僕とポケモンのサバイバル生活 作:なきぼくろ
暖かい目で見守って下さい。
「うーっ、寒い」自分の体を赤ん坊のように縮ませながら漣(さざなみ)の音を聞いていた。少しずつ頭が冴えるのを感じながら昨夜のことを思い出した。
風と波が船を激しく揺らし、大粒の雨が船に当たり音を立てる。厚い雲から稲妻が走るのがちらちら見える。
「やばい、船がもたないぞ」と乗客の誰かが叫んだ。
その時一際高い波が襲ってきた。船が少しずつ傾き沈んでゆく。誰か1人が傾き沈んでゆく船から海に飛び込む。
それに続き、みな一斉に船から飛び降りる。
俺は波に飲み込まれないよう抵抗しながら沈んでゆく船を眺めていた。そこからはよく覚えてない。
完全に眠りから覚めた彼は勢い良く起き上がり周りを見た。
目の前はまず海しかなく船や島は見当たらなかった。
左右はヤシの木ぐらいしか目立つものはなく南国の無人島と思われるところにいた。改めて体を確認すると服は少し湿っていてそこら中に塩と思われる結晶が付いていた。
「うぅ、冗談だよね...」
ポツリとつぶやく声が波に消される。
まだ混乱している頭でまずどうしようか考える。
理想の形は他にも遭難した人がいること、そして、この島から出れるような小さなボートがあることだった。
「他に誰かいるかも」
砂浜に沿って歩き出す。それは彼にとって小さな希望であった。
しかし、現実はそう甘くない。
見つかったのは小さなバックだけだった。それはかなり汚く所々にカビが生えていた。
噛んだチャックと少しの間格闘して、中身を確認する。
まずはモバイルバッテリー、少し湿って形が崩れたティッシュとハンカチ、あとは壊れた音楽プレイヤーが入っていた。
使えそうなのはハンカチ、バックぐらいだった。奥に手を伸ばすと丸型のなにかに触れた。手で掴む。
それはスーパーボール(よく祭りなどで見かける一般的なもの)のような大きさであった。すぐにそれを引っ張り出し太陽の光に当てる。
それはかなり精密に作られたモンスターボールであった。
最近のおもちゃは凝ってるんだなぁなんて呑気に考える。スイッチがあると押してしまいたくなるのが人の性。ふと手で小さなスイッチを押してみた。すると、それは手のひらサイズの大きさになったのだった。
突然の事に彼は驚いたがそれはワクワクしている様に見えた。ふとさきほどから1つとして生き物を見ていない事に気付いた。
耳をすませてみると鳥や野生動物とは思えない鳴き声が微かに風に乗って聞こえてくる。
まさかと思ったが自分がポケモンの世界に来てしまったらしい。それを確信に変えるため彼は人がいないことは分かっているが辺りを確認して服を脱いだ。スッポンポンになった彼は海に向かって入っていった。
海の中に完全に浸かり、恐る恐る目を開けると目の前には90cm前後の赤いタイがゆっくりと泳いでいた。
他ならぬ最弱のポケモン、コイキングであった。
1000文字って思ったよりツライ。
小説家の方々を改めて凄い思いました。
ここまで読んで頂きありがとうございます。