ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という28話目になります。
あと少しでALO編もクライマックスです。
その後は日常編であったり、ちょっとした短編を書いていこうと考えています。


では、どうぞ!


【28】グランド・クエスト

 sideタクヤ_

 

 

 2025年01月22日 ALO内14時00分 央都アルン

 

 オレとユウキはキリト達と合流して、近くの酒場でどうやって世界樹を攻略するか会議を開いた。

 

 キリト「タクヤとルクスを加えて8人か…」

 

 リーファ「前に火妖精族(サラマンダー)が精鋭部隊を編成して挑んだけど結果は言わずもがな…。

 この人数じゃ…いくらみんなが強くても突破は無理だと思う…」

 

 ホーク「そんなぁ事ぁやってみぃひんと分からんわいっ!!」

 

 リーファ「だから、前にやってるんだって!!話を聞いててよ!!」

 

 タクヤ「まぁまぁ、2人とも落ち着けって…」

 

 このまま続けさせても不毛なやりとりだ。

 リーファとホークの気を沈めて会議を再開させる。

 

 ルクス「なら、サクヤさん達の準備が出来るまで待つのはどうだい?」

 

 ユウキ「…それが、出来るだけ急がなくちゃいけなくなったんだ」

 

「「?」」

 

 ユウキはオレ達に急ぐ理由を話した。

 

 タクヤ「…」

 

 ルクス「そんなの…出来る訳ないじゃないか!!

 タクヤの脳を提供するなんて…!!」

 

 話の内容はオレの現実の肉体を古田と名乗る須卿伸之の部下が提供するようにユウキに言ったらしい。

 ユウキも必死に抵抗したものの、去り際に不敵な笑みを浮かべていたようだ。

 それを聞く限り何らかの手段を用いて現実世界のオレを連れ出そうとしているに違いない。

 

 リーファ「で、でも!

 警備員とか役人さんにちゃんと伝えてあるんでしょ?大丈夫だよ!!」

 

 カヤト「おそらく大丈夫でしょうが、万が一の事も考えておかないと…」

 

 ストレア「む〜!!こうなったら、私とユイでそいつのPCをハッキングしてそんな事させないようにしてやる〜!!」

 

 ストレアがユイを連れ出して行こうとするのを、オレが首根っこ掴んで止めた。

 盛大にこけたストレアがオレの肩を掴んで振り回す。

 

 ストレア「どうして止めるの〜!!?」

 

 タクヤ「お前達が行っても多分どうも出来ないよ。

 古田はそういうセキュリティ関連の事には強いからな…」

 

 ユウキ「どうして知ってるの?」

 

 タクヤ「元々、古田と須卿はクソ兄貴の後輩だ。

 昔、そう話しているのを聞いた事がある…」

 

 特に古田の事はよく話に上がっていた。

 セキュリティだけに関しては茅場晶彦より上かもしれないと。

 

 キリト「だったら2人に危険が及ぶ可能性の方が高いな。

 おいでユイ…」

 

 ユイは返事をしてキリトの肩に座った。

 ストレアも自分の席についたが、頬を膨らませご機嫌斜めのようだがそこは2人の身が優先なのが仕方ない為、我慢してもらうしかない。

 

 ユウキ「攻略するにしても、前衛と後衛に別れなきゃだね!」

 

 キリト「そうだな…。ルクスは回復魔法は使えるかい?」

 

 ルクス「あぁ。でも、高位の治癒魔法は水妖精族(ウンディーネ)じゃないと使えないけど…」

 

 キリト「じゃあ、リーファとルクスは後衛に回って回復に専念してくれ。残りは2人1組になってスイッチを重ねていこう」

 

 ストレア「じゃあ、組む人を決めなきゃだね!タクヤ〜!!

 私と組もうよ〜!!」

 

 オレに抱きついてくるストレアを見て、ユウキも負けじとオレの腕を引っ張る。

 

 ユウキ「何言ってんのさ!!タクヤはボクと組むんだよ!!」

 

 ストレア「え〜私がいい〜!!

