整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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阿久根でアクメ

 

 

「はうぅ……! い、いけません提督……!」

 

「えぇやないかぁ名取ちゅあんっ……おん? オレっちおて手、気持ちええやろ……? いい加減なぁ、素直にならんと、こっちも実力行使で、ゴッドフィンガーと呼ばれた5連装神指魚雷、発射してまうでー?」

 

「い、いやぁ! や、やめてください〜!!」

 

「は? そんなエロい体しておいて、オス惹きつけておいて、何やその態度。エロ、おいエロォッ、エロい声しか出せんのかお前」

 

「提督。私の前で、しかも執務中に、なにをしているのかしらぁッ?」

 

「え、なにって職権乱用ごっこだけど? 五十鈴ちゃんいい加減に慣れようよ〜。別にオレっち、仕事が滞ってるってわけじゃないもんねぇ〜!」

 

「じゃあこの書類の山はなに!? 十分に滞ってるでしょ!? いったい何度仕事しろって言えば分かるのよこのバカぁ!」

 

 阿久根要港部の執務室は常に賑やかである。

 結城司令官の陽気な人柄もあるが、それに対して常に突っかかる第一艦隊旗艦の五十鈴、そして秘書艦の名取とのやり取りは来る者をにこやかにして返す。

 二人の大きな胸は男性にとって毒であり、あいも変わらず正直な結城司令官は公然セクハラに及ぶ。

 

「本当に触ってるワケじゃないでしょ!? 五十鈴ちゃんが言ってからオレっちマジ紳士になって無闇やたらと女の子のドスケベクソエッロイ身体触らないようにしてるんだ〜!」

 

「それが普通なのよ!?」

 

「わ、私は大丈夫だから、ね?」

 

「名取のそういう態度がコイツをつけあがらせるんでしょう!? もっとシャキッとして!」

 

「そうだよ名取ちゃん、男はそういう、はうぅ〜! みたいな女子に興奮してダンシングペ○スモンキーになっちゃうんだぞ? マジ名取ちゃんのぺぺにオレっちのラケティティモをソクソクしたいぜぇ……!」

 

「は、はぁ……?」

 

 阿久根要港部はそれほどの戦果を上げているわけでもないが、ミスを犯した経歴もなく、順調に艦隊運営ができている状況だが、それでも不満がないわけではない。

 典型的なスケベオヤジのような司令官は、波の無い平時の任務では、平均よりマシ程度の指揮でこれと言った功績もないが、部下の間ではどうしても同期である宍戸大佐、斎藤大佐、秋津洲中佐のような司令官と比べられてしまう面がある。

 

 しかしそれでも劣等感はなく、今まで通り宍戸大佐と仲がいいままであるというのは良からぬ噂を呼び、一説では彼らはデキているのではないかという腐カップリング的な噂が、阿久根要港部では流れている。

 これは飛び火して斎藤大佐やその他の士官も例外ではなく、同期が近場に配属されたというだけで、二人は営みにより感染、及び発生させるAIDSという名のリーサルウェポンを開発していると噂が流れたほどである。

 

「あの宍戸大佐と提督が……ふふっ、いいものですねぇ……やっぱりホモが嫌いな女子なんていないんですよっ」

 

「名取ちゃん?」

 

「あぁなるほど、艦娘にセクハラするのは実はフェイントで、本命はアッチって事ね。うんうん! いいわねぇこれ! あ、でもそれじゃあ斎藤大佐がハブられて、それに激怒した彼がヤンデレホモになってまさかの三角関係とか!? これは海軍掲示板に載せるしかないわね……」

 

「五十鈴ちゃんもやめて、お願い」

 

「ご、ごめんなさい、提督もそんな顔するのね。座頭市の表紙みたいだわ」

 

「うん、許すから、おっぱい、揉ませて」

 

「通報」

 

「クソォ! なんて生きにくい世の中なんだ……ッ!……って、あれ? 電話鳴ってる? 誰のよぉ〜もう。執務中は携帯バイブにしておいてって、口がバイブみたいになるぐらい言ったのにぃ! って、俺やん」

 

「は? 死ねば?」

 

「めんごめんご、でもちょっと大事な用事だから出るねん」

 

 罵倒暴言を超えてパワハラとも汲める五十鈴の言葉をヒラリと流しながら、結城司令官は廊下に出る。

 

「……行っちゃいました、あっ、この書類の山どうしよう……!?」

 

「ハァ……ホントだらしない提督ねアイツ。まぁこの書類は手伝うわ。名取にだけ任せるのは流石にブラックだわ」

 

「え、いいのっ?」

 

「まぁその代わり、この五十鈴の手を煩わせたんだから、その分は整工班の仕事手伝ってもらうことにするわ。もしまたサボったら……うん、殺すわ。名取はどんな刑がいい? 海に一時間沈める刑とか、三日間男娼させる刑とか」

 

「恥辱の刑、とか……」

 

「結構むごいこと考えるわね……」

 

 

 

 司令官の自室。

 

