ソードアート・オンライン-君と共に在るために-   作:ちぇりぶろ(休載中)

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という事で12話ですね。
ここまで来るのに約3週間?ぐらいですかね。
今のペースで行くと6月までにはSAO編終わっちゃいますね。
まだまだ続くのでよかったらご覧ください。

では、どうぞ!


【12】笑う棺桶討伐

 sideout_

 

 

 2024年07月31日 第67層 湖畔フィールド

 

 あれから3ヶ月が過ぎた。攻略組の人数も3割程減少していた。

 笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の暴君は日々に増していき、

 事態を重く見た攻略組はとうとう笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐隊を編成…攻略組の中でも精鋭を集い始めた。

 

 ユウキ「…」

 

 シウネー「…ユウキもその討伐隊に招集されると?」

 

 アスナ「えぇ…。1番被害の多い聖竜連合がこれ以上の被害を防ぐ為に明日55層のグランザムの血盟騎士団のギルドで会議を開くの…。

 血盟騎士団からも何人か被害が出てるし、場所を提供したのよ…」

 

 シウネー「…そうですか」

 

 この討伐隊にはユウキをはじめ、キリトにアスナ、クラインと言った攻略組でもその名を知らない者はいないといった歴戦のプレイヤーに声をかけられている。

 だが、その中にヒースクリフの姿はなかった。

 彼曰く…私はアインクラッド攻略以外で剣を奮うつもりはないとの事だった。

 ヒースクリフがいればこの討伐作戦も成功率が上がるが、彼は頑なにそれを拒否し続けている。

 

 アスナ「団長はともかく…私達はそこに行かなくちゃならない…」

 

 ユウキ「…行くよ。そこに行けばタクヤに近づけるんだもん!」

 

 ユウキが立ち直って以来、スリーピング・ナイツは笑う棺桶(ラフィン・コフィン)についての情報を集めていたがその詳細も居所すらも分からなかった。

 どんな些細な証拠も残しておらず、ユウキ達は立ち往生を余儀なくされた。

 

 アスナ「そうだね…。

 これからは攻略組全体が笑う棺桶(ラフィン・コフィン)について情報を集めるから今よりももっと効率が良くなるわ!」

 

 ジュン「あぁ!なんで僕は招集されないんだぁ!」

 

 アスナ「仕方ないよ…。鎮圧するには少数の方がいいの。

 ギルドマスタークラスじゃないジュンは大人しく留守番してなさい」

 

 アスナの言う通り、構成人数すら把握出来ていない状況で攻略組全員を投入してもさして意味は無い。

 最悪の場合、これ以上数が減ってしまうかもしれないのだ。

 なるべく慎重に事を運ばなくてはならない。

 

 アスナ「じゃあ…明日会議の時にね…」

 

 ユウキ「うん。わざわざ教えに来てくれてありがとう!」

 

 アスナ「どういたしまして!

 …タクヤ君が帰って来たらまたみんなでパーティでもしましょ!」

 

 ユウキ「うん!!」

 

 アスナはそう言い残し転移結晶でグランザムへと帰還した。

 

 シウネー「私達もそろそろ行きましょうか?」

 

 ユウキ「そうだね。ジュンも不貞腐れてないで早く行くよ?」

 

 ジュン「うーい…」

 

 ユウキ達も転移結晶でフローリアへと帰還して行った。

 

 

 

 

 

 

 

「…行ったみたいだね?」

 

「…そうか」

 

 物陰から現れた男女はその場に座り込む。

 

「…よかったのかい?会わなくて…」

 

「どの面下げて会えるってんだ…。

 アイツらが無事だと分かっただけよしとするさ

 …さぁ、オレ達も戻るぞ…」

 

「…素直じゃないんだから、キミって人は…」

 

 少女は少年に笑うとデコピンをもらってしまった。

 

「大変なのはこれからだぞ()()()!」

 

 ルクス「わかっているさ!また帰ったら稽古つけておくれよ?

