無貌の王と禁忌教典   作:矢野優斗

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フレに玉藻の前、孔明を連れてロビンフッド全力強化。イバラギンに三百万超えが余裕で入る、愉悦!
いやー、さすがロビンさん、マジつええ。この調子なら四百万も夢じゃないですわ。皆さんもロビンさんと一緒に限界トライアル、しよ?


真実、彼女が望んでいたこと

 リィエルの兄を名乗る青年が森を去り、残された顔無しとリィエル。両者共に戦闘行為は不可能、このまま手を打たなければ死を迎えるだろう重傷と重症だ。

 

 毒が回って動くことも儘ならないリィエルは荒く熱っぽい呼吸を繰り返すだけ。解毒剤なんて代物は持ち合わせていない。

 

 対して脇腹を刺し貫かれた顔無しは、青年が去ったと見るや鋼糸(ワイヤー)や持ち合わせの道具を利用して傷口を締め、簡易的ではあるが止血を施す。懐から極彩色の液体が容れられた小瓶を取り出すと、栓を抜いて中身を一息に呷った。

 

「うぇ……いつも思うが、もう少し味を改善できないもんかね……」

 

 筆舌に尽くしがたい味の液体を飲み干したところで顔無しは一息ついた。

 

 顔無しが服用した液体は端的に言えば薬だ。一時的に痛覚を麻痺させる麻酔作用と僅かばかりだが造血作用も備わっている、森に生きる一族が生み出した薬品である。

 

 ただしこれはあくまでその場凌ぎの応急処置。根本的な解決にはなっていない。

 

 顔無しは懐に手を突っ込むと茶色の紙巻(シガレット)らしき物を取り出し、魔術で火を点けると口に咥える。森に生えるハーブや薬草を乾燥させて巻いた代物であり、鎮痛と鎮静を含む一種のアロマテラピー的な効果を齎す。ちなみに市販の煙草(タバコ)と違って身体に有害な物質は含まれていない。

 

 薬の味を紙巻で誤魔化しつつ脇腹の激痛が引くのを待ちながら、顔無しは緩やかに死へと向かうリィエルを見やる。

 

 リィエルの身を蝕む毒は即効性ではないが強力な代物であり、一度回り切れば激しい不調に襲われ、身体の末端から感覚がなくなっていき最終的には身動き一つできないまま息絶える。恐ろしいほどに自身の死を感覚的に味わうことができる猛毒だ。

 

 倒れてからもう数分以上は経過している。既に指先の感覚は抜け落ち猛烈な寒気に身を苛まれている頃だろう。いつもの無表情は苦悶に満ち、瞳の焦点も定まっていない。

 

 そんなリィエルを見下ろし顔無しは皮肉げに笑う。

 

「惨めだな。いや、大好きな兄貴のために死ねるんだから、むしろ本望か……」

 

 リィエルに答える余裕はない。熱に潤んだ瞳を動かすだけで精一杯だ。構わず顔無しは続ける。

 

「道具みたいに使い捨てられて、それでも兄のためになるなら構わないってか。過去に何があったかは知らないが、随分と歪で一方通行な想いもあったもんだ」

 

 あからさまな嘲笑を含んだ言葉に、苦しみ喘ぐリィエルの瞳に敵意が宿る。

 

「な……にを……」

 

「別にぃ? 兄貴一筋のオタクに何を言ったところで届きゃしないんでしょ? だったらもう死んじまいな。後悔も無念もなく、兄貴のために生きて死ねたって想いを抱いたまま野垂れ死んどけ」

 

 一方的にそう吐き捨てて顔無しは黙り込む。紙巻の煙を目一杯に吸い込みながらフードの下で顔を顰める。余裕そうに煽っていたがその実、喋るだけでも傷口に障る状態なのだ。

 

 早急な治療が必要不可欠である。遠からず毒で死に至るリィエルになど構わず、傷の治癒に集中するべきだ。そんなことぐらい分かっているはずなのに、顔無しは未だその場を動こうとしない。

