ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という訳で14話目にとつにゅうです。
ペースが徐々に下がってきてしまいました。
SAO編が終わるまではこの状態をキープ出来たらいいのですが…

では、どうぞ!



【14】いつも一緒に…

 sideタクヤ_

 

 

 ユウキ「タクヤの…お兄さん…?」

 

 オレは湖の辺にあるベンチでユウキにオレの兄貴について話していた。

 リアルの事情を話すのは厳禁だが、これだけはユウキに話しておかなければならない。

 

 タクヤ「そいつはいきなりオレの所にナーヴギアとSAOのソフトを送り付けて来た…。

 オレはそれをまだ見た事ない世界に対する好奇心で始めてみた。

 決してそいつの事が好きだからではなくてバクとか見つけて文句言ってやろうとかそんな気持ちだった。」

 

 今思えばあの時、弟にやらせなくて良かったと思っている。

 オレじゃなきゃいけないような責任感すら感じていた。

 

 タクヤ「そして、この世界にやって来たオレはただ感動した。

 こんな世界が本当にあるのか…ってな。

 その時からオレはこの世界に魅了されてた。

 癪だったけど楽しかった。そして、おまえに出会った。」

 

 ユウキ「モンスターに襲われてる所をタクヤに助けてもらったんだよね…。懐かしいなぁ…。あれからもう約2年経つんだね…」

 

 タクヤ「最初ユウキを見た時はただの無鉄砲なバカとか思ってたよ…。

 でも、それからキリトとクラインにソードスキルを教わったりもした。赤の他人なのにこんなにすぐ打ち解けるなんて思っても見なかったけどな。でも、それは突然に終わっちまった…」

 

 ユウキ「…そうだね。あの時から…」

 

 2年前のサービス当日…オレ達全プレイヤーは残酷な現実を突き付けられた。

 ログアウトボタンの消滅…ゲームをクリアしなければこの世界から出られない…そして、この世界で死んでしまえば現実世界でも死んでしまうという状況…それを作り出してしまったのは他でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「…この世界を作った茅場晶彦は…オレの兄貴なんだ…」

 

 ユウキ「えっ!!?」

 

 驚くのも無理はない。

 茅場晶彦の弟だと言っても実感が湧かないのも当然だ。

 

 タクヤ「アイツは…兄貴はこのゲームを作っている間、1度も家には帰って来なかった…。

 オレの両親が死んでも…アイツはゲームを作り続けていたんだ…」

 

 ユウキ「タクヤの…両親が…」

 

 タクヤ「許せなかった…。

 アイツは父さんと母さんよりゲームを優先した!

 憎くて憎くて…どうしようもないほどに憎かった…。

 だから、もしかしたらこの世界にいるんじゃないかって…。

 アイツに会ってぶっ殺してやるって…。

 それが、オレに出来るケジメの付け方だとそう思っていた…」

 

 だから、誰よりも強くならなきゃいけなかった。

 だから、誰にも負けない力が欲しかった。

 その結果、オレは大切なものを手から零れ落としてしまった。

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「今オレには力がある…。

 でも、手に入れるまでにいろんなものを犠牲にしてきた…。

 兄貴を殺す為なら構わないとまで思った。

 でも…犠牲にした後になって後悔した。

 オレはこんな事の為に命を捨てて来たのかって…。

 オレは…自分が分からなくなった…」

 

 後悔はある。

 オレの手で殺してしまった者やその者の仲間達はオレを許さない。

 ずっとオレを憎むはずだ。

 覚悟はしている。それだけの事をしてしまったのだから。

 

 ユウキ「…タクヤ。自分を責めないで」

 

 タクヤ「でも…オレは…!!」

 

 ユウキ「終わってしまったものはもう取り戻せない…。

 過ぎてしまった時間を巻き戻す事は出来ない…。

 でも、生きている限り…先はあるんだよ?

 歩いて歩いて歩き続けて…いろんな事を経験してボク達は進まなくちゃいけないんだ…。

 ボクも後悔した…。タクヤを支えてやれなかったって…。

 でも、まだ次がある。何度も挑戦できる…!

 タクヤが死なせてしまった命はもう還ってこないけど、タクヤにはそれとは他に助けた命があるんだよ?」

 

 タクヤ「オレが…助けた…命?」

 

 ユウキ「タクヤは…攻略組を…仲間を…ボクを助けてくれたんだよ?ずっと1人でボク達を助けてたんだよ?

