ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、誇り高き戦士と会う

「さあ焼けたぞ食え!」

 

ズドンと大きな音を立てながら置かれた巨大な肉の塊。良い感じに焼かれた肉は香ばしい香りを放ちつつ食欲のスイッチを連打するがナミとウソップは食欲など沸かなかった。

 

本でこの島について解った直後姿を現したのは島に住んでいるという巨人族のブロギーであった。通常の人間の何倍をもある巨体な為かナミもウソップも大いに動揺した。唯一冷静だったレウスは彼と話をする事になった。どうやら酒は無いかと尋ねて来た、あると答え酒を渡す代わりに情報提供をしてくれるようにレウスは取り付け、今はブロギーの家となっている白い山のようになっている彼の住処へとやってきていた。

 

「美味いぞ恐竜の肉は、ガブっといけ!」

「美味そうだな確かに、ナミちゃんにウソップ。切り分けるか?」

「「け、結構です……」」

「そうか?残念だなぁ、美味そうなのに……」

 

一部、右手を竜化させて肉へと差し込んだ。そのままナイフのように手を扱いながら肉を裂き、こぶし大の大きさの肉を口へと放り込んだ。それを見たブロギーはほう……っと感嘆にも似た声を出した。

 

「うんっイケる……味はちょっと淡泊だが油は甘みもあって食欲を誘う。歯応えも良くて腹に来るな」

「お前レウスと言ったか。悪魔の実の、動物(ゾオン)系の能力者みたいだな。しかもかなり能力は熟練してると見える」

「解るか?」

 

もう一度肉を抉りながら視線を向ける。

 

「解るさ。身体の一部だけを変化させるのは至難の業と聞いた事がある、能力をコントロール出来ている証だ。だがまだ少しだけ粗さを感じるな」

「自己流だからな、粗さも個性だ」

「ガババババッ!!そりゃそうだ、威勢の良いチビ人間だ!」

 

豪快に笑いながら肉に食らいつくブロギー。一応レウスの身長は184センチである。(平成の)成人男性の平均身長は170.9cmなので一応高身長という部類に入るが巨人族である彼にとっては小人のようにしか見えないのだろう。

 

「あ、あのブロギーさん。この島のログってどの位で溜まるんでしょうか……?」

「んっ?おおログか、1年だ」

「「1年っ!!?」」

 

余りの時間にひっくり返ってしまうナミとウソップ。島によっては1日や半日、1週間などとログの溜まる時間は変化するがまさか1年という時間がかかってしまうとは予想外にもほどがあった。二人にとってこんな秘境のような島で1年過ごすなどやってられない事である。

 

「まあゆっくりしていくが良い!ガバババババッ!!」

「1年……随分と長いもんだ。俺が島に居た時よりは短いが」

 

1年という時間の長さに呆れつつ、レウスは再び肉へとかみついた。今度は直接肉へと、その時に僅かに竜化している自分に気づいていなかった。それを見たブロギーは視線を鋭くした。

 

「なあレウスよ。一つだけお前に言っておく、その能力は希少且つ危険だ。(ワイバーン)はいずれ(ドラゴン)に変じる」

「どういう…ことだ?」

「その答えはとある島にある、航海を続けて居れば解る」

 

そういったのち再び笑い肉を食らう。首を傾げつつまた肉を喰らった。立ち直った二人は食べ続けている巨人と仲間を見て、溜息を付きながら肉に手を伸ばしてみた。

 

「結構、美味しいのね」

「だなっ。醤油持って来ればよかったな」

 

腹に物を入れれば少し心が穏やかになった、ウソップはこの島にブロギー一人で住んでいるのかと聞いた。他に人は住んでいないのかと。

 

「村ならある。エルバフというこの偉大なる航路のどこかにあるな。だが村には掟があってな、騒ぎを起こすと俺たちはエルバフの神の審判を受ける。俺たちの神は常に正しい物に加護を与えてる、そしてこの島は俺とある男との決闘場なのさ。だが彼此100年ケリが付いてないがな!!」

 