 

 ただ何を言うこともなく倒れ伏すリィエルの姿を見つめていた。

 

 

 ▼

 

 

 意識が朦朧とする。手足の感覚が抜け落ちて、もう指先一つ動かすことすら叶わない。自分の身体が徐々に死へ向かっていくのが手に取るように分かった。

 

 死ぬことは怖くない。だって兄さんのために戦えたから。一度は失ってしまったと思っていた大好きな兄さんのために生きて死ねるのなら、後悔なんて微塵もない。

 

 兄のために生きることだけが、わたしの存在理由。それしかわたしには残されてないのだから。顔無しに何を言われようと関係ない。この命は兄のためだけにある。

 

 だから、この感情も全てまやかしに過ぎない。

 

 身体が寒さに震える。凍土に放り出されたような芯から染み渡る寒気に震えが止まらない。本格的に死が目前に迫っていた。

 

 わたしはその死に身を委ねようとして──

 

「──苺のタルト」

 

 不意に耳朶を叩いた声に意識を繋ぎ止められた。

 

 声の主は木に凭れかかる顔無し。いつもフードのせいで表情は読めないし何を考えているのかも分からない男。時々、仕事の都合で組んだことがある相手で、わたしの邪魔をしたからグレンと同じように殺そうとした。

 

 もう瞳を動かすことさえ億劫であるけど、わたしは発言の意図を問うべく顔無しを見やる。

 

 顔無しは依然と変わらず、フードのせいで何を考えているのかも表情も分からない。そんな彼はわたしの向ける視線になど構わず言葉を紡ぐ。

 

「クラスの連中と過ごした学生生活……授業を受けて、賑やかしく飯食って、魔術の勉強して、偶に暴れてグレンに怒られて……」

 

「なに、を……言って……」

 

 脈絡もなく顔無しの口から語られる魔術学院での日々に戸惑いを覚える。どうしてこのタイミングでそんなものを話すのだろうか。

 

「ここに来てからはクラスの連中に交じってビーチで遊んでたな……ティンジェル嬢とフィーベル嬢に手を引かれて……そーいやオタク、グレンに水着を褒めてもらおうとしてたっけか。気づいてもらえてなかったがな」

 

 …………。

 

「ビーチバレーでは柄にもなく活躍してたな……オタク、案外楽しんでたろ。ウィズダン少年にスパイク取られた時の間抜け顔は傑作だったぜ」

 

 ……………………やめて。

 

「その夜にはティンジェル嬢とフィーベル嬢と一緒に規則破りの夜間外出……」

 

 いや……やめて…………やめて……っ!

 

「三人で見た夜の海はどうだったよ? 綺麗だったか? あの二人と遊んだ時間は楽しかったか?」

 

「うる、さい……やめ、て……!」

 

 耳を塞ぎたい。これ以上は聞きたくなかった。顔無しが今日までの日々を語る度に、その時の光景が浮かび上がってしまう。もやもやとした温かい不思議なものが込み上げてくるから。

 

 違う、こんな感情(もの)は何かの間違い。だってわたしが生きる理由は兄さんだけ、それ以上でも以下でもない。そこに他の要素が介入する余地なんてあるはずがないのに……。

 

 なのに、それになのにどうして──こんなにも辛いの? 苦しいの? 胸が痛いの?

 

 次から次へと脳裏を過る記憶(思い出)。呆れ顔でグレンが頭を撫でてくれて、怒り顏のシスティーナにあれこれと説教されて、優しい笑顔でルミアが知らない初めてを沢山教えてくれた。クラスの皆と過ごした賑やかでいて温かな日々が瞼の裏で甦って、それに伴ってあのもやもやとした感情が膨れ上がる。

 

「いや……だ……」

 

 わたしには兄さん以外、生きる理由も、生きる目的も、生きる資格さえなかったはずなのに。ここで死ぬことになっても、兄さんのためなら後悔なんて微塵もなかったはずなのに。どうして──

 

 ──こんなにも涙が溢れてくるの?