 ()()()!」

 

 タクヤ「あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideタクヤ_

 

 

 2024年07月31日 21時06分 第55層 雪原フィールド

 

 今日の獲物はここでしか手に入らないレアアイテムを取りに来るプレイヤーだ。

 見晴らしは吹雪のせいで悪く、コイツらにとっては都合がいいらしい。

 

 Poh「さぁて…It’s show time…!!」

 

 ジョニー「ヒャッハァー!!」

 

 ザザ「…」

 

 タクヤ「…」

 

 オレ達は索敵スキルを頼りにプレイヤーに襲いかかった。

 

「な、なんだお前らっ!!?」

 

 ジョニー「今から死ぬ奴に言う名はありませーん!」

 

「お前ら笑う棺桶(ラフィン・コフィン)だな!!」

 

 Poh「嬉しぃねぇ…オレ達なんかの事知ってくれてて…」

 

「くそっ!こんなヤツらに出会─」

 

 オレは喋り終わる前に胸に剣を刺す。HPが2割程減り、男の顔も恐怖心に支配された。

 

「う、うわぁ!!」

 

 HPがどんどん減り続ける。

 ほんの数十秒すればこの男のHPは全損し、死に至るだろう。

 だが、オレは剣をPoh達に見えないように少しだけ抜いた。

 

「え?」

 

 HPの減少は止まり、男はオレをじっと見ている。

 

 タクヤ「ヒソ…黙って聞け…。

 転移結晶を取り出してオレの合図でどこかへ飛べ…」

 

「な、なにを…」

 

 タクヤ「ここで死にたくなかったら言う事を聞いておくんだな。

 当分外には絶対出るな…ほとぼりが覚めるまでな…。

 行くぜ…3…2…1…今っ!」

 

 すると男はポリゴンとなって四散した。

 ほかの仲間はもう逃げてしまったらしく、今日の収穫はこの男だけとなった。

 

 Poh「Excellent!

 お前ももう立派なオレ達の同志だな兄弟(ブロー)…」

 

 タクヤ「…お前らと一緒にするな。虫唾が走る…」

 

 ジョニー「よぉよぉ!テメェ調子に乗ってんじゃねぇぞっ!」

 

 ザザ「…」

 

 タクヤ「あ?殺んのか?」

 

 ジョニーは毒付きナイフを抜剣し、オレに敵意を迎える。

 オレも剣を構えジョニーに照準を合わせる。

 

 Poh「まぁよせ2人とも。

 オレは兄弟同士の争いなんざ見たくねぇ…」

 

 ジョニー「…(ヘッド)がそう言うなら…」

 

 ジョニーは渋々ナイフをしまい、敵意を感じれなくなった所でオレも鞘に剣を納める。

 

 タクヤ「済んだなら…オレはもう行くぜ…」

 

 これ以上コイツらといると嫌悪感に苛まれる為、アジトにへと戻った。

 

 ザザ「あいつ…この頃…変だ…」

 

 ジョニー「最初に比べて随分人殺しが様になってきてるな…」

 

 Poh「へっ…いいねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アジトに帰って来たオレはいつもの草原フィールドで野営の準備をしていた。

 するとそこにルクスとグヴェンがやって来た。

 

 タクヤ「なんだ、お前らか…」

 

 グヴェン「なんだとは何よ!

