整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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新たな仲間、散らされる後輩

 

 ー執務室。

 

「君たちは今日より、この舞鶴第二鎮守府の所属となる。最初は色々と戸惑う事もあるだろうが、そう言う事を全て引っくるめて、君たちの今後の活躍を期待しているよ」

 

「「「ハッ!」」」

 

「……そして、君たちは宍戸大尉からの誘いでこの鎮守府を志願した、と言う事で間違いないね?」

 

「「「ハイッ!」」」

 

「……ウムッ」

 

 深く頷いた荒木大将は、各鎮守府を転々と周りながらプログラムへの候補者を見極め、育成へのルーティーンやのなんやのチェックと指示をしていたとの事もあり、かなりお疲れであると蘇我提督は言う。

 無口だと思っていたけど、そりゃ疲れるだろうな。

 俺だったら疲れてお地蔵さん状態。帽子深く被って、寝てる事を悟られないようにして、一瞬でもいいから仮眠する。

 

 俺は春雨ちゃんと夕張、そして綾波ちゃんを集らせ執務室へと出向き、荒木大将からはオッケーを貰ってとりあえず第一関門突破らしい。

 他にも鎮守府に所属してきた人がいるけど、全員整備工作班入りの野郎共。

 

 こう言う時期の入隊者、転属、卒業生の割合って実は、主に舞鶴港湾基地に偏る事になる。

 

 当然だ。ビッグな船動かすにはラージなアマウントなピープルが必要だもんね。

 深海棲艦倒すのは艦娘が効果的ってだけで、集まってる群衆を見つけたら即原子空母とかイージス艦とか動かして、ミサイル集中砲火で軽く100隻消し飛ばすもんね(※100隻は本当に上手くいけばの話です)。

 陸で言えば艦娘が兵士で、艦船が戦車やヘリコプターみたいな物と言えば分かりやすいだろう。もっとも、実際は戦車一台の方が100倍安い。船は動く要塞だから、当然と言えば当然か。

 

 

 

 ー工房。

 

「俺がここの班長だ!そしてそれに続く愉快な仲間達!以上!」

 

「班長そりゃないッスよ〜!」

 

 愉快な笑いを見せる整備工作班はいつもの和気あいあいとして雰囲気で新入社員ならぬ、新入隊員のみんなを歓迎する。

 和気あいあいとした雰囲気が本番となると、一瞬にして殺伐としたキリングマシーンなアトモスフィアとなるのは後に分かるだろうな新人諸君。

 

「じゃあ宍戸、新人の面倒任せたぞ」

 

「了解です……俺はここの副班長だ。学校でもう行程は習ったと思うけど、ぶっちゃけこれが本番だからミスがないように復習しながら、工房内を案内するぞ」

 

「「「はい!よろしくお願いします!」」」

 

 班への入隊者は全部で7人。臭い男が殆どだが、その中には知っている顔もある。

 

「貴方が副班長だったなんてね」

 

「俺、結構偉いぜ?惚れちゃった?」

 

「ふふっ、それでおちる娘は少なくないかもね?これから宜しくお願いするわね、副班長」

 

 夕張、彼女は整備工作班へ志望した。学校では既に軽巡クラスを獲得し、整備工作課程をも手にした彼女は、正にエリート。

 綾波ちゃんは実力テストでトップクラスを取った優秀な艦娘らしい。効率的な砲撃と爆撃による攻撃力が強みだとか。勿論新人ではあるものの、このまま行けばエースも夢ではないとか。

 春雨ちゃんは……極々平均的であるらしい。でも春雨ちゃんはあの時雨の妹であり、村雨ちゃんの妹でもある。勇気を持って艦娘として志願してくれた事を、部外者ではあるものの、彼女を誇りに思う。

 

「つーわけで、余って使わなかった弾薬はここに置く。書かれてある装備別に入れておいて、次の出撃には優先的に使うこと。出撃はいつも忙しいから新しい弾薬を平行して作るといいぞ」

 

「「「はい!」」」

 

「あ、そこのお前たち!出撃所の片付けは後でやってもいいぞ、この後も少しだけど出撃する予定入ってるから」

 

「「了解です」」

 

 新人の教育も兼ねて、班へアドバイスを平行してやる。みんながそうやってお互いを支え合う事で、仕事場が初めて円滑になる。

 演習場では、春雨ちゃんと綾波ちゃんが他の駆逐艦勢に指導されてるのが見える。

 