 ユウキよりおっきいし、安心感が違うもんね〜!!」

 

 ユウキ「っ!!む、胸は別に関係ないだろー!!?」

 

 ストレア「ね〜私と組もうよ〜タクヤ〜?」

 

 ユウキ「ボクだよねー?タクヤ〜?」

 

 この際どっちでもいい…とか言ったら2人からキツい鉄鎚が下されるのは目に見えているのでオレはカヤトをパートナーに選んだ。

 

 カヤト「ぼ、僕?」

 

 タクヤ「別に他意はねーけど、2人のどっちか選んだら死んじゃうからさ。それに、お前がどれだけ強いのかも知りたいしな!」

 

 ユウキ&ストレア「「ぶー!!ぶー!!」」

 

 後ろからブーイングが起こっているが気にしないようにする。

 それにオレの戦い方はSAOの時とは違う。

 昔の連携はここでは使えない為、ユウキやストレアと組めば、その差異が生まれて危険な状況を作り出してしまう。

 なら、昔の連携を知らないカヤトならオレの動きにも合わせられるだろう。

 カヤトに聞けばホークに勝っている為、実力不足の点は問題ない。

 

 キリト「じゃあ、オレとホークが組んでユウキとストレアで組んでくれ」

 

 ユウキ&ストレア「「はーい…」」

 

 キリト「続けるぞ?タクヤ、守護者(ガーディアン)のタイプは何通りあったんだ?」

 

 タクヤ「あー…片手剣と両手剣、弓の3種類かな…。

 オレも全部見た訳じゃないからこれ以外にもいるかもしれねぇけど…」

 

 キリト「それだけ聞ければ充分だ。

 じゃあ、2時間後に"グランド・クエスト”攻略だ。

 今の内に話したい事ややり残してる事を済ませておけよ?」

 

 会議を終わらせ、オレはキリトと2人で話をする為に世界樹へと向かった。

 後2時間でこの内部に潜入してアスナのいる所までたどり着かなければならない。

 それは1番キリトがそう思っているに違いない。

 

 キリト「…2人でいても改まって話す事ないな」

 

 タクヤ「そうだな…。で、どうだよ?現実世界は…」

 

 キリト「…やっぱり帰った頃は嬉しかったし、懐かしかったな。

 やっと帰ってこれたんだって…。

 オレさ…SAOに囚われる前はリーファ…中身はオレの妹の直葉って言うんだけどさ、距離を置くようになっちゃってそれから凄く後悔した。

 だから、今はその距離を少しでも縮めたいと思ってるんだけど…スグはオレなんかの為に泣いてくれた。

 あんなに冷たくしてたのに帰ってきてくれて嬉しいって言ってくれたんだ。

 もう、スグにはあんな思いして欲しくないから…アスナを助けて本当の意味でSAOを終わらせなきゃいけないんだ」

 

 タクヤ「そっか…」

 

 キリトの中には想像もつかないような覚悟を秘めている。

 それはオレも同じだった。

 今尚、オレやアスナ、多くのSAOプレイヤーが閉じ込められている。

 全員を連れて帰るまで、オレも負けていられないな。

 

 ユイ「パパ!!」

 

 キリト「どうしたユイ?」

 

 パパ「この上に…ママの反応があります!!」

 

 タクヤ&キリト「「!!!!」」

 

 瞬間、キリトは翅を羽ばたかせ全速力で世界樹の頂上を目指した。

 だが、すぐに見えない壁に阻まれ、なす術がなかった。

 

 キリト「くそっ!!なんだよ…この壁はっ!!」

 

 タクヤ「落ち着け!!」

 

 ユイ「緊急用のアラームならママに届くかも知れません!!

 ママ!!ママ!!ユイだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideout_

 

 

 アスナはいつもの鳥籠での日常を過ごしていた。

 前にくすねた管理者用のパスカードを枕の下に隠したはいいが、どのタイミングで使えばいいか分からない。

 

 アスナ「何か…方法は…」

 

 

 ─ママ!!─

 

 

 アスナ「!!」

 

 アスナは一瞬、空耳かと思ったが、その声は徐々に大きく強くなっていく。

 

 

 ─ママ!!ユイだよ!!─

 

 

 アスナ「やっぱりユイちゃん!!私はここにいるよ!!…キリト君!!!!

