俺の名前は宍戸龍城!
高校に入って一年ぐらいの、元気でオ○ニーのことしか考えてない、ごくごく普通の男の子だ!
日課にスニッカーズを食べながらアダルトサイトでオカズを漁ってる思春期真っ盛りの俺は、政治的思想?大人同士の醜い争い?派閥?
なにそれってかんじ?
「宍戸くん、現実から目を逸らそうとしない」
「はいすいません」
海軍派閥の保守派と革新派。
将校、海兵らの集合的無意識が心内の炎を燻らせていた。
磯風の内容によれば、幼年学校から鎮守府勤務の将校に至るまでの軍人たちに、保守派と革新派という二つの派閥が認知されたとのこと。
これはつまり、二つ派閥が存在していることがついに海軍中に知れ渡る事を意味していた。原則的に派閥は争いを避けられない性質であるがため、どれに属するのかを決める奴らが早くも出ているらしい。
これは今後の海軍の行く末、しいては日本軍と日本政府の国家方針に関わる問題な為、関心を持つのはもちろんだが、これに加わる理由は昇進に繋がるかもしれないーーという、とても安直なデマが広がっているのが原因かと思われる。
元気に食堂で将校艦娘達が補給を行う中で、俺は先延ばしにしていた案件が直に迫って来ていることに対してムズ痒さを覚えていた。
簡易的な状況説明で行くと、海外の積極進出を目論む革新派が台頭し始め、それ以外の将校が保守派に位置し、明確な仕分けがされそうになっている。
「……まさかたぁとは思うけど、知らんかった、ってわけじゃないじゃろ?まさか提督さんが時勢も読めんアホなわけないもんな?」
「いや、知ってたは知ってたんだけど」
「あははっ!そうだよね!鈴谷たちの提督がそんな空気の読めないおバカさんなワケないって!提督はいつも一歩先を見てるって言ってたじゃん!ね、綾波!」
「そ、そうですよね!司令官さんがそんなポジ仕込まれた雄豚さんの脳味噌以下だなんて、そんなのありえないですもんねっ!」
「あぁ、俺は常に時代を一歩先に進むインテリをハンサムナイスガイさ。だから見すぎてたまに近くにある事を見落としちゃうんだ。だから、まさか綾波ちゃんのそのフレーズを口にするとは思わなかったよあははは、綾波ちゃんは今後BL読むの禁止だぁ!!」
やばい、綾波ちゃんの趣向がマイルドからハードになりかけてる。そうやってしがみついてもだめだよ綾波ちゃん、デトックスのためなんだから。
自由と権利はとても大事だけど、規制の大切さも改めて理解してしまった。
「それでどうなの!?あっち!?それともそっちのほう!?」
「鈴谷は派閥の名前すら覚えてないじゃん」
「私は覚えてますわよ!」
「変な所で張り合うなよはしたない……俺は誰にも属さないよ」
「「「えぇ〜つまんな〜いっ!」」」
「お前たちさ、派閥とか争い事に首突っ込むなって、誰でもいいから教わらなかった?ねぇ?」
「僕は面白いことには全力で突っ込めって教わったよ」
「お、それ誰に習ったか知ってるぞ!白露さんだろ!?」
「あったりー!」
よし、今度からは言論、自由、そして権利を統制しよう。一時的な独裁は劇薬だが重病を治すことができる薬にもなる。
「そんな派閥争いがあるのなら、その方面の指導者の意見がグループの総意になるのがセオリーだけど、整工班の私達はそれでいいわよ」
「おいおいユウバリィ、丸投げかよ?」
「でもみんな賛成しているわよ?ね?」
「兄貴の征く道は我らが征く道ですッ!」
「そうでっち!ゴーヤは24時間いつでも何処でも働けるでっち!」
頼む、お前は休んでくれ。
「自分ら経理科……じゃなくて、主計部にはあまり関心の無い話なので、特に押しとかはないですね……」
「補給班からもです」
「軍医部も同じく。強いていてば給料を増やしてくれる方を選びますが」
「当たり前だよなぁ?ハァ……で、艦娘の皆さんは?」
「中将がいいです。革新的な思想をお持ちの中将を推します」
「えー?不知火あのメガネの人がいいの?あのカイリューみたいなお腹してる大将さんの方がいいと思うけど……」
「うちはハッキリ言ってよぅわからんけど、どっちも同じとちゃうん?」
ものの見事にバラバラなんだけど。
「で、どうするんですか!?あっち!?それともこっち!?」
「大か中かを選ぶだけじゃないですか!なにをそんなにクヨクヨしてるんですかぁ!」
「え・ら・べー!え・ら・べー!」
提督ならどっちにするか、早くも大統領選挙みたいな雰囲気になっている。男女共にキラキラ目を光らせている以上、提督として答えないワケにはいかないけど、こういうことが起きたら宥めるように中将が直接話してまで言われたんだから、俺の答えは一つしかない。
「派閥には入らない中立路線です。この要港部の司令官としてお前たちに命令する、これ以上この話題を持ち上げるな」
「「「えぇ〜〜!!」」」
「俺に任せるッて言ッたの誰だおいッ!?この司令官様に逆らう者はァ酒池肉林の餌食にするぞォ!!」
「し、しゅち……っには反対ですけど!司令の言うことは正しいと思います!!」
あれ、あの親潮が珍しく賛同してくれてるぞ?
