ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、秘密組織の目的を知る

「……ああ成程、そういう経緯で俺に彼女を保護してくれって言ったのか」

「そう言う事。流石レウスね、バッチリと保護してくれたわ」

 

ミス・ウェンズデーことビビを保護し彼女を連れてナミの元へと戻って来たレウスは漸く事の経緯を聞く事が出来た。王女であるビビを故郷である国へと送り届ける契約を10億ベリーという大金で約束したらしい、その契約を成立させるかどうかはこれから決まるらしいが………。

 

「助けてくれた事には感謝するわ、でもそれは無理なの」

「どうして?王女なら10億位……?」

「アラバスタという国を知ってる?」

 

その言葉にルフィ、ゾロ、ナミは首を横に振った。唯一それを理解しているのはレウスであった。以前新聞でアラバスタに関するニュースを掲載していたのを見た事があった。

 

「確かサンディ(アイランド)って所にある文明大国って新聞に書いてあったな、後は砂漠があるってことぐらいしか俺は知らないけど」

「あっ私もそれ見たかも、その後直ぐに別のニュースに目奪われちゃったけど」

「……ええそれで合ってるわ、数年前までは……。ここ数年は革命の動きが現れたの、そしてその裏に潜んでいる組織が"バロックワークス"!!!」

 

秘密犯罪集団"バロックワークス"。その組織が民衆を煽り暴動を起こし国を荒らしていた。その組織の工作によって人々は唆されてしまい革命の動きが顕著になってしまった。全ては"バロックワークス"の目的、アラバスタという国そのものの乗っ取り。ビビは幼い頃から世話をしてくれたイガラムと共に組織に潜入しボスの正体と目的を明らかにした。

 

「はぁ……話が繋がったわね。内乱中ならそんなお金もないわよね」

「いやナミちゃん、内乱中じゃなくても10億なんて大金は出せないと思うぞ……」

「そうかしらね、一国の王女の値段がそこまで安い訳無いでしょ?」

 

平然と目の前の女性の値段がどうのこうのと言えるこの胆力は見習うべきかどうかと激しく迷う。いやただ単に金にがめついだけなのかも知れないが……。

 

「なあ、その黒幕(ボス)って誰なんだ?」

 

何気なくルフィがそう聞いた。国一つを乗っ取ろうとするほどの人物だ、気になるのも当然だろう。が、その質問を耳にしたビビは顔を真っ青にしながら酷く取り乱した。

 

「ボ、ボボボボボスの正体!?そ、それだけは言えない!!聞かない方が良いわ!!」

「お前知ってんだろ?」

「聞かないで!それだけは言えない!!貴方たちも命を狙われる!!!幾ら貴方達が強くても王下七武海の一人であるクロコダイルには決して敵わない!!!」

「言ってんじゃねェか……」

 

―――……。場を、静寂が支配した。

 

散々言えない言えない言わせないでと騒いでいたのにも拘らず、結局は自分から大声でそれを白状してしまった。そしてその場をバッチリ見ましたと言わんばかりにトリとラッコの2匹は大空へと飛び立っていった……。

 

「ちょっと今の何なのよトリとラッコは?!今アンタが私達に秘密を喋ったって報告に行ったんじゃないのなんてことしてくれたのよぉおおおお!!!!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!本当にごめんなさい!!!本当にごめんなさいつい口が滑って……」

「ついで済むかぁああああ!!!!」

 

半狂乱になりながらビビに掴み掛りガクガクと震わせるナミ、まあ気持ちは解らなくないが……。ビビは泣きながらひたすらに謝罪の言葉を述べ続けている。

 

「七武海だってよ!!」

「悪く無ェな、なあレウス?」

「……俺は、なんて一味に入っちまったんだ………今更だけど」

「ぁあああんもう!なんで偉大なる航路に入った途端に七武海に命を狙われなきゃいけないのよぉ!!レウス行くわよ!!!」

 

涙ながらレウスへと詰め寄るナミ、そしてその迫力に思わず硬直してしまうレウスはそのままずるずるとナミに引きずられていく。

 

「ちょちょナミちゃん何処行くの!?」

「顔はまだバレてないのよ!?貴方に乗って逃げるのよ!!」

「って首首首!!!しまってるしまってる!!!?」

 

レウスに乗って逃走を図るが、そこへ再び登場したトリとラッコの二匹のアンラッキーズ。ラッコが握っているスケッチブックには見事なルフィ、ゾロ、ナミ、レウスの似顔絵が描かれ完成させるとまたどこかへと飛び立っていってしまった。

 

「これで逃げ場も無いって訳ねぇえええ!!!!」

「面白れ~なあの二匹」

「つうかそもそもレウスに乗って何処に行くつもりだったんだよ」 

 

因みにレウスはナミが掴んで引っ張った服が首を見事に締め軽く意識が飛びかけている。

 

「まあ兎も角これで俺たちは"バロックワークス"の抹殺リストに載っちまったって訳だ」

「ニヒヒヒ!ぞくぞくして来たな!」

「ゲホゲッホ……首がァ……息がァ……」

「ご安心なされ!」

 