 自室に戻って、誰も聞いていない事を確認しながら電話に出る。派手な発言と普段の言動からは思いもよらなほど殺風景で、なおかつ荷物が一纏めにしてあるが、これは単に必要な物しか出していないからであり、特別な理由があるワケじゃない。

 

「もしもーし、誰ッスか!? 今ァ執務してたンすけどねェ!?」

 

『第十二連隊の連隊長だ』

 

「連隊ってことは……陸軍ッスか? 陸軍が俺に何の用ナン? つか、第十二連隊ってどこだっけ……?」

 

『惚けるなよ貴様、長崎に駐屯する連隊だ。言わなくても分かるだろう』

 

「な、ナンの用っすか……?」

 

『貴様の同期が”陸の資”のある場所に居たのだ。宍戸龍城大佐だったか? アレが、深海棲艦教とかいうアホ共が襲撃してきたタイミングと一致して、艦娘と共に居た。これはどういう事だ?』

 

「ど、どうって俺に言われても……ダチとはいえ、プライベートには口出しするべきじゃないって思いますし、偶然じゃないッスかね?」

 

『偶然なワケがないだろう!? あの警備府の司令官、一説では周りに彼の派閥を構築するほど仲間を取り入れていると聞くではないか!? そんなヤツが偶然、しかも我々陸軍の重要拠点に、襲撃された日に居るなどしてたまるかァ!?』

 

 派閥というほどでもないが、海軍内でも宍戸司令官と親しい、あるいは同期、または英名に憧れる軍人や元部下などの仲良しグループが組織的に見られる事がある。無論、その大部分の条件を埋める結城司令官も、メンバーとして認識されている。

 

「お、俺に言われても……つかその日って、警備府が善意でボランティアした日じゃないですか?」

 

 電話を耳元から離しても聞こえる怒鳴り声を軽くあしらう結城司令官。

 ”陸の資”ーー俗に言う、陸軍の隠し財産の事である。

 宍戸司令官がそこにいたのは偶然だが、連隊長がヒステリックになるほど重要なものであるという、ある種の暗示でもあった。

 

 深海棲艦教は、深海棲艦出現以来から歴史を持っており、熱狂的な信者が居ることで知られている。各国にも点在しており、”陸の資”を開ける為の鍵を作り出すまでに至った詳細は憲兵隊の尋問でも引っ張り出す事は不可能だったが、発火点の大元は海外にあると、僅かながらに言及された。

 

「まぁ〜でもぉなるほどぉ〜へぇ〜ソーナンスねェ! んで、なぜオレ?」

 

『深海棲艦教の事も、あの司令官の事も含めて、すべて貴様の仕業ではないのか? 海軍に有益な情報を提供する事のできる人間など、貴様しか居らんだろう?』

 

「そんな事で疑われるオレッチマジ被害者。まぁ風俗でナマハメナカ○シ入れまくるなら横領も止むなしですなァ……つか、この辺風俗ないのホントゴミィ! 事実上左遷ッスよ左遷ッ!」

 

『割と真剣な話なのだが?』

 

 連隊長の落としたトーンは、結城司令官を真面目モードにした。

 

「俺ッチべつに何もしてませんけどぉ……ってか、陸の資を管理する事はフィリピン政府、オマケついでにアメリカ政府にとっても重要ジコーですしぃ? 海外政府がワザワザ株を分け合った企業や個人事業をスゲー使って複雑困難にしてまで金の流動隠そうとしてるンですから、それに触るなんて俺の国だけならともかく、アメリカとかに消されそうだし……」

 

 結城司令官はかなり前から財産の事を認知していた。彼の本国にとって重要である為、その動きの一部を監視する役目を受けている事もあるが、隠し財産の存在を知ったのは偶然である。

 

 これらのキャッシュフローの正体は、最終的にアメリカ政府が主体となっている不特定多数の企業による、日本海軍関連の企業株の”動向”だった。

 

 原則的に、国が直接軍関連の株の買収を許さない政府の目を掻い潜って保持しているものだったが、その中には結城司令官が支援するフィリピン政府を含めた、数多くの政府が参入していた。

 陸軍もそれに参入しており、また彼らも海外からの支援と投資を受けている。もちろん直接ではない上、各国もまた各国にお互いの影響力を強めるためにしている事なので、ある程度は許容範囲であると、誰もが理解している。

 陸軍は、これらの金の動きの一部の管理を日本国内で任されるほどの支援を受けているが、売国奴とならないための努力は数十年前からしていた。

 トレーダーやファンドマネージャーなどの支援により、少ない資金運用と節約を数十年かけて海軍やアメリカ企業への投資に使った結果、ある程度の資産にまで膨れ上がらせることには成功したが、未だに海外の流入力が強い。

 

 日本海軍も、空軍ですらやっている事の猿真似を陸軍単体で金を回した所で、それで海軍転覆はおろかサポタージュもままならない……というのが、後の宍戸司令官の感想である。

 

