むシノこ 作:しば
下忍になるにあたって、うずまきナルトの監視任務はもっと緩くなった。元々親しくするつもりだったが、蟲を使うということで自動的に距離を取られるようになったため、アカデミーでの行動を監視する程度のものだったが、アカデミーを卒業した以上大したことはできない。まあヒナタがナルトを陰から見るときに便乗して見るくらいである。
8班では、新米上忍だという夕日紅先生の下につくことになった。くノ一が増えて紅一点構成での班作りが難しくなったとはいえ、8班は明らかに感知能力に重きを置かれたメンバーが選ばれている。なのでてっきり先生もそういった人が来るのだと思っていたが、どうやら違うらしい。
さらには女性の先生だったことで、男はキバ一人というなかなか珍しい班になった。赤丸というキバの相棒もいるのでそこまでではないだろうが、本人にとっては割と居心地が悪いかもしれない。
アカデミーから卒業するときは、卒業試験のあとも何かの試験があるというのは聞いていたが、これはどうやら担当の先生に任されているらしい。紅先生によって感知能力を生かす試験を与えられ、三人の能力で力を合わせて無事に試験を突破した。
俺たちは晴れて下忍となり、時折紅先生の指導を受けつつ感知能力を存分に生かした任務を行っている。……まあ基本的には探し物や探し人である。
今日は紅先生による指導の日だ。
メニューは簡単、木登りだ。手を使わず、足の裏のチャクラをコントロールしてやるものだ。
……と、いっても、簡単なのは根の出身である俺にとってだけであり、キバやヒナタにとってはそうではない。そもそもアカデミーではやらないからだ。
紅先生の見本のすぐあとに俺があっさり登ってしまえば、二人からは感嘆や疑問があがった。
「お前なんで出来るんだよ!」
「……なぜなら、高い場所にいる蟲を捕まえるのに必要だからだ」
「シノちゃん、すごーい!」
こうして一人暇になってしまったうえ、紅先生も何も追加課題を出さないので、指導の下木登りを頑張る二人を横目に昆虫観察や昆虫採集に励んだ。帰ってもよかったのだが、ある程度訓練したらみんなでぜんざいを食べに行く話になっていたので待つことにした。
少し気になったのが、紅先生が得ている情報である。俺は先生が俺の情報を正しく持っているのか知らない。ただの油女シノとして認識しているのか、はたまた元根の油女シノとして認識しているのか。もしかしたら、監視されているのかもしれない。
「シノちゃん、もう行こう」
日も暮れないうちに、訓練は終わりになっていた。下から少しだけ木に登ったヒナタに呼ばれてみんなと里のほうへ歩きだす。
途中、いの達アスマ班とすれ違ったので軽く会話を交わす。といっても俺はずっと黙っていたが。
どうやらナルトたちカカシ班は波の国への任務に向かったらしい。それを聞いたキバが俺たちもと喚いたが、それはおそらく無理だろうと心の中で謝っておいた。
ダンゾウ様が何かあったときにすぐ俺の監視を付けられるようにしたい以上、今の能力ではこの里から離れることダンゾウ様が許さないだろう。蟲分身を使えなくはないが、さすがに限界がある。キバには悪いが、この班で活動する以上里の外へ出る任務は今年中にはもらえないだろう。ヒナタはナルトたちを心配しているが、まだ里の外で任務を行う度胸はないだろう。
それにそもそもまだ実力が足りているとは言えない。カカシ班が波の国へ向かったのは、偏にあのコピー忍者のはたけカカシが担当だからであろう。紅先生にどれほどの実力があるかはわからないが、上忍になったばかりである以上里の外へ出るには少し心もとない。
店について4人分のぜんざいと一匹分のおやつを注文する。チームを組み始めてからわかったが、キバは普段なら大盛りを頼むという。しかし今回は餅だ。赤丸はまだ子犬だし、喉に詰まる可能性を考えてやめとくらしい。
チームワークを深めるがてら、色々な会話をする。
「ねえ、みんなは好きな人いるの?」
紅先生の質問でヒナタが真っ赤になった。
「あら! 誰よ!」
みんなで視線をヒナタに合わせたのでヒナタが俯く。仕方ないので顔を上げるとキバと目が合った。ああ。アカデミーにいたら大体わかる。
「どうせナルトだろ?」
流石に勝手にいうのは良くないと思ったが、キバは構わずにヒナタに追撃を食らわせた。
「ななな、え、や、いぇ!?」
ヒナタ……。気付かれてないと思っていたのだとしたら、忍には向いてないかもしれんぞ。