整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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遅れて申し訳ない。

時間が取れず、忘れてしまっていました。
本当に申し訳ないです。


沖縄作戦編
Progressive


 

 とある民泊。

 

「……では以上だ」

 

「「「ハ!」」」

 

 提督は一時間ほど話し込んだ口をお茶で潤していた。彼に従う幕僚達も、固く閉ざされた瞳を開き、会議室として使われていた民泊を出ていく。

 

 何重にも包まれ、隠かくされた提督の心情は難解。

 されど、その痛みに理解を示す者が殆どである。

 彼の覚悟は誰にも止められず、彼自身も自分の止め方を知らない。正しいことかもわからない。

 

 蝋に付けられた火は数枚の紙を燃やした。只々不完全燃焼によって出来た黒焦げの燃えカスが出来上がるだけだが、情報という物理的な実体を持たない物を隠すには十分な行為だった。そこに書かれてある内容は、未来永劫だれの目にも触れられる事はない。

 

 提督が部屋の玄関を閉め、目の前にある公園のベンチに座る。タバコへ着火する動作は何十年も繰り返され、見る者からはハードボイルドだと心中で賞賛される事もあるが、消えかかっていた心を燃やすように付けられた火は、今の提督が浮かべる表情と同じぐらい弱々しく見えた。

 

「…………」

 

 ──今になって強い国として威厳を見せているみたいだが、こんな国がどうなろうと知ったことではない。

 嫌っているヤツなんて大勢いる、こんな民族がこの島国から出るなど片腹痛い。また災難を引き起こすだけだ。

 願わくば外の支配……私の力では海軍すら変えられない。だから、私にはこれぐらいしかできない、全てを成し遂げ、後は未来を奴らに託そう。

 

「…………」

 

 

 

 

 

 俺が休暇を取ってから三ヶ月が経ち、付き合い映画鑑賞や学業に専念しているこの頃、色々あるけど主に3つのビッグイベントが目先にある。

 

 綾波ちゃんの改二実装。

 オ号作戦ーー沖縄作戦が実施間際。

 俺が海軍大学校戦略研究科の通信授業を受け始めた。

 

 一つ目は案の定だが、二つ目は本当に大きなイベントだ。外国と利権について話し合った結果、日本側は独断で”自国領土を取り返しに行く”と言って作戦実施。正にタカ派。

 海外からはインペリアルジャパンとかベリコスジャ○プなどと呼ばれたりもするが、同時に一般的な意見としては”人に迷惑をかける事を極端に嫌うブシドー精神”と称賛、或いは皮肉られる事もある。正にカントリー・オブ・ライジングサン。

 

 しかしこれも戦略の一つなのかもしれない。

 そもそも沖縄奪還の話し合い自体が米軍の了承なしにできないわけじゃないけど、米軍基地の問題や、深海棲艦出現当時に米軍が守ろうとした沖縄で眠る英霊の数は見過ごせない数だし、国内でも口だけデカイ少数派が沖縄を米軍管理下に置きたがってる保守派の人多いし。

 

 沖縄は日本のものであり、米中が抵抗を見せている以上、他国の領土に関して強欲な姿勢を見せる諸外国を国民に見せつけ、反感情を呼び起こす……感じにしようとしてる解釈もできる。

 本音としては少し強引すぎる気もするけど、外交政治は専門外なのでこれ以上触れないでおこう。

 実際にあんな超大国が寄ってたかったら島国なんて人たまりもないんだよなぁ。

 

 沖縄奪還作戦に参加しているのは大規模な数であり、間接的に作戦関わっている人数を見ると一万人に上るらしいーー各地域でドネーションしてくれた民間企業、間接的に支援を行っている海軍役員も含めている数だが、それでも巨大である事には変わりない。実際に現場に赴く動員数を聞くと白けるかもしれない程度だが、作戦内容と戦力的に見ても大規模作戦以上であることは明白だ。

 

 斎藤大佐が管理する長崎警備府の一部の艦娘……と言われているが、実際にはかなりの数の艦娘が作戦に参加していない。

 

 動員数に比べたら問題じゃないし、代わりはいると鎮守府司令長官からの直々のお言葉を受けての休暇だ。有給無休問わず、数日から数週間の休日なので建前上は休暇扱いだが、事実上参加を拒否している艦娘を上げるよりかは、作戦に参加した名前を上げる方が早い。

