ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で13話に突入です。
ラフコフとの決戦はここで終了です。
後日談的なのは次回ぐらいに持ってこようと思ってます。


では、どうぞ!


【13】修羅の道

 sideユウキ_

 

 

 2024年08月02日 10時00分 第66層 迷宮区

 

 ボク達は昨日の会議の後、ルクスから託されたタクヤの情報をもとに笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のアジトがある迷宮区へとやって来た。

 モンスターを引き寄せない討伐隊の強さにボクは多少なりとも凄いと感じていた。

 

 アスナ「既に踏破してるとはいえ、やっぱり迷宮区は緊張するね…」

 

 ユウキ「うん…。でも、編成がちゃんとしてるから全然楽だけどね」

 

 楽ではあるが、ボクは違う緊張感を感じている。

 この先にボクの想い人が今も戦っている。

 人知れず1人で立ち向かい、傷付き、疲弊している。

 今隣に立つ事が出来たならそんな思いはさせないのに…。

 そんな後悔を胸に秘めながら先へと進んでいった。

 

 シュミット「タクヤの情報によればもうすぐだ。

 警戒して先へ進もう…。と言ってもレベルはオレ達の方が上だから肩の力を入れすぎるなよ!」

 

 シュミットはみんなを鼓舞しつつ、肩の力を取る。

 さすがタンク隊のリーダーだ。

 自分の役割をしっかり理解している。

 

 ユウキ「…」

 

 キリト「ユウキ。そんなに肩に力入れてると成功するものも失敗しちまうぞ…」

 

 ユウキ「あっ…うん…ありがと」

 

 クライン「それにしても全然気配とか感じねぇなぁ。

 隠蔽スキルでも使ってんのか?」

 

 キリト「オレ達はあくまで気づかれないようにしながら来てるんだけどな。…そこん所忘れるなよ?」

 

 クライン「わかってるけどよぉ…。

 こう何もないんじゃ警戒の仕様がねぇぜ…」

 

 ユウキ「…」

 

 辺りには誰の気配もなく、モンスターの姿も見えない。

 当たり前と言えばそれまでだが、ボクは嫌な予感がする。

 

 シュミット「…座標はこの辺なんだが…」

 

 アスナ「何も無いね…」

 

 ユウキ「…」

 

 キリト「…」

 

 ボク達は周りに目を配らせるがやはり、誰の気配もない。

 緊張しすぎて感が鈍っているのか…奴らの隠蔽スキルがボクらの索敵スキルよりも高いせいなのかは分からないが…それらしい影を見つけられ─…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッハァぁっ!!」

 

「「「!!?」」」

 

 突然背後の横穴から1人のプレイヤーがキリトに斬りかかった。

 

 アスナ「キリト君!!?」

 

 間一髪の所で防げたようだが、突然の奇襲に状況が掴めなくなっている。

 続けて1人…2人とあらたなプレイヤーが討伐隊に襲いかかってきた。

 

 シュミット「みんな!!落ち着いて行動すれば対処出来る!!

 怯まずに捕らえろぉぉっ!!」

 

 そう言っている内に次々と現れてくる笑う棺桶(ラフィン・コフィン)にボクらも必死に対抗する。

 ボクが1人を鎮圧するが新手がボクの行く手を阻む。

 

 ユウキ(「タクヤ…!!タクヤはどこっ!!?」)

 

「ガラ空きだぜぇぇっ!!」

 

 ユウキ「しまっ…」

 

 一瞬の隙が命取りになった。

 背後に飛びかかってくる敵の一撃を食らってしまう。

 

 ユウキ「ぐっ…」

 

 アスナ「ユウキ!!」

 

「うはぁ…いい感触だぁ…!」

 

 すぐさまポーションで回復するが敵は怯まずに突撃して来た。

 1人1人冷静に対処しながらもタクヤを探してしまう。

 探しても探しても見つけられない。

 

 キリト「ユウキ!!今はコイツらの鎮圧に集中しろっ!!」

 

 ユウキ「わ、わかってるよっ!!」

 

 ボクは2人目も無事鎮圧し、縄で拘束する。

 全員が敵と交戦中である為、勝手には行動が起こせない。

 

 ユウキ「いったい…どこにいるの?タクヤ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 一方…討伐隊奇襲作戦と同じ頃

 

 Poh「テメェら…。今からここに攻略組が攻めてくるぜぇ…」

 

 ザザ「…ほう…」

 

 ジョニー「マジっすか?」

 

 タクヤ「…」

 

 攻略組がここへ来ると言う事はルクスが上手くメッセージを渡せたらしい。

 ここまでは想定内だが、何故それをPohが知っているのかという疑問が浮かぶ。

 細心の注意を払っていたが、聞かれていたのか…。

 

 Poh「どうした兄弟(タクヤ)…。そんな怖ェ顔して…」

 

 タクヤ「…攻略組がここに攻めてくるならもうお前らもおしまいだ。もう逃げ場はどこにもねぇ…。諦めるんだな…」

 