 鎮守府に配属された新人の中には転属した人とかも居る。でも、一人でも卒業生とかがいると全員に教えなきゃならないので、決して教えるのが楽とかは無い。

 

 そして、ある程度の中には場所とか仕事場の流れの云々を教えたあと、

 

「着任早々悪いんだけど……一つ君たち仕事を頼みたいんだけど、いいかな?」 

 

「「「ハッ!!」」」

 

「いい返事だ、実はつい最近改二になった娘がいるんだ。名前は熊野で、攻撃型軽空母って言う最新式の装備で戦うんだ。彼女の出撃までの整備を行ってほしいんだ」

 

「「「え!?」」」

 

「あ、あの……それって私達新人が行っても大丈夫なのかしら……?」

 

「攻撃型軽空母って日本海軍でも本当に新しいんだよね。だから君たちが学校で習った普通の重巡とか空母とは構造が微妙に違ったりするから、整備の基本も兼ねてちょっと新しい事にも挑戦してもらいたいんだ」

 

「「「は、はぁ……」」」

 

「まぁ彼女も一回ぐらいしか装備したこと無いし、出撃と言っても演習だから彼女の練習も兼ねてって所が強い」

 

「なるほど……新しい装備……新しい艦種……燃えてきた!」

 

 夕張に続いて、他の野郎共も振るい上がってる。やっぱり整備する人ってそういう事に興味なくちゃやってられないよね〜。

 俺も初めて鈴谷の装備整える時ちょっと興奮したもんね。

 

 あ、そういえばあの時、

 

 

 

 『宍戸っち〜もう出来た〜?』

 

 『まだできてな〜い。あと少し〜』

 

 『とかなんとか言って、鈴谷の甲板ニーソを堪能してるんじゃないの〜?にひひ〜』

 

 『ば、ばか!そんな事ねぇし!』

 

 『ま〜たまた〜!素直になった方がいいんじゃないかにゃ〜?』

 

 『お、俺はただ!鈴谷のパンツの中がどうなってるか想像しながら見てただけだ!』

 

 『ちょ、それ最悪じゃん!何やってんの!?』

 

 『うるせェ!クッソ短けぇスカートが鼻先10センチの所にあったら、漢は屈まずにはいられねぇんだよォ!ホラホラ、とっととおパンツの中のメンテナンスさせろよオラァァァ!!』

 

 『良く聞いたらスカートじゃなくてパンツの中!?い、いやあああああ!!助けてぇぇぇ!!』

 

 『何事だい!?』

 

 『し、時雨!?シャワー中じゃねぇのかよ!?』

 

 『浴び終わった所さ!鈴谷へのセクハラ行為で有罪!前○腺ぱーんち!』

 

 『あ、おれ死んだわ』

 

 

 

 二人きりの出撃所で、あんなこと言われたらそりゃ襲うでしょ?いや冗談だったけどさ。

 それよりも、時雨のパンチすげー痛かった。ケツの中に食い込むっつーか、内部通り越して股間にまで浸透して、なんか今まで味わったことが無い感覚だった。

 この事は絆により闇へと葬り去られたが、鈴谷は相変わらず間近でのメンテナンスをさせてくれない。いつもは普通に話しかけてくれるのに。

 

 

「腕の装備は軽空母というよりかは軽巡とかその辺のと似てるわね……」

 

「流石は夕張。元々は重巡だからそうなのかもね。しっかしこの武器、ベルギーのP90を彷彿とさせるなぁ……」

 

「脚の艤装の弾薬はどうするんですか長月さん?」

 

「後ろにあるハッチにぶち込むといい」

 

「こ、こちらはこれでいいんでしょうか時雨さん……?」

 

「大丈夫だよ、あとそのショルダーバッグみたいなやつは艦載機放つから、特に注意してね」

 

「ショルダーバッグではなくカタパルトですわよ!そんなこと言われたらショルダーバッグにしか見えないじゃありませんの!?」

 

「お前も少なからずそう思ってたって事だぞ。あぁでも、戦闘しながらショルダーバッグなんて超イケてると思わない?正に、何時でも礼節を弁え、優雅で可憐な振る舞いを心掛けるご令嬢みたいに……」

 