 人がせっかく食べ物持ってきてやったって言うのに!」

 

 タクヤ「それが本当に人間が食えるもんなら礼を言うよ…」

 

 グヴェン「はぁっ!?何様なのよ!アンタ!!」

 

 ルクス「まぁまぁグヴェン落ち着いて…タクヤもそんな事言ったらダメだよ。せっかくグヴェンが手作りしてきたのに…」

 

 グヴェン「ば、バカルクス!そんな事言うんじゃないわよっ!!」

 

 2人が言い合うのを傍らに黙々と野営の準備を整えていく。

 

 タクヤ(「あの男…上手く逃げられたか…?」)

 

 これまでもオレは今日の男にした()()()()で何人も殺さずに済んでいる。

 この方法なら奴らの目を盗む事が出来る。

 もう、人を殺さなくて済むのだ。

 

 ルクス「…タクヤ。まだご飯はまだなんだろう?グヴェンと私で作ってきたからよかったら食べてくれ」

 

 タクヤ「いつも悪いな、ルクス。…それにグヴェン。ありがとう」

 

 グヴェン「ふ、フン!分かればいいのよ…早く食べなさいよ?」

 

 オレはグヴェンが作ってきたパンを1口頬張る。

 

 グヴェン「……」

 

 タクヤ「…上手いな。」

 

 グヴェン「!!…ほ、ほら!!他にも色々あるから食べて!!」

 

 タクヤ「あぁ…」

 

 オレはここにいる間ルクスと時々グヴェンと一緒にいる。

 ルクスは笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のメンバーだが、その役割からグリーンを維持している。

 彼女も決して自分から進んでこんな事をしている訳では無い。

 弱みを握られ無理矢理やらされているのだ。

 グヴェンは元々笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の傘下にあたるオレンジギルドのリーダーだが、盗みや恐喝といった事をやっており、自衛の為にしか剣を奮っていないのだ。

 だからと言って、グヴェンのやっている事が悪い事には変わらない。

 グヴェンにも前に注意して渋々それを承諾した。

 今ではグヴェンが悪さをしたという噂は耳にしていない。

 

 ルクス「どうだい?味は…」

 

 グヴェン「そんなのアタシの方が美味いに決まってるじゃない!」

 

 ルクス「む…。そんな事ないさ!

 グヴェンのパンは焦げている物もあるじゃないか!」

 

 グヴェン「なっ!?

 そ、そう言うアンタも生焼けの肉とかあるじゃない!

 よくそれで人の事言えるわねっ!」

 

 タクヤ「…落ち着けよお前ら…。どっちも美味いから心配するな」

 

 ルクス&グヴェン「「タクヤは黙ってて!!」」

 

 タクヤ「…」

 

 こうなってしまった2人はもうテコでも動かないだろう。

 呆れ果てたオレは寝袋に入り、喚き声が響く中オレは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 2024年08月01日 13時00分 第55層グランザム kob(血盟騎士団)ギルド

 

 ユウキ「…ギルドというより城塞だね」

 

 アスナ「あはは…確かにね…」

 

 ユウキとアスナは城門をくぐりながら感想を述べる。

 血盟騎士団は55層のこの城を拠点としている。

 ユウキ達のものと比べてもその出で立ちは全てのギルドを萎縮させてしまうものだった。

 我々が攻略組のトップであると言う鼓舞の意味もあるらしい。

 ユウキはアスナの案内のもと会議が開かれる応接室へと向かっていた。

 長い通路を歩きながらユウキは今にも走り出してしまいそうな衝動を必死に抑えている。

 早く…早く…と心がユウキの中で叫んでいた。

 

 アスナ「慌てないでユウキ…。会議は逃げも隠れもしないから」

 

 ユウキ「えっ…う、うん…」

 

 アスナ「さっ!着いたわ…」

 

 アスナが重苦しい扉に手をかけ、一息おいて開ける。

 そこには招集がかけられたプレイヤー50人が勢揃いしていた。

 

 クライン「アスナさーん!ユウキちゃーん!こっちこっち!」

 

 ユウキ「クラインさん!?クラインさんも呼ばれたの?」

 

 クライン「おうとも!

 アイツが絡んでるんなら来るのがダチってもんよ!!