 

「楽しかったんだろ?」

 

 呆れたような声音で顔無しが告げる。

 

「お嬢さん達と過ごす日々が……陽だまりの世界が温かくて優しくて、楽しかったんでしょ。そんなこと、言われなくとも分かってたはずでしょうが……」

 

「たの、し……かった……?」

 

 わたしは楽しかったの? 皆と一緒に過ごす日々が楽しかった……そうなの?

 

 ああ、でもそうなら、この涙にも得心がいく。

 

 わたしはあの二人と一緒にいることが楽しくて、嬉しかったんだ。クラスの賑やかで温かな空気がくすぐったくて、心地よかったんだ。

 

 ずっと血腥い裏の世界で生きてきたわたしにとって、陽だまりのように優しく温かいあの場所は、掛け替えのないものになっていたんだ。

 

 死の淵に立たされてようやく自覚するなんて遅すぎるにもほどがある。でも、一度自覚してしまったらもう抑えられなかった。

 

「死に、たく……ない……」

 

 兄さんのためなら後悔なんてなかったはずなのに、今は恐怖が湧き上がってくる。このままここで潰えて、陽だまりの世界が失われてしまうのが堪らなく怖い。

 

 自分で壊してしまったくせに、虫のいい話だって分かってる。もうルミアとシスティーナとは一緒に居られないし、あの世界に戻ることも叶わない。全部わたしが悪いから、当たり前だ。

 

 でも、それでも。叶うのなら、あの二人には一緒に居て欲しい。グレンを奪ったことで笑顔が曇ってしまうのはもう避けようがないけれど、姉妹のような二人がこのまま引き裂かれたまま終わるのだけは嫌だった。

 

「死にたく……ない……!」

 

 もう既に全身の感覚が失われている。身を捩るどころか呂律すら危うくなり、呼吸も怪しくなってきた。それでも、想いだけは萎えない。この想いだけは決して失われはしない。

 

「死の淵に立ってようやく自覚したかよ。ったく、気付くの遅すぎだっつーの……ま、そこで涙を流せるのなら上等だ。賭けるだけの価値はある」

 

 顔無しが何かを言っている。意識が遠退き視界すら霞んできていて何を言っているのかよく分からない。

 

 不意に口に何かを突っ込まれた。抵抗する力もないわたしはなすがまま、何かの液体を嚥下する。舌先の感覚も味覚も欠落しているため味も温度も分からない。

 

「十分もすれば毒が抜ける。感覚も戻るだろうよ。そこからどうするかはオタクの好きにしな」

 

 頭上から降り注ぐ声が離れていく。きっとルミアを取り戻しに行くつもりなのだろう。顔無しはルミアを陰から守る護衛役だ。きっとわたしなんかよりもよっぽど頼りになる人なんだと思う。

 

 でも、待って──

 

「まっ……て……」

 

「…………」

 

「わ……たし、も……いく……」

 

 動かないはずの腕を上げて、殆ど直感で顔無しの足に指先を伸ばす。感覚がないから分からないけど、多分掴めた。現に顔無しの気配が立ち止まっている。

 

「……驚いたな。まだ動けないはずなんですがねぇ……」

 

 離れかけた気配が戻ってくる。

 

「そうだなぁ……オレみたいな悪党よりも、オタク自身が取り戻した方が良いに決まってるわな」

 

 失われた感覚が徐々に戻ってきた。その感覚が頭に載せられた温かい掌の存在を教えてくれる。

 

「十分経ったら起こしてやるよ。それまではゆっくり休みな──」

 

 心地よい感覚に眠気が襲ってくる。逼迫した状況であると分かっているのに、耐え難い睡魔に意識が深い闇に落ちていった。

 

 

 ▼

 

 

「寝たか……」

 

 リィエルの鼻先から薬の染み込んだ布を取り除け、顔無しは一先ず安堵の息を吐いた。

 