 ジョニー「んだとっゴラァ!!」

 

 Poh「まさか…貴様が…ここの事を…リークしたのか…?」

 

 タクヤ「言ったはずだぜ?オレはお前らの仲間じゃねぇってな!」

 

 ジョニー「テメェ…オレの毒ナイフでぶち殺してやるっ!!」

 

 ジョニーは怒りを露わにしオレに毒ナイフを向ける。

 ザザもエストックを構え、攻撃の機を伺う。

 

 タクヤ「先にお前らを監獄に送ってやるぜ!!行くぞっ!!」

 

 オレは闘拳スキルを発動して2人に突撃をかけた。

 ジョニーは毒ナイフによる連続攻撃を繰り出すが闘拳スキルを発動しているオレにとっては躱すことなど造作でもない。

 見かねたザザも加わるがエストックの剣先は空を貫くばかりであった。

 

 ジョニー「テメェ…!!ちょこまかと逃げやがって!!」

 

 ザザ「殺す…お前は…必ず…!!」

 

 タクヤ「2人がかりでこのザマじゃ案外大した事ねぇな…。

 一気に決めてやるっ!!」

 

 オレは闘拳スキルを最大限まで高め、超高速で2人の背後に回る。

 そして、互いに一撃ずつ拳を食らわせ止めに入る。

 

『殺せ…』

 

 タクヤ「がっ!!?…こ、こんな時に…!!」

 

 オレの頭の中で修羅が囁き続ける。

 後1歩の所で倒せず、頭を抱えたまま地面に倒れ込んでしまった。

 

 ジョニー「…チャンスだぜ、ザザ!!」

 

 ザザ「あぁ…これで…終わりだ…!!」

 

 タクヤ「っ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Poh「待ちやがれっ!!!!」

 

 ジョニー&ザザ「「!!」」

 

 タクヤ「…」

 

 2人の止めの攻撃を静止させたPohがゆっくりとオレに近づいてくる。

 

 Poh「…お前ェ、また本能を抑えやがったな…」

 

 タクヤ「…!!」

 

 Poh「勿体ねぇ…実に勿体ねぇ!!

 そんな力があって何故躊躇する?

 その力はテメェの本能そのものだ!!

 くだらねぇ理由で押さえ込んでんじゃねぇよっ!!

 …まぁいい。そこまでそれを使いたくないなら代わりにオレが使ってやるよ…」

 

 すると、オレの背中に短剣がPohによって刺された。

 オレのHPバーに麻痺アイコンが表れ、体が動かない。

 

 タクヤ「くそっ…テメェ、何する気だ!!」

 

 Poh「言っただろう?俺が代わりに使ってやるってよ」

 

 Pohは動かなくなったオレの右手を掴み、メニューウィンドウを開いた。

 

 タクヤ「くそっ!!やめろっ!!…体が、自由に動かねぇ…!!」

 

 Poh「さっき刺した短剣にはレベル5の麻痺毒が塗ってあってよ…。5分は体が動かねぇ様にしてあんのよ。…これだな?」

 

 Pohは喋りながらもオレのメニューウィンドウを操作して、スキル欄の所まで開いた。

 修羅スキルをダブルクリックすると専用のパラメーターが出現した。

 

 タクヤ「な、なんだよこれ…?何でこんな事知ってんだよっ!!?」

 

 Poh「修羅スキルにゃ他のスキルにはない隠しコマンドがあるんだよ…。このパラメーターをMAXまで上げると…さて、どうなるんだろうなぁ…」

 

 オレの問いには応えず、パラメーターを徐々に上げていく。

 

 タクヤ「や、やめろ!!これ以上触るんじゃねぇ!!」

 

 オレの静止は叶わずPohは最大までパラメーターを上げてしまった。

 すると体の中で何かが割る音がした。

 オレはそこで完全に意識を失くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うがぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideユウキ_

 

 

 ユウキ「!!?」

 

 キリト「なんだ!?今の叫び声はっ…」

 

 ボク達が笑う棺桶(ラフィン・コフィン)と交戦している最中だった。突然どこからか叫び声が響いてきた。

 でも、ボクはこの声を知っている…。

 

 ユウキ「…タクヤ?」

 

 すると、上空から新たに2人のプレイヤーが現れた。

 

 ジョニー「うっひょー!!獲物がいっぱいいるよぉ!!

 これ全部殺していいのかよ?」

 

 ザザ「…ジョニー…調子に…乗りすぎだ…。

 オレの…分も…ある…」

 

 クライン「!!…この2人…幹部のジョニー・ブラックと赤目のザザかっ!!?」

 

 キリト「ここに来て幹部か…!!キツイな…!!」

 

 ボクはそんな事どうでもよかった…。この上にタクヤがいる。

 間違いなくそこにいる。

 ボクは考えるよりも体が先に動いていた。

 真っ直ぐ上へと駆け上がっていくが、そこをジョニー・ブラックに邪魔される。

 

 ジョニー「おっと!こっから先は立ち入り禁止だぜぇ?