 なっ!キリト!!」

 

 キリト「あぁ。タクヤにはいつも助けてもらってたからな…。

 今度はオレ達がアイツを救う番だ!!」

 

 ユウキ「キリト…クラインさん…」

 

 いくら闇に堕ちようとかつての仲間が助けてくれる。

 ユウキは思わず涙が滲んだ。

 タクヤの為にみんなが戦ってくれる。

 そう思うだけでユウキの心は幾分か和らぐ。

 涙をふき、最高の笑顔で2人に礼を言った。

 

 シュミット「みんな揃っているか?」

 

 壇上の方を振り向くと攻略組全体のタンクのリーダー…シュミットが立っていた。

 みんなも顔を引き締め、彼に注目する。

 

 シュミット「今日は呼び掛けに応えてくれて礼を言う。

 聖竜連合のシュミットだ!

 今より笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦の会議を始める!!」

 

 笑う棺桶(ラフィン・コフィン)という言葉のみでその重要性と危険性が伺えてしまう。

 この世界での暗黙のルールを破り続けたプレイヤー達を無力化し監獄に送る事が主な作戦だ。

 

 シュミット「だが、仮に抵抗してくる者がいれば…最悪殺害しても構わん…」

 

「「「!!!!」」」

 

 その言葉の意味を真に理解出来る者はこの場にはいない。

 彼らは人を殺した事がないからだ。

 

 シュミット「あくまでそれは最悪の場合のみで極力は無力化して監獄へ送ってくれ…。奴らが殺人者でも命までは奪えないからな…」

 

 ユウキ「…」

 

 違うのだ。そんな善意でやっているのではない。

 本当は彼だって仲間を何人も殺されて黙っていれる訳がない。

 いや、ここにいる全員が仲間を殺されても何もしない訳がない。

 出来ないのだ。人を殺す事を…。

 自分が人殺しの罪を背負う覚悟がないからだ。

 それでも人間は自分が死の危険に晒される時、自分以外何も考えられない。

 防衛本能は降りかかる火の粉を払うが如く、絶命させる。

 それがいかに許されない事であったとしても人間は防衛本能自分を守るのだ。

 その不安がここにいる全員にのしかかる。

 

 シュミット「…今ここで作戦を辞退してくれても構わない。

 自分の命を犠牲に出来る者だけ続きを聞いてくれ…」

 

 部屋中に不安がる者がいるが部屋を出る事はなかった。

 

 シュミット「…ありがとう。話の続きに入らせてもらう。

 笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の中でも特に幹部クラスの者だけは何としてでも捕えなければならない!!」

 

 壇上のスクリーンに写った4人が幹部クラスのプレイヤーである。

 

 シュミット「毒ナイフを使う"ジョニーブラック”。

 細剣(エストック)使いの"赤目のザザ”。

 笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のギルドマスター"Poh”。

 そして…元攻略組の…"狂戦士(バーサーカー)タクヤ”の4人だ…」

 

 ユウキ「!!?」

 

 キリト「なっ!…ちょ、ちょっと待ってくれ!!

 なんでタクヤが幹部扱いなんだ!!」

 

 シュミット「アイツは…もう攻略組で共に戦った拳闘士(グラディエーター)ではない!

 自分から進んで人殺しをしている狂戦士(バーサーカー)になってしまったんだ!!」

 

 アスナ「そんな…」

 

 クライン「嘘…だろ?」

 

 ユウキ「…そんな訳ない!!タクヤが進んで人を殺してる訳ないじゃないか!!証拠だってないくせに勝手な事言わないでよ!!」

 

 シュミット「…"鼠”の情報だ。これでも信じられないか?」

 

 ユウキ&キリト&アスナ&クライン「「「「!!」」」」

 

 "鼠のアルゴ”からの情報だとすると信憑性はかなり高い。

 彼女自身も嘘偽りのない情報屋として名を馳せている為、証拠にその名前を出されれば認めるしかないのだ。

 

 ユウキ「そん…な…」

 

 アスナ「ユウキ!?」

 