 タクヤにはそれを理解して欲しい…。

 君が君を犠牲にして守った人達の想いを…」

 

 タクヤ「オレは…」

 

 すると、ユウキから強く抱きしめれた。

 懐かしい感触がオレを包み込む…。

 

 ユウキ「ボクはタクヤの全部が大好き…!!

 だから、1人で抱え込まないで…。ボクも一緒に抱えるから…。

 もう…どこにも…行かないで…タクヤぁ…」

 

 この手は血に塗れている。

 拭ってもそれは残りオレの中であり続けるだろう。

 でも、オレにその権利があるのなら…助けた命がある事を知る権利があるのなら…オレはそれだけで…救われる。

 

 タクヤ「…もうどこにも行かねぇ。

 また、無茶しても絶対にユウキの元に帰ってくる…。

 もう…お前に悲しい思いも辛い思いもさせない…。

 だから…こんなどうしようもないオレと…一緒になってくれるか?」

 

 ユウキ「…当たり前だよ。

 タクヤが離れろって言ったって離れてなんかあげない…。

 ボクもタクヤと一緒にいたいよ…」

 

 タクヤ「…結婚しよう」

 

 ユウキ「はい…」

 

 オレ達は顔を近づけ湖の辺で熱い約束(キス)を交わした。

 もう捨てない…。ユウキをもう悲しませない…。

 オレはユウキのものだ…。この命はユウキの為に使う…。

 そんな誓いを込めたオレのファーストキスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年08月03日 09時30分 第47層 フローリア マイホーム

 

 スリーピング・ナイツ「「「おかえり!!タクヤ!!」」」

 

 久しぶりのマイホームを開けた瞬間、無数のクラッカーが一斉に鳴り響いた。

 昨日はあれからセルムブルグの宿屋にユウキと2人で泊まり、翌日の朝…つまり今40層のフローリアに帰って来た次第である。

 

 タクヤ「…その、なんて言ったらいいか…」

 

 シウネー「お帰りなさい…タクヤさん!!」

 

 ジュン「今日の主役がそんな顔してんじゃねぇよ!!」

 

 テッチ「本当無事でよかったよ!」

 

 タルケン「もう無茶はしないでくださいね」

 

 ノリ「ホントだよ!!まったく…お前はぁぁぁん!!!!」

 

 オレの為に心配してくれて、泣いてくれる仲間がいる。

 それだけで胸がいっぱいだ。

 滲んだ涙を拭いみんなに今回の件で心配かけた事を謝った。

 みんなはすぐに許してくれた。

 ユウキも横で一緒に見守ってくれている。

 オレはなんて幸せ者なんだ…。

 

 シウネー「さぁ!暗い空気はここまでにして…!

 朝ごはん食べましょう!スリーピング・ナイツ全員で!!」

 

 テーブルには既に豪華な料理が並べられていた。

 

 ユウキ「こ、これ…シウネーが作ったの?」

 

 シウネー「えぇ…途中からはみんなも手伝ってくれて…!

 ユウキ程スキルは高くないけど2人を出迎えたかったので…」

 

 タクヤ「ありがとう…シウネー、みんな!!いただきます!!」

 

 オレは席につき、さっそく料理に箸をつける。

 どれもこれも美味しく出来ており、この上ない満足感に包まれた。

 この風景も久しぶりだ…。

 みんながいて、ユウキが隣にいて、一緒に飯を食べる。

 そんな普通の事が今は幸せを感じるものになっていた。

 

 ジュン「あっ!それオレが残してた肉だぞ!!」

 

 ノリ「やーい!早く食べないから取られるんだよーだ」

 

 シウネー「2人とも落ち着いてまだまだあるからケンカしないの!」

 

 ユウキ「これおいしー!!ってタルケン!!もっとゆっくり食べなよ!!」

 

 テッチ「タルケンは食べ始めると止まらないからね…」

 

 この騒がしい食卓もオレが零れ落としたもの…。

 また、ここに戻って来れるなんて…夢のようだ。

 

 シウネー「タクヤさんも!!どんどん食べてくださいね!!」

 

 タクヤ「…あぁ!腹一杯になるまで食うぞ!!