 そ、そうだ…!!何か目印になるようなものを…」

 

 アスナの手は枕の下に隠してあったパスカードに伸ばされた。

 それを鳥籠の隙間から声が聞こえた場所の真下へと落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 キリト「!!…あれは!!」

 

 空から何やら小さい物がゆっくりとキリトへ落ちていった。

 キリトがそれを拾い、ユイに解析を頼む。

 

 ユイ「これは…!!管理者用のパスカードです!!」

 

 タクヤ「じゃあ、これがあればGM権限を行使できるのか?」

 

 ユイ「いえ…これは対応するコンソールからでないと出来ません。

 おそらく、コンソールは世界樹内部のどこかにあると思われますが…」

 

 キリト「でも、そんな物が落ちてくる訳ないよな…」

 

 ユイ「はい!!これは絶対にママからのメッセージです!!」

 

 この上にアスナがいる。もう目と鼻の先まで来ている。

 なら、やる事は1つだな。

 

 タクヤ「まだ、時間はある。確実に行こうぜ…」

 

 キリト「あぁ。アスナの為にも…お前の為にもな」

 

 オレはここでキリトと別れ、次はストレアの所へ向かった。

 ユイにストレアの場所を教えてもらい、商店通りを歩いているととある雑貨屋の前でストレアを発見した。

 

 タクヤ「ストレア!」

 

 ストレア「あっ!タクヤ!!どうしたの〜?」

 

 タクヤ「お前こそこんな所で何見てるんだよ?」

 

 ストレアが見ていた棚にはアクセサリー類が並んでいた。

 

 タクヤ「…欲しい物があるのか?」

 

 ストレア「えっ?そんなんじゃないよ〜。ただ眺めていただけ…」

 

 とか言う割には1つのアクセサリーに目を奪われていたような気がする。

 オレは店主を呼んでストレアが熱い眼差しを送っていたアクセサリーを買ってストレアに渡した。

 

 ストレア「い、いいの?」

 

 タクヤ「あぁ。ストレアにもいろいろ心配かけちまったしな。

 それはその詫びの品だ。受け取ってくれよ」

 

 ストレア「わぁぁ…!!ありがとうタクヤ!!大事にするからね!!」

 

 タクヤ「あぁ」

 

 ストレア「ねぇ…これ、タクヤが付けてくれない?」

 

 タクヤ「えっ?いや、それは…」

 

 そんな事ユウキにだってした事がないぞ。

 ストレアは次はオレに熱い眼差しを送り続ける。

 断るには忍びよらずオレはアクセサリーをストレアから受け取った。

 買ったのはイヤリング。

 妖精の翅をモチーフにされており、左右揃って初めて意味を成すらしいのだ。

 耳にイヤリングなんて生きてきて此の方付けてあげた試しがない為、少々手こずってしまう。

 

 ストレア「きゃんっ!く、くすぐったいよ〜…」

 

 タクヤ「わ、悪い!!」

 

 ストレア「あ…、ん…!タクヤ…わざとやってる?」

 

 タクヤ「と、とんでもございませんですはいっ!!?」

 

 ようやく、左右の耳に付け終えたオレはどっと疲れていた。

 

 ストレア「フフッ…どう?似合うかな〜?」

 

 タクヤ「あぁ…よく似合ってるよ…」

 

 ストレア「…ありがとうタクヤ」

 

 瞬間、オレの頬に柔らかい感触が伝わってきた。

 横を向くとストレアが手で唇を抑えて、頬を赤くしながら笑っていた。

 

 タクヤ「な…な…!!?」

 

 ストレア「これを買ってくれたお礼と…私を助けてくれたお礼だよっ!!」

 

 ストレアはたったっと音を立てながら人混みの中へと消えていった。

 

 タクヤ「…たく」

 

 オレも商店通りを後にしてカヤトの所へ向かった。

 カヤトはどうやら、湖畔通りにいたようで湖の畔で1人立っていた。

 

