

 カヤト「…」

 

 カヤトはタクヤの表情を見て、昔の事を思い出していた。

 それはまだ茅場晶彦が大学に入る前にまで遡る。

 当時、拓哉は6歳、直人は5歳でよく晶彦が仕事に出ている両親に代わり拓哉達の面倒を見ていた。

 よく3人で今では懐かしい据え置き型のゲームをしていて、拓哉は晶彦に負けては挑み、負けては挑むの繰り返しだった。

 何度負けようとも諦める事はなかった。

 晶彦もたかがゲームでそこまで熱くなれるものなのかと拓哉に聞いた事がある。

 拓哉は怒りながらも当たり前だ、と言った。

 直人は負ければすぐに諦めていたし、第一、5歳児が高校3年生の男性に敵う訳もないのだ。

 だが、拓哉はそんな事これっぽっちも思っていなかったらしく、目が合いさえすれば挑戦しては惨敗を繰り返していた。

 いつもゲームをしている時は負けても笑って、心の底から楽しんでいたのだ。

 

 ユウキ「カヤトからも何か言ってあげてよー」

 

 カヤト「…まぁ、元々こういう人ですから…家の兄は」

 

 ユウキ「…それもそっか!」

 

 タクヤ(「やべぇ…!!手が、足が、震えてる…!!

 待ちきれねぇ!!早く…早くオレの番まで回ってこいっ…!!」)

 

 必死に衝動を抑え、平静を保つ。

 

 ユウキ「タクヤー?次はボクに見せ場くれるんだよね?」

 

 タクヤ「…」

 

 タクヤはそっと視線をユウキから離す。

 

 ユウキ「くれるんだよね?」

 

 タクヤ「…」

 

 次は体ごとユウキから遠ざかった。

 

 ユウキ「準決勝までタクヤ、ボクに全然戦わせてないじゃーん!!

 ボクも戦う戦う戦う!!」

 

 とうとうユウキは地面に寝転がり地団駄を踏み始めた。

 タクヤは知っている。

 こうなってしまってはこちらが折れる以外に道は残されていない事を。

 

 タクヤ「分かったよ…。悪かったな、楽しみとっちゃって。

 次は思う存分戦ってこい!!オレはサポートに徹するから頑張れよ!!」

 

 ユウキ「本当っ?わぁーいわぁーい!!タクヤ大好きー!!」

 

 ストレア「あ〜!!私もタクヤをギュ〜したい〜!!」

 

 タクヤは両サイドからユウキとストレアに抱きしめられ、身動き出来ない。

 

 リズベット「アンタは行かなくていいの?」

 

 シリカ「え、えっ!?な、何言ってるんですかっ!!

 わ、私はそんな…ちっとも羨ましいなんて…じゃなくて!!」

 

 シリカは途端に顔が赤くなっていき、額には冷や汗が滲んでいた。

 

 アスナ「リズ。あんまりシリカちゃんをいじめないの!」

 

 リズベット「だって面白いんだもん!」

 

『続いてEブロックの決勝戦を始めたいと思いますので、キリトアスナペア、カストロアストラペアは武舞台までお越しくだサイ!!』

 

 アナウンスで呼ばれた2組は控え室を後にして武舞台へと向かった。

 その道中キリトとアスナに対戦相手のカストロが話しかけてきた。

 

 カストロ「初めまして。

 今日はいい試合にしましょう()()()()()

 

 キリト「あぁ。こちらこそよろしく頼む」

 

 アストラ「よろしくね()()()()()

 

 アスナ「よろしくお願いします」

 

 挨拶を交わし終えた所で武舞台に到着し、同じタイミングで武舞台を上がった。

 

 

 Eブロック_

 

 

『では、Eブロック決勝戦を開始致しマス!!』

 

 キリトはカストロに申請を送り、カストロはそれを承諾する。

 カウントが始まり、キリトとアスナは剣を構えた。

 対するカストロとアストラは両手長柄を握り締め、交戦準備を整えた。

 

 

 3…2…1…0

 

 

 カウントが終わり、アスナは後方へキリトは前方に目掛けて地を蹴った。

 アスナは後衛からの魔法による攻撃と支援に徹するようだ。

 キリトは黒い刀身を鈍く光らせ、カストロとアストラに斬撃を放つ。

 アスナの支援魔法により、強化されたキリトが切り込むというバランスのとれた作戦だ。

 だが、カストロとアストラも伊達にここまで勝ち上がってきただけの事はある。

 アストラがすぐ様支援魔法をかけて、防御力を高めた。

 それを見越してカストロはキリトの前に立ち塞がり、両手長柄をキリトに突く。

 紙一重の所で躱されたが徐々に攻撃の手が増え、雨あられの如く両手長柄がキリトを襲う。

 