100年も戦い続けている事実にナミとウソップ、そしてレウスも驚きを隠せなかった。巨人族は人間の寿命の約3倍の命がある為100年という時間はあまり気にならないらしい。

 

「良くもそんなに戦いを続けてられるわねぇ……理由は何なの……?」

「闘い始めて早100年、何時の間にか真ん中山の噴火が決闘の合図になった」

 

持った肉を火へと投げ捨てるようにくべて立ち上がるブロギーの視線は鋭い戦士の物へとなっていた。そして幾ばくか離れた所から同様にもう一人の巨人が声を上げ姿を現した。それがこの島のもう一人の住人と言える存在でありブロギーが100年間も戦い続けている相手。

 

「「決闘の理由など、とうに忘れた!!」」

 

「ガババババババ、今日こそは勝たせて貰うぞドリー!」

「ゲギャギャギャギャギャ!それはこっちのセリフだブロギーよ!!」

 

大型の恐竜を容易く上回っている巨人が二人、互いに向けあうは研磨され鋭すぎる殺気。豪快な笑いと共に殺気は島へと充満していき思わずナミとウソップは涙目になりながら震え上がり、レウスは思わず無意識に自分を守ろうと完全竜化を行いリオレウスの姿になっていた。そうしなければ自分は死んでいたとさえ思える濃厚で強い殺気に心が反応していた。

 

「グオオオオオオオ!!」

「ウォオオリアァイ!!!」

 

剣と斧が振り抜かれる、全くの同時に振り抜かれると同時に互いの巨人は盾でそれを防いだ。巻き起こった衝撃は大型の爆弾が起こす爆風にも匹敵しうるもので島へと広がっていく。木々は揺れ動物たちは恐怖して逃げ惑っていく。純粋な相手を倒すという思いと肉体に宿る力がぶつかり合っている。思わずレウスは威嚇の声を上げてしまっていた。恐怖、している。

 

「うぉおおおおおおお!!!」

「そおおおりゃあああ!!!」

 

喉元へと振るわれる一閃、肺へと一直線に伸ばされていく突き。攻撃の全てが相手の急所を狙って繰り出されているという事実、そしてそれを100年間も続けてきた二人の生きざまに3人は呆然と見ている事しか出来なかった。

 

「こんな殺し合いを100年も……?」

「理由も忘れてるのに……誇りを賭けて戦ってるんだ……!!」

「……」

 

ウソップが口にした誇りを賭けている戦い、正にこの巨人の戦いはそれであった。元々は戦いの火種があったがそれは大昔の彼方に忘却されている、だが負けないという強い意志と誇りがある。それがある限り互いに一歩も引かないっというだけの事。それがウソップには非常に男らしく勇敢に見えた。だがレウスはそんな事が考えられなかった。

 

「………弱いなぁ、俺って………」

「レウス?」

「はぁ……」

 

自分を恥じた。殺気に恐怖を感じ咄嗟に自分の身を守る事しか考えられなかった、それ以外の事など頭になかった。情けない事この上ない、これならば野性に身を委ねた竜の方が幾分かマシかもしれないとつい思ってしまう。

 

「俺もなりてぇな……あんな風に強い戦士に……」

「だよなぁレウス!俺も絶対にああいう勇敢なる海の戦士になるんだ!」

 

ウソップも同調して憧れの言葉を漏らすが彼らの言葉は同じ意味ではない。ウソップはブロギーとドリーの心、誇りに憧れているがレウスは彼らの強さに憧れた。何物も圧倒する絶対的な力に、そんな力が心から欲しくなってしまった。

 

―――そして互いの武器が吹き飛ばされ地面に突き刺さり最後に残った盾を用い、渾身の力で相手へと殴り付けた。鈍い打撃音が島中に木霊していく、突き刺さった痛烈な一撃。顔を歪めながら二人の巨人はこう言った。

 

―――73466戦

―――73466引き分け

 

っと。

 

「本当に凄かったぜブロギーさん!!アンタらの戦い、本当に誇り高い戦いだったぜ!!」

「ガババババそうかそうか!そりゃ俺たちの誇りをぶつけあってるんだ誇り高くて当然だ!」

 

