整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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第二次沖縄作戦 み、みんな! 進軍激しくしないで!

 

『うるさいですかも……』

 

「キャアアアアアアアア!!!」

 

 深海棲艦の悲鳴が無線越しで聞こえた。

 

『はい、徳之島周辺海域終わり、お疲れ様でした』

 

「あ、ありがとうございました……」

 

 準備が整い、いよいよ反攻作戦が発動されたのだが、『早く終わらせないと二週間の有給休暇の元が取れない上に、長引かせると深海棲艦が増殖して海戦が泥沼化してしまうのでは』という懸念の声があり、結果、俺と同期たちは予定よりも素早く前線を押し進める事に決め、見事成功した。

 

 しかし大艦隊を殲滅された深海棲艦たちはなんだか弱体してるみたいで、主力部隊のみんなの緻密に計画された連撃は敵艦隊にイタイイタイなのだった。

 

 俺の出番がない。

 

 俺の出番がないんです。

 

 楽できて最高です。

 

 普通は一つの島に駐留して、そこから慎重に、その時の状況に合わせて戦術計画を立てながら進行するのがセオリーだが、秋津洲さんやオイゲンさんと、二人が指揮する艦隊や色々な所属の艦娘たちが、止まらずに周辺海域を制圧しに行ってるから尋常じゃない速さである。

 主要な奄美に臨時拠点を設置して、俺はここから報告を待つだけの存在となっていた。当然、前線の総指揮を取る斎藤准将も同様である。

 一度だけ止まった諏訪之瀬島にも艦隊を配備しており、後方支援艦隊は突出している前線の艦隊が止まらないように、更に広範囲の海域で守りを固めている。

 

 あの二人ってあんな攻撃型だったんだな、知らなかった……やっぱり、やらせてみないと発見しない才能って多いと思う。

 でも勘違いしてもらっては困る。彼女たちは本来、俺と同じ提督であり、これは一時的に彼女たちの艦娘としての力が必要だっただけであり、二人も手を貸すのはまったく惜しまなかった……少なくてもそう聞いてる。

 

 そして、沖縄に駐留する陸軍部隊の輸送も既に準備中である。

 俺も艦隊全体の調整とまとめ役としてみんなを取り持っているが、そんなのは普段やっている事と変わりない。

 進行は盤石だった。

 

『沖永良部島制圧かもッ!! ていうかほとんど敵いないかも!!』

 

 あそこまで行って8隻ってまぁ普通にいい数なんじゃないですかね?

 というかなんでこんなに張り切ってるんだろう?

 あと島の安全を確保する哨戒だからそこまで行かなくてもいいんだけどなぁ……。

 

「りょ、了解です、すぐに駐留艦隊を設置します……トホホ……みんな強いからって張り切りすぎなんだからぁ……どうにかしてあの熱を冷ます事できないかなぁ……」

 

「別にその必要はないのではないか? 順調に進んでいるのであれば、我々の艦隊が出しゃばる事なく任務を終えることができる。親潮、陸軍沖縄駐留部隊をこちらの島に移動するよう伝えてくれ、今なら大丈夫だろう」

 

「了解です!」

 

「ハァ……ん?」

 

 もうすぐで夜なのに、一人の艦娘から眩しさが漏れている。

 

「よいしょ……よいしょ……」

 

 た、大鯨さんが後方支援艦隊参謀なのに、主砲を上げ下げして砲台運用練習してる!?