 神風姉妹率いる涼月の第五艦隊、そして新たに警備府に編成された名前すら覚えてない艦娘たちが行ってた気がする。航海に向け、アッチの鎮守府指揮下でうまくやっているだろうかと心配を募らせる俺。

 

 恋愛映画を見ていた艦娘たちも休暇や家族の急病などを理由にして休んだ娘もいれば、そもそも整工班みたいな作戦に参加する義務を持たない艦娘や、編成名簿に無かった艦娘がいるからこんなに少ない数になっちまったんだな。

 行く前に俺と時雨がミッチリ鍛え、変則的な戦い方もできるようにして、なおかつ必ず生き残るための戦術的訓練を作戦内容の予習よりも多く覚えさせた。この訓練には我らが白露姉妹や初霜を直々に教えに当たらせていたので、大丈夫だろうと信じている。

 

 生き残るという単語は重要であり、基本的には司令官の命令には聞くようにと言っているが、アッチの司令官が100%正しい指揮を行うとも限らない。あのレイシストアホ提督がセーフティーファーストを忘れるような指示を出してきたらNOと言ってやれとも伝えてある。

 クソレイシストな鎮守府の提督嫌い。作戦内容も一応聞かされているから問題はあまり無かったし、日本人の手で~辺りの政治的、民族主義的な考えはどうしても引っかかる。

 

 他にも長崎にある深海棲艦教の残党狩りを陸軍さんがやってたり、月魔が長崎警備府に着任してたり、迫りくる海軍将官会議で斎藤長官が元帥に押されるかも……と、海軍掲示板で話題になってたりと、色々俺の周りの世界では面白い事が起こり続けているが、正直それらはどうでもいい。

 

 三番目のビッグイベントが、今の俺にとって最重要だ。

 

 警備府の司令官の個室は、現在の司令官である大佐に使われているため、後輩の月魔と相部屋である。

 パソコンの画面に映される大学教授の言葉を聞きながらノートパッドを開いてメモを取っている俺は、将来有望な海軍士官である。

 

 勤勉であり、熱心な勉強家である俺は、着実に向上の機会を狙うイケメン士官って、それ一番言われてるはずだから。

 

 そう、だから講義を聞きながらエロゲなんてやらない。

 

『即時性のある盗聴防止システムには利便性と頑健性のある高度な統制通信情報能力を実現しなくてはならない。これらには、地理的範囲の捜索、作戦本部とのリアルタイムでの情報伝送、及び司令官または指揮官などの作戦を指導する立場にある意思決定者からの応答性を含める必要がある』

 

『お兄ちゃん! もう朝だよっ! 早く起きないと、アスナのおま○こがお兄ちゃんのご立派朝立ちおち○ぽを食べて、孕ませ妊娠ベイベーになっちゃうんだからっ!』

 

『大本営、及び海軍省内の戦略技術においての優先順位は、最優先技術、可能技術、及び台頭技術である。最優先とは最も普及している技術のことであり、可能技術とは急速な進歩をもたらす可能性のあるもので、台頭とは応用に至っておらず、検証が困難な技術のことを指す。これらの生産は、国家安全保障においての向上の課題となるモノで、基本的にこれらの優先順位は作業グループによる判断で決められている』

 

『あぁん! ダブルなアナからダブルファ○クぅ! オジ様ち○ぽがアウト・イン・アウト・イン・ワンダーランドぉぉおぉおうおうおうゥ!!!』

 

「何やってるの宍戸くん? 遊んでる暇があったら来航した時雨艦隊に補給物資(おいちぃ食べ物)供給でもしたらどうなの?」

 

「突然通信もなしに入ってきたから敵だと思ったわ。つか、俺は今大学の講義を聞いて勉強しているんだよ。見て分かるだろ時雨艦隊」

 

「朝起こしに来る定番妹からお父様にダブルな穴をイン・アウトされる展開までちょっと理解できなかったんだけど? え、まさか海軍大学校って、そういうことを習うところだったの!? 宍戸くんは、勉強熱心なんだねっ」

 

「仕方がないじゃん! もう全部知ってる事しか話さないんだから! でも学んでないこと言うかも知れないじゃん!! だから見逃せないじゃん!! 入学しなきゃ良かったかも……」

 