 眠りに落ちたリィエルの身体をそっと仰向けに寝かせて自身は手近の樹木に背を預ける。無意識に脇腹を押さえていた手を見て、紙巻を加える口元を歪めた。

 

「ちっ、さすがに傷が深いな……やれて一戦が限度ってところかぁ」

 

 リィエルには解毒薬を飲ませたので命の危険はもうない。体の感覚もじきに戻るだろう。今は精神を休ませるために顔無しが薬を嗅がせて眠っている。

 

 問題は顔無しの方だ。リィエルに止められなければこのままルミアの救出に向かうつもりであったが、正直なところ厳しい状態である。

 

 薬と紙巻のお陰で大分楽になっているとはいえ、放置すれば出血多量で命に関わる重傷に変わりはない。激しい戦闘行為を行えば傷口が開き、止血の意味もなくなるだろう。そうなればあとはジリ貧だ。ルミアを救出するのが先か、顔無しが力尽きるのが先かのチキンレース。賭けにしては分が悪すぎる。

 

 敵は最低でも二人以上。リィエルの兄を名乗る青年と恐らくバークスも敵だ。昼間のルミアを見る目を思えば十中八九間違いない。

 

 対してこちらは顔無し一人だった。リィエルをこちら側に引き込めていなければ、今頃は無謀な戦いに身を投じることになっていただろう。

 

 その点で言えばリィエルの説得が上手くいったのは僥倖であった。執行者として裏の世界で戦ってきたリィエルの実力は折り紙付き。真っ向からの勝負で負けることはそうそうない。精神面にやや不安が残るものの、これ以上にない切り札だ。

 

「弱った女の子を口八丁で丸め込んで引き込むとか、いよいよ悪党の所業だな。我ながら褒められたもんじゃねぇ……」

 

 自嘲げに呟いてぐっすりと眠るリィエルを見下ろす。少しばかり寝苦しそうであるが、次に目が覚めた時には幾分かすっきりしているだろう。

 

「でもまぁ、オレには手折れねぇわな……まだ気づいてないっぽいが、オタクも既に陽だまりの一員なんだよ。そのあたりの自覚はお嬢さん達がさせてくれるだろうから口出ししませんがね……」

 

 血に塗れた日陰で生きてきたからこそ、陽だまりの尊さを知っている。そんな顔無しに陽だまりの世界で花開こうとしていた小さな花を手折るなんて真似ができるはずもなかった。

 

 ふぅ、と煙を燻らせていると、背後から土を踏み締める音が響いた。

 

 一瞬身構えかけた顔無しであるが、覚えのある気配に警戒を緩める。闇夜から姿を現したのは顔無しもよく知る人物であった。

 

「何の用ですかい、爺さん? 生憎と今は仕事中、直接的な手出しは掟に触れちまいますぜ?」

 

 顔無しと同じく深緑の外套を纏った翁、先代無貌の王(ロビンフッド)に態とらしく軽い口調で話しかける。何となく、先代が姿を晒した理由は察していた。

 

 先代が厳かに口を開く。

 

「たった今、グレン=レーダスがアルベルト=フレイザーとシスティーナ=フィーベルの手で蘇生された。しばらくすれば王女奪還のために行動を始めるだろう」

 

「マジかよ……つーか蘇生って、ゴキブリ並みにしぶといなアイツ」

 

 思わず半笑いが洩れる。グレンがそう簡単にリタイアするほど柔な男ではないとは思っていたが、文字通り死の淵から舞い戻ってくるとは予想していなかった。

 

 しかしそうなると勢力図が大幅に変わる。先代の言葉が正しければグレンに加えてアルベルトという帝国宮廷魔導師団のエースが味方になったわけだ。もはや顔無しどころかリィエルの助力も要らないのではないかという豪勢な面子である。

 

「もうオレの出番とかなさそうなんですけど……」

 

 むしろ余計な手出しをすれば事態がややこしくなりかねない。特にグレンとアルベルトはリィエルが未だ敵側の存在だと考えているだろう。そこへリィエルと一緒になって現れたらそれこそ顔無しも寝返ったとか勘違いされかねない。