 ってユウキ!!それオレのだぞ!!」

 

 ユウキ「大丈夫大丈夫!まだあるから…ねっ!シウネー」

 

 シウネー「あ…それはユウキが食べたので最後…」

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「…覚悟は出来てるな?」

 

 ユウキ「は…はははっ!やだなーそんな怖い顔しないでよー!!

 …はい、すみません」

 

 楽しい時間はまだまだ続く。

 これから先もずっと…。仲間がいる限りオレ達は歩み続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年15時12分 第47層 フローリア マイホーム

 

 オレは今…非常に困っている…。

 

 タクヤ「…」

 

 スリーピング・ナイツ「「「…」」」

 

 ユウキ「タクヤ〜///」

 

 ユウキがずっとオレから離れないのである。

 かれこれ5時間はこのままの状態だ。

 

 タクヤ「あの…ユウキさん?オレ、動けないんだけど…」

 

 ユウキ「え〜…そんな事ないよ〜。

 動きたいならボクも一緒に連れてって!」

 

 タルケン「…あの〜これは何をなされてるんですか?」

 

 タクヤ「…オレにもわかりません」

 

 ユウキ「だって〜今までタクヤとこうしてくっついてられなかったも〜ん!だからめいいっぱいくっついてるんだ〜!」

 

 タクヤ「うぐっ!…それ言われると何も言い返せねぇ…」

 

 多少の罪悪感からユウキの行為に目を瞑るしかない。

 まぁ、嫌な気分じゃないから別にいいのだが周りの目が痛い。

 

 シウネー「ま、まぁ…今日はゆっくりしていてください。

 明日からは血盟騎士団の方へ行かれるんですよね?」

 

 タクヤ「あぁ。しばらくは血盟騎士団(あっち)にいなきゃいけねぇけど毎日帰ってくるさ…」

 

 ユウキ「いやだー!!タクヤと離れたくないー!!!!」

 

 タクヤ「いや、こればっかりはどうする事も出来ないからな…。

 てか、ユウキまで抜けたらスリーピング・ナイツはどうするんだよ?」

 

 ユウキ「いやだいやだいやだぁ!!一緒じゃなきゃいやだぁぁっ!!!!」

 

 なんかいつもと雰囲気がまるで違うがオレがいない間に何があったんだ。

 

 タクヤ「ふぅ…ユウキ」

 

 ユウキ「ん…?」

 

 オレはユウキの耳に周りに聞こえないように囁いた。

 

 タクヤ「帰ったらちゃんと相手してやるからよ…。

 ベッドの上で待っててくれ…。

 朝まで寝かせねぇから覚悟しとけよ?」

 

 ユウキ「…!!!!////////////」

 

 ユウキの顔は一気に真っ赤になりその場に経たり込んだ。

 そのおかげかユウキはやっとオレから離れた。

 

 ジュン「お、おい!大丈夫かよ!!」

 

 ユウキ「…///ふにゃぁぁぁ…/////」

 

 タクヤ「と、とりあえず…しばらくは大丈夫だろ。

 …ほら、ユウキ、しっかりしろ。

 今からアスナと待ち合わせだろ?」

 

 ユウキ「ふにゃ!?そ、そうだった!!早く行こっ!!タクヤ!!」

 

 ユウキはオレの手を引っ張り勢いよくマイホームから出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年08月03日15時45分 第71層 転移門前

 

 オレ達はなんとか約束の時間に間に合い、71層の転移門前へやって来た。アスナとその付き添いのキリトと合流したオレ達は商店通りを歩きながら談笑を重ねている。

 

 アスナ「タクヤ君も一時的って言っても血盟騎士団(ウチ)のメンバーだね」

 

 キリト「オレだったら絶対に入りたくないけどな…」

 

 アスナ「なんでよっ!!そんなに私といるのが嫌なの!!?」

 

 キリト「そ、そういう事じゃなくて!!

