ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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と言うことで20話です。
次でとうとうSAO編は終了します。
ラストも全力で書くのでよろしくお願いします。

では、どうぞ!


【20】クォーターポイント

 タクヤLv.101

 ユウキLv.98

 ジュンLv.97

 テッチLv.97

 タルケンLv.97

 ノリLv.97

 シウネーLv.97

 

 

 2024年11月03日 18時00分 第22層 ログハウス

 

 あれから一月の時が流れた。

 事後報告をするとキリトとアスナは紆余曲折を経て互いの仲が深まり結婚した。

 今日はそのお祝いを兼ねてキリトが購入したログハウスで行われるパーティに招待されている。

 どうやらアスナはアスナでユウキ達に協力を仰いでいたみたいだ。

 時折見せるアスナの涙に感慨深いものを感じながらオレはキリトとテラスへ出て話していた。

 

 タクヤ「なんか、オレ達が協力する程でもなかった感じだな。

 トントン拍子で事を運びやがって」

 

 キリト「そんな事ないさ。

 みんなの協力があったからこその結果だ。ありがとう…」

 

 タクヤ「オレ達は特に何もしてないけどな…」

 

 キリトとアスナはあれ以来頻繁に最前線でパーティを組んで攻略していた。

 キリトの話では今に至るまでいろいろな事があったらしい。

 アスナの護衛についていたクラディールというプレイヤーに因縁をつけられながらもそれを跳ね返し、74層のフロアボスをほぼ単独で撃破したり、ヒースクリフと決闘(デュエル)して負けて血盟騎士団に加入したりとだ。

 しかも、クラディールからの報復で危うく殺されかけたりと通常なら決して起こりえないような事件が多数上がっている。

 

 タクヤ「まさか笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の残党がいたなんてな…」

 

 キリト「あぁ…。だが、特に勢力がある訳じゃない。

 Pohもあれ以来姿を現していないらしいし…」

 

 あの討伐作戦以来Pohは完全に消息を断っていた。

 今はどこで何をしているかはわからないがまた危険に晒すつもりでいるなら今度こそ監獄に送ってやる。

 

 タクヤ「…」

 

 キリト「お前のせいじゃないぞ?

 お前はお前の出来る事を全部やって帰ってきたんだ」

 

 タクヤ「…わかってる」

 

 キリトを襲ったクラディールなる男は笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に所属していた。

 だが、オレ達は1度、Poh以外のメンバー全員を捕縛し、監獄へと送っている。

 考えられるのは逃げ延びたプレイヤーが1から笑う棺桶(ラフィン・コフィン)を立て直したのか、名前だけ使っているのかのどちらかだ。

 キリトも言った通り勢力としては本家に劣っているし、目立った情報も流れていない。

 当面は心配ないだろうがそれでも注意は必要だ。

 

 タクヤ「…で?ヒースクリフと戦ってみた感想は?」

 

 キリト「アイツ…めちゃくちゃ硬いな。

 二刀流であの程度のダメージじゃ誰がやっても結果は知れてる」

 

 タクヤ「…最後の1撃については?」

 

 キリト「気付いてたのか…。

 あれはオレも驚いたよ。と同時に違和感を感じた…」

 

 ヒースクリフとの決闘(デュエル)において最後の1撃はオレの目からしても異常までの速さだった。

 それが"神聖剣”本来の能力なのかは分からないがまるでヒースクリフ以外の時間が遅くなっているようなそんな感じがした。

 

 タクヤ「あんだけイヤイヤ言ってたのに血盟騎士団に入る事になっちまったな!…て今は休暇中だっけ?」

 

 キリト「あぁ。しばらく前線から離れて落ち着きたいってのもあったしな…」

 

 クラディールの件で2人はヒースクリフ本人に休暇届けを申し出てそれを承諾。

 2人は晴れて念願の新婚生活を満喫する事になった。

 

「パパ!」

 

 キリト「おっ!どうしたユイ?」

 

 ユイ「あっちでママが呼んでたよ!」

 

 キリト「わかったわかった。すぐに行くから先に行っておいで…」

 

 ユイ「はーい!!」

 

 ユイと呼ばれた少女はママであるアスナの元へと戻っていった。

 その後ろ姿はある1人の女性を思い出させる。

 似ている所などはないが、最初に見た印象がそれだった。

 

 タクヤ「…このゲームって子供作れるんだなぁ」

 

 キリト「ばっ!!?違うよ!!