 お嬢ちゃん…」

 

 ユウキ「どいて!!ボクはタクヤの所に行かなくちゃいけないんだっ!!」

 

 ザザ「その心配は…ない…。」

 

 背後に回り込まれていたのが遅れたボクはエストックの攻撃を食らって下に落ちてしまった。

 なんとか受け身をとって持ち直すが2人が邪魔で上へと行けない。

 

 ユウキ「…それどういう意味?」

 

 ザザ「あいつなら…直に…ここへ来る…お前達を…殺しに…」

 

 アスナ「それは一体どういう事よ!!」

 

 ジョニー「うちの(ヘッド)がよォ…アイツの中の修羅を無理やり起こしちまったのさ…!

 もうお前らは1人も助からねぇかもなぁ…」

 

 ユウキ「修羅…!!まさか修羅スキルをっ!!?」

 

 ボク達がやっていた練習じゃほんの少ししか発動出来なかったが今の言葉から察するに完全に発動させているのか…。

 ならば、ここにいるみんなが巻き添えを食う事になってしまう。

 

 ユウキ「そこをどいて!!早くタクヤを止めないと…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰を止めるって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「!!」

 

 ボクが見上げた先に1つの人影があった。

 影は軽く40mはある高さから飛び降りた。

 見間違える訳が無い…やっと出会えた…。

 

 ユウキ「タクヤ…!!」

 

 キリト「タクヤ!!無事だったか!!」

 

 クライン「ったく!!心配かけさせやがって!!」

 

 アスナ「よかった!無事だったんだね!!」

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキ「タクヤ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「っるせぇな…。やかましいんだよ、ゴミ虫共が!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ボクだけじゃなくみんな耳を疑った。

 

 キリト「た、タクヤ!!もう演技する必要はないんだ!!

 攻略組のみんなやオレ達の仲間は血盟騎士団のギルドに匿ってる!!もうお前が縛られる事はないんだ!!」

 

 タクヤ「だから何?そんなのオレの知った事じゃねぇ…。

 そいつらもここにいる全員殺したらすぐに跡を追わせてやるよ…」

 

 ユウキ「タクヤ…どうしたの?まだ、何か脅されてるの?」

 

 まだタクヤには何か守ろうとしているものがあるとボクは思った。

 キリト達もそうだ。

 

 クライン「タクヤ!!まだ何かあるんならオレ達が守ってやる!!

 だから、もうお前ェ1人がつらい思いをしなくていいんだよっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「タクヤタクヤって…アイツならもういねぇよ!!」

 

 突如タクヤの体が赤黒いエフェクトに包まれ、それは両腕へと凝縮されていく。

 あれは1度だけ見た事のある姿だった。

 初めて修羅スキルを使った時とまったく…いや、それ以上の強さを感じる。

 

 タクヤ「オメェらタクヤ(コイツ)を助けに来たんだろうが遅かったな…。もうこの体はオレのモンだ!!仲間なんかクソくだらねぇモンはオレが全部!!完膚無きまでに!!叩き壊してやるよぉっ!!!!」

 

 ユウキ「!!」

 

 タクヤは超加速により一気にボクの懐にまで潜り込んできた。

 

 アスナ「ユウキ!!」

 

 タクヤの拳がボクに降り注ぐ。

 防御してもダメージがどんどん入ってくる。

 それ程にタクヤの修羅スキルが強すぎる証拠だ。

 

 キリト「くっ!!今行くぞユウキっ!!」

 

 キリトがタクヤの背後に回り込み、両腕を掴んだ。

 

 キリト「これで…両腕は使えないだろ…!!目を覚ませ!!タクヤ!!」

 

 タクヤ「んあ?テメェ…黒の剣士だな…?しらけさせてんじゃねぇよ…」

 

 タクヤは無理やり両腕を自由にし、キリトに襲いかかった。

 キリトは二刀流で対抗するがやはりダメージが入ってしまっている。

 

 キリト(「なんだ!!この力はっ!!防御し切れない!!?」)

 

 タクヤ「そんなもんかよ…がっかりだぜ…!!」

 

 タクヤはキリトの2刀を弾き、がら空きになった腹に拳をめり込ませた。

 

 キリト「がはっ…」

 

 タクヤ「…つまんねぇよ」

 

 アスナ「キリト君!!」

 

 クライン「キリトっ!!」

 

 2人もキリトを助けに入るがタクヤに軽くあしらわれてしまった。

 攻略組でもトップクラスに入るキリト達が全く通じないんなんて…。

 

 タクヤ「あーあ…初めての外がこんなんだとは想定外だ。

 殺される覚悟が全くねぇとは気に入らねぇな…黒の剣士」

 

 キリト「生憎…お前を殺されに来たんじゃないんでな…。

 助けに…来たんだよ…!」

 

 アスナ「ぐ…なんて力なの…!」

 

 クライン「くそっ…!まず、あのスキルをどうにかしねぇと…」

 

 ユウキ「キリト…アスナ…クラインさん…」

 

 3人はボロボロになりながらも立ち上がり、剣を構える。

 

 タクヤ「根性だけは認めてやる…。それ以上にムカつくのは

 そこに経たり込んでるクソガキだ!!」

 

 ユウキ「!!」

 

 タクヤ「…お前、何しに来たんだ?タクヤ(コイツ)を助けに来たのか?会いに来たのか?それとも…殺しに来たのか?」

 

 ユウキ「ぼ、ボクはタクヤを…助けに…」

 

 タクヤ「なら、なんで向かって来ねぇんだよ?助けに来た?