 やっと届くかと思っていた。

 あと少しでまたあの日々が帰ってくるかと思っていた。

 だが、現実は残酷だ。遅かったのだ。

 タクヤはもう壊れてしまった。修復出来ない程粉々に…。

 

 キリト「…オレ達から1つ提案がある」

 

 シュミット「なんだ?キリト…」

 

 キリト「もし、タクヤを捕らえたら…監獄には送らないで欲しい…」

 

「「「「!!?」」」」

 

 キリトの発言にみんなが驚く。と同時に怒りも立ち込めてきた。

 

「ふざけるなっ!!レッドプレイヤーは全員監獄行きだろうが!!」

 

「そいつだけ助かろうなんて虫が良すぎる!!」

 

 シュミット「キリト…。お前には1度助けて貰った恩がある。

 その要望も聞いてやりたいが…こればかりはオレ1人で決められる事じゃない…」

 

 キリト「…っ!!」

 

 クライン「アイツだって好きでやってるんじゃねぇんだ!!

 何か理由があって…」

 

 シュミット「理由があろうと無かろうと結果は変わらない…」

 

 アスナ「そんな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつはちょっと違うゼ…」

 

「「「!!!!」」」

 

 キリト「アルゴ!!?」

 

 天井裏から忍者のように現れたのはアルゴであった。

 アルゴは壇上に上り〜と面を向かい合わせた。

 

 シュミット「アルゴ…どういう意味だ?」

 

 アルゴ「タク坊が笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に入った理由を調査してたんダ。…キー坊の依頼でネ!」

 

 ユウキ「!!…キリトが?」

 

 アルゴ「いや〜結構シンドかったヨ…出来ればもうこれっきりにしてほしいゼ…」

 

 キリト「それで…調査結果は…?」

 

 全員が壇上のアルゴに注目する。

 

 アルゴ「…調査した結果、タク坊は人質を取られていル。

 それも結構な数をナ…」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 ユウキ「人質…って…もしかして…」

 

 アルゴ「あぁ…ユーちゃん。人質は攻略組全員ダ!!」

 

 キリト「…やっぱりか」

 

 アスナ「やっぱり…って、キリト君気付いてたの?」

 

 キリト「あくまでオレの勘だった…。

 タクヤは…仲間の為なら自分の命すら捨ててしまう…。

 そういう奴だ…。だから、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に入ったのも何かしら…オレ達に関わるようなことがあるんじゃないかって思ってたけど…アルゴの話を聞いて確信に変わったよ…」

 

 ユウキ(「そうだ…。

 あの時…NPCを助ける為にゴーレムに挑んだ時だってそうだった…。

 自分が死ぬ危険性があったにもかかわらずNPCを助ける事を即決してた…」)

 

 涙が視界を滲ませる。

 タクヤの事を何も分かっていなかった自分に腹が立つ。

 

 アルゴ「攻略組全員が人質に取られてるんダ…。

 いくらタク坊が強いと言っても無理があル。

 だから仕方なく奴らの言う事を聞くしかなかったんダ…」

 

 シュミット「だ、だが…例えそうだったとしても…アイツはオレの仲間を…」

 

 アルゴ「殺した…カ?」

 

 シュミットは黙って頷く。

 

 アルゴ「確かに…タク坊は殺したサ…オレンジギルドのプレイヤーを3人…」

 

 シュミット「なっ…!!?何っ!!」

 

 アルゴ「アンタん所のタク坊に殺されたプレイヤーはオレンジギルドにも籍を置いていたんダ…。

 しかも…それからは誰も殺していなイ…。

 ()()()()で死を偽装していル…シュミット…。

 アンタには分かるだロ?」

 

 シュミット「まさか…!ヨルコとカインズが使った…」

 

 アルゴ「ご名答!