 タクヤ「ナオー」

 

 カヤト「兄さん…!その名前で呼ばないでくれってそう言ったろ?」

 

 タクヤ「いいじゃねぇか別に…。周りには誰もいないんだしよ!」

 

 カヤト「はぁ…兄さんは昔と全然変わってないね…」

 

 タクヤ「オレん中じゃあ結構変わったと思うんだがなー…」

 

 湖で魚がはじけている音のみが周りに響く。

 オレも2年振りに弟と話す為、何から話していいか分からない。

 そんな事を考えていると、直人の方から話しかけてきた。

 

 カヤト「晶彦兄さんは…やっぱり…」

 

 タクヤ「…あぁ、オレがこの手で殺したよ」

 

 直人は昔からオレより兄貴に懐いていた節がある。

 年が離れている為もあって、当時の直人にはカッコよく見えていたんだろう。

 でも、そんな兄貴ももうこの世にはいない。

 

 カヤト「なんで晶彦兄さんはあんな事したんだろうね?」

 

 タクヤ「知らねーよ。あんなヤツの事なんざ…!」

 

 カヤト「…まだ恨んでるんだね。晶彦兄さんの事…」

 

 タクヤ「…いや…」

 

 当時は恨んでも恨み切れないほどオレはクソ兄貴を恨んでいた。

 だが、今は少しだけ違う。

 恨みこそ消えちゃいないが、その反面にクソ兄貴の事を羨ましいとも思った。

 自分の未来を見据えて、それに向かって努力する光景は小さい頃から見ていた。

 SAOの世界も美しかった。

 SAOはオレにとってもう1つの現実世界になり得ていた。

 それを作り上げた"ゲームデザイナー”としての茅場晶彦に尊敬すらした。

 

 タクヤ「でもやっぱり、アイツは許されない事をしたんだ。

 アイツのせいで4000人以上のプレイヤーの命が消えた。

 その罪を償わないまま死んじまったけどな…」

 

 カヤト「…殺したのは兄さんだろ」

 

 タクヤ「人の揚げ足を取るな!!

 あの時はあーする以外方法がなかったんだよ!!」

 

 カヤト「知ってるよ…。全部ユウキさんに聞いたから…」

 

 初めて直人がオレの前で笑顔を見せた。

 それが嬉しかったし、早く現実世界に帰りたいという思いが強くなった気がする。

 

 カヤト「もうそろそろ時間だね…」

 

 タクヤ「じゃあ行くかッ!!アスナを助けによォっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideout_

 

 

 2025年01月22日 15時45分 ???

 

 無機質な機材の起動音のみが部屋を包み込んでいる。

 その中で2人の男が不敵な笑みを浮かべながらモニターを見ていた。

 

 須卿「そちらの首尾はどうだ?古田君…」

 

 眼鏡を上げ、須卿伸之が古田に質問する。

 

 古田「えぇ。準備は既に出来ていますよ…。

 今日中には実験体が手に入るかと…」

 

 須卿「さすがだね。

 やはり、優秀な部下が1人いるだけで進行具合が随分違うよ」

 

 モニターから目を離し、コーヒメーカーからコーヒーをカップに注ぐ。

 

 古田「いえ、先輩の後ろ盾があってこそですよ。

 私もスムーズに事を運べるのは…。それに、勿体ないでしょう?

 せっかく、貴重な実験体が目の前にあるのに使わないのは…」

 

 古田は顔をニヤつかせながらPCを操作してある少年の写真をモニターに出した。

 

 須卿「そうだね。()()()は他のプレイヤーよりも経験を得ているし、何より…あの茅場先輩の肉親でもある」

 

 茅場晶彦の名が出た瞬間、古田の顔から笑みが消え去った。

 

 古田「…あの人の事は個人的に好きではなかった。

 自分の方が遥かに勝っていると言わんばかりの自信に満ち溢れていたあの顔を見る度に、フラストレーションが溜まっていきました」

 