「でも通信だからここでも受けられるって、すごく便利でいいと思うなっ。それで、僕への貢物はまだー?」

 

「その可愛くないおねだりはなんだ? もっとアスナちゃんみたいに猫なで声を上げながら、俺専用肉のおトイレになりなさいっ!」

 

「は? パソコン潰すよ?」

 

「パソコンはやめろォ! 国費から捻出した給料で買った大切な10万円相当のパソコンだぞォ! 血税をなんだと思ってやがる!?」

 

「よく考えたら毎日出撃してる艦隊のみんなって、絶対10万円以上消費してるよね……」

 

「姐さん、物の価値は相対的に決まるものです。一方が十万円の値札を上げればもう一方が値段を下げ、競ります。しかし、軍隊という国内に競走馬のいない場所では、その価格は入手難度とモノの原価とその他の付加価値が加えられーー」

 

「クソストーカー野郎の分際で僕に指摘するなんて凄くいい度胸だねっ。ドーナッツ食べたいなぁ〜……チラッ? あ、これ買って来いって意味だから」

 

「は、ハッ! すぐに持ってきます!!」

 

 ルームメイトを平気でこき使う時雨さん流石ッス。アイツが言ってる事は全然間違ってないんだよなぁ……大量生産されているレーションですら原価や輸送費とか考えてもオークションのはクソ高いし。ダイアモンドだってデアビス社が独占販売してなかったらあんなに高くないだろうに。

 

「まぁまぁ、あのストーカー野郎の事は許してやれって」

 

「宍戸くんだって言ってるじゃん」

 

「ちょっと定着しちゃった感はある。でもアイツ提督育成プログラムに入るから馬鹿にしてられないぞ」

 

「ヘっ!?」

 

 大きな瞳をパチパチ開けたり閉じたりする時雨は「うっそぉ……」と小さな声で呟いた。当然だ、俺もまさか通るとは思わなかったから。

 

 提督育成プログラムは、新たに提督科ーー正式には、艦隊総合指揮課程と名付けられ、正式に海軍大学校、そして兵学校でも一部だけ、試験的に取り入れるらしい。

 

 そこで、その提督科に入学する士官の人選を各鎮守府、そして一部の警備府でする為に、俺にもお声がかかったというわけだ。

 鈴谷たちを連れてきてくれたサプライズのお礼メールへの返事を送ってきた斎藤長官が「選んでくれないか」と頼んできたんだ。

 月魔は頭も良く、海軍士官として立派な精神や堅実さなどポテンシャルが高いため、俺も推薦した……が、何より現在の司令官である斎藤大佐も強く推薦したのは驚きだった。あの二人は俺の近くを離れた拍子にデキてしまったのだろうか? 大問題すぎるぞそれ。相部屋なんだからエイズに感染は勘弁だおぉ……。

 

「それにしても、こうして宍戸くんと二人で話すのって久しぶりだねっ」

 

「確かにな……人が多いと、それだけ賑やかになるんだよなぁ……やっぱり、これが俺の人徳かな? ドヤ?」

 

「んんっ、これはキモいねっ。ドヤ顔凄くキモい」

 

「キモイだと? ハッ、どうせイケメンだったらかわいいとか素敵とか何してもイケメンなんだろ? ルッキズムはアジア人にとって最も触れてはいけない事項の一つでな? 一番付き合いたくない人種では黒人が続いて二位なのは知ってると思うが、白人と比較しなくてもいいだろうが? おん? 顔面劣等舐めんなよ」

 

「それって僕も含まれてるのかなッ?」

 

「イタイイタイイッ!!! し、しぐれママやめてぇ……うるうるっ」

 

「う……か、かわいい……?」

 

 その通りだ。ベイビーフェイスと呼ばれ、凹凸の少ないアジア系の顔には他の人種には存在しない”可愛さ”というのがより引き立つんだ。その理論上、顔面黄金比的にはともかく、アジア系が最も可愛いという事実が成立する。だからアジア人が積み重ねてきた歴史の中で美の象徴として君臨してきたお目々パッチリ系ゆるふわ童顔おま○こがモテるのは仕方がない事なんだ。

 かのBitchは通称”ロリ”と呼ばれ、それを好むとロリコンとなる。

 DNAに刻まれた楔。

 逃れられる(逃れられない)カルマ。

 

「いや、やっぱりキモイ」

 

