むシノこ 作:しば
「ふん。こちらはしっかり約束を守っているというのに」
要注意人物として指定されていた者が木の葉に近づいている旨は報告してあったが、ついに木の葉の敷地内に入ったことを報告すればダンゾウ様の口からは小言が飛び出した。
自分にはその約束が何のことかはわからないが、ダンゾウ様にはなかなか不服らしい。
「良い、下がれ」
「はっ」
蟲の気配を探ればわかるが、件の人物の周辺にはすでに根の構成員が待機している。
まあ里の中のことと言えど俺が関わることはないだろう。
そう思っていつも通り紅班の集合場所に来たが、先生が来ない。
結構待ってからケガした先生が来たので、キバがどうかしたのか聞けば
「ちょっと茶屋のほうで色々あったのよ」
とのことだった。
……そういえばさっき蟲の反応は茶屋のほうだったな。
件の要注意人物は直接的には俺とかかわることはなかった。しかし、間接的にはもちろんそうはいかないらしい。
彼のものは木の葉でも有名な、うちは一族を滅ぼした人物である。それがどのようにうちはサスケの心を動かしたかは知らんが、それでも何かしらの影響を及ぼしたらしい。
うちはサスケが里を抜けた。
しかもそれを俺が知ったのもすべて終わった後だったというのだから、苦笑するしかない。
木の葉崩しのときにナルトやシカマルの同期達が活躍したように、今回もナルトにシカマル、チョウジに一個上のネジ、そして我らがキバと赤丸がサスケの奪還作戦に参加したらしい。
また俺は蚊帳の外だったというわけだ。……まあ今回は父親とトルネとで他の任務に出ていた関係で参加できなかっただけで、決して参加できたのに必要とされなかったわけではないのだが。
コンコン。
「……寝てるのかな?」
キバが負傷したことを受けてヒナタと見舞いに来たが、どうやら寝ているか部屋にいないからしい。
まあ仕方あるまいと許可を得ずに扉を開ければ、案の定ベッドにはすやすや寝ているキバと、その隣のベッドに寝かされている赤丸がいた。
ヒナタが持ってきた花束を生けてくるというので起きていたらしい赤丸を撫でて待つ。
「お疲れ様だ、赤丸」
「くぅーん」
結局キバが起きることはなかったので早めに部屋を出ることになった。帰りに、ナルトの病室によるかどうかをヒナタに聞いてみたが、よしておくらしい。……サスケがいたなら、サクラとナルトがくっつくことは心配しなくてもよかったかもしれんが、サスケがいない今、少し危惧しておいたほうがいいぞ、サクラ。
病院を出たところで二手に分かれて俺が向かう先は根の研究所だ。
根は根でも、根が解体されてからはあまり使われることのなかった場所だ。
というのも、木の葉崩し、大蛇丸の脅威、そしてそこに勧誘されて里を抜けたうちはサスケのことを受けて、また根が再編されることとなったのである。
これを受けて謹慎が解かれたダンゾウ様はとても愉快そうな顔であった。そして解体を受けてストップせざるを得なかった研究もまた再開することになったのだという。
ダンゾウ様の命を受けたので研究所には足を運ぶが、個人的にはあまり研究所は好きではない。あそこはダンゾウ様を妄信している者が多いのでなかなか気味が悪いのだ。
俺はダンゾウ様を尊敬はしているが、さすがに研究所の連中とまではいかない。
なので、もちろん目の前のこいつもあまり好きではない。
研究所について俺を出迎えたのは、信楽タヌキと名乗る人物であった。年は俺より少し上か同じくらいか。俺が相槌も打たないというのにひたすら一人で研究のすばらしさとこの場を設けてくれたダンゾウ様のすばらしさを語っている。流石に俺も引く。
そして案内されたのはとある部屋だ。中の診療台にどうぞ、と言われたのでそこに体を倒す。
研究内容については詳しく知らないが、どうやらチャクラの吸収について研究しているらしい。その研究の一部として我らが油女一族の蟲とその宿主の関係を調べているようだった。とにかく、ダンゾウ様がここに行けと言ったら俺はダンゾウ様の言葉に従うのみである。