 

「ふぅ……こんなものでしょうかぁ……大鯨も、皆さんのお役に立てるように頑張らないと……」

 

「大鯨ちゃーん!」

 

「ひゃぁぅ!」

 

「た、大鯨ちゃん! ごめんよーッ! 大鯨ちゃんは毎日俺たちのために後方支援頑張ってくれてるのに謎の負い目を感じさせちゃって……ッ! ハフッ! ハフッ! 大鯨ちゃんの汗だく黒ストふとももいい匂い!」 

 

「に、匂いを嗅がないでくださぁい!」 

 

「ご、ごめんね大鯨ちゃん……!」 

 

「べ、別に、艦娘が主砲の訓練をするくらい普通です……。それが艦娘のお仕事なんですから……。それに、私は主砲の扱いが下手で、あんまり戦い慣れてないから……」 

 

 大鯨さんはもう艦娘として戦う必要ない地位にいるんだよなぁ……まぁいいや。

 

「そ、そんなことないよ! 大鯨ちゃんのその気持ちだけで、ワイや艦隊のみんなは十分嬉しいんだよ! あっ、そ、そうだ! 大鯨ちゃん両腕でオッパイ挟んで! 」

 

「こ、こうですか?」 

 

 むにゅ。

 

「そう! それじゃあ今からその隙間にオマジナイするからね! 大鯨ちゃんのやわらかおっぱいにドッピュするからね! ちゃんと受け止めてね!」 

 

「えっ、えっ?」 

 

「ウオーッ! 大鯨ッ! ぷにぷにおっぱいに出すぞ!」

 

「あ、宍戸くんだめえええええ!!! 大鯨さん両手を勢いよく突き出して宍戸くんの事を止めてェェェェェ」

 

「あ、あ、はいぃ! え、えーいっ!」

 

「クッフゥ─────ッッ!!」

 

 大鯨双掌打ッ!!

 

 どっからこんな力が来るのか、死んでなかったら教えてほしい物理力最大特化の当て身が腹に炸裂する。

 吹き飛んだ俺に寄り添う一部の部下たち。

 大勢が作業の手を止めてこちらを凝視し、再開するようにと心配無用の合図を送り、村雨ちゃんの手を借りて立ち上がろうと努力する。

 

「す、すごい(攻撃密度が)濃いのが出たぁ……!」 

 

「ほ、ほんとうですぅ……で、でもなんでぇ……?」 

 

「それはね……大鯨さんの気持ちが、宍戸くんに伝わったからだよ! 大鯨さんの気持ち悪いって思いがね!」 

 

「私の気持ち……あ、じゃあそろそろ整備品の輸送船団を発進させるようにと提督にお伝え下さいっ!」

 

 「「「ハッ!」」」

 

 ふざけててもちゃんと仕事はする大鯨さん。

 

「そう! だから、テクニックなんて、二の次なんだよ! 指揮は上手い人にやってもらうより、好きな人にやってもらうのが一番気持ちいいんだよ!」 

 

「す、好きって……はわわっ……あ、あのぉ……じゃあちょっとだけ、練習に付き合ってもらってもいいですかぁ……? し、宍戸……さんっ」 

 

「もちろん! ……え、そこ僕じゃないの?」 

 

 その後、とりあえず僕と一晩中、大鯨さんのおててに砲台の持ち、撃ち方を仕込み続けて次の日の朝は起き上がれないほど疲弊していた。

 

 前衛部隊なのに余計な事に気を回して体力を消耗するとは何事か? なんて意見もあったけど、でもまぁ、その日以来、お小遣い搾りをするとき宍戸くんの耳元で「大鯨さんをレ○プしようとした」とつぶやけるようになったので、結果オーライ! 終わり。

 

「ハァ!? 俺ただ任務中だから必要以上の糖分補給できない状況下の大鯨さんのために頑張って隠し持ってきた水飴あげようと思っただけなのにッ!!」

 

「それ隠語? 君が持ってるその白いネバネバしたモノ完全にアレだよね……なんか、その……エッチなやつ」

 

「時雨さぁ……水飴ってね、こういうものなの。古くは大和国時代から作られてた伝承もあり、今でも和菓子とかに使われている、正に人類史に刻まれた栄誉ある調味料兼糧食だ。気持ち悪くもアイドルに送り付けるために無駄に精製され排出された廃棄物とは格が違うというものだ。世界を支配してきた液体に敬意を表するがいい」

 

「は? それだったら子供作るために精製される液体は人類史そのものを作ってきたみたいなもんじゃんはい論破」

 