 須卿「それは僕もだよ。

 だが、茅場晶彦はあれだけの世界を創り出したにも関わらず、それだけで満足してしまった。もったいないよ…。

 その先の可能性を追い求めなかったんだから…!」

 

 須卿の言う可能性は電気信号を脳の特定の箇所に照射して、感情を引き出す事だ。

 それによって人の感情を須卿らが自在に操るといった悪魔のような研究だった。

 既に須卿は某国にその研究データを提供出来るようにパイプを確保して、行く行くはレクトそのものを買収しようと考えているのだ。

 

 古田「しかし、先輩も酷い事をしますねぇ。

 あの結城の令嬢の婿養子に入ってレクトを奪おうなんて…。

 私は恐ろしくてとても出来たもんじゃありませんよ」

 

 須卿「君にだけは言われたくないな。

 学生時代から酷い事をやらせたら君の右に出る者などいなかったよ。

 この僕ですら敵には回したくない…」

 

 古田「褒め言葉として受け取っておきますよ」

 

 そう2人が話しているとPCからアラームが鳴った。

 

 須卿「どうしたんだい?」

 

 古田「…いえね、念には念をといろいろ仕組んでいたんですが…まさかこう上手くいくとは思いませんでしたよ」

 

 モニターにはレクトが運営しているVRMMOゲーム"アルヴヘイム・オンライン”…通称ALOの世界樹の内部が映し出されていた。

 そこに数人のプレイヤーが入ってくる。

 古田はそのプレイヤーの中にある1人を見つけるとまたしても不敵な笑みを浮かべ始めた。

 

 古田「…まさか、君から来てくれるとは思わなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "英雄”タクヤ君…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 2025年01月22日 ALO内16時10分 央都アルン 世界樹前

 

 キリト「よし!最終確認だ。

 オレとホーク、タクヤとカヤト、ユウキとストレアが前衛…、リーファとルクスが後衛で支援だ」

 

 タクヤ「よしっ!じゃあ、いこ…」

 

 ルクス「まだ待ちなよ!!」

 

 ルクスがオレの首根っこを掴んでオレを止める。

 

 タクヤ「な、なんだよ!!」

 

 ルクス「まだ、キリトさんの話が済んでないだろ?」

 

 タクヤ「わ、分かったよ…」

 

 焦りすぎているオレにルクスが深呼吸をするように言った。

 深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 

 ユウキ「…」

 

 ストレア「どうしたの〜ユウキ〜?」

 

 タクヤ「ん?なんかあったか?」

 

 ユウキ「えっ!?いや、何でもないよ…!!」

 

 ユウキは何でもないと言ったが明らかにオレより落ち着きがないように見える。

 

 カヤト「…ハァ」

 

 すると、突然カヤトがオレを引っ張り出して小声でオレに言った。

 

 カヤト「兄さん…もうちょっとユウキさんに気を使ってあげなよ。

 ユウキさんの彼氏だろ?」

 

 タクヤ「お、おう…!」

 

 キリト「よし!じゃあ、中に入るぞ!」

 

 キリトは門の前に立ち、石像の番人に扉を開けてもらう。

 中は最初に入った時同様に壁1面にモンスターを待機させていた。

 

 ホーク「あれが守護者(ガーディアン)っちゅうヤツか…!!」

 

 カヤト「一体何体いるんでしょう…?」

 

 キリト「時間がない!!行くぞっ!!」

 

「「おうっ!!」」

 

 リーファとルクスを残してオレ達は頂上のゲート目指して翅を羽ばたかせた。

 それと同時に壁から守護者(ガーディアン)が次々と現れる。

 

 キリト「作戦通り行くぞ!!」

 

 キリト、ユウキ、オレの3人が先陣を切った。

 狙うは一撃必殺の急所狙いだ。

 オレはクエストで練習した戦闘スタイルでオレの前に立ちはだかった3体を一瞬で仕留めた。

 

 タクヤ「よっしゃ!!」

 

 続いてキリトとユウキも目の前の守護者(ガーディアン)を倒していく。

 だが、この調子で先に進める程甘くないのがこの"グランド・クエスト”だ。

 数で勝っている守護者(ガーディアン)は頂上への道を幾層にも重ねて是が非でも先に進ませないようだ。

 