 息苦しいだろうなって思っただけだ!!」

 

 ユウキ「まぁまぁ落ち着きなよ2人とも…」

 

 タクヤ「それで周りが納得するならいいんだが…よりにもよってヒースクリフとパーティってのがなぁ…」

 

 オレがまた攻略組として活動するにあたってオレの前科をよく思っていない奴らがいるのもわかる。

 それらを黙らせると言ったら聞こえが悪いが最前線をヒースクリフとパーティを組んで攻略し、その重要性を見極めるという事で話はまとまった。

 オレとしてもまたいつも日常を送らせてもらってる身である為、強くは言えなかったが本心ではヒースクリフとパーティは組みたくないものだ。

 

 ユウキ「タクヤって団長さんの事苦手だもんね!」

 

 キリト「オレも苦手って意味より何を考えてるか分からないって感じだがこればっかりはどうしようもないな…」

 

 アスナ「でも珍しいよ?団長自ら迷宮区を攻略するのって…。

 いつもは私達に押し付けて自分はボス戦にしか顔を出さないんだから!」

 

 確かに、迷宮区の攻略中に血盟騎士団とすれ違う事は何度かあったがヒースクリフの姿をボス戦以外で見た事はなかった。

 

 タクヤ「ともあれ…明日から世話になるよアスナ」

 

 アスナ「こちらこそ…ビシバシ行くから覚悟しておいてね!」

 

 タクヤ「御手柔らかに頼むぜ?副団長殿…」

 

 ユウキ「ねぇ!それより今日は何をするの?」

 

 ユウキがアスナに尋ねた。

 

 アスナ「今日は私の友達の鍛冶師に剣を作ってもらいに行くのよ?ユウキとタクヤ君の分をね!」

 

 ユウキ「えっ!!?そうなのっ!!!でも、そんなの悪いよ…」

 

 キリト「いいんだよ…。タクヤが戻ってきた祝の品でもあるんだ。

 なら、一緒にユウキのも作ろうって話になってな。

 もうお前達の武器じゃ限界が近いだろ?」

 

 オレは闘拳スキルを使用していて武器はこの頃滅多に使わなくなってきたがどんな事態にも対処出来るように強い武器があって損は無い。

 

 タクヤ「でも…その、本当にいいのか?」

 

 アスナ「ふふっ。

 タクヤ君が申し訳なさそうにしてるのって珍しいね!

 でも、2人が強くなれば攻略組としても大きなメリットだしいいのよ!」

 

 ユウキ「ありがとう…!!アスナ!!キリト!!」

 

 タクヤ「サンキュな、2人とも!!」

 

 アスナ「でもそのかわり…素材は自分達で集めてきてね」

 

 キリト「今日はその為に2人を呼んだんだ…。

 この層でしか採れない鉱石があって、それで作った武器はかなり強いって噂だ…」

 

 タクヤ「へぇ…」

 

 ユウキ「じゃあいっぱい採ってきて強いの作ってもらうぞぉっ!!」

 

 こうしてオレ達はポーション等の消耗品を買い終わり、鉱山がいくつも連なった岩石フィールドへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 岩石フィールドに到着するや否やモンスターとの戦闘になった。

 オレは闘拳スキルを発動してこれを撃破。

 続いてくるモンスターもほぼ一撃で仕留め、難なく鉱山へとやって来た。

 

 キリト「お前…いつの間にこんなに強くなったんだ?」

 

 タクヤ「いや、なんか知らねぇけど身体が妙に軽いんだよな…」

 

 ユウキ「今、タクヤのレベルは…うへっ!!95っ!!?

 ボクと10も違うよっ!!!」

 

 アスナ「ど、どうやってそこまで…?」

 

 キリト「…オレも頑張ってるんだけどなぁ。はぁ…」

 

 タクヤ「そ、それより早く中に入ろうぜっ!!!」

 

 オレも内心驚いている。最後に見たのは一昨日だ。

 確かその時は89とかそれぐらいだったハズなのだが、気付いたらレベルが一気に上がっていた。

 何が原因でこんな事になっているか分からないが今気にしても仕方ない。オレ達は鉱山の中に入ってモンスターと戦闘を重ねながらも奥へと進んでいった。

 

 ユウキ「この奥に鉱石をドロップするモンスターがいるの?」

 

 キリト「あぁ。ネームドモンスターなんだけどそれがかなり厄介らしくてな…。

 図体もでかいし何より硬いから苦戦するらしいぜ」

 

 タクヤ「ふぅ〜ん…そっか…」

 

 アスナ「妙に余裕そうだけど…何か考えがあるの?」

 

 タクヤ「いや、そんなのはないけど…まぁなんとかなるだろ!