「分かった、俺がキモいのは認めよう。だが分かって欲しいこともある。俺はどっちかと言えばロリはあまり好まないタイプだけど、アジア人の血統に刻まれた童顔ゆるふわアバズレおま○こに惹かれるのは本能的なナニかであり、ロリ巨乳たる白人もアジア人も好みそうな、戦場の船上で俺を扇情させるここ警備府の駆逐艦は統計学的に見ても俺に襲われやすい。QED」 

 

「あ、頭が痛くなっちゃう……っ! しょ、少佐さんを呼ばなきゃ……!」

 

「ホモ連れてくるのやめろっつってんだろオイッ!! いい加減にしないと俺のケツが殺人現場になるぞォ!!」

 

 俺の叫び声を聞いたオトコが、扉の向こうから顔を覗かせた。

 

「姐さん買ってきたッス」

 

「ありがとう、気が利くじゃんっ」

 

「時雨。気が利くってさ、自発的な行為を称賛するときの言葉であって、要求したらそれは良く出来ましたになっちゃうからさ」

 

「あ、そうだったね、良く出来ましたっ」

 

『聞いているのかね宍戸大佐!? 私は依頼料を貰って仕事をしている分、君が講義を聞こうと聞くまいと構わないが、必要な知識を身に着けてくれないと私の講義が悪いみたいに見えるから聞いてくれるとありがたいのだが!?』

 

 画面越しに怒鳴ってくる教授が聞いてほしいのか別に構わないのかブレブレの主張をするが、本心では聞いてほしいんだろう。時雨と月魔は黙リ込んで買ってきたモンブランを頬張っている。

 聞いている途中、俺が雑談したりするもんだから不貞腐れたのか、教授は講義を早くめに終わらせようとしている。予習で覚えたことばかりだし、同じ事を言い回しを変えて二度言うタイプの人だからちょっと苦手である。

 講義の途中、相槌を交わしていた時雨が興味深い事を聞いてくる。

 

「宍戸くん、この作戦についてはどう思ってるの?」

 

「姐さんのいう作戦……沖縄作戦ッスか?」

 

「まぁ今のところ一番大きな作戦だとそれしかない……作戦内容の詳細は触れてないから分からないけど……」

 

「利権とか、国家間の争いとか……僕はそういうことについてはあまり詳しくないけど、本当に成功するのかな~って思って」

 

「もう一般認識として外国と日本が沖縄の利権について争っているという情報は浸透しつつありますが、成功を収めたらと言って我々の勝利で万々歳といくのか。微力な士官の端くれとしては、俺も知っておきたいです」 

 

「頑張ればできるんじゃない? その辺は外交官じゃないからわからないけど。まぁもしも俺が指示できる立場だったら、まずは海外との連携を前提に話し合うけど」

 

「連携……とは、合同作戦の事ですか、兄貴?」

 

「そう。合同作戦を取ること前提の交渉をして、主にアメリカだろうと思うけど、アッチが要求するのはもちろん残骸と化した海軍基地を含めた島の一部の利権だと思う。それを蹴って資材とか代用可能な類のモノを提示する。島の利権には指一本触れさせない方針で行く」

 

「もしもそれで連携が取れなかったら……」

 

「その時点で交渉決裂して終わり。コッチの海軍だけで沖縄を奪還する口実が出来上がる。その際にマスコミは、海軍が後押しなくても勝手に諸外国が協力してくれなかった事実、そして合同作戦交渉が失敗した事を大々的に報道すると思うし、そこまで行けば公然と海外士官を起用について話し合える。作戦への参加義務を持たない彼らが作戦に従事していようが、彼らの貢献度は彼らの所属国ではなく、彼ら自身に向けられる。少なくても利権争いを、コッチの方針で行ってたら有利の状況で進展してたと思うんだ」

 

 もっとも、この程の度口遊びは外交を行う前に専門家が考慮に入れないわけがないし、最初にそうやって交渉から始めずに”独自路線んで行くもん!”って駄々こねて始めた以上その手を打つことは不可能……はじめの一歩、それがどれほど重要であり、それを理解できていても、行動に移すのはやっぱ難しい。

 

 つか元々は日本のだし、中国とかはあそこに立てた中国系企業の土地が〜云々を口実にしている。

 現在の日本は昔とは違って、海外からの土地買収を厳格化しているから、正直ビル一個分程度の土地だけ手に入れてもあまり意味ないと思うっていうか……それにアメリカに至ってはグアムすら取り戻してないし……。

 

 あ、だめだ、アメリカはグアムに行っちゃだめ!