戻ってきたブロギーは自分達が渡した酒をドリーへと渡し、先程の戦いで罅が入ってしまった斧の持ち手を新しくしながらウソップに戦いを褒められてうれしそうに笑った。寿命が長い彼らにとって財産や人の命も結局は消えてしまう、だからこそ如何死ぬかを考える。それ故に誇り高く死ぬことを彼らは望んでいるらしい。

 

「俺も絶対になって見せるぜブロギー師匠!エルバフの戦士のような勇敢なる海の戦士に!!」

「ガバババそりゃいい!」

 

豪快に笑いながら酒を飲むブロギー、が視線に端に拳を握り締めているレウスの姿を見た。何処かで見たかのような既視感は嘗て強くなりたいと願っていた自分とそっくりだった。

 

「なぁレウスよ、てめぇの能力について少しでよければ聞かせてやる」

「話……?」

「悪魔の実の中でも最も希少とされる動物(ゾオン)系の幻獣種、その中でもそのお前のような竜は今も現存していると言われている」

「ド、ドラゴンが!?」

「マジか!?」

 

ブロギーの言葉に驚愕する二人、ドラゴンは空想上の生物というのが常識。だがそれは今壊された。

 

「俺も話で聞いただけだがこの偉大なる航路(グランドライン)の何処か大陸みてぇに馬鹿デカい島があるという。その島の名は"狩猟が全ての世界(モンスター・ワールド)"って言うらしい」

「モンスター・ワールド……?」

「その島は世界政府にも加盟はしていない所で特別な組織が全体の管理、統制をしているらしい。そこには神秘に溢れた怪物達が蔓延る世界、海軍も手が出せないような危険地帯だがお前の能力の元となっている生物はそこで現存してると聞く」

「(リオレウスが実在してる……!?)」

「そこには固有の悪魔の実もあるらしくてな、そこの生物の力を得る事が出来るという噂がある」

「じゃ、じゃあレウスが食べた実も元々はその島の……」

「その可能性は高いな」

 

そう言いながら肉を食い千切って話を終える。能力の元となった生物がいる島、つまりそこはモンスターハンターの世界と言っても過言ではない場所、直感的にレウスはそこに行きたいと思った。リオレウスという生き物の故郷だから、故郷に帰ってみたいという帰巣本能かは理解出来ないが自分はそこに行かなければならないという気がした。

 

「俺が知っているのはここまでだ。その島の話はあるが実際に行った者はいないとも言われている幻の島だ」

「それでも……俺、行ってみたいぜ俺……そこに行けば俺、強くなれる気がする!」

「ガバババ!!元気が出たな!」

「へっ?」

 

気づけば自分は立ち上がりながら左腕を竜化させていた、何故そうしたのかは解らないが妙に気分はすっきりしていた。

 

「お前はまだ若い、俺も昔は強くなりたいって悩んだ事もあった。だが悩んでいたって解決しない事もある、そういう時はまず身体を動かして行動だ」

「……オッス!」

 

元気を取り戻したレウスにドスンと与えられたのは先程の巨大な恐竜肉、ブロギーはそれを食え!という、そしてレウスはオッス!と強く答えながらリオレウスに変身し肉へと飛びかかるように食いついた。肉を食いちぎりながら強靭な足で肉を押さえつけながら一心不乱に肉を食らう姿は正に竜、ブロギーは再び笑った。

 

「恐らくこいつは暫く食い続けていると思うぞ」

「みたいね……」

「おっブロギー師匠!また真ん中山が噴火したぜ!?」

「おおっ今日は珍しく噴火の間隔が短いな、望む所だァ!」

 

肉を貪り食うレウスを置いてブロギーはウソップの声援を受けながらドリーとの決闘に向かっていく、ドリーも同じくして向かい酒の味を言いあいながら再び、決闘を始めた。

 

その二人の決闘を不吉に見つめる二人の陰に、誰も気づきもせずに……。


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