「とおぉぉぉおぜんでしてよぉぉお!おっほっほっほ!そう考えると、ショルダーバッグの表現は中々でしてよぉ!」

 

 チョロいヤツだな。

 ここは工房から出撃所に場所を移し、熊野の艤装と装備を備える一から出撃までの行程を時雨、長月と一緒に見ながら間違ったことをしていないかをチェックする。

 新しい武器、あるいは既存の艤装の整備に関して変更点がある場合は大本営から詳細が書かれた指示、説明書が班長へ送られる。

 こう言うのを瞬時に理解するのも整備の基本だ。

 

 因みに、熊野の艤装を改二にしたのは俺たちである。鈴谷とほぼ同じなので、別段難しいとは思わなかった。

 

 俺たちには関係ないけど、家事を担当する村雨ちゃん達の班によると……その……胸がね、鈴谷と同じって訳じゃないらしくてね?新調する制服を鈴谷のデータで作ろうとしたので、村雨ちゃんがストップをかけたと昨日話題の一つで出してた。

 え、そんなの見てわかるだろって?姉妹艦で身長が同じなのに、なんで一部のステータスに差があるのかって?そういうの暗黙の了解って言うんだお?

 

「ど、どう、でしょうか?」

 

「うん、見てて特に問題は無かった。後は熊野が外にいる鈴谷と実践訓練するから、そこで支障が無かったらクリアだ、お疲れさん」

 

「「「はい!ご指導ありがとうございました!」」」

 

「よし、鈴谷が待ってるぞ、出撃してこい!」 

 

「了解ですわ!とおぉぉぉおぉおう!」

 

 みんなが見守る中、奇声をあげながら出撃する熊野はいつも通りカッコよく海面へと不時着する。

 あの様子なら本当に問題なさそうだな。そしてあの変な掛け声って人を笑かす為のものじゃなかったのか。

 

「じゃあ今日は大変お疲れ様!言い忘れてたけど、みんなようこそ舞鶴第二鎮守府へ。教えるのは明日に続けてやるから、今日は終わっていいよ。食堂の場所とかシャワー室の場所も上がってる先輩達に続くといい」

 

「「「ありがとうございました!!明日も宜しくお願いします!!」」」

 

 そして散開する。新人の時は自分で話しかけて、先輩達から教わる鎮守府での日常生活を身に着けさせる。だからある程度コミュ力が高くないとやってられないんだ。

 肉体的な指導をする軍隊ではイジメも少なくないから、下手に出つつもある程度は自分を保った状態で自分の仲間内を作らなきゃいけない。

 まぁウチの鎮守府に限ってそんなクソみたいな事するヤツはいない。

 

 昔、「真っ当、正当、誠実を心掛ける軍隊にイジメなんてあるわけ無いだろ!」とか言ってたヤツいるけどーー今では、深海棲艦であれ地震であれ、地域の災害に遭った子供が学校でイジメられると言うニュースを聞いたことがある。同情されるどころか、それを利用して金銭を巻き上げるなんて前代未聞な事が起こる。

 

 

 

 世の中、何があるか分からない。

 

 それは生きている全ての人間に対する言葉だ……今の俺の状況みたいに。

 

 

 

 ー食堂。

 

「つーわけでここが食堂だ」

 

「スゴイですね……」

 

「あぁ、総人数の割には大したスペースだろ?つっても、陸軍や舞鶴港湾基地は人数が倍はいくだけあって、あっちはこの数倍は大きいだろうけど」

 

「大阪警備府も結構凄かったです」

 

「そうだろうな」

 

 一人仲間外れな奴を連れてシャワー室や食堂への案内をさせる。電光石火で仲良くさせないといけないから、趣味が合いそうな奴らとさっさと食事させる算段だが……新人の目線の先には、時雨たちの方を見てる。

 村雨ちゃんや春雨ちゃんも居て、いつものって感じの食卓だ。

 

「あの娘達がどうかしたか?」

 

「いいえ、とても麗しいお嬢様方が居たもので……」

 

「だろうな?……おいテメェこのクソ野郎ッ、まだァ懲りてねェのかァ……?」

 

「い、いいいいいえ!!も、もう彼女には一切触れませんからああ!!」

 

 元春雨ちゃんの憲兵ストーカー、そして現舞鶴第二鎮守府整備工作班所属、名前は……【月魔(つきま)】とか言ったか?