 論破だけどなんでお前が精液を肯定してる方なのかとか、単純に美味しいものを汚物でマウントするのやめろとか色々言いたい今日この頃。

 

「お兄さん、春雨も……お兄さんの真っ白なの、欲しいですっ……だめ、ですかぁ……?」

 

「は? あげるに決まってんじゃんはいどうぞ」

 

「わーい! ありがとうございます!」

 

「あ、村雨もネバネバの欲しいです!」

 

「わ、私も司令のを……ください!」

 

「いいぜ、思わせぶりぶりなセリフでしかおねだりできない君たちのためにたんまり持ってきたからね。あとみんな見てるからエロいセリフやめろ俺が変態みたいだろ」

 

 ……おい、誰か否定してくれよ。俺が変態なのが通常運行みたいな顔してんじゃねぇよお前ら。お前らの分も持ってきたのに敬意払わねぇとやらねぇぞ。

 

 茶番を終えて部下たちに指示を出しながら、正式名南西方面艦隊第一艦隊、通称前線艦隊の総司令こと斎藤准将と状況整理をし始める。

 常設を目的とした臨時拠点は沖縄に続く三点の要所に設置し、陸軍の駐屯部隊を常設するための艦隊はこちらに遅れる形で移動しており、衣食住を整えるための兵站も輸送ルートの確立を大鯨さんと一緒に計画している。

 大鯨さんは相変わらずの裁量に抜かりの無さを上官たちに示した上、お手伝いした俺も褒められるというダブルボーナス。元々計画されていただけあって入念な準備が功を奏したみたいだが、彼女の指導力と経営力があってこそだと俺は思った。

 

 一方戦闘面では先程言ったとおり、秋津洲さんとオイゲンさんが戦線を牛耳っている。

 これも元々計画されていた戦術スタイルだが、長崎全艦隊には戦闘よりも秋津洲佐世保艦隊とオイゲン柱島艦隊の支援をするようにと命令を変更した。それが結果的に相乗効果を生んだのか、あるいは必然だったのか、深海棲艦側の戦線は瓦解している。

 

 元々あんなバケモノに統率なんて言葉が存在してるとも思えないが、戦闘備品の消耗は抑えられ、数字が浮いた。

 

 柔らかい土と森林の香りが漂い、無数に放棄された建造物はすべて蔦で覆われており廃墟的だ。それが輸送船から出されるテントや海軍基地設備数式と並ぶ光景は異様、同時に幻想的。今から行く沖縄は更にこんな雰囲気なのだろうか。

 攻略よりも、これからあそこで拠点を構えなきゃいけないと思うと気が滅入る。

 

「順調に行っているとはいえ、いつ死者を出すか分からない。しかし、出すとしたらかなりの人数になるだろう。だから、細心の注意を払う必要がある……本当に良かったのか? 何があるか分からない人生、婚約ぐらいならしても良かったんじゃないのか?」

 

 俺……帰ったら、結婚するッス!

 みたいな死亡フラグを立てる前に告白、結婚してしまえば、因果を回避できるみたいな、的外れな魂胆を作戦中に論じていた。

 

「どんだけ結婚させたいんですか……俺は生涯独身主義を貫いて生きていくと決めているんで、結婚だけはしたくないです」

 

「何故それほどまで結婚を拒むんだ!? 海軍軍人として恥ずかしくないのか!?」

 

「テメェも独身だろうがァ!? 海軍男児は妻帯者よりステータス低いみたいな固定概念の押し付けやダァ〜ッ!!」

 

 独身貫きたい主義の俺にとっては、公認のハーレム以外は眼中に無いことを教えてやらねば。

 

「ハァ……しかし、長崎艦隊には戦闘ではなく支援をしろというとはな……知っているとは思うがな宍戸? 司令官とは隷下の中に自分が指揮する艦隊がいれば容赦なく優遇するものだぞ? 一番活躍させたいと思うし、それ以外はどうしても優先度が下がる……私は度量が深い男だと思わないか?」

 

「そう……ですね」

 

 ……え、なに? 