 キリト「くっ!」

 

 たまらずキリトが後退するが、カストロは攻撃の手を緩める事なくキリトに迫った。

 

 キリト「なかなかやるな…!」

 

 カストロ「()()()()に褒められて光栄です…!!」

 

 キリト「!!…お前は!!」

 

 キリトに隙が生じ、カストロの両手長柄が頬を掠めた。

 

 カストロ「しっ!!」

 

 さらに一撃、左肩を抉る。

 ダメージ量的にはまだ問題ではないが、貰い続けるのもジリ貧である事は明白でキリトは片手用直剣を両手長柄の上を滑らせ、大きく軌道を変えた。

 

 カストロ「!!」

 

 キリト「はぁっ!!」

 

 キリトの剣閃がカストロの右肩を捉えようと斬りかかった。

 だが…

 

 アストラ「ふっ!!」

 

 カストロの背後から放たれた水の鎖にキリトの剣は弾かれ、鎖は勢いを落とす事なくキリトの体を締め上げた。

 

 キリト「こ、これは…!!」

 

 アスナ「水流鎖(ウォーターバインド)!!すぐにキリト君を助けなきゃ…!!」

 

 アスナは細剣を腰あたりに付け、抜剣の構えのまま跳躍した。

 空中でならいくらでも勢いをつける事が出来る為、攻撃力が単純に倍上がる。

 空中から一直線にアストラを狙い定め、翅を消し、空中から身を投げた。

 

 アスナ「やぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 カストロ「アストラ!!あれは流石に避けなさい!!」

 

 アストラ「はい!!」

 

 アストラはキリトへの水流鎖(ウォーターバインド)を解除してその場を退く。

 アスナの攻撃は躱されてしまったが、キリトを助け出す事が出来ただけでも収穫はあった。

 

 アスナ「大丈夫?キリト君…」

 

 キリト「あぁ、助かったよ。…それにしても、アイツら…」

 

 キリトの中である疑惑が浮上してきた。

 キリトはALOをプレイし始めてまだ4ヵ月程度だ。

 周りからの認知度も低い。

 となれば、当然ここでは()()()で呼ばれる事もなくなった。

 

 キリト「…気を引き締めていくぞ、アスナ!!」

 

 アスナ「キリト君…うん!!私達なら誰が相手だろうと負けないよ!!」

 

 すると、カストロが土煙から現れ、アスナに刃を向けた。

 咄嗟に細剣で防御するが、AGIを重視したステータスのアスナにとってSTRまかせの戦法は分が悪い。

 すかさずキリトが加勢に入り、カストロの両手長柄を弾いた。

 だが、入れ替わるように次はアストラがキリトに巨大な土魔法を狙い撃った。

 キリトは翅を羽ばたかせ、空中に逃げたがそこにはカストロが待ち受けていた。

 

 キリト「しまった!!」

 

 カストロ「しっ!!」

 

 さらに速くなった両手長柄の雨にキリトのHPが軒並み削られていった。

 

 アスナ「キリト君!!」

 

 アストラ「あなたの相手は私よ!!()()さん!!」

 

 アスナ「!!」

 

 アスナがキリトの援護に回ろうとするがアストラがそれを阻む。

 

 アストラ「カストロ様の邪魔はさせません!!」

 

 アスナ「くっ…!」

 

 アストラが魔法の詠唱を唱え始め、アスナも魔法の詠唱を始めた。

 アスナもアストラも互いに水妖精族(ウンディーネ)を選択している。

 水妖精族(ウンディーネ)は9つの種族の中でも魔法の源であるMPの絶対量がダントツで、その2人が魔法を撃ち合えばただでは済まない。

 それを承知で2人は魔法を発動した。

 アストラが放ったのは水魔法の海豚の漣(ドルフィンエッジ)

 無数のエッジがプレイヤーを襲い、さらに麻痺を付与させる厄介な魔法だ。

 アスナは対抗して水魔法の激流葬(スプラッシュホール)だ。

 本来はプレイヤーを発生させた滝壺に沈める為の魔法だが、この魔法はMPを自分で調整出来る為、時には防御としても有効なのだ。

 激しい水飛沫が舞いながら武舞台は辺り1面小さな海と化した。

 

 アスナ(「この人…強い!!」)

 

 アストラ(「流石ね…!!でも、負けない!!」)

 

 地上でアスナとアストラが交戦する最中、空中ではキリトとカストロが刃を交え、激しい戦闘が行われている。

 

 カストロ「さすがに…強いですね…!!」

 

 キリト「…お前もな」

 