 このメンツだったら誰が相手でも負ける気はしねぇ!」

 

 キリト「そう言えば…懐かしいな…」

 

 ユウキ「本当だね…」

 

 それは第1層の攻略会議だった。

 オレ達は偶然迷宮区で1人戦っていたアスナを助け出し、一緒に会議に参加して…パーティを組んだ。

 それがオレ達の最初の会合だった。

 

 アスナ「今でも時々思い出すよ…。

 あの時、キリト君達に助けられてなかったら私はどうなってたんだろうって…」

 

 キリト「オレも驚いたよ…。初心者(ニュービー)なのに達人ばりのリニアーを撃てるなんて思わなかった…」

 

 アスナ「そんな事ないよ…。

 あの時の私は自分の事しか考えてなくてもう頑張ったから死んでもいいって思ってた。

 でも、キリト君に出会って君の生き方に自分の考えがどれだけ愚かなのか思い知らされたよ。

 だから…今こうして生きてるんだよ?」

 

 キリト「アスナ…」

 

 ユウキ「…あの〜…」

 

 タクヤ「オレ達がいること忘れてやしませんかね?」

 

 キリト&アスナ「「!!?」」

 

 顔を赤くして金魚のように口をパクパクさせている姿は写真でも撮ってやろうかと思うぐらい面白かった。

 この2人ならきっといい関係になれるような気がする。

 

 タクヤ「さぁ!もうすぐそこだ!」

 

 奥に進むにつれて道幅が広くなり、大空洞へと出た。

 その瞬間、薄暗かった大空洞全体に光が灯り目の前の玉座に巨大なモンスターが座っていた。

 

 ユウキ「あれがボスみたいだよ!!」

 

 キリト「よし!オレとタクヤでタゲをつけるから2人は背後から攻撃してくれ!!くれぐれも無茶はするなよ!!」

 

 作戦を伝え終わりオレとキリトが玉座から立ち上がったモンスターに切り込みにかかった。

 キリトは漆黒の剣"エリュシデータ”を抜き、ソードスキルを発動させる。

 

 

 片手用直剣スキル"ヴォーパル・ストライク”

 

 

 片手用直剣のソードスキルの中でも上位に置かれている突進技がモンスターの右脇腹に突き刺さる。

 モンスターは奇声を上げるがすぐ様迎撃にかかる。

 だが、その攻撃を読んでいたオレが横から追撃に入る。

 闘拳スキル"柔拳”

 この技は威力こそ少ないが一時的行動不可(スタン)が発生する。

 その間にキリトのソードスキル後の硬直(ディレイ)が終わり一時退却する。

 

 キリト「ナイス連携だ!!」

 

 タクヤ「久々やったからちょっと緊張したぜ…!!」

 

 これであのモンスターはターゲットをオレ達に定めたはずだ。

 爆音と共にモンスターが突撃してくるが、背後からユウキとアスナによる攻撃が加わりモンスターはついに地面へとひれ伏した。

 

 ユウキ「タクヤ達ばっかりにいい所あげないよっ!!」

 

 アスナ「私達もタゲを取るからスイッチお願い!!」

 

 キリト「わかった!!HPがイエローに入るまでこのままで行くぞ!!」

 

 オレ達の怒涛の攻撃により、なす術を失くしたモンスターのHPはみるみる減少していき、ついに1時間切った所で爆散した。

 

 ユウキ「やったぁ!!たおしたよ!!」

 

 アスナ「お疲れ様ユウキ…!!」

 

 キリト「聞いてたより大した事なかったな…。タクヤ、鉱石は?」

 

 タクヤ「えーと…」

 

 オレがドロップ品を見ていると地響きがなり始めた。

 危険を察知したオレ達はすぐ様大空洞を出た。

 すると、地中を砕きながらもう一体モンスターが現れる。

 その体は鋼で覆われ、先程のモンスターの倍はある巨体に目を奪われた。

 

 タクヤ「で…でけぇ…」

 

 キリト「もしかして…こっちが本命か?」

 

 ユウキ「えぇ!!うそ〜!!」

 

 アスナ「タゲ取られちゃってる!!ひとまず散開しよう!!」

 