 ユイはオレ達の子じゃなくて今は預かってるだけだ!!」

 

 タクヤ「どうだか…」

 

 キリト「そ、そういうタクヤこそ…最近どうなんだ?」

 

 タクヤ「オレ?…特に何も…お前達より面白い事はねぇな」

 

 キリト「なんか…すごく馬鹿にされた気分だ」

 

 タクヤ「気のせいだろ?

 ほら、早く行かねぇと奥さんが待ってるぜ?」

 

 キリトは仏頂面をしながらアスナの元へと行く。

 オレは1人テラスへ残り湖を眺めていた。

 ここからの景色はフローリアのマイホームから観る景色とまた違って落ち着きを与えてくれる。

 周りの村にもプレイヤーが来る事はほとんどなくのどかな空気が層全体に広がっていた。

 

 ユウキ「タークヤ」

 

 すると、背後からオレを呼ぶ声が聞こえてくる。

 まぎれもなくユウキの声だ。

 

 タクヤ「どうしたんだ?ニコニコして…」

 

 ユウキ「んー?別にー」

 

 えらく上機嫌なユウキはオレの横へと陣取り手に持っていたジュースに口をつける。

 

 ユウキ「はぁー…子供っていいよねー…タクヤ、子供作ろ?」

 

 タクヤ「ぶふっ!!?い、いきなり何言い出すんだ!!?」

 

 オレは思わず酒を吹いてしまった。

 だから何であなたはいつも爆弾をいきなり落とすんでしょうか?

 

 ユウキ「ユイちゃんすごい可愛いんだもん!

 はぁ…ボク達にも子供出来たらなぁ…」

 

 タクヤ「こ、コホン…。

 そ、そういうのは将来設計をちゃんと組んでだな…」

 

 ユウキ「じゃあ、将来タクヤはボクと子供作ってくれる?」

 

 タクヤ「頼むからそういう事は人前で言わないで?」

 

 と言っても既に手遅れのようだ。

 テラスを覗き込むキリトとアスナを始め、パーティに招待されている者全員がこちらに注目している。

 

 リズベット「かぁ…!!人前でよくそんな話出来るわねぇ…!!」

 

 シリカ「こ、こ、子供を作るってやっぱり…!!」

 

 クライン「このリア充どもがっ!!!!」

 

 エギル「お前のはただの妬みだ…」

 

 キリト「まぁこうなっちまうよな…」

 

 アスナ「あはは…」

 

 オレはもう精神的に死んでしまいました。

 ユウキはさほど気にしていないらしくもれなくオレだけ爆死した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユイ「子供ってどうやって作るの?」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 全員が一瞬で凍りついてしまった。

 お前達の娘もとんだ爆弾少女だったんだね。

 

 アスナ「ゆ、ユイちゃんにはまだ早いかな〜…」

 

 ユイ「えー!!知りたい知りたーい!!」

 

 クライン「いっそ本当の事を…」

 

 リズベット&エギル「「バカかっ!!!!」」

 

 次はクラインが死にました。肉体的に…。

 

 アスナ「き、キリトくーん…!!」

 

 キリト「お、オレ!?元はと言えばタクヤ達が話してたんだからそっちが教えてやってくれよ!!」

 

 タクヤ「はぁっ!?な、なんでオレが…!!

 大体、ユイの親はお前らだろ!!そっちで教えてやればいいだろ!!」

 

 なんとも低レベルなやり取りだと思ったが何が悲しくてこんな純粋無垢な少女に教えなければいけないのだ。新手の拷問か?

 

 ユウキ「ユイちゃん…。実はね子供は…」

 

「「「「行ったぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」」」

 

 さすがはオレの嫁!