 キリト「ホーク!!スイッチ!!」

 

 ホーク「まかしとけぇっ!!」

 

 ユウキ「ストレアもお願いっ!!」

 

 ストレア「おっけ〜!!」

 

 タクヤ「カヤト!!」

 

 カヤト「分かってる!!」

 

 オレ達3人はスイッチをして、その間に自分で回復出来る分は自分でポーションを飲んで回復する。

 

 ホーク「おらおらぁっ!!道を開けぇい!!!!」

 

 ホークは武器を持たず、SAOの時のように拳闘スタイルで守護者(ガーディアン)を屠っていく。

 

 ストレア「いっくよ〜!!!!」

 

 ストレアも両手剣の特性を利用して広範囲に広がっている守護者(ガーディアン)を薙ぎ倒していく。

 吹き飛ばした守護者(ガーディアン)が爆発すると、連鎖的に他の守護者(ガーディアン)を誘爆していく。

 

 カヤト「負けてられませんね!!」

 

 カヤトも両手長柄を横に3体並んだ守護者(ガーディアン)を目にも留まらぬ速さで貫く。

 さらに、死角から攻撃も翅をホバリングさせて、見事に対応して見せた。

 

 タクヤ「すげぇ…!!」

 

 ユウキ「すごいでしょ?初めてALOに来た時から強かったんだから!!」

 

 タクヤ「なら、オレもすごい所見せなきゃな!!」

 

 オレは3人を追い抜き、単独で守護者(ガーディアン)の群れに突撃をかけた。

 

 キリト「タクヤ!!」

 

 ストレア「無茶だよっ!!」

 

 タクヤ「まぁ見てろって!!!!」

 

 オレはクエスト報酬の片手用直剣"スターナイトウォークス”を握り直し、まず1体の守護者(ガーディアン)を斬り刻む。

 ポリゴンになる寸前で後頭部を足場に跳躍して2体、3体と屠った。

 

 カヤト「あの動きは…!!」

 

 ユウキ「SAOの時とは違う…!!」

 

 流れるように1つの動作をも攻撃の手として一瞬で10体程蹴散らしていった。

 

 キリト「…この世界じゃSAOにあった"闘拳”スキルや"修羅”スキルなんて存在しない。

 だが、タクヤはそれをこの世界で再現しようとして今のスタイルになったんだ…」

 

 ユウキ「キリトが二刀流を使うみたいに?」

 

 キリト「あぁ」

 

 タクヤ「おらぁぁぁぁっ!!!!」

 

 次々倒していくが、前回同様数は増えていく一方だ。

 HPもグリーンとはいえ、3割近く削られている。

 カヤトとスイッチしようと後ろを見た瞬間、守護者(ガーディアン)はカヤト達に構わず全員オレへと攻撃を仕掛けてきた。

 

 タクヤ「おわっ!!?」

 

 ユウキ「タクヤ!!」

 

 キリト「援護に行くぞっ!!」

 

 だが、ユウキ達の前にも守護者(ガーディアン)が立ち塞がり、完全にオレは孤立してしまった。

 

 ユウキ「タクヤ!!」

 

 タクヤ「オレは大丈夫だ!!それより今の内に頂上を目指せ!!

 オレの所に集まってきてるおかげで大分手薄になってる!!」

 

 キリト「だが、それじゃあお前が…」

 

 タクヤ「何の為にここにいるんだ!!アスナを助ける為だろうがっ!!

