ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

19 / 88
という事で19話です。
今回はほのぼのしたお話になってます。
たまにはキリアスも書こうかなと思って書きました。

では、どうぞ!


【19】恋焦がれる少女

 タクヤLv.99

 ユウキLv.97

 ジュンLv.96

 テッチLv.96

 タルケンLv.95

 ノリLv.95

 シウネーLv.95

 

 

 2024年10月03日 11時00分 第47層 フローリア マイホーム

 

 夏が過ぎ去り季節は秋。

 暑い日差しはなりを潜め、冷たい風が吹いている。

 オレとユウキは2人だけ取り残されたマイホームのリビングにいた。

 他のメンバーは各々事情があって席を外している。

 

 ユウキ「静かだね…」

 

 タクヤ「そうだな…」

 

 朝起きてみるとユウキ以外誰もおらず、今日はのんびり過ごそうかと話していた所だ。

 湯呑みを口にし、熱い緑茶をすすりゆっくりと流れる時間を感じながら今に至る。

 

 ユウキ「…やる事ないね」

 

 タクヤ「あぁ…」

 

 ユウキもアツアツのココアを口にしながら言ってきた。

 だが、いい加減やる事がないのもつまらないものだ。

 体を動かしたい所だが、気になるクエストもないので行動に移せないでいる。

 

 タクヤ「…暇だー」

 

 ユウキ「だねー…」

 

 まだ時刻は11時を回ったばかりだ。

 昼飯を食べるにしても早すぎるし、遠出するには少し遅い。

 特に計画もしてなかったせいで時間を持て余していた。

 

 タクヤ「みんなはいつ帰ってくるんだ?」

 

 ユウキ「今日は夜まで帰ってこないって言ってたよ?」

 

 タクヤ「そうか…じゃあそれまで二人っきりか…」

 

 ユウキ「…そ、そうだね」

 

 タクヤ「久しぶりだな。オレ達が二人っきりになるなんて」

 

 ユウキ「…タクヤは…嫌なの?」

 

 タクヤ「そんなんじゃねぇよっ!?

 オレもユウキと二人っきりに…!!」

 

 それ以上口にしてしまうと恥ずかしくなってしまう為、ユウキから顔を逸らして緑茶で心を沈める。

 横目でユウキを見ると耳まで真っ赤にしていた。

 それを見てしまったオレは顔が赤くなるのを感じながら緑茶を一気に飲み干す。

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「…」

 

 妙な緊張感に満たされたリビングは今のオレ達にとってはかなりきつい。

 すると、ユウキはオレの方へと寄り、肩に顔を預けた。

 

 タクヤ「ゆ、ユウキ…さん?」

 

 ユウキ「タクヤも…緊張してるの…?」

 

 タクヤ「ま、まぁ…そりゃあ…な」

 

 ユウキ「…ボクも」

 

 ユウキがオレの方へと向き直り、顔を差し出す。

 オレも緊張しながらユウキの顔を手で優しく包み、顔を近づける。

 今にも心臓が破裂してしまいそうだ。

 ユウキは目を閉じ、今度は唇を差し出す。

 オレも感づいていたがいざ目の前にすると動揺を隠しきれない。

 何度やっても慣れないのだから仕方ないじゃないか。

 ゆっくり唇へと近づく。

 

 タクヤ(「いいのか?いいんだな?

 こんな真昼間からやっちゃっていいんですか?

 いいんですよね?いいに決まってる!!」)

 

 こんな所他の誰かに見られたら精神的に死んでしまうがそんな心配などかき捨てていざ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスナ「ユウキーいるー?」

 

 キリト「あぁ…いたい…た…」

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキ「…」

 

 瞬間、時間が止まったかのような錯覚に囚われてしまう程の事が起きた。

 

 アスナ「あ…え、えーと…」

 

 キリト「…お、おじゃましました〜…」

 

 2人は玄関をゆっくり閉めて姿を消した。

 途端に恥ずかしくなってしまったオレ達はキリトとアスナを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスナ「…」

 

 キリト「…」

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「…で!何の用だよ?」

 

 4人とももれなく茹でダコ状態だったが空気を切り替える為、2人に訪ねた。

 

 アスナ「えっと…何だったっけ?」

 

 キリト「えっ!?あ、いや…えーと…」

 

 どうやら2人もいきなりの事だった為、頭が上手く回っていないようだ。

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「…用がなければ帰ってほしいんだが」

 

 アスナ「ちょ、ちょっと待って!!