 装備の耐久値が切れるのと同時に転移結晶で飛ぶっという偽装法サ!」

 

 キリト&アスナ「「!!」」

 

 キリトとアスナはこれについては知っていた。

 2人が食事を摂っている時、広場でプレイヤーが殺害された。

 その原因を突き止めるべく、2人は事の元凶である元"黄金林檎”のメンバーであるシュミット、ヨルコ、カインズ、グリムロック、グリセルダの事を調べていた時だった。キリトがアスナから受け取ったパンを地面に落とし、耐久値が切れたのを見て謎が解けた。

 装備が耐久値を全損して消滅するエフェクトとHPが全損して消滅するエフェクトは酷似している事に気づき、死んだと思われていたカインズとヨルコが生きている事に気づいたのだ。

 

 シュミット「確かに…あの方法なら簡単にはバレないだろうが…オレのフレンドリストからも消えているのはおかしいし姿を現さないのは変じゃないか?」

 

 アルゴ「それは奴らに死んでない事を気づかせるリスクを最小限に抑える為のタク坊の指示だろうネ…。」

 

 ユウキ「じゃあ…タクヤは…罪のない人は1人も…」

 

 アルゴ「あぁ…。罪のない人間は誰も殺してなイ…。

 進んで人殺しをしてるって伝えたのはまだその時には情報がたりなかったんダ」

 

 ユウキ「…よかった…よかったぁ…」

 

 涙がこぼれ落ちる。

 今まで我慢していたのがとめどなく溢れ、視界をぼやけさせる。

 

 アスナ「…ユウキ。よかったね…」

 

 キリト「…シュミット。タクヤを救う事に賛成してくれ!

 ここにいるみんなもだ!

 アイツは…たった1人で攻略組全員の命を守ってくれてるんだ!!

 そんな奴を監獄に入れるのか?

 オレ達を守ろうと犠牲になったタクヤを…オレの仲間を監獄に入れるのかっ!!!!」

 

 キリトの咆哮が部屋に響き渡る。

 みんなも気付いた。自分が今平和に暮らせている傍ら自分の為に犠牲になってくれている者の存在を…。

 

「…そうだ」

 

「アイツを救おうぜ!」

 

「オレ達なら出来る!」

 

 ユウキ「みんなぁ…」

 

 シュミット「今度はオレ達がアイツを救う番だぁぁぁっ!!!!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」

 

 ユウキ「みんなぁ…ありがとうぅ…うっ…うっ…」

 

 アスナ「うん…。帰ってくるよ…タクヤ君がユウキの元に…」

 

 アスナはユウキを優しく抱きしめ、その疲れ果てた心を癒した。

 キリトも目尻を拭いアルゴに礼を言う。

 するとそこに血盟騎士団団員の1人が応接室へと入ってきた。

 

「副団長!!城門前で怪しい輩を捕らえましたが…何でも副団長殿に急いで面会させてくれとかなんとか…」

 

 アスナ「…わかりました。すぐに行きます」

 

 キリト「…アスナ、気を付けろよ。

 圏内だからって油断しないように…」

 

 アスナはキリトの言葉に頷く。

 応接室から出たアスナは小走りに城門へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離してくれ…!別に何かしようなんて思ってないんだ!!

 私はアスナさんに用があって…!」

 

「怪しい奴め!!副団長がお前などに会われるものかっ!!」

 

 アスナ「いいえ、その手を離しなさい…」

 

「!!…こ、これは副団長殿!!まさかおいでになられるとは…」

 

 アスナ「あなた達はもう下がっていいわ…。

 私はこの人と話があります」

 

「は、はっ!!」

 

 そう言って見張り役は城の中へと消えていった。

 

 アスナ「…ごめんなさい。手荒い事してしまって…えっと…」

 

 ルクス「わ、私はルクス!!あ、あの…これをアスナさんに渡してくれって…」

 

 アスナ「?…これは誰から?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルクス「…タクヤからです!」

 

 アスナ「!!?」

 

 アスナは驚いていた。

 さっきまで議題に上がっていた人から届け物が来るなんて思いもし

 なかった。

 

 アスナ「あなたは…タクヤ君とどういう…」

 