 カストロは息付く暇もなくキリトを突く。

 キリトもダメージ覚悟で前へ出て剣撃を浴びせた。

 互いのHPはイエローに達している。

 あと数発貰ったら倒れるという所まできていた。

 

 キリト「…カストロ。アンタは…SAO帰還者(サバイバー)だな?」

 

 カストロ「…どうしてそうだと?」

 

 キリト「オレを黒の剣士って呼ぶのSAOからの知り合いの奴だけだ。

 なら、お前はSAOでオレの事を知っていたとなる…」

 

 カストロ「…そうですか。そうですよね。

 いかにも、私はSAO帰還者(サバイバー)です。

 主に中層で活動していました」

 

 カストロは自らの過去をキリトに聞かせた。

 そして、地上でも…。

 

 アスナ「アストラさん。あなたはSAO帰還者(サバイバー)よね?

 私の事を閃光って呼んでたから…」

 

 アストラ「…はい。その通りです」

 

 アスナ「じゃあ、キリト君が戦ってるあの人も…?」

 

 アストラ「…カストロ様はSAOに閉じ込めれ、私が死の淵に立たされていた時に私をお助けになられた恩人です。

 私は…あの方に一生ついて行くと決めた…!!」

 

 すると、アストラは海を裂き、両手長柄をアスナに向け振り下ろした。

 アスナも魔法を中断して細剣で防ぐ。

 その衝撃で海が弾け飛び、会場中に海の雨が降り注いだ。

 

 アスナ「アストラさんは…カストロさんの事が好きなのね?」

 

 アスナがそう言った瞬間、アストラは誰が見ても明らかな程に顔を紅潮させ、アスナから距離を取った。

 

 アストラ「な、なな、何を…!!?

 そうか…私を誑かして気をそらすつもりですね!!

 そうはいきませんよ!!」

 

 アスナ「え?いや、そんなつもりじゃあ…」

 

 だが、時すでに遅し。

 アストラは詠唱を済ませ、自身の最上級であろう巨大な氷山を上空に出現させた。

 

 アスナ「うそ…!!」

 

 キリト「おいおい…デカすぎるだろ…」

 

 カストロ「やれやれ…アストラには困ったものだ。」

 

 アストラ「これで…終わりです!!」

 

 掛け声と共にアストラは氷山をアスナに落とした。

 あまりにも巨大な為、どこに逃げようとも確実に当たってしまう。

 

 アスナ(「私も魔法で…!でも、まだあれに勝てるだけの熟練度が…!!」)

 

 キリト「アスナ!!」

 

 アスナ「!!」

 

 キリトはカストロを退け、アスナの元へ戻って来た。

 

 キリト「カストロもあの魔法は予想外だったみたいだ。

 自分は早々と射程圏外に2人で逃げてる…」

 

 アスナ「じゃあ、私達はどうすれば…」

 

 キリト「…オレにまかせてくれないか?」

 

 アスナ「え?」

 

 正直、アスナはいくらキリトだと言ってもあれをどうにか出来る訳が無いと思った。

 最低でもSAOのキャラデータをコンバートしているなら可能性はあったが、今のキリトはそれには遠く及ばない。

 

 アスナ「でも、どうやって?」

 

 キリト「魔法には必ず当たり判定っていう核が存在する。

 それを的確に叩ければ魔法は威力を失うハズだ…。

 だから、アスナに借りたいものがある」

 

 アスナ「借りたいもの?」

 

 キリト「1つはアスナの細剣。二刀流でどうにかしてみる。

 もう1つが…」

 

 瞬間、キリトの顔がアスナに迫り一瞬驚いたが、その感情を容易く覆す事が起きた。

 

 アスナ「!!?」

 

 アスナの顔はどんどん赤くなっていき、終いには体から蒸気まで上っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場の中央でキリトはアスナに熱い口づけを交わした。

 

 キリト「もう1つは…アスナ。君の気持ちだ…。

 確かに借り受けたよ」

 

 そう言い残してキリトは両の手に剣を携え、落ちてくる氷山へと向かった。

 アスナはその後ろ姿をただ、熱い感触の余韻に浸りながら見送っていた。

 キリトは最高速度で氷山へと駆け上がる。

 おそらく、頭のいいカストロの事だ。

 氷山を壊したとしてもその先の展開すらも予想しているに違いない。

 

 キリト「なら、それを覆してこそだろ…!!」

 

 近づくにつれてキリトの周りが冷気で覆われる。

 所々体の一部も凍ってきていた。

 

 キリト(「時間はない…チャンスは…1度っきり!!」)

 

 ついに、氷山まで剣が届く寸前の場所まで近づいた。

 

 