 衝撃的すぎてド忘れしてるだけだから!!」

 

 ユウキ「あぁぁぁぁぁっ!!!!衝撃的だなんて言わないでよぉ!!!!

 ボク達だってめちゃくちゃ恥ずかしいんだからぁっ!!!!」

 

 アスナ「ご、ごめん!!!!」

 

 キリト「…ごめんなさい」

 

 タクヤ「まぁ、オレらもアレだけど…せめてノックぐらいしてくれ…」

 

 キリト&アスナ「「ごめんなさい」」

 

 普通ならマイホームの中は完全に密室になっており、外から鍵で開けるか中から開けるかの2択しかない。

 当然、スリーピング・ナイツのみんなは合鍵を持っているのだが、

 ついさっきキリトとアスナに聞いた所、扉が少し開いていたらしいのだ。

 そうだとすれば誰でも中に入れる。

 最後に出た奴はもれなくモンスターハウスにでも取り残してやろうか。

 

 ユウキ「ふぅぅ…。まだ顔が熱いよ…」

 

 アスナ「私も…」

 

 キリト「2人はいつもあんな感じなのか?」

 

 タクヤ「んな訳ねぇだろっ!!!!」

 

 毎日あんな空気を垂れ流していたら他のメンバーにも悪いし、第一ノリとシウネーあたりが何かと聞いてくる為、普段の生活であんな空気は作り得ない。

 

 アスナ「あっ!思い出した!!ユウキに用があったんだわ!!」

 

 ユウキ「ボクに?」

 

 キリト「オレはタクヤに用が…」

 

 タクヤ「ん?」

 

 アスナ「ここじゃちょっとあれだから…テラスに出ましょ?」

 

 そう言ってアスナはユウキを連れてテラスへと向かっていった。

 

 タクヤ「…で?オレに何の用だ?」

 

 キリト「…いや、ちょっとこれは言いづらいというか恥ずかしいというか…」

 

 タクヤ「お前…少し見ない間に女らしくなったな」

 

 キリト「なんだよそれ!!オレは男だぞっ!!!!」

 

 タクヤ「わかったから…。はよ言ってくれ」

 

 キリト「実は…その…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスナの事が気になるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideユウキ_

 

 ボクとアスナはテラスに出てテーブルについた。

 外は少し肌寒いので簡単なティーセットと菓子類をストレージから取り出し、ボクとアスナの分の紅茶を淹れる。

 

 ユウキ「はい、アスナの分だよ」

 

 アスナ「ありがとう」

 

 ユウキ「それでボクに話って何?」

 

 そう聞くとアスナは何故か辺りをキョロキョロして誰もいないのを確認すると顔を赤くしながらボクに言った。

 

 アスナ「あのね…私…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリト君の事が好き…なの…!!」

 

 ユウキ「えぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

 アスナ「ゆ、ユウキ!!声が大きいっ!!」

 

 ボクはそう言われて開いた口を両手で塞いだ。

 幸い中の2人には聞こえていないようだ。

 

 ユウキ「そ、それで…いつからなの!?」

 

 こういう色恋沙汰はSAOではかなり珍しい為、どうしても根掘り葉掘り聞き出してしまいたい衝動に駆られてしまう。

 

 アスナ「えっと…もう半年ぐらい…前から…」

 

 キリト「ふぁぁぁっ!!そっかぁ…キリトをねー…。

 アスナはキリトのどんな所を好きになったの?」

 

 アスナ「…優しい所とか、キリト君って辛い事は何でも1人で片付けようとするじゃない?

 だから、守ってあげたいって思うようになったの…」

 

 ボクはアスナの言っている意味が理解できる。

 何かとキリトは自分1人で辛い事を背負おうとする節がある。

 タクヤにも似た所があるのでアスナの気持ちも理解できてしまう。

 

 アスナ「で、頼みというか相談なんだけど…キリト君との仲を…その、取り繕ってほしいの…!」

 

 ユウキ「ぼ、ボクに!!?そんな事出来るかなー…」

 

 アスナ「お願いユウキ!!」

 

 ユウキ「…分かったよ!

 ボクに出来る事があるなら喜んで協力するよ!!」

 

 アスナ「ありがとうユウキ!!大好きっ!!」

 

 ユウキ「ボクもアスナの事大好きだよっ!!