 しかし作戦を遅らせる程度の事は可能である。海外の助力を求めれば、サポタージュレベルにはなる。

 連隊長は、元陸軍元帥の従兄弟である事もあり、この重要な任務を任されているのだが、流石にこの時期に深海棲艦教から受ける事は想定していなかった。

 

 連隊長の脳内のスケジュール帳には、長崎にある深海棲艦教のアジトを突き止め殲滅し、同時に重要人物である宍戸司令官を陸軍基地に呼び止め、一連の事件の関連性と、より有益な情報を吐いてもらうという大胆なイベントが書かれてある。

 あのコンビニを襲撃した一人の狂信者は、遅れて7人を連れ、地下にあるデータベースにアクセスしようとした計画をだったらしいが、結局逮捕されたのは実行犯ただ一人だった。

 その情報から察するに、遅れてくる7人とは、あの艦娘たちと宍戸司令官だったのではないか……沖縄への作戦、軍拡、編成を進めている中で、多少ヒステリックになるのも無理はない。

 

 表には出されない、刻一刻と変わる外部の事情などは、一番近場にいる、それも半ば外国のスパイのような形で所属している結城司令官に聞くのが一番だと考えたのが、今回電話をかけた理由でもある。

 

「フィリピン政府つっても、俺が支持しているのは本国を守ってるフィリピン政府であり、危ないからって事実上中国内陸で亡命政府作ってるようなスカポンクソザコじゃないッスね」

 

 現在、政府はマニラから隣のケソンの内陸部分に移ってはいるが空襲の激しく、議員のほとんどは中国、及び台湾で安楽している。人口が一億を超える国民全員がそれをなせるはずもなく、依然として死人が絶えない状況下にいても平然としている権力者に対して、怒りの目を向けている軍人は彼だけではない。

 

『正当な政府は彼らだ。貴様に金の情報を与えているのも、中国にいる大統領ではないのか?』

 

「自分たちだけ安全な場所にいる議員等か、危なくても国民のために命張るフィリピン軍か、どっちが正当かなんてのは平和になった後で国民が決めるッス。それに、その金の情報は元々俺が自分で探って情報仕入れたんで」

 

『何れにしろ宍戸司令官に話してもらえばいいだけの事だ。貴様、自分は関連がないと言ったが、相違があればどうなるか分かるな?』

 

「ふ、二人きりのヒミツを暴露したセキニンを取るなんて……あ、男同士だとキモいッスねェ! ヴォエッ!!!」

 

『コッチこそ願い下げだボケェッ!!!』

 

 電話を一方的に切られた結城司令官はベッドで横たわり、毛布に包まりながら愉悦感を味わっていた。

 

 八丈島作戦中に、作戦の開始による海外の政治、軍事、経済的の動き方を記録し、情報を処理してはいたものの、結局は使われる事のなかった情報屋としての腕は一流である。

 

 人脈も相応にあり、陸軍少将程度になら軽口を叩けるほど、その人柄は愛されている。

 陸軍の内部事情を探る為にホットラインで陸軍少将と、陸軍の隠し財産の事を15分ほど話していた事が、結果的に彼の元部下である斎藤大佐に伝達し、それは宍戸大佐にまで及んでいる事に、結城少佐は気づいてない。

 

 しかし、何れにしても親友の危機であることには間違いなく、彼はパソコンを開いて電報を送る。

 

 連絡先は宍戸司令官の個人メールなど多数あるが、その中でも、以前試しに送りセキュリティー面で盗聴、盗視の可能性が低いのを確認した警備府宛に送る。少なくてもそちらのほうが読まれる可能性が高く、そして何より個人メールだと自分が送った同人誌の下書きメールと感想で埋もれるかもしれなかったからだ。

 

 送信されたメールが彼の目に届く事を願い、結城司令官は再びベッドに寝転がり、瞼を閉じた。

 

「……ん? え、もう返事来てンの!? 何時もは既読無視とかJKみたいな事してんのによォ!? オン!?」

 

 ”電文による忠告、感謝する。その詳細は電話で話したいのだが、よろしいかな?”

 

「なんでこんな固っ苦しい返事なンすかね……」

 

 しかし盗聴の可能性があるので、直接会って話すとだけ返信し、再度頭をベッドに下ろす。

 

 と同時にまた返信が来た。

 

 ”分かった、では貴官の方からこちらに出向け。この件に関しては明石海軍次官も興味がお有りの様だ。出向く際は、明石海軍次官のスケジュールに合わせるように。明石海軍次官のスケジュールは……”

 

「……ん?」

 

 明石という名前を聞いた結城司令官は頭が真っ白になり、白目を剥き、オットセイのような奇声を上げる。

 

「アッァッァッァッァアッァァァァアア!!!」

 

「何事よ!? っていうかいつまで話し込んでるのよさっさと執務に戻りなさいッ!!! っていうかなんて顔してるのよ!? 阿久根でアクメ顔!?」

 

「え、何それ……?」

 

 

 

 ……あのスケベ次官が一緒ォォォォヤッッホオオオオオ!!!

 

 


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