むシノこ 作:しば
うちはサスケを捕らえることは出来ず、敵の言葉によればうちはイタチはサスケとの戦闘の末に死亡。俺の蟲からの反応を鑑みれば死亡は確実。
よって任務をこれ以上継続することは出来ず、村に帰還。
通常の報告の後に俺はダンゾウ様に報告。うちはイタチはうちは一族を皆殺しにしておきながら蟲による探知を甘んじて受け入れていた忍だった。決して普通の抜け忍ではなかったことは確かだ。
「ギン」
報告後にいつも通りタッタと帰ろうとしたら、珍しく誰かに呼ばれてしまった。何の用か、と振り返ってみれば、そこにいたのはフーだった。……なんだ?
「そういえば、この後……あ、間違えた」
……間違えたとはなんだ間違えたとは。
何かを間違えたにしろちょっとその対応はないんじゃないか? 俺は傷ついたぞ。
と思ってはいたが家に帰ったら色々理解した。
家に帰ると軒先でフーとトルネが話しており、窓から自室に入ってギンの仮面を外してから玄関まで行けば、今日は父が留守であるしこのあと二人と一緒にご飯に行かないかと誘われた。
これで納得がいった。
つまりこうだ。多分。
ギンはあくまで油女一族出身の誰かであり、決して油女シノではない。年頃や成長具合からしてギンが油女シノであることを察することはあっても、こちらが認めぬ限りギンと油女シノは他人である。
フーは根で見かけるギンと友人トルネの妹である油女シノがなんとなく同一人物であることを察していた。頭の中でもそうなのだろうとずっと思っていた。
なので先ほど「油女トルネの妹」を誘おうと思ってギンに声をかけたが、声をかけてから「ギンはただの根所属の忍」であることを思い出したというところだろうか。
まあ、そんなこんなで一緒にご飯を食べた。
その後数日も平和で長閑な日々が続いていた。紅班でかなり腹が膨れてきた紅先生の病院通いの付き添いをしたり、あんみつを食べに行ったり。
どこかで話が進んでいたのか、シカマルが紅先生の子の師匠になることが決まっているらしい。……いや、確かにアスマ先生の子でもあるが俺ら八班はどうなんだ。まあ感知タイプである以上あまり師として適さんのかもしれんが。
そしてそんな平和は一瞬にして崩れるのだ。
ドンドンと遠くの方から何かが壊れる音がしたかと思えがその発生源がどんどん近づいてくる。
暁による木ノ葉の襲撃だった。
まずい、と思ったのも束の間、蟲を通じてダンゾウ様から招集を受ける。
……ダンゾウ様が火影になるためにも、襲撃の間は戦力でもある根を地下で潜らせておくという。
……死傷者はそれなりに出るが、これもきっと木ノ葉のためになる。これも必要な犠牲なのだ。
本当に?
「お前もここに待機しておけ。お前はワシが火影にあった後も必要だ」
いや……木ノ葉のためになったとして、一族の者が死んでしまったら元も子もない。
「ダンゾウ様……お言葉ですが、油女シノがこの事態で地上にいないとなりますと、大変怪しまれるかと」
「フン。蟲分身でも出しておけ。本体はここにいろ」
「……はっ」
結局木ノ葉の里は今回の暁のペインの襲撃によって多大なダメージを受けた。
壊滅に至らなかったのはうずまきナルトの強さに救われたからと言ってもいい。尾獣の力もさることながら、仙術まで使いこなし、襲撃犯であるはずの長門なる人物に蘇生すら行わせたらしいのでさすがのナルトである。根の忍が戦ったところで被害を少しは減らせたかもしれんが、ナルトが行ったことに比べれば微々たるものになっただろう。今回の件でナルトはすっかり里の英雄となった。
そして里だけでなく、人的被害もひどかった。
特に、里中の治療を引き受けた五代目火影綱手様である。力を使いすぎた結果、今も昏睡状態にあり。
よって、新しく六代目火影の選出を行うことになり――正式ではないもののダンゾウ様が六代目火影を務め、綱手様の計らいによってない話になっていた抜け忍サスケの始末も決まった。