 早く行けぇっ!!!!」

 

 襲いかかってくる守護者(ガーディアン)を相手に長い時間は稼げない。今が絶好のタイミングだ。

 これを逃したらそれこそ全滅させられる。

 そのチャンスをみすみす逃そうなど誰がしてたまるものか。

 

 ストレア「タクヤ!!」

 

 ホーク「くそっ!!助太刀しようにもコヤツらが鬱陶しいわっ!!」

 

 キリト「…!!」

 

 ユウキ「…キリト」

 

 キリト「…」

 

 キリトは翅を羽ばたかせ、頂上を目指した。

 

 タクヤ「よし…。おらぁっ!!どうしたよ?かかってこいやぁっ!!!!」

 

 キリトが頂上に着くまで何としてでも時間を稼ぐ。

 オレはクエスト片手剣と拳をフルに使い、守護者(ガーディアン)の猛攻を耐えた。

 

 リーファ「なんて無茶な事を…!!」

 

 リーファの回復魔法がオレのHPを全快させる。

 まだまだやれると踏んだ一瞬の気の緩みを守護者(ガーディアン)は見逃さなかった。

 両手剣を持った守護者(ガーディアン)がオレ目掛けてそれを投げ始めた。

 

 タクヤ「ちぃっ!!」

 

 辛くも弾いて対処するが、背中に矢が数本突き刺さる。

 

 タクヤ「くそがっ!!」

 

 流石に遠距離から攻撃してくる守護者(ガーディアン)まで手が及ばない。

 なるべく躱しつつ、目の前の守護者(ガーディアン)を蹴散らして行くしかオレには手は残されていなかった。

 

 タクヤ「うぉぉぉぉっ!!」

 

 雄叫びと共に剣を振り、拳を叩きつける。

 だが、手数でも上に行かれてしまい、オレのHPはみるみるレッドゾーンにまで落ちていった。

 回復してもそれは一時的なものですぐにHPが削られる。

 

 リーファ「回復が追いつかないよ!!」

 

 ルクス「リーファ!!少しの間だけ回復まかせたよ!!」

 

 リーファ「ちょ…!!ルクスさん!!」

 

 ルクス「タクヤ!!」

 

 タクヤ「ルクス!!?来るな!!戻って回復に専念しろ!!」

 

 ルクスはオレの静止を聞かず、オレを取り囲んでいる守護者(ガーディアン)に突撃をかけた。

 守護者(ガーディアン)もルクスを敵と認識して数体ルクスに攻撃を仕掛ける。

 

 ルクス「はぁぁぁっ!!」

 

 ルクスは数体の守護者(ガーディアン)を退け、オレの元へとやって来た。

 

 タクヤ「バカヤロー!!何考えて…!!」

 

 ルクス「タクヤは絶対にやらせない!!

 私がここにいるのはタクヤを守る為だ!!

 例え…ここでHPが全損しようと絶対に退かない!!」

 

 ユウキ「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルクス「私は…!!タクヤが好きだから!!絶対に死なせない!!」

 

 タクヤ「…ルクス」

 

 キリト「その通りだ!!!!」

 

 タクヤ「!!」

 

 すると、頭上から守護者(ガーディアン)を倒しながらキリトが急降下してきた。

 守護者(ガーディアン)も咄嗟に反応が取れず、キリトの剣で次々と屠られていく。

 

 タクヤ「お前まで…どうして!!?」

 

 キリト「アスナを助け出したとしてもそれだけじゃダメなんだ!!

 お前も一緒に連れて帰らないと意味がないんだ!!

 それに…アスナだってそう言うハズだ!!」

 

 ストレア「私ももっと頑張るよ〜!!

 私の命はタクヤとユウキの為に使うって決めてるんだから〜!!!!」

 

 ユウキ「ストレア…!!」

 

 ホーク「おらぁぁっ!!ワシもおるぞぉっ!!!!」

 

 カヤト「ホークさん…」

 

 ストレアとホークも底力を見せ、襲いかかってくる守護者(ガーディアン)を返り討ちに合わせていった。

 

 ルクス「大丈夫だ!!私達ならどんな事だって出来る…!!

 タクヤがSAOをクリアした時みたいに…!!」

 

 タクヤ「!!」

 

 ユウキ「タクヤ!!みんなは君を助けにここまで来たんだよ!!