 キリト「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 両手の剣を魔法の核目掛けて振り降ろされた。

 すると、氷山に亀裂が生じ、次第に氷山は亀裂を伸ばしていった。

 原型を留める事が出来なくなった氷山は砕け散りながら地上へと落ちては消えていく。

 

 カストロ「まさかとは思いましたが本当にやるとは…!!」

 

 アストラ「そんな…!!」

 

 アスナ「キリト君…」

 

 キリトの後ろ姿を見たアスナは思い出していた。

 あの世界でに2本の剣でみんなを守る為に戦っていた黒の剣士の姿を。

 今のキリトもスキルはなくてもアスナにとっては唯一無二のヒーローなのだ。

 

 キリト「よし!!…後は!!」

 

 キリトは土煙の中を進み、カストロとアストラの目の前に飛び出た。

 

 カストロ&アストラ「「!!」」

 

 キリト「ふっ!!」

 

 キリトの高速で振り降ろされた剣閃によりカストロとアストラはダメージを負う。

 カストロはレッドに差し掛かったがアストラはHPが全損してしまった。

 

 アストラ「カストロ様…すみません…」

 

 カストロ「もういいですよ。アストラはよく頑張りました。

 ゆっくり休んでください…」

 

 アストラ「…はい!!」

 

 残り火(リメインライト)へと変わってしまったアストラは地上へと落ちていった。

 

 キリト「残すはカストロ…お前だけだ…!!」

 

 カストロ「互いにHPはごく僅か…。

 次の一撃でどちらが勝つか決まりますね!!」

 

 互いに武器を構えるが、どちらも動こうとしない。

 いや、正確には今動けば負けなのだ。

 それだけの圧力の中に身を置いている気持ちは一体どうなんだろうか。

 だが、このままでは勝負がつかないのも確かだ。

 痺れを切らしたのかカストロが先に動いた。

 カストロの両手長柄が躊躇なくキリトの心臓を貫かんとする。

 キリトはそれを避け、カストロの右腕を切断しようと推進力をつけて右腕に刃を振った。

 カストロも咄嗟に右腕を引いて左手に持ち替え、脇腹に貫こうとする。

 瞬間、カストロの左手の両手長柄が刃を失っていたのだ。

 

 カストロ「!!?」

 

 この時、カストロの一瞬の隙をキリトは見逃さなかった。

 

 キリト「はぁぁぁっ!!!!」

 

 アスナから借り受けた細剣でカストロの心臓を貫いた。

 

 カストロ「ぐっ!!…やっぱり…強いです…ね…」

 

 どうやら力尽きたらしく、残り火(リメインライト)となって地上へと落ちていった。

 

 

『Eブロック決勝戦…勝者は、キリトアスナペア!!!!』

 

 

「「おぉぉぉぉぉっ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 控え室に戻ってきたキリトとアスナを待っていたのはニヤニヤした顔が止まらない仲間達だった。

 

 リズベット「まさか、公衆の面前であんな大胆な事するなんてねー」

 

 リーファ「お、お兄ちゃん達…すごいね…」

 

 シリカ「恥ずかしいですけど…私もいつかやられてみたいです…」

 

 2人は顔を赤くし椅子へと座る。あまりにも美しい姿勢にさらに笑えてくる光景だ。

 

 ストレア「私もタクヤにしてあげよっか〜?ちゅー…」

 

 ユウキ「だ、ダメに決まってるじゃん!!

 タクヤの唇はボクだけのものなんだぞ!!」

 

 タクヤ「恥ずかしいからやめろ!!?」

 

 ストレア「え〜…でも、私の唇はタクヤのものだよ?」

 

 タクヤはそれを聞いて思い出した。

 前に1度ストレアから頬にキスをされた事がある。

 その事は誰にも話していないし、話したとしたらたちまち噂が広がってしまうのを恐れたからだ。

 だが、ストレアはそんな事気にせずみんなの前で言ってしまった。

 

 ユウキ「…タクヤ。…どういう事なのかな?」

 

 タクヤ「さ、さぁ?お、オレにも何の事やらさっぱり…」

 

 ユウキ「嘘!!また左斜め上向いてるよ!!やっぱり何かあったんでしょ!!」

 

 タクヤ「ま、待て!!オレは悪くないってストレアが勝手に…!!」

 

 ユウキ「問答無用!!!!」

 

 タクヤ「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後はFブロックの決勝戦を行い、接戦の末に鍛冶妖精族(レプラコーン)の少女のペアが勝ち上がった。

 

 そしてついにタクヤとユウキのCブロック決勝戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
キリトとアスナのメインの話って今読み返してみてもこんなにがっつり書いたのは初めてでしたね。
もっと出番増やさないと…


では、また次回!

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