ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、覚悟する

「んじゃフランキーも船に詳しいのか!?」

「おうよ。解体屋ってのは壊すのと同じぐれぇに作る知識もいんだよ。自慢じゃねえかそんじょそこらの船大工には負けねえぞ」

「おおっやっぱりお前ってスーパーだな!!」

「ハハハッもっち言ってくれい!スーパーな兄貴と!!」

「「いよっスーパー兄貴ィ!!」」

 

自らの確保を目的とした宣言をしたレイアとの会合、それによって身体と心に及んだ影響は確実にレウスを蝕むように記憶に食い込んでいた。理性を無視して本能が肉体を支配するかのように行動するという恐怖とそれを及ぼした者の目的に意志が揺らぐように蠢いていた。全ての光を飲み込むような闇の中に浮かび上がった不気味な月は赤い光を宿しながら此方を見つめていた光景が頭からはなれない。そして一番の問題は自分を手に入れるためには麦わらの一味に、ナミやビビに手を出すという事を仄めかすような言葉。

 

「(あれは脅迫か……それとも実際手を出して消せば俺が手に入るって本当に思っての言葉なのか)」

 

前者なら兎も角後者を本気で実行しようとするならば狂っているとしか言いようがない。そんな事をしても逆に自分の怒りを買う事は明白、いやそんな事すら考えていないのかもしれない。盲目的に自分を伴侶と見定め一方的と言ってもいい異常な感情を向けているのは分かっている、そしてそれを向けられる自分を求めているのも。兎も角彼女の事をなんとかしないとナミとビビ、下手をすれば一味全体が崩壊する可能性すらある。

 

「なあレウス一旦メリー戻るぞ!フランキーが船見てくれるらしいぞ!」

「……ほう、しかし良いのか?」

「おうよ、面白い兄ちゃんがこんだけ大事にしてる船だ。俺としても興味があるぜ、出来る事ならある程度の修理ならしてやるつもりだ」

「そりゃ良かった……悪いがルフィ、俺は少々別行動を取らせて貰っても良いか?」

 

レウスの申し出にウソップは珍しそうに首をかしげた。ナミから任されている自分とルフィのお目付け役というではなく自分の事を優先するということがレウスは今までなかったからだ。何かあったのだろうかと心配になるが心配はしないで欲しいと言葉を漏らす。

 

「何、少しこの美しい街並みを目に焼き付けておきたいのさ。それにお前達のお目付け役も疲れるからな……偶には一人でぶらぶらしたいのさ」

「あ~そういう事か。分かった俺からナミに言っとく」

「悪いな」

 

そのままルフィ達分の料金をブルーノへと支払うとそのまま酒場から出ると建物の影を縫うように歩き出していく。あのレイアが何処に行ったのかは全く理解出来ないが兎に角じっとして居る事すら出来ない、何も考えずに歩いていく。

ウォーターセブンの裏町は普通の街以上に活気がありそこらの商店から客呼びの声が響き渡り子供達の楽しげな声が溢れている。そんな中を進んでいくレウスの表情は何処までも暗く鋭い物になっていた。

 

「さてと……すいません地図を貰えませんか」

「はいよ、1400ベリーね」

 

ルフィ達に預けたままの地図の代わりを購入し取り合えずウォーターセブンの全体を見渡す。水水肉のコロッケを摘みながら持っていたペンで印を付けながら考えていく。先程いた酒場から今の位置、これから如何するべきかを。

 

「1時間ぐらいで考えたらこのぐらいの範囲に……いやヤガラとか能力での移動を考えたらもっと広がるか…あても無しに探すなんて無理か……」

 

深くも考えずにこの広いウォーターセブンからたった一人の女性を探すのは難しいと言わざる得ない。加えて言うのであれば海列車で繋がっている島の一つが仮面などを用いた祭りを行っている影響でこの島にもドレスや仮面を被っている人間が多くいる為にドレスを纏った女性という手かがりから人を探すのも難しくなっている。簡単に探せると高を括っていたが思った以上に苦労しそうだ。

 

「……駄目だ取れる手段(切れるカード)がない……」

 

アッサリと詰ってしまった。どうにも自分らしくも無く突っ走ってしまっている節がある、落ち着きが一切ない。本能的に感じた恐怖と理性が抑えきれない感覚に恐ろしさ、今まで自分と同じような存在と戦ってきたがそれでも感じられなかった恐怖心。それに焦っているのかもしれない。

 

「……おいリオレウス」

 

―――思わず問いかける、自分の中の竜に。唯一の手がかりがあった、リオレイアという存在の番である竜の存在が。あの時、悪魔の実として宿っていた竜の意志が自分の中にもあると確信出来た。なら出来る手は一つしかない、この本能に賭けてみる事が一番確実なんじゃないかと。

 

「てめぇが欲してる女を捜してみろ、それが俺が今求めてる奴だ」

 

あの時、間違いなく理性を超えた動きをした。それに身を委ねてみるしかない。深く息を吸うとゆっくりと身体が持ち上がった、そしてあの時よりも弱いが身体が理性とは関係無しにゆっくりと歩みを進め始めた。ゆっくりとしながらも身体が従って歩いていく道に何かを感じる。あのレイアと同じものを。

 

「この感覚、間違い無い……居る」

 

進んでいく先に確実にあれがいる。徐々に強くなっていく本能を再び抑え付けると最後に本能が示した店へと入っていく。暗い照明に光る酒瓶、バーの店主は静かに席へと誘導しているのに頷きながら席に付く。適当に飲もうかと考えていると店主がいきなりロックで酒を出してきた。

 

「あちらのお客様からです」

 

そんな言葉に従って視線を動かすとそこには……

 

「貴方様から来てくださるなんて…矢張り私と貴方は運命の糸で繋がっているのですね♡」

「……かも、な」

 

二人の護衛を連れた令嬢が静かに此方を見据えていた。


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