 アスナの提案によりオレ達は4方向に別れ様子を伺う。

 激しい金属音を響かせながらオレに鋼の鱗を撒き散らした。

 オレは1枚1枚交わしていくがこのままではジリ貧である。

 闘拳スキルも至近距離でしか真価を出せず、剣を取り出そうとした瞬間、頭の中で声がした。

 

 

 

 

 

 

『ったくよぉ!ちんたらしてんじゃねぇよ!俺に代われ!!』

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「!!?…お前こそ、もうちょっと言い方ってもんがあるだろ!」

 

 オレはメニューウィンドウを開き、スキル欄の()()()()()をクリックする。

 瞬間、オレの体は赤黒いエフェクトに包まれた。

 

 

 sideユウキ_

 

 

 ユウキ「あれって…修羅スキル!!?」

 

 キリト「バカっ!!何やってるんだ!!」

 

 タクヤ「何って…こうするんだよぉっ!!!!」

 

 タクヤは鱗の雨を超加速で避け、腕をつたって頭部へと登り詰めた。

 前に倒したゴーレムのように頭部への攻撃が一番有効的だろうが、今戦っているモンスターは頭にも鉄壁の鋼が幾重にも連なり、その強度は破壊不能オブジェクトの一歩手前まであるはずだ。

 

 アスナ「いくらタクヤ君でもあれは…」

 

 タクヤ「()()()に代わったからにゃあ、跡形もなく砕いてやらぁぁなぁぁっ!!!!」

 

 ユウキ「えっ!?」

 

 鋼の硬度をも容易く貫いて見せたタクヤは頭部から降り立ち、ボク達の所へ歩み寄った。

 

 タクヤ「あんなヤツに手こずってるようじゃまだまだだな」

 

 歩み寄ろうとするのをキリトが静止させた。

 

 キリト「お前は…どっちだ?」

 

 タクヤ「…ハッ!!そうだな…オレとお前らの関係はそれでいい。

 心を許す事ぁねぇからな…。

 でも、わざわざ聞かれるのもめんどくせぇ…これからは"シュラ”とでも呼んでくれや…。じゃあな」

 

 すると、タクヤの体から赤黒いエフェクトは消え去り、数回頭を振ってから元のタクヤに戻った。

 

 タクヤ「ふぅ…あれ?どしたの?」

 

 アスナ「ほ、本当に…タクヤ君…なんだよね?」

 

 タクヤ「当たり前だろ?…そういや、まだ言ってなかったっけ?

 もう修羅スキルは完璧にマスターしたんだ」

 

 キリト「い、いつの間にマスターしたんだ?」

 

 タクヤ「んー…ついさっきかな?

 まぁ、とりあえずみんなに危害を加えるような事がはしねぇから安心してくれ!」

 

 ユウキ「…」

 

 この時のボクにはタクヤの言っている意味が分からなかった。

 後で聞いたところによるとシュラはタクヤでタクヤはシュラである…オレ達は2人で1人なんだ、とどこかスッキリしたような顔つきで話してくれた。

 何はともあれボク達はお目当ての功績も無事にゲットし、アスナの友人で鍛冶師がいるという48層のリンダースへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 2024年08月03日 17時50分 第48層 リンダース

 

 オレ達は鉱石を持ってリズベット武具店へとやって来た。

 のどかな雰囲気が街全体を包み、武具店の横に取り付けられた水車も趣があって雰囲気に合っている。

 カランカランと鈴の音が店内に響き渡り、奥の部屋から元気な声で待ってるように言われた。

 しばらく待って奥から現れたのはピンク色の髪に左右にピンをしたそばかすが似合う少女だった。

 

 リズベット「リズベット武具店へようこそっ!!

 …て、アスナとキリト…とそちらの方は?」

 

 ユウキ「ボクはユウキ!よろしく!!」

 

 タクヤ「タクヤだ…よろしく」

 

 アスナ「リズ。実はこの2人に剣を作って欲しいの。

 今から大丈夫?」

 

 リズベット「まぁ、作るのは言いけど…。今素材切らしちゃって今から取りに…」

 

 キリト「それなら大丈夫だ…。鉱石ならさっき採ってきたから」

 

 キリトはアイテムストレージから先程ドロップした鉱石をリズベットに渡す。

 

 リズベット「こ、これ…!!もしかして…71層で採れるやつ!!?」

 

 ユウキ「うん!!さっき言ってきたんだ!!