 え、あ? 貴官は年下に褒められたいのか?

 

 キ、キ……。

 

「キモッ」

 

「ッ!? 私のどこがキモいというのだ親潮!?」

 

 代わりに言ってくれてありがとう親潮。

 

 前線艦隊司令のいうことは合っている。俺も艦隊の一翼の方針を変えるのは気が引けたが、こうするのがベストでありうまくいくと思ったから……なんて曖昧な説明を聞いた途端に方針を変える行動力と実行力はやはり海軍大臣譲りか。

 

「阿久根艦隊も指定海域を制覇したみたいッス! いやぁ〜スゲー勢いっすねぇ! これなら作戦成功は間近って感じっすかァ!? 俺、帰ったら艦娘パブに寄るんだぁ……」

 

 艦娘パブーー現役の艦娘が接客してくれると言われているが、もちろん海軍がそんな事を許すはずもないので、アングラなお店として、一部で知れ渡っている。

 もちろん実情は艦娘適正どころか年齢適正に引っかったようなBBAばかり出現するディストピアダンジョンである。

 

「簡易な死亡フラグはやめてもらおうか結城。しかし、まさか柱島艦隊があれほど従順となってくれるとは思いもしなかったがな……宍戸、貴様なにかアイツらに言ったのか?」

 

「え、なんで俺!?」

 

 確かに前の柱島ならフリーダム航海で位置情報すら怪しくなっていたかもしれないと多くの士官が口を揃えて危篤していた。

 

「提督たちは宍戸司令を信用しているのよ。あなたならなんとかしてくれるってね……ま、まぁ私もなんだけど……ふ、ふん! この五十鈴の信用を得たんだからありがたく思いなさいよねっ!」

 

 自分の司令官よりも信用になる俺ってかっこよくない?

 

「軽く秘書艦寝取られてる気分だぜェ! まったくイキにくい世の中だよ、これで俺様っちのおまん候補が810から1919になっちまった」

 

「なんで増えるのよ!?」

 

「お前ほど自由に生きてる人いるの?」

 

「宍戸くん!」

 

 元気よく指し示した白露さんの指の先には俺がいた。

 

「俺をこのスカポンと一緒にしないでくださいよ」

 

「は? プッタングエナモォ!」

 

「まぁ元々荒木大佐とお前には素直だと聞いている。うまく行っていればそれでいい」

 

 作業中の士官たちを含めて、斎藤司令は俺がなにかしたと思ってるみたいだ。荒木大佐もいつも以上に余所余所しいし。別に何もしてないのに。

 

 ただ、知り合いの海軍省人事局第一課長や呉鎮守府の幹部や、来ていた参謀補佐連中の口から「作戦を成功させないと全員散り散りに左遷させて敗因を押し付けて社会保障番号剥奪してフロリダ再集計を一人で延々とするような地獄の任務に着かせるぞ」と……ここまでキツく伝わったかどうか分からないけど、とにかく脅しでなんとか成ったんだったら結果オーライ!

 

 強いのに事情多々ある柱島艦隊にとっても、ここが正に見せ所なんだ。そのせいか、艦隊の指揮を取っている荒木大佐と彼の参謀たちはとても熱心だ。

 

「まだ気を抜くなよッ! 成功と帰還までが我々にとっての勝利となるッ! 機を逃すは愚だが、最善の結果は滞りのない全軍の冷静さが生み出すッ! そして冷静さはキッチリとした休息からしか生まれないッ! 本日の進軍はここで終わり、明日からは沖縄に上陸する……修学旅行だからと言って夜ふかしは厳罰対象だぞッ!!」

 

「「「ハッ!!!」」」

 

 斎藤司令の激励を聞いた後も変わらず、各々がテキパキと自分に課せられた任務に勤しむ。終わった人たちは手をふり上げながら任務を終えた事を上官らに伝えると、テントの中に入る。