 タクヤの次にだけどね!!」

 

 アスナ「私だってキリト君の次にユウキが好きだから!!」

 

 そんなこんなでボクはアスナとキリトをくっつける為に、アスナに協力する事を誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 タクヤ「ふぅん…そうか…」

 

 キリト「…なんかイメージしていたリアクションと違うんだが?」

 

 まぁ、テンションが上がらないのも無理もない。

 前々からアスナのキリトに送る視線や仕草などはある程度の事を予想させていた。

 この事に勘づいていそうなのはエギルくらいだと思うが…。

 かくいうオレもユウキと付き合っていなければこんな事には全く気づいていないだろうが。

 

 タクヤ「いや、それで?オレにそれ話してどうしろと?」

 

 キリト「あぁ。オレ…こういう事はどうも疎くて…出来ればタクヤにその手助けをして欲しいんだが…ダメか?」

 

 タクヤ「…キリトにはいつも世話になってるからな。

 その頼みを断る訳にもいかないから協力してやるよ…」

 

 キリト「ほ、本当か!!ありがとう!!恩に着るよ!!」

 

 こんなオレでも出来る事があって、友達がそれを求めてるならそれに応えてあげたい。

 特にキリトにはこれまで以上に幸せになってほしいとすら思っている。

 今まで辛く険しい道のりを歩いてきたのだ。

 神様がいるのだとしたらそれぐらいは許してくれてもいいだろう。

 

 タクヤ「で?具体的な計画とかは練ってるのか?」

 

 キリト「全く」

 

 タクヤ「…全く?」

 

 キリト「それを考えついてたらタクヤに頼んでない!!」

 

 タクヤ「威張るな!!…この事は他の奴に話したのか?」

 

 キリト「いや、タクヤだけだ。

 エギルにも相談しようかと考えたが、もっと年の近い奴の方がいいと思ってな…」

 

 確かに、1番強力な手助けになると言ったら真っ先にエギルが思い浮かんでしまう。

 残念だがクラインにはそんな話しようものなら逆にこっちがクラインの相手を探すハメになりかねない。だから、却下だ。

 

 タクヤ「とりあえず、早速今から考えるか…。

 でも、ここじゃ他のメンバーに聞かれちまうかもな。

 よし、どっか落ち着ける所に行こうか」

 

 キリト「そうだな…」

 

 オレとキリトは落ち着けそうな場所に行く為、その前にユウキとアスナに声を掛けてから行く事にした。

 

 タクヤ「ユウキー。ちょっとキリトと出掛けてくるー」

 

 ユウキ「うへっ!?た、タクヤ!!い、行ってらっしゃい…」

 

 タクヤ「?…行ってくる」

 

 そうしてオレとキリトはマイホームを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideユウキ_

 

 

 ユウキ「び、びっくりしたぁ〜…」

 

 いきなりタクヤに声を掛けられるとは思わず、心臓が破裂してしまうんじゃないかと思った。

 

 アスナ「キリト君達…どこ行くんだろ?」

 

 ユウキ「でも、これで誰にも邪魔されないで計画が練られるね!!」

 

 シウネー「何の計画を練るんですか?」

 

 ユウキ「そりゃあもちろん!キリトとアスナをくっつける…」

 

 ノリ「ほぉ…面白そうな事になってるじゃん」

 

 リズベット「私にも聞かせなさいよー!」

 

 ユウキ&アスナ「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」

 

 思わず椅子から流れ落ちてしまったボク達がふと見上げると、どこから現れたのかシウネーとノリ…そして、リズベットの3人が立っていた。

 

 ユウキ「い、いつからそこに…?」

 

 シウネー「ついさっきですよ。

 玄関でタクヤさんとキリトさんに会いましたよ?」

 

 リズベット「そしたらテラスでユウキとアスナが居るって聞いたからお邪魔したのよ!!」

 

 アスナ「り、リズ…。2人と面識あったの?」

 

 リズベット「ううん。今日初めて会ったわよ。

 でも、すぐに意気投合しちゃってさ!