 違うね…。お前はオレに恐怖している…」

 

 ユウキ「ち、違っ…!!」

 

 タクヤ「違わねぇよ…。

 1度植え付けられた恐怖心は簡単には拭えねぇ。

 知ってんだぜ?

 お前コイツを拒否したろ?あの時、コイツに恐怖したろ?」

 

 ユウキ「!!」

 

 あの時…タクヤから伸ばされた手にボクは怖くなった…。

 タクヤと剣を合わせる度それを思い出してしまっている自分がいた。

 そのせいでいつもの力が出せていないのか?

 

 ユウキ「…」

 

 タクヤ「そういや、アイツ言ってたよな?次会ったら殺すって…。

 だったら代わりにオレが殺してやるよ。有難く思いな…」

 

 タクヤはボクの剣を拾い上げボクの首に突きつける。

 

 キリト「やめろタクヤ!!目を覚ませ!!」

 

 アスナ「ユウキ逃げてぇ!!!!」

 

 クライン「待ちやがれっ!!タクヤ!!」

 

 タクヤ「…何か言い残す事はあるか?」

 

 ユウキ「…」

 

 ボクは一体何をしにここまで来たんだろう。

 助けるって言いながらボクにはそんな覚悟なんてなかったんだ。

 タクヤに甘えてばかりで自分で言った事すらろくに出来ない。

 こんなに後悔するのなら…もう何も出来ないのなら…ボクは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生きてる意味なんてないんじゃないだろうか…。

 ボクに残されているものは…たった1つだけ…。

 

 ユウキ「ボクは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤを…愛してます…」

 

 タクヤ「…オレには関係ねぇな」

 

 アスナ「やめてぇぇぇっ!!!!」

 

 剣はそのままボクの首へと振り下ろされた。

 ボクは諦めていた。自分の命を…。

 だから、早く楽にして欲しいと思った。

 そう心の中で覚悟したのに、ボクの命はまだ灯っていた。

 ボクは閉じていた目をそっと開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「何…勝手に諦め…てんだ…!!バカ…ユウキ…!!!!」

 

 タクヤの握っていた剣は自分の左肩に突き刺さっている。

 

 ユウキ「タクヤ…?本当に、ボクの大好きな…タクヤなの?」

 

 タクヤ「お前が…あまりにも…バカ…すぎるから…来てやったんだよ…ぐっ」

 

 タクヤ『テメェ!!なんで出てきてんだよぉ!!

 これはもうオレの体だぁぁっ!!!!』

 

 タクヤはゆっくりと剣を抜き取り、体を必死に押さえた。

 

 タクヤ『この死に損ないがぁっ!!大人しくオレに変わってりゃあ良かったものを!!』

 

 タクヤ「誰が…お前なんかに…やるかよ…!!

 これは…オレの…体だ!!オレの体で…好き勝手…させねぇ!!」

 

 タクヤ『お前は恨んでるんだよなぁ?兄貴を!!この世界を!!自分を!!だからオレが生まれたんだ!!兄貴がオレに自我をあたえたんだ!!!!』

 

 キリト「な、何を言ってるんだ?」

 

 傍から見れば独り言を口走っているだけにしか見えないだろうがボクには今のタクヤの状況が理解出来た。

 今、タクヤの中には2つの人格がある。

 それが体の主導権を巡って戦っているのだ。

 

 タクヤ「はや…く…オレから…離れ…ろ…!!」

 

 タクヤ『させねぇ!!そのガキはオレが殺してやるっ!!』

 

 アスナ「ユウキ!!早くこっちに!!」

 

 アスナがボクをタクヤから離してくれる。

 

 タクヤ「…ふぁぁぁぁっ!!…余計な事をしやがって。

 オメェら…逃げれると思ったら大間違いだぞコラァ…!!」

 

 再び赤黒いエフェクトを放ちながらゆっくりとボク達に近づいてくる。

 

 キリト「…よくわからないが今はタクヤを正気に戻すしかない!!」

 

 クライン「でも、どうする?アイツのスピードについて行けねぇのによ…!!」

 

 確かに、修羅スキルを解放したタクヤのスピードはこの中でダントツだ。

 あのスピードがある限りボク達はタクヤを正気に戻すどころか捕まえも出来ない。

 

 ユウキ「…ボクがやるよ!!」

 

 アスナ「何言ってるのよ!!?