 ルクス「…タクヤはあんな所にいるべきじゃない。

 私と違って彼は強い…力も…心も…。

 でも、もう限界が近いって言って私にこれを託した…。

 それ以来会えていないんだ…」

 

 アスナ「限界…」

 

 ルクス「…私はこれで失礼するよ。

 奴らに見つかるとややこしくなるから…」

 

 アスナ「あっ!ちょっ…」

 

 アスナの静止を構わず転移結晶でどこかへ飛んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリト「ん…誰だったんだ?アスナ」

 

 アスナ「…ルクスって言う女の子よ。それとユウキ…これ…」

 

 ユウキ「これって記録結晶?その子から貰ったの?」

 

 アスナ「えぇ…。音声データらしいわ…。タクヤ君から…」

 

 キリト&ユウキ「「!!!!」」

 

 ユウキは思わずアスナに掴みかかった。

 

 ユウキ「その子は今どこにいるの!?

 なんでタクヤの事知ってるの!!教えてっ!!アスナ!!」

 

 アスナ「あの子はもういないわ。

 …だからこれをユウキに渡そうと思って…」

 

 アスナから記録結晶を受け取ったユウキはそれを眺める。

 何が入っているのか…。緊張して指が上手く動かない。

 

 ユウキ「…ふぅ…よしっ!」

 

 ユウキは記録結晶をタップした。

 

『…ユウキ…』

 

 ユウキ「タクヤ…!!」

 

 約5ヶ月ぶりにタクヤの声を聞いたが、酷くかすれていて聞く限り生気がまるでなかった。

 

『…今奴らの目を盗んでこれを録音している。

 笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の今のアジトは66層の迷宮区だ…』

 

 アスナ「これって…!!」

 

 キリト「あぁ!!場所が分かれば準備が出来次第助けに行ける…!!」

 

『…ユウキ…みんな…すまなかった。…オレはかけがえのない大切なもんを捨てちまった…。お前らに合わせる顔がねぇよ…』

 

 ユウキ「…」

 

『でも、もし…オレのワガママが叶うなら…もう一度だけ…みんなに会いてぇ…ユウキに会いてぇ…』

 

 ユウキ「ボクも…ボクもだよぉ…会いたいよ…タクヤに…あいたいよぉ。」

 

『…あの時は…すまなかったな。きつい事…言っちまって…。

 許してくれなんて…言えねぇけど…オレはみんな大好きだ…

 ユウキも…オレは…いつまでも…愛している…』

 

 ユウキに涙を止める力はもうない。

 ただただ流れていく涙を拭る事しか出来ない。

 

『最後に…もし突入する気でいるのなら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレを……殺してほしい…』

 

 ユウキ&キリト&アスナ「「「!!!?」」」

 

『もう…オレの中の…"修羅”を…抑えきれねぇ…。

 誰も殺したく…ねぇのに…体が勝手に動いちまうんだよ…。

 だから…最後は…ユウキ、お前の手で…オレを…殺してくれ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで記録結晶に録音されていた分は終了した。

 

 ユウキ「…」

 

 アスナ「ユウキ…」

 

 アスナがユウキに触れようとするのをキリトが止めた。

 

 ユウキ「…タクヤは今苦しんでる。…暗い所で、1人で、戦ってくれてるんだ…ボク達の為に…」

 

 キリト「…あぁ」

 

 ユウキ「だったらやる事は1つだよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクも一緒に戦わなくちゃねっ!

 だってボクはタクヤの恋人なんだから!」

 

 アスナ「ユウキ…!」

 

 キリト「そうだな…。行こう!タクヤが待ってる!!」

 

 ユウキ「うん!!」

 

 ユウキ達討伐隊はタクヤからの情報をもとに66層の迷宮区へと出陣した。

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
次回はついにラフコフと討伐隊の決戦です。
バトルシーンを丁寧に書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

では、また次回!

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