 これだけあったら強い剣作れる?」

 

 ユウキもストレージから大量に鉱石を取り出し、全てリズベットに渡した。

 リズベットは興奮しながらも快く剣を作る事を承諾した。

 

 リズベット「で、具体的な目標値は?」

 

 ユウキ「ボクはAGI(アジリティ)型でお願いします!」

 

 リズベット「で、あなたはどうなの?」

 

 タクヤ「じゃあオレもそれで」

 

 リズベット「2人ともAGI(アジリティ)型ね!

 …じゃあ行くわよ…」

 

 鍛錬用のハンマーで鉱石を打ち鳴らす音にオレ達は静かに見守った。

 鉱石は徐々に形を変化させていき、1本の凛とした剣が出来上がった。

 

 リズベット「これはユウキの分ね!

 名前は"ブラッディ・ストーン”…私が知らないって事は市場には出回ってないわね。

 試しに振ってみて!」

 ブラッディ・ストーンと名づけられた漆塗りの剣は妖艶な色彩を放っており、全てを魅了し全てを蹂躙させるような雰囲気を醸し出している。

 ユウキはブラッディ・ストーンを手に取り数回振ってみた。

 

 ユウキ「…すごい。これ凄くいいよ!!

 それに軽いし、これなら今まで以上に動けるかも!!」

 

 リズベット「喜んでくれてなによりよ!次はタクヤの分ね!」

 

 リズベットが新たな鉱石を取り出し、ユウキのと同様にハンマーを数回叩き形を変化させる。

 だが、その形は剣でなく元の大きさよりも小さくなってしまった。

 

 リズベット「あれ?何これ…。剣じゃないわね」

 

 タクヤ「これは…グローブ?」

 

 元の鉱石からは想像もつかないような左右対称のグローブが現れた。

 リズベットはウィンドウを開いてみたが、どの武器種にもましてやどの防具にも連ならいもののようだ。

 

 キリト「どういう事だ?」

 

 リズベット「分からないわ…。私もこんな事初めてだから。

 でも、性能はユウキのと遜色ないらしいけど…」

 

"コロナ”と銘打たれた山吹色を輝かせるグローブにオレは目を惹かれ、それを手に取る。

 

 タクヤ「試しにつけてみるか」

 

 オレはコロナを両手に付けてみる。すると、ガチンと金属音が両手から聞こえてきた。

 

 アスナ「どうしたの?」

 

 タクヤ「…取れなくなりました」

 

 ユウキ「えぇぇぇぇっ!!?どういう事っ!!!」

 

 リズベット「ウィンドウから装備を外してみればいいじゃない」

 

 タクヤ「いや、何やっても取れねぇ…。」

 

 ピコーン

 

【指定のアイテムが装備されました。修羅スキル"孤軍奮闘”を解放します。】

 

 メッセージウィンドウが突如出現して、修羅スキルに新たなスキルが追加された。

 

 キリト「修羅スキル専用の装備?

 ユニークスキルに専用装備があるなんて聞いた事ないぞ…」

 

 ユウキ「でも、他のユニークスキルにも専用の装備があるかもしれないよ?」

 

 リズベット「まぁいいじゃない!

 これで新しいスキルも手に入ったんだし!

 あと、代金は要らないわ。残りの鉱石を貰っちゃってるからね…」

 

 アスナ「ありがとう!リズ!!」

 

 タクヤ「まぁ、生活に支障がないなら別に構わないけど…」

 

 とりあえず目的は果たした。

 オレとユウキはリズベットに礼を言ってリンダースを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年08月03日22時10分 第47層 フローリア マイホーム

 

 あれからキリトとアスナと別れオレ達はマイホームへと帰って来た。

 帰ってくるや否や、ノリは泥酔していて付き合っていた男性陣も酔いつぶれてしまっていた。

 

 タクヤ「だ、大丈夫か?」

 

 シウネー「すみません…。

 お酒は程々にするよう言い聞かせたんですが…」

 

 ユウキ「まぁ…ノリの事は仕方ないね。」

 

 流石にこのまま放置する訳にもいかずシウネーとユウキにノリを、オレはジュンとテッチ、タルケンを部屋へと送り届けてからリビングへと戻ってきていた。

 