 ユウキのスピードでもタクヤ君を止められないよ!!」

 

 ユウキ「…それでもボクがしなくちゃいけないことなんだ!!」

 

 キリト「…わかった」

 

 アスナ「キリト君!!?」

 

 キリト「アスナ…。今はユウキを信じるしかない…。

 誰よりもアイツを知っているユウキだから出来るんだ!!」

 

 ユウキ「ありがと…。じゃあ、行くよっ!!」

 

 ボクは全速力でタクヤに向かった。

 タクヤも超高速でボクの攻撃を躱していく。

 

 タクヤ「そんなんでオレを捕まえられるかよっ!!」

 

 ユウキ「ぐっ…!!」

 

 タクヤは地形を利用して全方向から拳を浴びせてきた。

 ボクはそれを防御するしか今は手がない。

 

 ユウキ(「さっき、ボクの知ってるタクヤが出てきた…!!

 まだ、タクヤは戦い続けているんだ!!

 なら、ボクだけが諦めていい訳が無いっ!!」)

 

 タクヤ「ザコがっ!!」

 

 ボクのHPがみるみる減少してイエローゾーンに差し掛かった。

 

 アスナ「キリト君!!あのままじゃユウキが…!!」

 

 クライン「くそぉ!!速すぎて目で追いきれねぇ!!」

 

 キリト「…」

 

 タクヤ「これで終わりだぁっ!!!!」

 

 ボクはいつもタクヤの後ろにいた…。

 そのせいでタクヤを助けてやれなかった。

 言う事だけ一人前で…何も出来なかった。

 なら、今は…?今この時も何もせずにタクヤが壊れるのをただじっと見る事しかしないのか…?

 違う…。目の前でタクヤが苦しんでる。

 ボクにそれを見ているだけなんて…したくない。

 なら、ボクが出来る事は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「絶対にタクヤはボクが助けるんだぁっ!!!!」

 

 ピコーン

 

【一定の数値に達しました。"絶剣”スキルを解放します。】

 

 キリト「あれは!!?」

 

 タクヤ「!!」

 

 ユウキ「目を覚まして!!タクヤぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ボクは紫色のエフェクトを愛剣"ナイトウォーカー”に帯びさせながらタクヤに攻撃を仕掛けた。

 

 タクヤ「んあ?そんなスピードでオレを…!!がっ…!!」

 

 タクヤ『へへっ…まだ、勝負はついてねぇぞ!!』

 

 タクヤの動きが止まった。中でタクヤが止めてくれている。

 

 ユウキ(「また助けられちゃったね…。

 いつもボクの前にいて…いつも手を差し伸べてくれる…。

 でも、今日は…ボクが…手を差し伸べる番だよっ!!!!」)

 

 タクヤ「くそがっ!!この死に損ないがぁぁぁぁっ!!!!」

 

 タクヤ(『行け…!!ユウキ!!!!』)

 

 ユウキ「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ボクが放つ剣技は誰かを傷つけるものじゃない。

 誰かを…愛する者を守り抜く時だけに使えるものだ。

 タクヤの体を超高速で11連撃貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶剣スキル"マザーズ・ロザリオ”

 

 タクヤ「ぐあぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ユウキ「戻ってきて!!タクヤぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 激しい爆音と共に辺りが土煙に包まれた。

 

 クライン「ぐあっ!!?」

 

 アスナ「ユウキ…!!」

 

 キリト「…タクヤ!!」

 

 土煙が次第に晴れていき、なかに人影がうっすら見えている。

 これがダメならボクにはもう手は残されていない…。

 最後の一撃はタクヤには当てていない。

 当ててしまえばタクヤを確実に殺してしまうからだ。

 

 ユウキ「…」

 

 土煙は完全に晴れ、目の前にタクヤが立っている。

 

 タクヤ「…は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁはっはっはっはぁぁっ!!!!」

 

 ユウキ&キリト&アスナ&クライン「「「「!!!!」」」」

 

 タクヤ「残念だったなぁ…」

 

 タクヤはまだ心の中にいた。まだ、終わっていない。

 

 アスナ「そんな…!!」

 

 キリト「くそっ!!」

 

 クライン「ユウキちゃん!!逃げろぉぉぉ!!」

 

 タクヤ「これで終わりだぁぁぁぁっ!!!!」

 

 ユウキ「…ううん。まだ終わりじゃないよ…」

 

 ボクはタクヤを強く抱きしめた。思わずタクヤも攻撃を止めた。

 

 タクヤ「は、離せ!!この…!!」

 

 ユウキ「もう離さない…。絶対に離さない。

 タクヤはボクが支えるから…。今度こそ必ず支えてみせるから…。だから、帰ろう…?ボク達の家に…一緒に…。」

 

 タクヤ「…やめろ。そんな顔でオレを見るんじゃねぇぇぇっ!!!!」

 

 すると、タクヤの赤黒いエフェクトは徐々に小さくなっていく。

 それと同時にタクヤから嫌な感じも弱くなっていった。

 

 タクヤ「なんで…おまえは…そこまでして…。

 おれが…こわいんじゃ…なかったの…か…」

 

 ユウキ「怖いよもちろん…。でも、それもタクヤの一部だもん。

 ボクはタクヤの全部が好きなんだ…!!だから、君も好きだよ…?