 妄想型迷惑クレイジーサイコヤンデレクソザコカスナメクジのくせにやけにかっこいい名前付けてんじゃねぇかよ?あん?

 

「つーかなんでこの鎮守府に配属されたわけ?憲兵団から整備工作班に入るための課程はしていたのは分かったけど、なんでここなン?あン?死にたいの?」

 

「お、落ち着いて下さい!!お、俺はもう心を入れ替えたんです!それにこの鎮守府を志願したのは、兄貴と姐さんから色々と学ぶ為なんです!」

 

「兄貴って俺のこと?」

 

「はい!」

 

 そして、姉貴とは時雨の事らしい。義姉さん的な意味じゃなくて、姐さン。

 こいつの目には俺たちがかなりカッコよく映ったのか、あくまで春雨ちゃんじゃなくて、俺たち狙いで来たという。

 男でありながら春雨ちゃんからあれほど慕われる人望、あの状況でも春雨ちゃんの意見を尊重する所、そして時雨の姐さんの仲間思いな所……そんな魅力に、ただ一人の人間として惹かれた。

 そう、供述しており。

 

「春雨さんへの未練は断ち切りました!これからは、未熟な自分を漢として成長させるために、姐さんや兄貴を見ながら勉強していきたいと思います!」

 

「お前頭でも打ったの?」

 

「はい!両親にあの時の事を素直に話したら頭、ボコボコにされました!」

 

「あぁ……」

 

 素直に話すほど馬鹿正直って事は、本当に心入れ替えてるの?こういう奴ほどストーカーとかにハマり易いからな。

 純粋にストーカー行為をしてた、とかすげー質が悪いんけど。

 

「俺は兄貴に言われた事、時雨の姐さんに殴られた事、そして春雨さんの優しさに当てられ、陰湿だった俺自身が嫌になったんです……漢としての美しくなるため、これからも宜しくお願いします!兄貴!」

 

「まぁ(問題起こしたら即切ればいいし)宜しく。それよりお前、今度は時雨の事好きなの?」

 

「い、いいえそんな!俺なんかが好きになれるレベルじゃないですって!それに、姐さんは兄貴の女性じゃないんですか?」

 

「俺?ないってそんなこと。それにさ、たしかに美少女かもしれないけど、今は顔が良くても股に付いてるかも知れない世の中なんだぜ?」

 

「付いてる方がお得じゃないですか!」

 

 ん?あぁ、君ってそっちもオッケーなのか……ハハハ。じゃ、あそこの紳士達と食事させて、特別な稽古付けてもらうか!

 

「それじゃあ、あそこにいる人達と食事してこい。俺が、お前の言う男♂と認めている三人衆だ」

 

「あ、兄貴が認める、漢……!」

 

「そう、男♂だ。あの人たちと楽しく食事して、まずは自分の中にある男♂の何たるかを、自分自身で見極めてこい」

 

「わ、分かりました!自分、漢になってきます!」

 

 そうだそうだ、そうやって勘違いするような事言いながら走って、散ってこい。

 鬼畜だと思うだろう、でも俺は春雨ちゃんにした事を許したわけじゃない。あと、「ちょっと襲われた」ぐらいの制裁を先に受けさせないと、時雨が暴行ラッシュで殺すかも知れないからさ、これも優しさの内だと思ってくれ月魔くん。

 

「つーわけなんだ。だから時雨はその拳とレンチを手から落として、感情をフワフワさせようか。ほら、パフェの上にあるホイップクリームみたいにさ」

 

「大袈裟だよ宍戸くん。僕はあと一発ぐらいサンドバッグになってくれてもいいと思っただけだよ」

 

「その沸上がってる感情、に、落ち着けと言ってるのだ時雨くん、頼むから。あと村雨ちゃんもその得体の知れない粉を隠すんだ、いつものように俺に微笑んでくれ、いやマジで頼む」

 

「む、村雨姉さんに時雨姉さん!わ、私はもう大丈夫だから、ね!」

 

「「……春雨がそう言うなら」」

 

 と、相席する時雨と村雨ちゃんは矛をしまう。村雨ちゃんは食いもんに洗剤でも入れようとしたのか?やっぱり怒らせると怖いぜ。

 

