ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、小さき庭へ

ウィスキーピークを出港したゴーイングメリー号は比較的平和且つのんびりとした船旅を続けていた。最初こそ一本目の航海のような荒れた航海を予想していた一同だったが、それはリヴァース・マウンテンが巻き起こしていた7本の磁気が周囲の天気に異常を来していた為らしく平和に航海は続いていく。途中巨大なイルカ型の海王類が出た際は少々騒ぎになったがそれ以外に目立った問題は起こらずに順調そのものだった。そして

 

「お~い島が見えたぞォ~!」

「あれがグランドライン二つ目の島だァ!」

 

眼前へと迫りくる島、鬱蒼としたジャングルと白く至る所に穴のようなものが無数に空いている不思議な山。あれがウィスキーピークを出る際に出くわしたMr.0のパートナーであるミス・オールサンデーに教えられた島、リトルガーデン。

 

「にしてもこの島の何処がリトルなんだ?寧ろビックじゃねえか」

「まるで秘境の土地だな」

 

島の内部へと伸びて行く川をメリー号は遡って行きながら一同は島へと視線を投げて行く。リトルというのはまるで名ばかりで島は巨大な樹木が立ち並び見た事が無いような植物が大量にそこいらじゅうに生えていた。

 

「お、お、おおおおおい上陸なんかせずに直ぐに次の島に向かおうぜ!?あの女言ってただろ!?この島で全滅しちまうって!!」

「でも直ぐには出航できないわよ、ログが溜まってないし。でもまあ上陸したくないって気持ちは解るわ、あの植物なんて図鑑でも見た事無いし」

 

ナミも得体の知れない島への上陸は肯定的ではない。出来れば直ぐに出港したいという気持ちはあるものの記録指針がログを記録しなければ次の島への航海には出られない。がそんな時樹木の間から虎が姿を現した。がその虎は通常の虎よりもはるかに巨大なものだった。

 

「おおっ!!巨大虎だ!!」

「虎ってネコ科だから猫じゃらしって効くのかな?」

「効くだろネコなんだし」

 

馬鹿な事を話しているレウスとゾロだったがそんな話をしている間に大虎は大量の血を吐き地面へと倒れ込んだ。その身体にはまるで鋭利な刃物で切り付けられたかのような傷がつけられていた。つまりこの島にはこんな虎を倒す事が出来る生き物がいるという事にウソップとナミは顔を青くさせた。

 

「船でログが溜まるのを静かに待って、直ぐに次の島に行きましょう……?」

「賛成~!!」

「は、早くアラバスタに行かなきゃね……?」

 

という航海士の提案に基づき錨を下ろしてログを溜まるのを待つ事となった。何かやばい脅威があるこの島に迂闊に上陸するのはあまりに危険―――

 

「サンジ弁当作ってくれ!」

「弁当?」

「ああパワー補給だ!肉一杯の野菜抜きの海賊弁当!冒険のにおいがする!この島冒険のにおいがプンプンする!!」

 

な筈だが船長のルフィは目をキラッキラと輝かせてサンジに弁当の催促をする。どうやら未知の島にとらを倒す生物という物に冒険心を掻き立てられもう辛抱できなくなってしまったようだ。

 

「冒険ってルフィ、アンタね…」

「しししし、お前も来るか?」

「誰が!行かないわよ!!」

「あっなら私が行ってもいいかしら?」

「「え"」」

 

強く否定するナミをスルーするように手を上げたのはなんとビビであった。

 

「んじゃルフィに海賊弁当にビビちゃんに愛情弁当だな。カルーにドリンクは必要かい?」

「ええお願い」

「意外だねビビちゃん。君も冒険に興味があるのかい?」

「いえじっとしてたらなんだか色々考えちゃいそうだし気晴らしに♪」

 

ルフィやカル―もいるから大丈夫と笑う逞しい王女にレウスも思わず笑ってしまった。未知の島だというのに度胸が据わっている王女様だ、流石は敵の会社に潜入するという事をやってのけるだけのことはある。まあ化け物よりも化け物じみているルフィと共に行動すれば危険を跳ね除けられるという考えは解らなくもないが。

 

サンジは直ぐに調理を終わらせたのか弁当を入れていると思われるリュックを二つと樽造りの水筒を持って出てくるとルフィとビビに持たせカルーに水筒を持たせる。それを確認するとルフィは元気よく船から飛び降りビビもカルーと共に船を下りルフィの後を追いかけた。

 

「んじゃ俺も散歩に行ってくっか」

「散歩ぉ!?おいゾロマジかよ!?」

「何だお前も来るのかウソップ」

「誰が行くかぁ!!」

 

暇潰しがてらと船を下りるゾロだがサンジが食べれそうな獲物を取ってきてくれと言うが……ゾロがお前が獲れそうも無い獲物を取ってくるといった為にサンジにも火が付いてしまった。

 

「狩り勝負か……いいか。肉何キロ取れたか勝負だ」

「何トンかの間違いだろ」

「はん、獲物を並べてから御託を並べやがれマリモヘッド!」

「望む所だラブコックが!」

 

互いを強く牽制しながら森の奥へとずんずん入っていく二人を見ながら思わず涙を流してしまうナミとウソップだがはっとしながら船首辺りのフェンスに寄りかかりながら本を読んでのんびりしているレウスを見ると素早くすり寄った。その素早さに思わずレウスは身を引いてしまう。

 

「お、お前は行かねえよな!?か弱い俺たちをおいて、上陸なんかしねえよなぁあ!!!?」

「お願いだから船に残ってレウスゥ!!今の私達にはもうアンタだけが頼りなのぉ!!」

「解った解ったから、俺は別に上陸したいとは思ってないから……」

 

なんとか二人を宥める事に成功したレウス。取り敢えずナミとウソップはレウスの傍が一番安全と考えたのか彼の両隣に陣取った。特にナミはかなり恐ろしいのかレウスの左腕に抱き着くようにしている。

 

「………にしてもウソップ、お前勇敢な海の戦士になるとか言ってなかったか?」

「た、確かに言ったけどいきなり勇敢になんてなれるかよ!?」

「まあそりゃそうだけどよ……」

「…ねえレウス、さっきから何の本読んでるの?」

「んっああ。"探検家 ルイ・アーノートの冒険記"って本さ。結構面白いだよね」

 

一旦本を閉じながら表紙を見せる、するとナミは何かを思い出したかのようにはっとした顔をした。

 

「ちょ、ちょっとその本貸して!?」

「んっあ、ああ」

 

レウスから奪うように本を受け取るとページを次々とページをめくっていく。そしてある記述へと辿り着いた。それはこの島、今自分たちがいる島であるリトルの由来についてだった。

 

『あの住人たちにとって、まるでこの島は小さな庭のようだ。この土地をそう呼ぶ事としよう。探検家 ルイ・アーノート』

 

住人たちにとって、つまりこの島にはこれほど大きな島を庭と言えるだけの巨大な何かが居るという事になるとナミは悟った。その予感は当たっていた、その記述を見つけている間に巨大な何かがメリー号へとじりじりと迫ってきていた……。


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