 もう…休んでいいんだよ…タクヤ…」

 

 タクヤ「く…そ…」

 

 エフェクトは完全に消え、タクヤは意識を失くした。

 

 キリト「やった…のか?」

 

 アスナ「とにかく!今は2人の所に…!!」

 

 ユウキ「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 アスナ「大丈夫!?ユウキ…!!」

 

 ユウキ「うん…。ボクもタクヤも大丈夫だよ!

 ごめんね…アスナ。心配かけちゃったね…」

 

 アスナ「本当だよ…。でも、無事でよかった…。

 …帰ってきたんだね。タクヤ君はユウキの所へ…」

 

 気を失ったタクヤの髪を撫でながらボクは頬が緩む。

 やっと…帰ってきたんだ。ボクの…大好きな人が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 タクヤ「ここは…」

 

 辺りは完全な白に覆われていた。地面は無く、妙な浮遊感がある。

 

 タクヤ「オレは…死んだのか?」

 

 

  『死んでねぇよ…』

 

 

 タクヤ「!!…お前…」

 

 目の前にいたのはもう1人のオレ…修羅だ。

 近づきもせず、かと言って離れるわけでもなく一定の距離を保ったまま修羅はオレに話しかける。

 

『お前の連れがオレをここまで弱らせやがった…。

 そのお陰でお前は晴れて自由だ…』

 

 タクヤ「…そうか。…お前は、どうなるんだ…?」

 

『オレはもう顕現する力が残されちゃいねぇ…。

 このまま消えるのを待つしかねぇ…。せいせいするだろ?

 オレがいなくなれば誰かを傷つける必要がねぇんだからよ』

 

 タクヤ「…」

 

 確かに、もうこれ以上誰かを傷つける必要がなくなるなら願ったり叶ったりだが、何か違う気がしてならなかった。

 

 タクヤ「…お前が消えないようにすればどうしたらいい?」

 

『あ?何言ってんだクズが…!

 消えないようにすればどうするか…だと…。

 ふざけてんじゃねぇよ!!オレはテメェに負けた!!

 敗者はこの世に存在する価値はねぇ!!

 オレらの両親も弱かったから強盗なんざに殺されるんだっ!!

 なら、オレもそのルールに従って消えるんだよ!!!!』

 

 ひとしきり叫んだ後、オレは続けた。

 

 タクヤ「確かに、お前のせいでたくさんの人を傷つけたし…殺しちまった。でも、それはお前だけのせいじゃねぇ。

 茅場拓哉(オレたち)の罪だ!お前だけが背負うもんじゃねぇ」

 

『頭湧いてんのかテメェはっ!!?

 オレがいなきゃ誰も傷つけなくてもよかったんだろぉがっ!!!!

 オレが恨んで!!憎んで!!大事なもんは全部オレが壊した!!!!

 そのオレをテメェは許すってのかよっ!!!!』

 

 タクヤ「逆を言えば…お前がオレの代わりに怒って…恨んで…憎んでくれたんだろ?…正確には違うのか?ん?どういう意味だ?」

 

『知るかっ!!テメェさっきから何が言いてぇ!!?』

 

 タクヤ「つまり!まぁざっくり言うとお前はオレでオレはお前だ…。当たり前だけど…。

 お前が消えるって言うならオレも消えるしかねぇ…。

 だから、消えるな!ここにいろ!!」

 

 途中から何が言いたいのか上手くまとめきれなかったが言いたい事は言ったしよしとしておく。

 

『…テメェ、本当に頭湧いてんな!

 なら、オレが体を乗っ取ってアイツらを殺しても文句はねぇんだな!!?』

 

 タクヤ「お前はもうそんな事しねぇって今なら言える…」

 

『…そんな保証が一体どこにあるんだよ?』

 

 タクヤ「何回も同じ事言わせんなよ!

 お前はオレなんだからもうそんな事しねぇ!!

 それに…ユウキがいる。

 …きっとアイツはお前もちゃんと見てくれる…」

 

『!!?』

 

 タクヤ「オレも修羅(おまえ)の存在を認めた。

 お前がいるからオレは怒れて…恨んで…憎む事が出来てるんだ。

 それが普通の人だろ?

 だから、少なからずお前には感謝してる。

 オレの代わり辛い思いをしてくれてありがとう!

 これからもよろしくな!!」

 

 オレはゆっくり近づき右手を差し伸べた。

 

『…お前はオレが必要だって言うのか?

