ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、理由を知る

上空1万メートルの空島、遥か高い空の彼方より世にも奇妙な大型のタコによって落下傘のようにゆっくりと降下しながら着水したゴーイングメリー号。本当にあれが当たり前で見慣れている筈の青い海が視界一杯を染め上げる様子に思わず何処か懐かしさを覚えつつも船は帆を張り大海原を進んでいく。船は記録指針が示す次の島を目指して意気揚々と波を割りながら進んでいく。到達したのは目立った街などもない無人島、そこに上陸し食料などを調達し船へと帰り道を進んでいく途中、ある人物に出くわしてしまう。

 

「にしてもこの地面の跡なんだろうな?」

「自転車でも通った跡だったりして」

「こんな無人島でそりゃねえだろ」

 

森の木々から木漏れ日が入り込んでいる道に歩みを委ねていると地面に一直線に伸びている跡を見つけながらそれに導かれるように足取りを其方へと取っていた。不思議と跡を追うように歩いていくと拓けた草原へと出た、閉塞的な感覚を味わう森から出た事から身体を思わず伸ばすが草原の中央にある岩になにやら影のようなものが見えた、チョッパーが思わず一体何がいるのかと興味本位で覗きこんで見ると其処に居たのは2mを超えた大柄の男がアイマスクを付けたまま眠りこけていた。

 

「んんっ……なんかうるさいな……?なんだ、たぬき……?」

「トナカイだよ!!!」

 

チョッパーの気配に気付いたのか目覚めた男はアイマスクを外しながらチョッパーを見下ろした、それに反論しつつも皆がその男に注目していると急にロビンが崩れ落ちながら目を見開いてその男を見つめていた。良く見てみれば海兵の制服を纏っているがあのロビンが酷く取り乱している所などこの場全員は見た事が無かった。

 

「ロビン!?」

「ロ、ロビン!?如何したの!?」

「な、何でこの男がこんなところに……!?」

 

後ずさりを僅かにしながらもその男に強い衝撃を受けたロビンは顔を青くしていた。巨大な海王類にも物怖じせず常に理性的な彼女が此処まで取り乱すところに思わず全員が驚き警戒した。

 

「ロビンこいつは一体……!?」

「海兵よ……。海軍本部、大将青雉」

「「「「「た、大将!?」」」」」

 

目の前にいる存在の強大さに思わず全員が驚きの声を上げる、今まで遭遇して来た海兵で一番の階級を持っていたのは恐らくアラバスタ出航時に襲いかかってきた黒檻のヒナ。彼女の階級は大佐だがそれよりも遥かに階級も上だが海軍の本部の大将と言えば3人しかいないとされる海軍の最高戦力。赤犬、青雉、黄猿、この上となると元帥センゴクのみ。他に言葉の尽くしようのないほどの世界最高の戦力。その場の全員に走る緊張感、今までの敵とは比べ物にもならないかもしれないという存在の登場に走った覚悟、戦闘体勢を取りながら青雉の行動に注意する。青雉はアイマスクを外しつつナミやビビを見つめる。

 

「あららららん?」

「っ……な、何よ」

「そっちとこっちに悩殺姉ちゃんスーパーボイン今夜暇?」

「何やってんだノッポゴラァァッッ!!!」

「いきなり二人を口説きに入んじゃねえよゴラァァッッ!!!」

「おいおいそう怒りなさんな、俺だってこれでも海兵だ。だらけきった正義ってモットーを持ったな」

「「見掛け通りかテメェ!!!!」」

 

思わぬ発言と色目に当然と言わんばかりにサンジがキレ、思わずこちらの緊張感を返せとレウスもキレた。軽くブチ切れた二人をいなしつつも落ち着けと声を掛けつつも立っているのがしんどいと寝そべりふてぶてしく構える大将に毒気を抜かれてしまう。本当にこんな男が大将なのかと疑いたくなってくる、海軍の人事はどうなっているのだろうか。

 

「アラバスタ事件後、ニコ・ロビンの行方が気になってただけでお前達を捕まえる気はない。賞金首が一人増えると合計懸賞金(トータルバウンティ)が変わってくるからな。ええっと……面倒だから計算しなくていいか」

「ぐたぐたかよこいつ……」

 

取り合えず攻撃や捕縛の意志はないということを明らかにした青雉を攻撃する事はなかった。相手が海軍の大将だからというのも理由のうちだがそのやる気の無さが此方の覇気を奪っているのが大部分だった。そして帰ろうと立ち上がった時、青雉は真っ直ぐとレウスを見つめた。

 