 それで一緒にお茶でもしないって事でお呼ばれしたのよ!」

 

 ノリ「で…私達にもその話、じっくり聞かせてよ…」

 

 ボクから見た3人の顔は不敵な笑みを浮かべ、まるで魔女のように不気味であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リズベット「それではこれより"キリトをアスナにメロメロさせちゃお!”作戦の会議を開きます…!!」

 

 ノリ「よォっ!!待ってましたっ!!」

 

 シウネー「ノリ!真面目にやりなさい!!」

 

 ユウキ「いぇーい!!」

 

 アスナ「みんな…ありがとう…!!」

 

 ユウキ「ボク達で精一杯サポートするからね!」

 

 アスナの為にも絶対にこの作戦は成功させねばならない。

 いくつかの候補をあげてどれが1番効果的かしっかり吟味しなければならず、ボク達はそれぞれ候補をあげた。

 

 リズベット「えーと…ユウキのは、手料理を振る舞う…と」

 

 ユウキ「やっぱり胃袋をガッシリ掴むのがいいと思って!!

 アスナも料理スキル高いし打って付けだと思うよ!!」

 

 リズベット「なるほどねー。

 …で、シウネーが、2人っきりで星を眺める…と」

 

 シウネー「肝心なのは何と言ってもムードですよ!

 2人っきりで星を眺めながら互いの距離が近づいていくんです!!」

 

 リズベット「あーそれも捨て難いわねー。

 んで、ノリが…酒を交わす?」

 

 ノリ「酒でも飲んで心の弱みをキリトに見せて守ってあげたくなるように魅せるのも手の1つだと思うよ!

 それに、もしかしたらキリトの弱みとかも聞けちゃうかも知れないからね!!」

 

 リズベット「確かに…弱みを見せるってのも悪くないわね…。

 じゃあ、次は私ね!

 そうね…、2人だけの思い出の品を共有するなんてどう?

 それを見る度に互いの事を思い出しあってやっぱりこの人じゃなきゃ…!!って魂胆よ!!」

 

 全員それぞれ色んな趣向を凝らした案が出てきた。

 ボク的には全部やってもいいんじゃないかと思うのだが、最終的に決めるのはアスナである為何とも言えない。

 

 リズベット「どれかいいのあった?アスナ」

 

 アスナ「どれも魅力的だからなー。

 あっ、でも…お酒とかはちょっと無理かなー…」

 

 ノリ「えぇっ!?なんでさー!!」

 

 アスナ「私…お酒はちょっと苦手で…多分、キリト君もあんまり飲まないんじゃないかなぁ…」

 

 ノリ「ちぇっ!いい案だと思ったんだけどなぁ…」

 

 アスナ「後、物を送るのもダメっぽい…。

 キリト君そういうの頑なに受け取ろうとしないから」

 

 リズベット「あー…まぁなんか納得出来るわ」

 

 となると残りの案はノリとリズベットの案を除いた2つとなる。

 どちらも成功すれば間違いなく2人の仲は深まると確信を持って言える。

 

 アスナ「だから、ユウキとシウネーの案を頂きたいと思うんだけどいいかな?」

 

 ユウキ「もちろんだよ!!」

 

 シウネー「こちらこそごちそう…じゃなくてお役に立って嬉しいです!!」

 

 ユウキ「よーし!!

 それじゃあ今から料理スキルを完全習得(コンプリート)するよー!!アスナ!!準備してっ!!」

 

 アスナ「い、今から!?」

 

 ユウキ「当たり前だよっ!!

 時間なんてあっという間に過ぎちゃうんだから今からやらなきゃ始まらないよ!!」

 

 さっきまで暇だなーとか言っていた人の言うセリフじゃないと心の中で思いながらも、アスナをキッチンに招き入れて早速料理スキルを上げて行く事にした。

 シウネーはその間に気象設定などを調べていつどの層で綺麗な星空になるか探し始めた。

 リズベットとノリにはボク達のサポートをまかせて本格的に作戦の準備に取り掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年10月03日 12時40分 第50層 アルゲート

 

 オレとキリトは落ち着ける所を探していろいろな層を探したが街や店にはプレイヤーが多く、なかなか見つけられずにいた。

 そんな時、たまたまエギルに会ってキリトの了解を得て事情を話すと今日は定休日だからとエギルの店を紹介された。

 これは願ったり叶ったりだったオレ達は二つ返事で受け入れた。

 そして、今に至る。

 

 キリト「…どうしてお前がここにいるんだ?クライン」

 

 クライン「なんだよーいちゃ悪ぃのかよー…」

 

 キリト「いや、そういう訳じゃないが…」

 

 エギルの店でいざ話を進めようとした時、これまた偶然にクラインが来店してきた。

 キリトの顔が一瞬引きつったが見なかった事にしておこう。

 

 エギル「どーせすぐバレるんだ。

 仲間に入れてやればいいじゃないか?」

 

 キリト「それはそうだが…なんかこう…コイツには言いたくないと言うか…」

 

 クライン「なんだよっ!オレ様に隠し事かよっ?