 こんな危機的状況でも何か対策があるに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウノトリさんっていう鳥がキャベツ畑から連れてくるんだよ」

 

「「「「…」」」」

 

 いや、流石にそれはないだろ…。

 幾ら何でもこんな見え見えの嘘に引っかかるわけ…

 

 ユイ「そうなんだー!!じゃあ、ユイもキャベツ畑から来たの?」

 

 ユウキ「そうだよー!!」

 

「「「「…」」」」

 

 ユイが純粋でよかった。

 キリトとアスナの子じゃなかったらオレ達で引き取りたいぐらいだ。

 ユイの欲求も満たされた所でみんなもパーティの続きを始める。

 

 タクヤ「とりあえずはナイスだ、ユウキ」

 

 ユウキ「まぁ、本当の事はまた大人になってからじゃないとね」

 

 タクヤ「お前もまだ十分子供だよっ!」

 

 ユウキの額にデコピンを食らわせると頬を膨らませ、こちらを睨んでくる。

 

 ユウキ「ぶー…ボクはもう大人だよ!

 ほら!タクヤだって知ってるでしょ?ボクのおっぱいも…」

 

 タクヤ「だぁぁぁぁぁっ!!!!分かった…分かったから!!!!」

 

 これ以上は流石に許容できない。

 ユウキの口を抑え、周りを見るがとりあえず誰も聞いていないようだ。

 

 ユウキ「〜〜!!!!」

 

 タクヤ「あっ!悪い!!大丈夫か?」

 

 ユウキ「はぁ…はぁ…死ぬかと思ったよ…」

 

 タクヤ「つ、つい力が入っちまって…」

 

 ユウキ「…罰として今日の夜は覚悟しておいてね」

 

 タクヤ「は?」

 

 それだけを言い残しユウキはシウネー達の所へと行ってしまった。

 

 タクヤ「…ったく。…人前で言うなって言ってんじゃねぇか…」

 

 顔が熱くなるのを感じながらグラスの中の酒を熱を冷ますように一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「それじゃあまたね〜」

 

 リズベット「末永くお幸せに〜」

 

 アスナ「ありがとうみんなー!!」

 

 あれから数時間が経過してパーティも締め、オレ達は22層を後にした。

 時間が時間なのでリズベットとシリカをホームまで送り届けた後、スリーピング・ナイツ全員でマイホームへ帰宅した。

 

 ジュン「いやぁ楽しかったなぁ!!」

 

 タルケン「…ちょっと食べすぎました」

 

 ノリ「調子に乗って飲みすぎた…」

 

 テッチ「2人とも自業自得だね…」

 

 タクヤ「今日はもう遅いしこのまま寝て明日から攻略を開始しようか」

 

 オレ達はすぐ様自室へと向かい、今日の所は休む事にした。

 

 タクヤ「ふぁぁ…疲れたー…」

 

 部屋に入るや否やオレはベッドに仰向けになった。

 それにしても楽しい時間だった。

 仲間内でこんな事が出来るのは毎日攻略を頑張っているからこそだ。

 睡魔が襲ってきたオレは目を閉じ、それに逆らう事なく眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「タクヤー起きてー」

 

 タクヤ「ん…」

 

 ユウキ「起きてってばー」

 

 タクヤ「んあ?」

 

 人がせっかく気持ちよく寝ているというのにユウキはそんなのお構い無しにオレを起こしてくる。

 オレは目を擦りながらユウキに目をやった。

 

 タクヤ「なんだよ…まだ夜中…じゃ…」

 

 ユウキ「夜は覚悟しておいてって言ったよね…?」

 

 寝ぼけていた頭は一瞬で活性化し、瞼を大きく見開いた。

 そこにはユウキが月明かりに照らされながら下着姿で立っていた。

 

 タクヤ「な、な、なんて格好してんだよ!!?」

 

 ユウキ「ぼ、ボクだって恥ずかしいんだからね…。

 でも、今日はタクヤと一緒にいたいし…」

 

 だとしても物には順序というものがある。

 ユウキはいろいろな過程を飛ばしすぎていた。

 