 流星群が見えそうなソラの色に照らされながら、秋津洲さんたちの帰還を待っていた。

 鈴谷たちは女子らしくヌメヌメした土に座るのが嫌だったから艤装を展開したまま物資の上に尻を休ませている。

 他にも索敵任務に出ている艦隊と周辺海域の警戒を怠らないために編成された常備哨戒が島をうろついている。

 

「……秋津洲さんたちまだ帰ってこないの?」

 

 帰還命令を出したからもうそろそろこちらに帰って来てくるはずだけど、周辺海域にいるという報告があちらからこない。こっちからも状況報告を呼びかけているが、それでも応答は耳障りなノイズだけだと、村雨ちゃんは言っている。他にも親潮を含めた数隻が艦娘との通信を行っているが、哨戒艦隊が順調であることと、輸送艦隊が推定より40分早く到着すること以外は有益な情報はない。

 

 時雨たちを始め、彼女たちの戦闘支援を行っていた長崎艦隊のみんなは不安げな表情を浮かべる。

 

「宍戸さん……どうしますか?」

 

「こういうときはあとこういうときはあと何時間か待って、だめだったら現場の判断で見に行くかどうか調べるんだけど……どうしよう?」

 

 この島に着いてから小休止を入れていたから疲労している様子はないけど、時間的にもう休ませなきゃいけないし、それ以外だったら活動中の艦隊と哨戒任務に付く予定の予備艦娘以外しかいないしな……どうしよう。

 

「僕なら行けるよ」

 

「いや、みんな疲れてるだろうしここはもう少し待ったほうが……」

 

「「「…………」」」

 

 艦隊のみんなは上目遣いで行きたいと可愛さで訴えてくる。

 

「フフ、そんな顔をされては断れないのではないか宍戸? 行って来い、私が命令する」

 

「斎藤司令……了解しました。じゃあ行ってきます……その代わり、休息中の飛鷹と隼鷹も連れて行きます」

 

「え~!? 一本開けたばっか……じゃなくて、休憩入ったばっかなのに!」

 

「ははは、これも前線艦隊司令官のご命令だぞ? あとね、そのご立派な一升はどっから持ってこられたのか是非聞きたいから後で尋問するね」

 

「そ、そんなぁ……だ、だってポーラさんが持ってきたからさぁ……」

 

「お、犯人が特定できたな。連帯責任で荒木大佐には始末書を書いてもらおう」

 

「そ、それだけは勘弁してッ! 私とポーラさんは飲み仲間なんだよぉ~私のせいでいいからさぁ~!」

 

「それぐらいにしてやれ宍戸、酒ぐらい大目に見てやってもいいじゃないか。そんな事より、前線を自らの目で確認したいのなら、艦隊出港準備は整えてあるから行っていいぞ」

 

「良くないよッ!?」

 

 自然と俺を最前線に出そうとするのも良くないよ!? 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 佐世保鎮守府の一室。

 

 アメリカ太平洋艦隊総司令、ドグソドルジ元帥と佐世保方面軍総司令の蘇我提督、海軍大臣の斎藤司令とその秘書艦らが出席している。

 護衛艦隊数十隻を連れ釜山から来たアメリカ艦隊に、報道陣も鎮守府外部におしかけている中、鎮守府内のスタッフも何が起こっているかわからない状況である。

 

「こうして直接お会いできること、心より嬉しく思います。そして、突然の来訪にも関わらず快く許可してくださった日本国にみなさんには感謝が絶えません」

 

「いいえ、こちらこそお会いできて光栄です……我々日本国首相と、国務長官閣下との会談は二週間後のはずですが、これまた随分と急ですね」

 

「我々の士官を勉修という形で、身に余る重職を提供していただいている他、この度は我々の将兵を救っていただいた件についても、お礼を申し上げたかったのです。これほど日本国にはお世話になっているというのに、日頃のお礼を述べないのは不敬に相当します。この度は日本海軍を含め、多くの方にご迷惑をおかけしたこと、改めて感謝を述べたいと思います」

 