 水くせぇじゃねぇか!オレでよければ力になるぜ?

 大事なダチの為だ!!人肌脱ごうじゃねぇかッ!!」

 

 タクヤ「クラインもこう言ってくれてるし…話してやれよ」

 

 キリト「…そうだな。…わかったよ」

 

 という事でキリトはクラインに自分の気持ちや今のこの状況を余す事なく丁寧に説明した。

 

 

 10分後

 

 

 クライン「…」

 

 キリト「だ、大丈夫か?」

 

 クライン「そうかぁ…キリの字もとうとうそんな事を考えられるようになったんだな…!」

 

 キリト「とうとうってなんだよ!?」

 

 クライン「オレに任せとけ!!

 絶対ェアスナさんとくっつけてやるからな!!」

 

 キリト「声がでかいよっ!!?」

 

 クラインはよほど嬉しかったのか涙を流しながらキリトの肩を組んでいた。

 

 エギル「まぁ、これからだろ?飯でも食いながら話そうや」

 

 そう言って出てきたのはサンドウィッチとソーセージの詰め合わせにサラダと巨漢の男が作るところなど想像出来ないような物が現れた。

 

 タクヤ「すげーな…!エギル、料理スキルとか取ってたのかよ?」

 

 エギル「家は道具屋兼喫茶店だからな。

 ある程度料理スキルがねぇと商売にならないんでな」

 

 クライン「ある程度ってレベルじゃねーよ!

 めちゃくちゃ美味ェじゃねぇか!

 誰も巨漢が作った代物とは思えねぇ!!」

 

 キリト「確かに…!」

 

 エギル「お前ら…それは褒めてんのか?貶してんのか?」

 

 タクヤ「褒めてるんだよ」

 

 エギルの料理に舌ずつみをうちながら本題へと入る。

 

 クライン「やっぱこういう事は男から行かねぇとなっ!!

 男らしさを魅せるってのも大事だ!!」

 

 タクヤ「男らしさか…。あんまキリトには合ってねぇな。

 どちらかと言えば中肉中背のニートって感じだ…」

 

 キリト「ぐ…言い返せない…」

 

 エギル「クラインの言う事にも納得だが、キリトにはキリトにしかない物を見せればいいとオレは思う」

 

 クライン「何かあんのか?キリト」

 

 キリト「は?それをオレに振るのか?

 お前達から見てどうなんだよ?」

 

 キリトの印象か…。

 初めて会った時はただのゲーマーだと思ってたからな。

 なんとも形容し難いが戦闘面でこれ程頼りになるプレイヤーは少ない。

 そういう意味ではキリトにしかない物と言えなくもないが。

 

 タクヤ「でもよ…それってオレ達男連中から見た印象だろ?

 女子目線になるとまた違ってくるんじゃないか?」

 

 クライン「あー…確かにな。

 女から見た男ってのもオレ達からしたら全く違ェって合コンで聞いたわ」

 

 エギル「お前、合コンなんぞに行ってるのか?」

 

 クライン「なんだよ!悪ぃかよ!!オレだって…オレだって…!!」

 

 クラインはクラインで辛い経験をしているのが分かったが、今はそんな事どうでもいい。

 キリトとアスナをくっつける話をしているのだ。

 正直、クラインの事は諦める方向で話をしよう。

 

 キリト「うーん…。自分じゃよく分からないんだけどなー。

 オレって現実じゃただのゲームオタクだし、根暗だし、コミュ障だし…」

 

 タクヤ「言うな。それ以上言うとこっちまで悲しくなる…」

 

 キリト「タクヤはどうやってユウキとそういう関係になったんだ?」

 

 タクヤ「お、オレか!?」

 

 エギル「オレも気になるぞ。

 前に2人で来た時から勘づいていたが…その後どうなって今に至るのか闇に紛れたままだ」

 

 クライン「どいつもこいつも惚気やがって!!