 タクヤ「と、とりあえず…こっち来いよ。

 寒いだろ?その格好じゃ…」

 

 ユウキ「うん…」

 

 ユウキはオレの横に腰を下ろした。

 オレはユウキを自分の方へ抱き寄せ、そのまま押し倒す。

 

 ユウキ「タクヤ…」

 

 タクヤ「…ったく。子供のくせに色気づきやがって…」

 

 ユウキ「子供じゃないもん…。

 タクヤがボクを大人にしたんでしょ?」

 

 タクヤ「じゃあ、ちゃんと責任取らなくちゃだな…」

 

 オレはユウキとキスを交わす。

 ユウキの唇は甘く、とろけるように柔らかい。

 いつまでもこのままでいたいと思うがそうはいかないので名残惜しいが唇から離れた。

 

 ユウキ「タクヤ…大好きだよ…」

 

 タクヤ「あぁ…オレもユウキが大好きだ…」

 

 ユウキ「…もっと…して?」

 

 タクヤ「甘えん坊だな…お前は…」

 

 再びキスを交わし、オレ達はこの夜1つとなって眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年11月07日 08時00分 第55層 グランザム 血盟騎士団ギルド

 

 オレとユウキはアスナに呼ばれてここ…血盟騎士団ギルドへと向かっていた。

 

 ユウキ「ボク達に何の用だろうね?」

 

 タクヤ「オレはなんか嫌な予感がする…。

 ギルドに行くって事はヒースクリフに会わなくちゃいけねぇ。

 アイツにあった日にはろくな事が起きねぇんだ」

 

 そう予感させる要因はある。

 次、攻略するのは75層である。つまりクォーターポイントだ。

 クォーターポイントと言うだけあって安全マージンなど度外視でその層の難易度が劇的に上昇する。

 これまでも25層、50層と苦戦を強いられてきたがなんとかここまで辿り着く事が出来た。

 そして、オレ達がSAOに閉じ込められて今日で丸2年経った。

 

 アスナ「ユウキータクヤくーん!!こっちよー」

 

 ユウキ「あ!アスナだ!!おーい!!」

 

 タクヤ「おはよ2人とも」

 

 キリト「あぁ、おはよう…。オレ達も急に呼び出されてさ。

 まだ休暇中だったのに…」

 

 アスナ「仕方ないよ…。

 キリト君てば朝からずっとこんな調子で…」

 

 キリト「だってまだ2週間だぜ?」

 

 タクヤ「とりあえず行くか!」

 

 オレ達はヒースクリフの待つ会議室へと向かった。

 相変わらずこのギルドは重苦しい。

 タダでさえ重苦しいのに今日は一段と凄みを増している気がする。

 

 アスナ「団長。アスナです…」

 

 ヒースクリフ「入りたまえ…」

 

 キリトとアスナが扉を開くとそこには数人の幹部とヒースクリフが座っていた。

 

 ヒースクリフ「休暇中に悪かったね。

 タクヤ君とユウキ君もご苦労だった」

 

 タクヤ「そう思うなら呼び出さねぇで貰いたいな」

 

 キリト「うんうん」

 

 ヒースクリフ「そうも言っていられない事態でね…。

 単刀直入に言おう。先日我々のパーティがボス部屋を発見した。

 そして、偵察隊を送って情報収集させようとしたのだが…」

 

 タクヤ「…全滅したのか」

 

 ヒースクリフは無言で頷く。

 偵察隊は防御や回避に特化している為、情報収集だけなら容易いのだが…それを全滅に追いやられるという事は考えられるのは2つ。

 1つ…クォーターポイントのフロアボスという事で今までの常識が通用しないという点。

 2つ…何らかの方法で脱出する事が出来ずにボスに倒されてしまったかという点。

 

 ヒースクリフ「ボス部屋では結晶(クリスタル)が使えなかったらしい」

 

 キリト「結晶(クリスタル)無効化エリアか…!!」

 

 アスナ「ボス部屋じゃそんなシステムなかったのに…」

 

 ヒースクリフ「今後、ボス部屋では結晶(クリスタル)は使えないと考えた方がいいな」

 