 時雨はまた俺のために、レタスとキャベツと言う、水道水とミネラルウォーターみたいな組み合わせの一品を用意してくる。正直肉が食べたいけど、昨日大きなハンバーグ食べたから今日は菜食中心にしろと時雨が言うんだ。

 卵も栄養バランスガイドでは肉類に分類されると聞いた時は、腹が抉られる思いだった。力仕事してるんだからもっと食べてもバチ当たらねぇだろうが。

 

 それはともかく。

 

『や、やめてください!漢を教えてくれるんじゃなかったんですか!?』

 

『ジタバタするんじゃねぇよこのカワイコちゃんがよォッッ!』

 

 すげー事になってるな。でもこれで月魔との憂いは払われた筈だ。

 

 それより、ハムスターみたいにパンを頬張る春雨ちゃんは可愛いな。小動物的な可愛さは隠そうとしても滲み出るもんなんだ。

 一生懸命りんご飴を舐める幼女を見た事があるだろうか?あらゆる方向からペロペロペロペロ……まったく、無垢って最高だぜ!

 

「ご馳走さん、じゃあ俺部屋に戻るわ」

 

「また例の勉強ですか?」

 

「そうそう」

 

 結構前に提督から、海軍大学校の予習及び入試合格のためにとかなり分厚い本を渡されたのだ。中はぎっしり色々な知識が詰まっていた。

 憲法、勅令や高級将校の心構え、大隊や連隊の運用法など、クソみたいなお勉強タイム。でも意外に読みやすくて、興味のあるものが多いから読んでて特に苦になる事は無い。東京大学に行くわけじゃないんだから、気楽に考えばいいだろう。

 本気で考えると死にたくなるからな。

 

「提督になるとか言ってるよ?医務室につれて行ったほうが……」

 

「は?ふざけんなし?兵学校主席舐めんじゃねぇぞ?」

 

「突然の提督になる宣言は流石に草を禁じ得なかったんだけど?あのレストラン入るときいつも思い出し笑いしちゃうんだけど、どうしてくれるの?」

 

「常に笑ってるキャラで通せばいいじゃん」

 

「宍戸くんがりんご飴を一生懸命舐めてる幼女を見てる時じゃあるまいし……」

 

「な、なんだと!?て、ててテメェ俺がロリコンだとでも言いてぇのか!?」

 

「お、お兄さんが……ペドフィリアだったなんて……!」

 

「「「そこまでは言ってないです」」」

 

 春雨ちゃんが……そんな汚い言葉を知っていたなんて……!(※医学用語でもあるので、必ずしも汚いとは限りません)。

 

「でも本当にどうしちゃったの宍戸くん?何かあったの?」

 

「ん〜正直に言うとスカウトされた。そして、なるかならないかって言われたら成るって答えただけ」

 

「は?答えになってないよボケカス?」

 

「時雨くんそんな暴言吐きまくったら本当に男の子になっちゃうよ?」

 

 そして、頭上にまたスパナが。

 

「だからアブねぇっつってんだろうがクソアマァ!!」

 

「女の子にそんなこと言うもんじゃないっていつも言ってるでしょ!ふん!」

 

「ま、まぁまぁ……でも、流石宍戸さんですね!」

 

「お兄さんスカウトされたんですね……素敵です」

 

「ありがとうね村雨ちゃんに春雨ちゃん。提督になったら二人には毎日特別ボーナスだぁ!」

 

「「わぁーい!」」

 

「僕の傀儡は本当に優秀だね。傀儡らしく給料を僕に全額渡す準備はできたかな?」

 

「草でも食ってろ」

 

「「グルルルルル!!」」

 

 

 

 春雨ちゃん達が着任しても、いつも通りの鎮守府だ。

 その後は綾波ちゃんや夕張が相席してきて、個々の談義に花を咲かせる。勿論今日は出撃はしなかったが、二人の練度はかなり上々らしい。

 

 特に綾波ちゃんが有能らしく、攻撃に特化した優秀さを兼ね備えた彼女は、練度と功績によっては近いうちの改二実装も夢ではないと言う。改二にするならば、攻撃力特化の艤装が付いてくるだろうな。おっとり感溢れる彼女からは想像つかないけど。

 

 

 

 出撃やらなんやら、相変わらず忙しくも仲間同士の友情を絆が確認できる職場でスパナを投げ合う中、あっと言う間に二週間が過ぎた頃だった。

 

 


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