 オレにも少しぐらいあってもいいだろォがっ!!」

 

 タクヤ「それは単なる文句じゃねぇか!!

 いや、オレ達は参考にならねぇから!!」

 

 確かに、普通の男女交際とは歪な道を歩んでいると思う。

 それに付き合い出してすぐに離れてしまった為、世間でいう恋人関係というのもろくにしていない。

 

 キリト「でも、念のために聞いておきたいんだ。

 頼むよタクヤ…!」

 

 タクヤ「…分かったよ。笑うなよ?」

 

 エギル「笑わねぇよ。恋愛なんざ人それぞれなんだからな」

 

 タクヤ「じゃあ話すぞ?確か…ユウキの誕生会の日だったかな。

 ユウキにプレゼントを渡してそこでユウキに告白されたんだ」

 

 クライン「なんだよっ!お前からじゃないのかよっ!」

 

 タクヤ「そん時はまだユウキの事仲間としてしか見てなかったし、それに…オレには真っ先にやる事があったから…」

 

 エギル「やる事?」

 

 タクヤ「このゲームをクリアして茅場晶彦をぶっ殺す…。

 それがオレのやるべき事だ」

 

 そう。こんな世界を作り出してしまった兄貴を弟であるオレの手で引導を渡さなくてはならない。それがオレの役目だ。

 

 タクヤ「だから、すぐには返事が出来なかった…」

 

 キリト「じゃあ、いつ返事したんだ?」

 

 タクヤ「お前とユウキの3人で熟練度上げに行ったのを覚えてるか?ほら、オレが修羅スキルを暴走させた時だ」

 

 あの時オレはキリトに危害を加えてしまった。

 自責の念で仲間から離れようとした時、ユウキから強く抱きしめられたのを憶えている。

 その時だ。

 ユウキはこんなオレでも変わらず一緒にいたい、大好きだと言ってくれた時にはもうオレはユウキの事が好きなんだと自覚出来た。

 

 タクヤ「あの時にオレからもう1度告白して付き合う事になったんだが、それからはお前達も知ってるだろ?」

 

 キリト&クライン&エギル「「「…」」」

 

 そうだ。しばらくしてオレは笑う棺桶(ラフィン・コフィン)という殺人(レッド)ギルドに入った。

 当時、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のギルドマスターのPohに仲間を人質に取られ強制的にギルド加入を余儀なくされた。

 それからというもの、オレはプレイヤーを2人も殺し、罪を重ねていった。

 

 タクヤ「な?参考になんねぇだろ?

 一緒にいた時間が全部合わせてもそんなにねぇから恋人らしい事してやれてねぇんだよ…」

 

 エギル「まぁ、参考にはならないな…」

 

 タクヤ「そんな事よりキリトだろ!!

 お前、今でもソロで迷宮区とか潜ってんだろ?

 だったら、また前みたいにパーティ組んで一緒に行動すればいいじゃないか!!」

 

 キリト「無理だろ…。アスナは今や血盟騎士団の副団長だぞ?

 ソロでビーターのオレと一緒に行動してたらアスナに有らぬ噂が流れるかもしれないだろ?」

 

 タクヤ「そんな事はアスナ本人が決めるんだよ。

 誘って断られたらそれまでだったって事じゃねぇか」

 

 キリト「いや、しかし…」

 

 タクヤ「四の五の言ってないでまず行動しろ!うじうじすんな!

 タダでさえ女顔なのに気持ちまで女になってどうする?

 さぁ!行ってこい!今すぐに行ってこい!!」

 

 キリト「い、今からか?」

 

 タクヤ「当たり前だ!思い立ったが吉日って言うだろ!」

 

 キリト「は、はいっ!!」

 

 そう言いくるめたオレはキリトをアスナの元へと送った。

 ちょうどいい所に転移門前にアスナがいた為、キリトをアスナに預けてエギルの店に戻ると見せかけ物陰に隠れて2人の様子を伺う。

 

 キリト「あ、アスナ…」

 

 アスナ「な、何?キリト君…」

 

 キリト「アスナがよかったらなんだけど…軽くクエストにでもいかないか?」

 

 アスナ「!!…私と2人で?」

 

 キリト「あ、いや、別にダメならいいんだ!

 また別の機会にでも…」

 

 するとアスナが物凄い勢いで首を横に振る。

 アスナさん…そんなに振らなくてもいいんじゃない?