 結晶(クリスタル)が使えないとなるとこの先のボス戦では苦戦は必至。さらに、75層のボス戦ではかなり痛い。

 ただでさえ強いのに結晶(クリスタル)が使えないとなると回復のローテーションも1から組み直さなければいけないのだ。

 

 ユウキ「だったらどうしたら…」

 

 ヒースクリフ「だが、だからと言って手をこまねいている訳にはいかない。

 今から3時間後に攻略組を編成し、ボス部屋と突入する!」

 

 タクヤ「えらく急だな…」

 

 ヒースクリフ「これ以上待機していても時間が惜しい…。

 君達も準備してくれ」

 

 キリト「…先に言っておきますけど、もしアスナが危険に晒されたら攻略度外視でアスナを助けます」

 

 アスナ「キリト君…」

 

 タクヤ&ユウキ「「…」」

 

 キリトの気持ちはよく分かる。やっと2人は結ばれたのだ。

 誰だって掴んだ幸せを手放さないのと一緒だ。

 

 ヒースクリフ「…何かを守ろうとする者は時として力を生み出す。

 君の勇戦を期待しているよ…」

 

 それを機にオレ達は会議室を後にしようとする。

 

 ヒースクリフ「タクヤ君、君は残ってくれ…」

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキ達には先に行ってるように言って会議室にはオレとヒースクリフのみが残された。

 

 タクヤ「…なんだよ?」

 

 ヒースクリフ「君は…何か大切なものをこの世界で残せたかな?」

 

 タクヤ「…あぁ」

 

 ヒースクリフの言葉の真意が見えない。

 それだけの為に残されたとなると正直時間の無駄だ。

 

 ヒースクリフ「君は…この世界をどう思う?」

 

 ますます意味がわからない。

 そもそもこれらの質問がこれからのボス戦となんの関係があるというのだ。

 

 タクヤ「さっきからなんなんだよ!」

 

 ヒースクリフ「…答えたまえ」

 

 タクヤ「…そんなの考えた事もねぇよ。

 ただ…この世界に罪はねぇ…。それだけだ」

 

 オレはそう言い残して会議室を後にした。

 

 タクヤ(「一体何だってんだ…あの野郎…」)

 

 オレは長い廊下を1人で歩きながらユウキ達の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年11月07日 08時30分 第55層 グランザム 血盟騎士団ギルド

 

 アスナ「時間までここの部屋を使って。

 もし、ホームに戻るなら私に一声かけてね。隣の部屋にいるから」

 

 ユウキ「ありがとうアスナ!」

 

 そう言ってアスナとキリトは部屋を出ていった。

 

 ユウキ「ボク達はどうする?ホームに戻る?」

 

 タクヤ「いや、二度手間になるしみんなには時間だけ伝えておこう」

 

 ユウキはオレの指示通りスリーピング・ナイツにメッセージを送り、備え付けのソファーに腰掛けた。

 そこには簡単なティーセットもあったのでユウキは2人分の紅茶を淹れてくれた。

 

 ユウキ「紅茶入ったよ」

 

 タクヤ「あぁ…」

 

 オレもユウキの隣に座り、紅茶をすする。

 

 ユウキ「団長さんにはなんて言われたの?」

 

 タクヤ「ん?…まぁ、頑張れよ的な事を言われたよ」

 

 ユウキ「ふぅん…」

 

 本当はオレにもよくわからないのだが、ユウキや他のみんなに心配をかける訳にもいかない。

 

 ユウキ「そうだ!朝食食べて来なかったから簡単なサンドウィッチを作ってきたんだけど…食べる?」

 

 タクヤ「あぁ、貰う…」

 

 ユウキはストレージからサンドウィッチが入ったバスケットを取り出し、テーブルに置く。

 そこには簡単などという言葉が似合わない程、手の込んだものが現れた。

 

 タクヤ「…めちゃめちゃ手ェ込んでんじゃん」

 

 ユウキ「そ、そうかな?でも、ホントに簡単なんだよ。

 3分くらいで出来るもん!」

 