 ユウキ「タクヤー…3人は大丈夫だった?」

 

 タクヤ「あぁ。ベッドに寝かせてきたよ…。ノリはどうなんだ?」

 

 シウネー「ノリもすっかり寝てたのでそのままベッドに寝かせてきました」

 

 タクヤ「そっか…。オレは酒飲んでから寝るよ」

 

 シウネー「じゃあ、私は先に休ませてもらいますね…。

 おやすみなさい」

 

 ユウキ「おやすみー」

 

 シウネーも自室へと向かい、残ったのはオレとユウキだけとなった。

 オレは酒を取り出しグラスへと注ぐ。

 

 ユウキ「ボクにも1杯ちょうだい」

 

 タクヤ「酒飲んで平気か?弱いんじゃなかったっけ?」

 

 ユウキ「1杯ぐらいなら大丈夫だよ。それに寝ちゃってもタクヤが部屋まで連れていってくれるしね…」

 

 タクヤ「本心はそっちなんじゃねぇか…?」

 

 ユウキ「そんな事ないよー。

 ボクはタクヤと一緒にいたいだけなんだから…」

 

 オレはユウキ用のグラスを取り出し、酒を注いだ。

 2人して一言も話さず…だが、確かに感じているものがあった。

 言葉にしなくても伝わっていくような不思議な感覚だ。

 

 ユウキ「…ね、タクヤ…。…ぎゅってして…」

 

 タクヤ「…仕方ねぇな」

 

 オレは隣に座っていたユウキを自分の方へと寄せた。

 ユウキも逆らう事なくオレに身を委ねてくれている。

 

 ユウキ「…あのさ、タクヤがもし…よかったらで良いんだけど…」

 

 タクヤ「?」

 

 ユウキ「今日は…一緒に寝てもいい…?」

 

 思わず口に含んでいた酒を吹き出すところだったがなんとか持ち直し、無理矢理胃の中へと追いやった。

 

 タクヤ「ど、どうした急に…!!」

 

 ユウキ「だって…明日からあまりタクヤと一緒にいれなくなっちゃうし…みんながいるけど…やっぱり、タクヤがいないと寂しい…」

 

 明日から一時的に血盟騎士団としてヒースクリフと行動を共にしなくてはならない。

 オレだって出来る事なら行きたくないが、オレがやってきてしまった事がこれぐらいで済むなら安いものだ。

 

 タクヤ「…お前、いつからそんな甘えん坊になったんだよ?」

 

 ユウキ「だって…」

 

 ユウキの気持ちもわかる。

 オレ達が恋人同士になってすぐにオレはみんなを捨てて地獄へと身を落とした。

 その間、みんなはもちろん…ユウキが寂しい思いをしていた事は事実だ。

 

 タクヤ「…本当にいいのか?」

 

 ユウキ「うん。タクヤとだから一緒に寝たいんだよ?」

 

 タクヤ「じゃあ…お姫様のご要望通り一緒に寝ますか!」

 

 オレはユウキをお姫様だっこで自室へと向かった。

 自室に入ると装備を外し、楽な格好になる。

 ユウキもナイトキャミソールに着替え一緒にベッドの中へ入った。

 

 タクヤ「狭くないか?」

 

 ユウキ「うん…。タクヤと密着してるから大丈夫…。

 タクヤ…キス…して…//」

 

 タクヤ「…今日は何でもユウキの言う通りにするよ」

 

 オレとユウキはベッド中でキスをした。

 それはあまりにも情熱的で激しく乱れたものだった。

 ユウキも終わり頃には目がとろけてしまっていた。

 

 タクヤ「まだしてほしいか?」

 

 ユウキ「もっと…今まで出来なかった分…全部…///」

 

 タクヤ「オレも一応男だからさ…。

 やり始めたら止まんねぇと思うけど…それでも?」

 

 ユウキ「うん…。ボクを…めちゃくちゃに…シテ…」

 

 それからは口に出すのも激しいようなオレ達にとって忘れられない1日へとなったのだった。

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
終盤はなんかこうピンク色の空気を流してみましたけどこれ書くとなると超難しいですね。
こういう描写が得意な人が羨ましいですよ。

では、また次回!

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