 

 アスナ「私も…その、ちょうど時間が空いてたから…」

 

 キリト「!!…そ、そうか…。じゃあ、行こうか…」

 

 アスナ「うん…!!」

 

 2人は顔を赤くしながら転移門でどこかへ転移して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年10月04日 15時10分 第50層 アルゲート

 

 エギル「で?どうだったんだよ?昨日は…」

 

 キリト「いや、クエストを一緒に行っただけだ」

 

 クライン「…特に何かなかったのか?」

 

 キリト「何かって?」

 

 タクヤ「…お前、何の目的で行ったか覚えてんの?」

 

 キリト「え?オレ今、責められてるの?」

 

 オレ達3人がため息を同時についてしまった。

 2人っきりにしてやりたいと思い、街の所で尾行をやめてエギルの店に戻ったのだ。

 だから、その後2人が何をしていたのかは分からないのだ。

 そう思ってキリトを呼び出し事情を聞けば特に何もないとの事で、心底ガッカリである。

 

 タクヤ「…まぁ、先はまだあるか…」

 

 キリト「?」

 

 キリトの恋はまだまだ先のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideユウキ_

 

 

 2024年10月04日 14時50分 第47層 フローリア マイホーム

 

 ユウキ「で!昨日はどうだったの?アスナ!!」

 

 シウネー「私も気になります!!」

 

 ノリ「勿体ぶってないで早く教えなよー!!」

 

 アスナ「えーと…」

 

 リズベット「まさか…!!言えないような所まで…!!?」

 

 アスナ「ち、違うよ!!

 えっと…昨日はクエスト行っただけで特に何も…」

 

 ユウキ&シウネー&ノリ&リズベット「「は?」」

 

 開いた口が塞がらない。

 ボク達はとりあえずキリトにアプローチをかけたらとアスナを50層まで連れていき、ちょうどいい所にキリトがいたのでボク達は物陰に隠れて様子を伺っていた。

 なんとキリトからクエストに誘われていたのだ。

 2人っきりにしようという事でその場は2人を行かせたが、今日、どうなったか事情を聞いてみると特に何もなかったと返ってきた。

 

 ユウキ「ほ、ホントに何もなかったの?」

 

 アスナ「う、うん…」

 

 リズベット「ただクエスト行っただけ?」

 

 アスナ「う、うん…」

 

 シウネー&ノリ「「えぇ…」」

 

 こんな事を言っては悪いがなんとも面白くない話だ。

 キリトから誘っていたのでもしやと思ったが。

 

 リズベット「はぁぁぁ…!!面白くなーい!!」

 

 アスナ「えぇっ!!?」

 

 シウネー「キリトさんもキリトさんですよ…。

 せっかく2人っきりなのに手を出さないなんて…」

 

 ノリ「かぁーっ!!なんかこうモヤモヤするねぇ!!」

 

 ユウキ「まぁまぁ…。タイミングがなかったって事だよね?」

 

 アスナ「…タイミングはあったんだけど、意識しちゃうと緊張しちゃって…」

 

 この様子じゃ一体いつ2人が結ばれるのか分かったもんじゃない。

 この先も長く見ていくしかないようだ。

 

 アスナ「ごめんね。みんなに協力してもらってるのに…」

 

 リズベット「謝んなくていいわよ。

 まぁ、薄々感づいてた事だったしね」

 

 アスナは"攻略の鬼”と呼ばれていても剣を納めればただの純粋な女の子だ。

 それなら誰だって緊張ぐらいしてしまう。

 でも、心配もしていない。

 キリトとアスナならこの先必ずと言っていいぐらい結ばれるだろう。

 確証はないがそこは女の勘というものだ。

 

 ユウキ「でも、まだ時間はある訳だしこれからに期待って事で…」

 

 シウネー「ですね」

 

 ノリ「頑張りなよ!!私達も応援してるからさ!!」

 

 リズベット「でも、もうちょい積極的にいかなきゃだよ!!」

 

 アスナ「うん!!ありがとうみんな!!」

 

 淡くも美しい恋の行方はどうなるのか…。

 それはまた次の機会にでも…。

 

 

 

 




という事でどうだったでしょうか?
2人の恋の行方はどうなる事やら。
2人の具体的な話は後日談や番外編などで書いていきたいと思います。

では、また次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。