 

 だからと言ってこの男、じっとルミアが救出されるのを待つつもりなどない。

 

「あの二人とは別行動するとして……金欠講師殿はしばらく動けないはずだ。その間にお嬢さんの救出だけでも済ませとくか」

 

 執行者の中でも屈指の腕を誇っていたグレンと現エースのアルベルトがいるならば、自分達はルミアの救出に集中し、敵勢力の排除はエースタッグに任せられる。無茶無謀な作戦を決行する必要性もない。

 

 しばし顔無しは脳内で今後の算段を立てていたが、無言でじっと見つめてくる先代の視線に気づいて首を傾げる。

 

「どうしたんですかい? 他になんかありましたっけ?」

 

「……その状態で往くつもりか」

 

「そりゃ行きますよ、仕事ですし。護衛対象攫われといて黙ってたらそれこそ無貌の王(ロビンフッド)の名折れっしょ?」

 

「たとえその命尽き果てようともか?」

 

「────」

 

 鋭い指摘に顔無し言葉を失い、先代は厳しい口調で続ける。

 

「薬に頼っている時点でお前の身体は既に限界間近。動くことすら危険な状態であり、一戦でも交えればまず間違いなく失血死する。それが分からないはずもない。その上で往くつもりか?」

 

 圧力すら伴う眼差しを向けられ、顔無しはバツが悪そうに頭を掻く。

 

「……分かってますよ。けどな、こんな事態になったのも全部、私情に流されてドジこいたオレが悪い。自分の不始末の尻拭いを他人に放り投げるワケにはいかないでしょ?」

 

「だから命を懸けるか……」

 

「何か問題あります? ……あぁ、心配せずとも最期の瞬間まで無貌の王は貫きますぜ。後始末も要らねぇですよ。誓約通り、この身はロビンフッドを全うする。それが()を捨てた者の末路だ」

 

 静かに覚悟を表明する顔無し。こんな世界で生きていれば何れ何処かで終わりを迎える。先代の場合は肉体の衰えを迎えるまで生き続けたが、過去の無貌の王全員が天寿を全うできたわけではない。人生半ばで死に絶えた者とて少なからずいる。その中に自分も加えられるだけだ。

 

 顔無しの決意が揺らがないと悟り、先代は嘆息を洩らして踵を返す。元より止まるとは思っていなかった。それでも先代無貌の王(ロビンフッド)として覚悟のほどを問わなければならなかった。

 

 ……いや、違う。そんな理由で掟に触れかねない第三者の前に姿を晒す行為を犯したのではない。本当の理由は──

 

「そうだ、爺さん。一つ言い忘れてたわ」

 

 ふと思い出したと言わんばかりの軽い態度で顔無し──ロクスレイが言う。

 

「ロクに恩返しもせず先に逝っちまう親不孝者で悪ぃな。ありがとな、今まで世話になった。奥方にも伝えといてくださいよ」

 

「……馬鹿者が」

 

 本当の理由は──親として、息子を心配しただけ。ただそれだけだった。

 

 音もなく先代の気配が遠ざかっていく。見ずとも分かる、きっと今の先代の背はこれ以上になく落ち込んでることだろう。情報の伝達だけなら通信の魔導器だけで事足りるのに、わざわざ姿を見せたのがその証左だ。

 

 仕事にはストイックで厳格な先代であるが、同時に息子に対する愛情も深い。顔無しが決死の覚悟を決めたとあれば居ても立っても居られなくなるのも致し方ない。それでも無貌の王(ロビンフッド)として覚悟を決めたとあっては止めるような真似はできなかったが。

 

「まったく、爺さんもお優しいこった……」

 

 多分に呆れを含んだ声音であったが、その表情は隠しきれない喜色に染まっていた。

 

 やがて顔無しはリィエルを起こし、ルミアを救出せんがため行動を開始した。

 

 

 

 

 


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