 タクヤ「おぉ…さすが料理スキル完全習得(コンプリート)!!」

 

 とりあえずユウキのサンドウィッチを貰うと空だった腹に満たされていく感覚が立ち込めてきた。

 今からボス戦の為、空腹で力が出ませんでしたじゃ話にならない。

 しかも、みんなを守りながら戦うとなると尚更だ。

 

 タクヤ「やっぱり、ユウキの手料理は美味いな!」

 

 ユウキ「…お口にあってよかったよ」

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキ「…ねぇ、タクヤ」

 

 タクヤ「ん?」

 

 ユウキ「また…無理してない?」

 

 タクヤ「そ、そんな事ねぇよ!!心配すんな!!

 オレがみんなを守ってみせるから!!」

 

 そうだ。オレは何が何でもみんなを守らなくちゃいけない。

 ルクスとも…ストレアとも…ユウキとも約束したのだから。

 絶対に守ってみせる。オレの命にかけても…。

 

 ユウキ「守るって…ボク達は守られるだけの存在なの?」

 

 タクヤ「え?」

 

 ユウキ「ボクだってタクヤを守れるんだよ!!

 1人で何でもやろうとするのはタクヤの悪い癖だよ!!」

 

 タクヤ「ど、どうしたんだよ…急に…」

 

 ユウキ「ボクだけじゃないよ?みんなだってそうだよ!

 タクヤを支えるって…支えられるだけの力があるって…そう思って今まで戦ってきたんだよ!!

 だから…1人でやろうとしないで…

 みんなでSAOを終わらせるんだよ!!誰も欠けちゃダメなんだよ!!

 そこにタクヤが加わってない訳ないじゃないか…!!」

 

 終わりぐらいからユウキは大粒の涙を流しながらオレに言った。

 今思えばオレの考えはただのわがままだ。

 またオレは大きな間違えをしてしまう所だった。

 

 タクヤ「…そうだよな。…もうそんな事考えない!

 オレ達でこのゲームを終わらせよう!!みんなで帰ろう!!」

 

 ユウキ「タクヤ…うん!!」

 

 オレはユウキの涙を拭き取り、優しく抱きしめた。

 もう繰り返しちゃいけない。

 オレ達は絶対に誰1人欠ける事なく現実世界に帰るのだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年11月07日 10時50分 第75層 コルニア 転移門前

 

 あれから3時間後。オレ達は最前線の75層転移門前とやって来ていた。

 スリーピング・ナイツのメンバーと合流し、編成や連携の確認を取る。

 ボスの詳細が分からない以上攻略組全体の連携よりもギルド間の連携を強くしておかなければいけない。

 

 クライン「おーす!みんな!」

 

 タクヤ「クライン!エギル!来たのか?」

 

 エギル「当たり前だ。ボスドロップで一儲けするんだからな」

 

 ユウキ「あはは。エギルは相変わらずだね!」

 

 クライン「所でキリトとアスナさんは?」

 

 タクヤ「あの2人なら血盟騎士団と一緒にいるはずだ」

 

 最前列を指差し、クラインにキリトとアスナの居場所を教える。

 休暇中と言っても2人は血盟騎士団の団員なのだから当たり前だ。

 

 クライン「あいつらにも挨拶してくるぁ…!!」

 

 そう言ってクラインは2人の元へと向かった。

 

 シウネー「タクヤさん。

 言われた通りポーション系の回復薬買えるだけ買って来ましたよ!!」

 

 タクヤ「さんきゅー!!