 憎む事しか出来ねぇオレを受け入れるって言うのか?』

 

 タクヤ「受け入れるも何もお前はオレなんだから全部ひっくるめて茅場拓哉だ!!だからほら!!」

 

『…はっ!!テメェはやっぱりバカだ。

 オレなんか受け入れる奴なんかお前か単なるバカだけだ!!』

 

 タクヤ「つまりお前もバカな訳だな!」

 

『勝手に言ってろ!!…だが、油断してると体乗っ取って暴れてやるからな!!』

 

 タクヤ「そん時はそん時だ!

 オレもタダでやる程人間出来てねぇからな!!」

 

 差し伸べた右手に右手が重なり握手を交わす。

 オレには2つの魂が宿っている。

 例え、この世界だけの事だとしても関係ない。

 修羅(コイツ)は常にオレの中にいる。

 辛い役割をオレの代わりにしてくれている。

 でも、次からはオレもそれを肩代わりしてやる。

 オレはお前で…お前はオレなのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクヤ「ん…」

 

 ユウキ「あっ!タクヤ!!気づいた!!?」

 

 タクヤ「…ここは?」

 

 辺りを見渡す限り迷宮区ではないようだが。

 

 ユウキ「迷宮区の外の安全エリアだよ。今ちょうど休憩してるんだ…」

 

 そうか…オレは…助かったのか…実感が湧かないが…。

 そんな事を考えていると空から小さな雫が落ちてきた。

 

 タクヤ「ユウキ…?」

 

 ユウキ「よかった…いつもの…タクヤだ…。

 よかったよかったぉ…」

 

 タクヤ「…心配掛けちまったな。

 …それにひでぇ事言っちまったし…その、なんで言ったらいいか…ごめんな…」

 

 オレは起き上がりユウキの頭を撫でながらあやした。

 ユウキは泣きながら笑ってオレに抱きつく。

 オレもそれに応えるように腕を回した。

 

 ユウキ「…ボクこそごめんね。

 また、タクヤに重たいもの背負わせて…ごめんね…」

 

 タクヤ「お前が気にする事じゃねぇよ。

 オレが勝手にやった事なんだから…」

 

 ユウキ「…ううん。謝らせて…お願い…」

 

 タクヤ「…」

 

 ユウキにも…いや、みんなに知らず知らずのうちに辛い思いをさせちまってたんだなと今更になってオレは思った。

 仲間を助ける為とは言え、オレはやっちゃいけない事をしちまった。

 これからもそれはオレにまとわりついてくるだろう。

 でも、後悔はしない…してはいけないのだ。

 オレの自分よがりのせいで死なせてしまった者達に対して無礼だと思ったからだ。

 

 キリト「タクヤ…。目を覚ましたんだな」

 

 タクヤ「キリト…それにアスナ、クライン…。

 悪かった…。みんなにも迷惑かけちまって…」

 

 アスナ「ううん…。気にしてないわ。

 それに…タクヤ君がいなかったらもしかしたら私達はここにいなかったかもしれないし…」

 

 クライン「ったくよ…みずくせんだよ!お前はっ!!

 もうちっと仲間を頼れってんだ!!」

 

 タクヤ「悪かったよ…。今度何でも奢ってやるからさ。

 それで手を打ってくれ…」

 

 キリト「おっ!それはいいな…。なら、今日はタクヤの復帰祝いにみんなで集まろうぜ!!もちろんタクヤの奢りだけどな!!」

 

 タクヤ「ちょっ…幾ら何でもそれはねぇだろうがっ!!?」

 

 いつ以来だろうか…。こんなにも心の底から笑ったのは。

 オレ達は街に戻る前に討伐隊のリーダーであるというシュミットにオレの処遇はどうなるのか尋ねた。

 オレはシュミットの仲間を殺している為、顔を合わせづらかったがオレに対する処遇は無罪放免という大胆な結果となった。

 

 タクヤ「ほ、本当にいいのか?オレはアンタの仲間を…」

 

 シュミット「オレは1度言った事は変えない…。

 お前を許す訳じゃないがこれからは攻略組としてその力を活用してくれ…」

 

 タクヤ「…何と礼を言ったらいいか…そうだ!

 ル…じゃなくて他の笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のメンバーはどうなった?」

 

 シュミット「あぁ。他のメンバーも既に監獄へと放り込んでいるとさっき連絡があった。」

 

 タクヤ「その中にルクスっていうプレイヤーがいるんだがそいつも弱みを握られてやりたくもない事を無理矢理やらされてたんだ!!

 そいつも監獄には送らないでやって欲しいんだ!!」

 

 シュミット「そのプレイヤーならオレも監獄に入らないでもいいと言ったんだが…」

 

 

『私はあの人みたいにこの先役に立つ事は何も無いんだ。

 だから、私はいいよ。…よかったら彼に伝言を頼めるかい?』

 

 

 シュミット「ありがとう…ゲームをクリア出来る事を陰ながら応援している…と言ってた」

 

 タクヤ「ルクス…」

 

 オレの瞳にはじんわりと涙が滲んでいた。

 ルクスは最初からこうなると分かった上でオレに協力してくれていたのか…。

 ルクスには何度も勇気づけられてきた。

 今こうして立っていられるのもルクスのおかげだ。

 

 タクヤ「オレこそ…ありがとう…」

 

 アスナ「タクヤ君!!こんな所にいた!!