 俺の過去の策略が暴かれちゃう!

 

 何はともあれ、資源が見つかる度に、色々正当化を図って奪おうとする悪魔みたいなやり口好き。

 

「お兄さん! ぎゅ~!」

 

「おっほ! 春雨ちゃんよしよし、いい娘だねぇ君は~。お姉さんも春雨ちゃんを見習ったらいいのにぃ、チラっ……ハ!? なんで春雨ちゃんがいるの!? 親潮や村雨ちゃんもいるだと……? 俺の部屋にはプライバシーというモノが無いのかね!?」

 

「司令、相部屋ですからプライバシーはあまりないかも知れません……司令、春雨さんの次は……」

 

「というより何をやっているんですか宍戸さん? 講義があるから部屋に戻るとか言って村雨を放置ですか、そうですか、ふ~ん」

 

「君たち、そんな事ないよ。俺はみんなを幸せにしたいんだ。だから、いっぺんに相手してあげるよ。おいで……My angels……」

 

「「「…………」」」

 

「うん。分かった。講義に戻るからジト目は勘弁」

 

「講義? それって今、開いてる画面に写ってるメガネのオジサンの講義なのか、突然歴史女体化モノになったエロゲームの、男の快楽についての講義なのか、どっちなの?」

 

『現存するイージス艦船のように、殆どは複合素材、信号技術、フォトニクスなどの最優先技術が使われているが、艦娘にはバイオテクノロジー、ロボット工学、高感度レーダーが使用されている。艦娘技術そのものには非常に強力な伝送線、コイルなどと行った極々単純かつ一般的な部品も設計に関わっている。コンデンサを含め、それらを支える技術はマイクロ波管、中性粒子電送装置等による艤装維持を可能としているが、それらは既存の情報通信技術に支障、または無効化させてしまう』

 

『男としての快楽ですかぁ……? それはぁ、ぽかぽかな春のお空でぇ、お馬さんに乗ったりぃ、鷹狩することですぅ〜』

 

『違うッッッ!! お前のような雌豚プリプリおマ○コをこの分からせズボズボチ○ポで孕ませる事だッッ!!』

 

「「「…………」」」

 

 こりゃもう弁解できないッスね。ギラギラとした四人の眼光は、画面内であられもない姿を晒す(女体化した)英雄たちをも退けるであろう。

 

 誰か助けて。

 

 と願った矢先、携帯電話の音が鳴り響いた。神は俺を見捨ててなかったんだ。

 

「……おっと、こんな時に電話だぁ!」

 

「「「…………」」」

 

「流石に電話来てるときは止めて!? 重要な内容かもしれないじゃん!! ……はい、もしもし」

 

『こちらは長崎駐屯地だ』

 

『はい? 連隊長さんどーしたんッスか? まさかまた俺と行きつけのフランス料理店に行きたいんですか?』

 

 陸軍との交流も決して怠らないのが俺だ。

 だから連隊長とか、将校たちと数分の雑談でもいいから話しまわったり、食事にでかけたりしていた俺が連隊長に勧めた店にはもう二回ぐらい行ってる。

 大変気に入ったらしく、既存の腹に油を上乗せしていた印象しかなかった彼が、今まで聞いたことはないような声で訴えかけてきた。

 

『違う! 要件だけを先に言おう。まだ掘り下げないといけないんだが、実はあの提督──』

 

「宍戸いるかッ!? 緊急事態だッ!!」

 

 最後まで言わせてあげて、あの人は少なくても遠分は仲間だから。

 突然開けられたドアが耳元で鳴る電波音を阻害するように勢い良く開けられる。開けた本人は珍しく帽子を被ってない斎藤司令官だが、これまた珍しく動揺している。

 

「なんスか? 斎藤大佐がそんなに慌てるとかヤバイじゃないっすか。こりゃ、大規模作戦が失敗したとかそういう類のものですかね?」

 

「知っていたのか!? なら話は早い!」

 

 マジかよ、笑えるぜ。

 

 

 

 まさか、沖縄作戦のことじゃないよね?

 

 

 


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