「派閥争いなんてだめです!首を突っ込んだところで返り討ちに遭うだけです!そもそもそんなデタラメな派閥あるわけないじゃないですかぁ!」
「親潮の言うとおりだァ!派閥なんてない!だからこの話はやめ!終わり!閉廷!みんな解散ッ!」
「まだ食ってるんだから解散はだめでしょ?」
「そうだった、ごめんちょ」
親潮と俺の簡潔な名演説により将校達は自分の席に戻っていく。まだ若干不満げのある顔立ちだが、これ以上コトを荒立てるクソ野郎にはファイナルデスティネーション・ネービーダウン(ハリウッド)見せるぞ。あれめっちゃ怖いんだぞ。
「頼むから事を荒立てないでくれよお前らァ。ただでさえ親潮ちゃんっていう中将からのお目付け役が居るんだしさ……」
「な、ななななんで分かったんですかぁぁぁ!!?」
親潮のオーバーリアクションに、再び俺に注目が集まる。黒潮が「なんや、親潮もそんなおもろいリアクションできるようになったんやな」とほざく。そして依然として親潮はショックを受けたような顔をしている。
「え、な、なんで分かったんですか……?ま、まさか定時連絡を忘れたから中将が私のことを売って……こ、こんなケダモノに、この親潮をぉ!!」
「あの、ケダモノってなに?俺は女性に対しては世界一優しいし、別に中将が君を売ってなんかないよ」
「「「え?」」」
時雨たちさ、頼むから俺のことを否定するのやめない?
「理論的に考えて?中将と一緒に話しました、承諾しました、すると突然親潮が着任しました。この流れで思う事は、あぁこれは目的達成のために俺の弱みを握るためのハニートラップなんだな〜って、普通思うじゃん」
「は、はははハニートラップ……っ!」
日本人好みの清楚そうな顔で若干エロい女の子横してくるのってそういうことだと思うのって俺だけ?そう思って危うく親潮の部屋に行きそうだったじゃん、危ないあぶない。
「宍戸くんだけだと思うよ。あとハニートラップに自分から引っかかろうとしたね殺すよ?」
「うるせぇ!!エロい女の子がハニートラップしますぅ〜!とか誘い受けしてきたらそりゃ食べるでしょ!?」
「サイテーです宍戸さん!見損ないました!ふんっ」
「春雨も怒り?ますよ!?どうせだったら春雨を食べてくれればいいのにぃ!」
「なんでそうなる!?」
「バレてしまった以上は……死ぬしかありません」
「あ、じゃあ一回ヤらせて。どうせ死ぬんだったら妊娠とか関係ないでしょ?こう!バックで!こうやらせて!」
「「「…………」」」
時雨はトンカチ、村雨ちゃんは謎の粉、そして春雨ちゃんはナイフを取り出していた。臨戦態勢もできないまま俺は蹂躙され、艦娘たちに精液を吸い取られる毎日を送るのだった。
勿論、俺がこんな暴言を言うはずがない。
「いや、そうじゃない。親潮はそのまま中将の仕事を続けていいんだ」
「で、ですが……」
「別にお目付け役でもいいじゃん!現に俺の役に立ってくれたし!スパイだろうがなんだろうが、親潮がいれば安心なんだよ!」
「で、でもぉ……!」
「黙っててあげるから。それに、君の仕事はうちらの要港部ではなくてはならないものになってるんだ。君がいないと困る……だから、これからもよろしくな?頼むよ」
「……優しいんですね、司令はっ」
「当たり前だろ?お前の司令だぞ?」
「司令……」
「親潮……とりあえず、このあと俺の私室まで来なさい。いろいろと、蜂蜜罠の事まで、手とり足取り胸取り、教えてあげるからさ……グヘヘェ……!」
「「「…………」」」
時雨はトンカチ、村雨ちゃんは謎の粉、そして春雨ちゃんはナイフを取り出していた。
……あれ、何を間違ったんだろう?違う選択肢を選んだのに、え、やめて時雨──