顔を上げるとそこには……ビビと似た服装と化粧、髪型をしたイガラムがそこに居た。余りに強烈な見た目にレウスはめまいを起こすのであった。

 

「ざぐ……ゴホッ! マ~ママ~♪ ……策がございましてよ」

「口調まで真似する必要あるかそれ、それとすっげえ不気味だぞ」

「そうか、そっくりだと思うぞ俺は」

「いや誰にだよ」

 

格好こそ不気味極まりないがイガラムの策とはこうだ。まずイガラムはビビに成りすましながら4人分のダミー人形を連れて一直線にアラバスタに向かい(う事で)囮になる。その間に自分達は通常の航路でアラバスタを目指すという物だ。

 

「良いのかいイガラムさん」

「これが最善の手です。ビビ様の為なら喜んで命を張りましょう」

「……良い根性してるよアンタ。ルフィ、ビビちゃんを送るかどうかはお前が決めろ」

「つまりうちまで送ればいいんだろ?良いぞ」

「感謝致します……!皆さま、ビビ様を宜しくお願いします……!!!」

 

イガラムは出来る限り、感謝の念を懸命に込めた声を張り上げて頭を下げた。その光景に観念したのか、それともどうせ命を狙われるから連れて行こうが行くまいが同じだと考えたのかビビをアラバスタへと送ることを了承した。

 

「おいレウス」

「何だゾロ」

「出向の準備頼めるか?直ぐに出る事になるだろうしな」

「了解だ。あっでもサンジとかは?」

「あ~……そういえばお前船で寝てたんだよな、おいルフィ。あのバカ二人の回収は任せたぞ」

「おし任せろ」

 

出来る事ならイガラムの出向を見送りたかったが雑用係としての仕事があるならしょうがない。船へと駆けていく、暗い道を一気に駆けて行き船へと到着すると凄まじい爆発と閃光が闇夜を照らした。

 

「あの方角ってまさか……!!?」

 

あれだけの爆発、ただ大砲の弾が着弾しただけとは思えない。恐らく船の火薬庫か何かに引火した物だろう……そうだとすればイガラムは………。

 

「……くそっ!!」

 

悪態をつきながら錨を上げ直ぐに船を出せるように準備を進めて行くが……

 

「クエッ!」

「………え~っと、確かビビちゃんが乗ってた鳥……?」

 

帆の準備をしていた時に船に飛び乗って来た黄色い鳥、それはビビが乗っていた大型の黄色い鳥。ビビに言われて此処に来るように言われたのかは謎だが元気に自分に挨拶をしている。

 

「えっと……これから宜しく?」

「クエエッ!!クエックエ!」

 

悪魔の実の影響か解らないがある程度は動物の言葉が理解出来るようになっている為か彼、カル―が名前を言いながら宜しくお願いしますと言っている。

 

「カル―ね……まあいいや、直ぐにビビちゃんも来るだろうから適当に待ってな」

「クエ」

 

どうやら理解しているのか船首辺りの甲板で大人しく座り込んだカル―を見た所でゾロやルフィ達が到着した。サンジやウソップは……引きずられて来た為か気絶しているが。次々と船に乗り込む仲間とビビを確認すると一気に帆を張った。船は風を受けて上流を目指して進んでいく。

 

「ゾロ、三角帆をちょっと緩めて来てくれない?」

「おう」

 

作業を進めている中暗い顔を浮かべ続けるビビ王女、状況から察するに恐らくイガラムはやられたと考えるべきだろう。カル―も心配そうに彼女の顔色を窺っている。そんな彼女を気遣うようにレウスは肩を軽く叩いた。

 

「Mrレウス……」

「ただのレウスでいいよ。心配要らないよビビちゃん、この船にいる限り君は安全だからさ」

「有難う、御座います……でもやっぱり貴方達を危険に………」

 

うっかり口を滑らせてしまったばっかりにとんでもない事に巻き込んでしまった事を後悔している、だがもうそんな事など自分たちは気にしていない。ナミでさえ気にしている様子は見せずに指示を出している。

 

「この船の船長はいずれ海賊王になる男さ、七武海はどうせ立ちはだかる壁さ」

「でも……」

「どうせ旅の途中で立ち寄る島にある国に君を送るだけだよ、唯それだけ。それに俺たちは強い、君は絶対に安心さ」

 

そうビビに笑いかけてくるレウス。そんな笑いにつられてか漸くビビは笑った。

 

「ご迷惑おかけしますけど宜しくお願いしますレウスさん!」

「おう」

「(むっ)ちょっとレウス何時まで喋ってるのよ仕事しなさい仕事!!!」

「あっはいはい!!何すればいいの!?」

「自分で考えなさい!!」

「何それ理不尽!?」

 

何故か不機嫌そうに顔をむっとさせながら指示を出すナミ、これから彼の船旅は波乱に満ちている事だろう。


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