「お前さんが空の王者か……噂に聞く動物系の幻獣種、例の国の固有種……」

「何だよ」

「一つ教えておいてやる、俺達海軍いや世界政府はお前の能力に興味を示している」

「レウスさんに世界政府が!?」

 

青雉は鋭くも強い意志を宿したまま淡々と語り続ける。

 

「お前らは如何やらそいつの能力の事を余り知らないようだな。本来その能力はとある国にしか存在していない生物の能力が宿っていて外界に出ていることは酷く希少」

「そういえばブロギーさんが海軍ですら手が出せない危険地域だって……」

「た、確かにそう言ってた……!!」

「世界政府としては如何してもその国の力が欲しい、その為の鍵になるのが……お前だ、レウス」

 

全員がレウスを凝視した。喉を鳴らし思わず青雉に威嚇の為なのか竜頭を出現させ攻撃体勢を取っているが対象は全く意に介していない。

 

「圧倒的な飛行能力と海楼石ですら破壊できる常軌を逸する炎熱攻撃、これほどまでに政府として利用価値が有る存在はない。加えて……お前さんはあの国へと到達できる手段を有している」

「……俺はその国に行った事すらないのにか」

「ああ。政府にいる能力者が言っていた、お前さえ居ればその国にはいる事が出来るとな」

「信じ、られねえな」

「それはお前さんの自由だ、だがそいつは確実にお前を狙う……お前の存在その物をな」

 

そう言い切ると用が済んだのかそのまま歩き出して行く青雉、全員の視線がレウスに向かっているままその時が終わろうとした時、ルフィとレウスが走り出しそのまま青雉に向かって拳を放った。

 

「レウスは絶対に渡さない!!俺の仲間は、絶対に俺が守る!!」

「だったら政府に伝えろ……俺は何処にも行かねえってな!!」

「あらららっこりゃ良い船長だなニコ・ロビン。だが……」

 

青雉の身体へと確かに突き刺さった拳と竜頭、ルフィとレウスの同時攻撃は普通の人間が受ければ骨の髄までボロボロになる程の威力なのに青雉はピンピンとしている。それだけなら良かったのに、青雉の手が二人の胸を掴むと一気に、病原が相手を蝕むように何かが伸びてきた。白い空気を発散しながら冷却されていく身体、身体と腕が凍りついて行っている。

 

「冷たっ!!!?うわああああっっ!!!??」

「凍り付いて……!?があああっっっ!!!??」

 

冷徹なまでに無機質な音を立てながら凍り付いていく二人の身体、氷はどんどん二人の身体を覆っていく。必死に腕を振り解こうとすればするほどに氷は身体を拘束していき外せなくなっていく。炎を吐いて氷を溶かそうとも試みるレウスだが胸から氷結させられて行く事で体内の炎を生み出す為の器官の温度が一気に落ち込み炎を吐く事が出来なくなってしまう。

 

「レウスさん!!!ルフィさん!!!」

「あ、悪魔の実!?」

「ルフィィィ!!レウスぅぅ!!!」

 

どんどん凍り付いていく二人を救出しようとゾロとサンジが走りこんでいくが青雉は笑うと其方へと二人を投げ渡すように飛ばす。氷に身体を囚われた二人、既に身体が凍り付き身動きすら出来ない状態になった二人は僅かに薄い氷が張った口から弱弱しく息を漏らしている。

 

「安心しろ、ちゃんと解凍して温かくしてやれば助かる。言っただろ、殺す気も捕まえる気もないって。んじゃ」

 

凍り付いた二人を慎重ながらも急いで船へと運んでいく一味に適当な別れを告げながら青雉は乗ってきた自転車に跨るとそのまま海へと漕ぎ出して行った、車輪越しに発動する能力で海を凍結させながら海を移動していくのは正しく非常識と言わざるをえない。船で氷を必死に溶かして手当てを続ける麦わらの一味は海軍の最高戦力の常軌を逸した力に思わず身を震わせてしまった。

 

 

 

「青雉さん貴方どういうつもりですか……!?私の旦那様を凍結したですって!!?今すぐにでも炎と毒で殺して差し上げましょうか!!!?」

「まあまあ落ち着けって、加減はしておいたからあいつらがちゃんと手当てすれば生きてる。それにあれは海賊だが良い連中だからきっと必死になって助けるだろ。詫びってつもりでもないが後はお前さんに一任するから好きにしなさいや」

「いいでしょう。なら結婚式の式場と教会、その後の一戸建ての料金の立替をお願いします」

「おいおい結婚する前提か?」

「当然です、正しく殿方には正しい女が結婚するのです。だって―――私はリオレイアなんですもの♪」


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