 深々と頭を下げるドグソドルジ元帥の態度に、引き締めていた頬の顔も緩んでしまう蘇我提督と古鷹。羽黒はまだ彼の素質を見抜こうと睥睨に近い眼差しを送っており、彼もそれに気づいている様子だった。

 この来訪には心象改善の意味合いが強く、イレギュラーな事をしているようだが、今までのアメリカ海軍上層部とは打って変わった態度を示す事で好印象を与える算段を踏んでいた。国務長官からは日本まで行けとは言われずとも、穏便に関係回復に望めと無茶振りを被ったため、彼は自分なりのやり方でそれを実行しているに過ぎなかった。

 

 実際に会ってみると、なかなか憎めないものだと斎藤長官は思いつつも、一貫した彼なりの謙虚な態度で対話にのぞむ。

 

「アメリカ将兵の安否を保証していただいた事、本当にありがとうございます。もし話していただけるのなら、彼らは今どこに……」

 

「気にされますな……まぁ、可愛い部下の安否は全員が気にするところですが」

 

「そのとおりです蘇我提督、部下は身内、危険な目にあっているとなればなおさらです」

 

「身内……え、救助者の中に子供いたの提督?」

 

「な、なんと!? そうなのですか?」

 

「違いますよサミュエル、蘇我提督。てか、息子をそんな危険な任務に付かせるわけないでしょ。日本海軍が発令した八丈島の攻略作戦ではドラゴンと呼ばれるほど活躍したらしいですが、そんな自慢の息子は今頃、佐世保鎮守府で命の危険とは無縁の参謀任務についているはずですよ……Thats why I made him out of operation」

 

「「「え?」」」

 

「コホン、なんでもないですよ皆さん……大臣閣下? どうかなされたのですか?」

 

 気まずそうにする斎藤長官。

 

「……いいえ、その……危ない任務には、そのですね……就いているかもしれません……」

 

「え……し、タツキが、宍戸が、まさか反抗作戦に……? ハハハ! じょ、冗談でしょう……え、マジ? そんな話はべリングハムやサラトガからも聞いてないし」

 

「…………」

 

「「「……え?」」」

 

 無言で答える海軍大臣、そして唐突に吐き出された事実に驚く艦娘たちと蘇我提督。

 

 そして発狂する。

 

「ファアアアアアアアアアックッッッ!!! ノオオオオオオオオオ!!! スグに帰らせて!? あのオキナワはマジでヤバいんだからねッ!? マジで死亡案件なんだよあの新種の深海棲艦マジ怖いからサァ!? ホラお前たちオラなにしてんだよこのオチ○チン共!!! 早くしないと『Oh Fuken shower!」って言われた俺の尖端ノンレジスタンスミサイルでま○こもケツの穴もペネトレイトして※※※※※※」

 

 

 

 

 

 

 沖永良部島周辺海域。

 

 さて、と。

 

 俺の本気、見せてやりますか。

 

 ハアあああああ!!!

 

 そして目の前にいる深海棲艦はタヒった。

 

「す、すごいよ宍戸くん……!」

 

「ま、まさか宍戸っちにそんな力があるなんて……」

 

「まったく、どんなチートだよ、オレ」

 

 沖縄……そしてその先の周辺海域の島、そして戦闘周辺の海域を俺一人で圧倒してしまった……島が一つ吹き飛び、深海棲艦は俺の名のもとに、人類に降伏した。

 

「モ、モウシマセン〜!」

 

「ははは、いいよ。君たちが俺の下僕になるなら許してあげる」

 

「「「ハ、ハハー!」」」

 

 こうして、俺は次に大陸とその先のシルクロードを制覇し、かの偉大なる指導者、チンギス・カーンをも凌駕する巨大帝国を築き上げ、世界中の美女を孕ませて未来の人口の数パーセントを自分の血統で統一するに至った。

 

 終わり。

 

 

 

 

 

「……って感じですべて万事完結するのはどうだ? 長崎艦隊の意見を聞かせてくれないかな?」

 

『『『○ねッッッ!!!』』』

 

 


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