 今回は結晶(クリスタル)が使えないからな。

 ポーションは持てるだけ持っておけよ!!」

 

 ジュン「あいあいさー!!」

 

 タルケン「でも、結晶(クリスタル)が使えないなんて…この先のボス部屋でもそうなんでしょうか?」

 

 ユウキ「それは分からないけど団長さんが言うならその可能性は高いだろうって…」

 

 エギル「結晶(クリスタル)と違ってポーションじゃ回復が間に合わんが無いよりはマシだな」

 

 テッチ「そういう事だね」

 

 ノリ「はぁ…これから先そんなにしんどくなるのかぁ…」

 

 タクヤ「そう落ち込むなって!帰ったら酒を好きなだけ飲ませてやるから!!」

 

 ノリ「よっしゃぁぁぁ!!やるぞぉぉぉ!!」

 

 相変わらず酒が絡むと燃えるノリはほっといてそろそろ出発時間だ。

 

 ヒースクリフ「では、これより75層ボス戦を開始する!!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」

 

 ヒースクリフはあらかじめセットしていた回廊結晶を使い、ボス部屋までのワープホールを作り出した。

 

 ユウキ「じゃあ今日もガンバロー!!」

 

 スリーピング・ナイツ「「「おぉぉぉっ!!」」」

 

 そして、ボス部屋前へとワープし、それを確認したのと同時にボス部屋の扉を開いた。

 

 ヒースクリフ「行くぞ!!解放の日の為に!!!!」

 

「「「おぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」

 

 全員がボス部屋へと突撃をかける。

 中に入るとボスはおろかモンスター1匹すら見当たらない。

 

 キリト「どこだ…」

 

 アスナ「…!!上よ!!」

 

 アスナの声を聞いたオレ達が天井を見上げるとそこには体が骨で出来ており、鋭利な大鎌を両腕につけたボスモンスターがいた。

 ボスが下へと降り立ち、奇声を発しながら威嚇してくる。

【ザ・スカルリーパー】…意味は"死を狩る者”といった具合だろうか。

 攻略組の何人かがスカルリーパーに向かって突撃をかけた。

 スカルリーパーも明確な敵を認識した瞬間、ムカデのような走り方で攻略組に襲いかかってきた。

 

 アスナ「ダメ!!不容易に攻撃しちゃダメ!!」

 

 だが、アスナの静止は聞こえず、数人が飛び出していた。

 スカルリーパーが大鎌を振りかざし、攻略組を薙ぎ払う。

 突撃をかけたプレイヤーは防御の体制に入ったが、スカルリーパーにそんな事は問題ではなかった。

 大鎌は防御など不要だと言わんばかりにプレイヤーを斬り刻んだ。

 体は真っ二つになり、3人のプレイヤーがポリゴンとなって消滅する。

 

 タクヤ「なっ!!?」

 

 アスナ「そんな…!!」

 

 キリト「たった一撃で…!!?」

 

 今この場において、ゲームバランスなど存在しないという事をスカルリーパーから教わる。

 レベル差があろうと関係ないといった具合であたり構わず攻撃してくる。

 

 ヒースクリフ「一塊になるな!!私があの鎌を防ぐ!!」

 

 ヒースクリフが前に出てスカルリーパーの大鎌を抑えた。

 "神聖剣”ならあの鎌は防げる…。なら、こっちは2人だ。

 

 タクヤ「ユウキ!!2人でならアレを止められる!!行くぞ!!」

 

 ユウキ「うん!!」

 

 タクヤ「初めっから全力で行くぜ…!!修羅スキル発動!!」

 

 オレは修羅スキルを発動してシュラと入れ替わった。

 

 シュラ「また硬そうな奴が出てきたなぁ!!」

 

 ユウキ「行くよ!!シュラ!!」

 

 シュラとユウキは2人でスカルリーパーの攻撃を誘い、こちらに注意を向ける。

 

 シュラ「テメェらは側面から攻撃しやがれ!!」

 

 闘拳スキル"双竜拳”を発動させ、大鎌を全力で殴った。

 ユウキは片手用直剣スキル"ノヴァ・アセンション”を繰り出す。

 流石に2人のソードスキルなら半分ぐらいの力で対処出来る。

 

 ユウキ「みんな!!早く!!」

 

 エギル「わかった!!」

 

 クライン「うぉぉぉっ!!まかせろぉ!!」

 

 オレ達のかつてないほどのボス戦が始まった。

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
スカルリーパーって原作でも破格の強さでしたね。
ほぼ反則級だっていうくらい強いですもん。
タクヤ達はどうなるのか…。

では、また次回!

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