 みんながいればこんなヤツら目じゃないよっ!!」

 

 守護者(ガーディアン)を撃退し、オレの隣までやって来たユウキがオレの手を握ってきた。

 

 ユウキ「みんなで帰ろう?現実世界に…!!」

 

 タクヤ「ユウキ…。ったく、どいつもこいつも…」

 

 だが、どれだけ頑張ろうとも守護者(ガーディアン)の数は増え続けるばかりだ。

 一撃で相当数一気に倒さなければこの状況を打破できないのも確かだ。

 そんな事を考えていた時、扉の方から火炎放射が放たれ、オレの周りにいた守護者(ガーディアン)を焼き尽くした。

 

 リーファ「あ、あれは…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サクヤ「またせたな!!タクヤ君!!みんな!!」

 

 アリシャ「ごめんねー!!準備に時間かかっちゃったよー!!」

 

 門から突如として現れたのはサクヤ率いるシルフ隊とアリシャ率いる竜騎士(ドラグーン)隊であった。

 

 タクヤ「サクヤ!!アリシャ!!」

 

 サクヤ「やはり、私の見込んだ通りの男だな。

 まさか、ここまで接戦を繰り広げているとは…」

 

 アリシャ「でも、ここからはこっちにまかせてね!!

 スクリーンショットすらされていない猫妖精族(ケットシー)秘蔵の竜騎士(ドラグーン)隊の出番だよー!!!!」

 

 アリシャの掛け声と同時に竜騎士(ドラグーン)が咆哮を上げ、世界樹内部を揺らしている。

 

 リーファ「ありがとうサクヤ!!」

 

 サクヤ「礼には及ばんよ…。

 キリト君から授かった資金でこんなに早く準備出来たんだから。

 …それより、君達はこの頂上に行ければいいんだね?」

 

 タクヤ「あぁ。でも、守護者(ガーディアン)が塞いで行けねぇ…」

 

 アリシャ「それなら私達が道を作ってあげるよー!!

 じゃあ、行くよー!!竜騎士(ドラグーン)隊!!ブレス攻撃用意!!!!」

 

 サクヤ「風妖精族(シルフ)隊!!エクストラアタック構えっ!!!!」

 

 竜騎士(ドラグーン)は口を大きく開け、圧縮されたエネルギーを構えて、アリシャの合図を待つ。

 風妖精族(シルフ)隊も剣を構え、サクヤの合図を待つ。

 守護者(ガーディアン)達もサクヤとアリシャに狙いを定めて攻撃を仕掛ける。

 守護者(ガーディアン)が一塊になった所を狙って同時に合図を出した。

 

 アリシャ「ファイアーブレス…撃てぇぇぇっ!!!!」

 

 サクヤ「フェンリムストーム…放てぇぇぇっ!!!!」

 

 火炎放射と剣撃が無数の守護者(ガーディアン)を捉えた。

 次々と数が減っていき、空には頂上に通じる大穴が開かれた。

 

 サクヤ「今だ!!」

 

 タクヤ「行くぞ!!キリト!!ユウキ!!」

 

 ユウキ「うん!!」

 

 キリト「おう!!」

 

 リーファ「キリト君!!!これ使って!!!!」

 

 キリトはリーファから剣を授かり、キリトの推進力で大穴を塞ごうとする守護者(ガーディアン)を蹴散らしていった。

 

 タクヤ&キリト&ユウキ「「「うぉぉぉぉっ!!!!!」」」

 

 そして、遂に守護者(ガーディアン)の群れを突き破り、オレ達は頂上のゲートへとたどり着いた。

 だが、ゲートは開かれる事はなく、固く閉ざされていた。

 

 ユウキ「ど、どういう事!!?」

 

 キリト「これは…!!?」

 

 ユイ「パパ!!この扉はGM権限でプレイヤーには開けられない様に設定されています!!」

 

 タクヤ「そ、それってつまり…プレイヤーには絶対に攻略出来ないって事かよ!!?」

 

 キリト「!!…ユイ、これは使えるか?」

 

 キリトは懐から先程手に入れた管理者用のパスカードをユイに渡す。

 ユイが解析を済ませると、オレ達の体は光に包まれ始めた。

 

 ユイ「転移します!!」

 

 そして、オレ達は世界樹の上へと転移したのだった。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
ついにアスナとの距離が近づいてきましたね!
そして、次回は須卿&古田との対決になります!


では、次回!

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