 団長が直々にタクヤ君と話がしたいって…」

 

 タクヤ「…ヒースクリフ…。分かった。転移結晶で先に行くよ…。

 ギルドは55層でいいんだよな?」

 

 アスナ「うん!…気をつけてね」

 

 討伐隊と別れ、オレは55層のグランザムへと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年08月02日 15時00分第55層 グランザム 血盟騎士団ギルド

 

 オレは血盟騎士団ギルドのホームへと入り、見張り役にヒースクリフがいる部屋まで案内された。

 

「失礼します。攻略組のタクヤを連れて参りました。」

 

 ヒースクリフ「ご苦労…。下がってくれたまえ…」

 

「はっ!失礼します。」

 

 見張り役はオレを部屋に残し、部屋にはオレとヒースクリフ2人だけが残された。

 

 ヒースクリフ「久しぶりだねタクヤ君…。さぁ、腰を掛けてくれ」

 

 タクヤ「いや、オレはここでいい…です。

 今回の処遇についてはシュミットから聞きました。

 団長の指示だったようで…ありがとうございます…」

 

 ヒースクリフ「礼には及ばん…。今後の君の活躍に期待するよ…。さて、君を呼んだのは単に世間話をする為ではない…。

 近々、次のボス戦の攻略会議を開こうと考えているのだが…君に1つ頼みたい事がある…」

 

 タクヤ「頼みたい事?」

 

 

 

 

 

 ヒースクリフ「君にはしばらく血盟騎士団に入団してもらう…」

 

 タクヤ「!!…それは何故…ですか?」

 

 ヒースクリフ「君の今回の功績は実に見事だった。

 攻略組がこれ以上減ってしまっては攻略が滞ってしまうからね…。

 君が逃がしてくれた攻略組も次のボス戦では戦ってもらう事になっている…が、少なからず君の処遇に憤りを感じている者も少なくない。」

 

 当然と言われれば当然だ。

 逃がしたとは言っても恐怖を与えた上、その前には2人も殺している。そんな奴と一緒に戦いたくないと思うのが普通だ。

 

 ヒースクリフ「そこで私が直々に君と一定期間パーティを組み、君が安全で攻略においてどれだけ重要なのか見せしめるための処置だ…。先に言っておくが君に拒否権はない…。わかってくれ」

 

 タクヤ「…オレもそんな事が言える立場じゃないのは分かっています。それで納得してもらえるならこちらから頼みます…」

 

 ヒースクリフ「うむ…。そう言ってくれると助かるよ。

 疲れている所を呼び出してすまなかった…。

 パーティは明後日から組んでもらう。それまでゆっくりしてくれたまえ…」

 

 タクヤ「じゃあ、失礼します…」

 

 オレはそう言い残して部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「タクヤー!!」

 

 タクヤ「ユウキ?どうしてここに…」

 

 アスナ「せっかくの再会ですもの!今日ぐらい2人で過ごしたら?」

 

 ユウキ「ちょ…アスナ!!」

 

 タクヤ「…そうだな。じゃあ行くかユウキ」

 

 ユウキ「えっ!タクヤ…//」

 

 オレはユウキの手を取りアスナと別れてグランザムを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年08月02日 20時10分 第61層 セルムブルグ

 

 オレとユウキは湖の街と称されるセルムブルグへとやって来ていた。

 

 ユウキ「わぁ!すごい綺麗!!」

 

 タクヤ「この層は湖がほとんどだから街にも湖があるんだ…」

 月明かりに照らされた湖は光を反射させ、幻想的な風景に変えられていた。

 

 ユウキ「でも、どうしてボクをここに?」

 

 タクヤ「え?あー…その、これをユウキに見せたかったってのがあったんだけど…この街はあんまり人通りが少ないから話をするにはうってつけだと思ってさ…」

 

 オレは近くに備え付けられていたベンチへとユウキを誘い2人で座った。

 

 ユウキ「…どうしたの?急にかしこまちゃって…」

 

 タクヤ「ユウキはあの時の…もう1人のオレとの会話を憶えてるか?」

 

 

『お前は恨んでるんだよなぁ?兄貴を!!この世界を!!自分を!!だからオレが生まれたんだ!!兄貴がオレに自我をあたえたんだ!!!!』

 

 

 ユウキ「うん…」

 

 タクヤ「ユウキにはちゃんとオレの事知ってて欲しいんだ…。オレはこのゲームに来た理由について…」

 

 ユウキ「来た…理由…?」

 

 タクヤ「オレがここに来たのはある目的があったからなんだ…。

 目的って言うかいるかもしれないっていう希望じみたアレなんだけど…オレはここに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄貴を探しに来たんだ…」

 




どうだったでしょうか?
あまりバトルシーンの書き方が分からずダメダメになってるかもですがご指摘頂ければ嬉しいです。


では、また次回!

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