むシノこ 作:しば
ナルトくんが修行から帰ってきたんだって。それで、風影様の奪還任務もやったんだって。
そんな情報を教えてくれたのはヒナタだったか。まあその情報は、ダンゾウ様から与えられていて既知のものだったが。
我々紅班に任務があるため、集合場所である大木の下にいたら目の前にそんなナルトが現れたので、声をかけた。
「久しぶりだな、ナルト」
「……誰?」
……お前に声をかける知り合いで、暗そうで、目にゴーグルをしていて陰気そうなやつだぞ。わかってくれ。
「仲間の雰囲気ぐらいは頑張って覚えておくものだ。なぜなら……話しかけた側が辛くなるからだ」
そういえば当のナルトは「めんどくさい喋り方」で俺を油女シノだと認識したらしい。こいつ!
しかもキバとヒナタは一発で思い出した。
……何が違うんだ? やっぱり顔の露出度か? そうなのか?
「任務をしくじるとはな」
ダンゾウ様からナルトの帰還を伝えられていたのは、我らが根のサイがカカシ班に入り、サスケ暗殺を行う故随時居場所を探知するよう命じられたからであった。
最近は特定の者の探知の命令だけでなく、時々理由を教えられる。一体ダンゾウ様にどういた心境の変化があったというのか。
そもそもサイが追加要因としてカカシ班に入ると聞いたときはとても驚いた。サイは根っからの根育ちの構成員だったはずである。人との、根以外との人とのコミュニケーションがうまく取れるとは思えない。人間性が抜け落ちたタイプの構成員だったはずで、中々に訝しんでいたのだが。
「カカシ班にこのまま置かせては頂けないでしょうか」
どうやらサイにも何か心境の変化……いや、人間らしくなったというべきか。
ダンゾウ様に呼び出されて何故か物陰からサイの呼び出しに付き合わされている。
以前も仮面を取るといかにも偽物ですという笑い方をする奴だったが、なんだか少し笑顔が変わったように感じられた。
人間性を得ることは良いことだ。きっとあのナルトのことだ。サイも何か影響を受けたのだろう。
だがダメだ。
サスケは重大な禁忌を犯した。
里抜けして、木ノ葉を狙わんとする大蛇丸と組んでいるのだ。お前はナルトに嫌われてでもサスケを殺すべきだったよ、サイ。……本当に人間になってしまったな。
「行け」
「はっ」
人間になった生き物がこの場を離れていく。
「ギン、サスケの方はどうだ」
「はっ。サイの任務失敗の際の保険としてサスケと遭遇した際にサイからサスケに移らせた蟲ですが、先ほどサイが報告に来る前に反応が途絶えました。おそらく見つかって潰されたのだと思われます」
「ふん、やはりダメか。もう良い。行け」
「はっ」
そして猿飛アスマが死んだ。
暁のメンバーと交戦、殉職。
それを聞いて俺たち紅班がまず思ったのは紅先生のことだ。
アスマ先生にはたくさんの近しい人がいたが、紅先生は特に近かった。なんてったって恋人だ。
俺たちはそれを聞いてすぐに紅先生の元へと走った。人は時に衝動的に信じられないことをする生き物だ。忍であろうと過言ではない。恋人を後追い、なんて多々あることではなくてもたまにあることだ。
紅先生はすでに訃報を聞いた後だった。
同じ班にいたシカマルがいの一番に伝えたらしい。
悲しむ先生に対し、どうしようかと戸惑う俺たちにえらい事実が告げられた。
それを聞いて俺たちは決心した。紅先生はこれからとても大変だろうから、俺たちがしっかり支えていこう、と。
我々ができるだけ兄代わり、姉代わりになろう、と。
だが、余談ではあるが、その子が大きくなった時一番懐いていた同期は俺たち8班の構成員ではなかった……。
シノが自分でも気づかぬうちに思想がだんだん根ぽく