ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、砂漠の国を後にする

「ボン・クレー様ァ!海軍の船を発見しました!」

「何隻ぐらいいる!?」

「合計で八隻です!!」

「ジョ~ダンじゃなーいわよ~う!!?八隻ですってぇ!?」

 

朝日を向かえた砂漠の国、その国を脱出する為に船を進める麦わらの一味とボン・クレーの船。沖へと進められていく船、それらを捕縛や撃沈させると言わんばかりに展開されている海軍の軍艦。その数八隻、四倍の戦力差が四方を囲むように迫っている。この状況にボン・クレーは思わず声を張り上げながら驚いた。海軍がどれだけ友達の事を危険だと思っているのかが良く解る軍艦の配置だ。

 

今回の事であの一味は指名手配となったのは知っている、僅か三名の賞金首だがその総合懸賞金額(トータルバウンティ)は2億5500万ベリー。大物海賊団と化している。その全員を捕縛する為の数だろうがいい迷惑だ、自分達も無事にこの国を脱出するには突破しなければならない。

 

「囲まれてるぞ!?このままじゃやばいぞ!!」

「やっべえ攻撃してくるぞぉ!!」

「って何だあれ、槍ィ!?」

 

海軍の船から砲撃音がしこちらへの攻撃がついに開始された。だがその砲撃にサンジが大声で驚きの声を上げた、此方へと迫ってくるのは大砲によって発射される砲弾ではなく巨大な黒い槍であったのだ。予想外の攻撃に皆が慌てる中甲板から翼を羽ばたかせた竜人が飛び出し数本を弾き、一本受けとめながら船の上へと着地した、獣人化したレウスは肩に槍状に加工されている鉄を担ぎながら軍艦を睨み付けた。

 

「助かったナイスだぜレウス!!」

「砲弾じゃなくてこんなもん撃てきやがったのか海軍(あいつら)!?」

「……舐めるなよ、クソ海軍がぁぁぁぁっ!!!」

 

後部甲板へと移動する担いだ槍を思いっきり振りかぶるとそのまま全力で海軍の船へと投げ返した。竜の力も加わって膂力によって投げられた槍は瞬時に海軍の軍艦へと到達しメインマストとサブマストを貫通して後方の海面へと炸裂し大きな水柱を立てた。

 

「うっひょお~さっすが!!一隻の動きが止まったぜ!!」

「フン!!ざまあみさらせ海軍!!」

「やるじゃないリュウちゃぁ~ん!!このままなんとか逃げ切りましょ~ウ!!」

 

一撃によって何とか減った追手、それでも他の船がそれをカバーするかのように船体を動かしながら巧みに此方に迫って来る。そして数の多さによる攻撃の速さと多さでこちらを圧倒するかのように槍を打ちこんでくる、レウスが担げる程の太さと大きさの槍を何本も喰らえば船は何れ沈む、それが敵の狙い。次々と打ち込まれてくる槍を皆必死に防いでいる。だがそれでも限界がある。

 

「しまった一本抜けた!」

「大丈夫甲板だから浸水はしない!でもそこ二人はしっかり防いでよ!!」

「でもナミさん、俺達だって必死なんだ!それでも一面二人じゃ一、二本は防ぎきれない!」

 

左側の防御を担当するレウスとサンジだが流石の二人でも複数の軍艦からの槍を全て防ぐには無理があり数本は防御し切れずに船に当たっている。右の守りは共に船に乗っているボン・クレーに加えルフィとゾロが行っているので全て防御出来ているのが大きい、既にメリー号は槍の攻撃で浸水し始めている。防御が出来ているのといないのでは大違い。

 

「なんとか穴は塞いだよ!でもまたやられたら開いちまうよ!!」

「ああもうなんとかしないと……」

「陣形の一つでも崩ればそこから突破出来るのになぁ……!!」

 

じりじりとこちらが一方的にやられているこの現状にナミは思わず舌打ちをしてしまう。打破したいがそれには軍艦をなんとかしなければならない、先程のように槍投げをしてもらうにもそれをさせないようなテンポで打ってくる軍艦。レウスに軍艦を沈めてもらおうにも離れれば船は一気に沈んでしまう危険性まである、正に手詰まりな状況。砲撃音が響く、再び皆が構えるがそれはメリー号の後部甲板からだった、それは手詰まりな状況を打ち破るかのように南の軍艦へと直撃する、そして崩れたマストや船体は隣のもう一隻の軍艦へと寄り掛かりそのまま一気に沈めた。

 

「ウソップ今のお前か!?すげえな!!」

「……っ。よ、よぉぉぉし俺様の計算通り!俺に掛かればああだぜ!!」

「鼻ちゃんやるわねぇ!!あのまま一気に南を突破するわよぉ!!」

 

ジリ貧だったところに齎された千載一遇のチャンスにボン・クレーは飛び上がるほどの喜びを示しながら南へと行こうと宣言した時ボン・クレーの船の見張り台にいた男が大声を張り上げ報告する声を上げた。新たに迫っている軍艦を確認した所、この辺りの海を縄張りとしている海軍本部大佐、黒檻のヒナが迫っていると言う。

 

「何やってんのアンタ達ぃ逃ぃぃげるのよぉう!!あのまま南に行けば被害を最小限して突破出来るのよ!?なんで船を動かさないの!?」

「行けねぇよ、訳があるんだ」

「訳って何よ?!命を掛けるほどの財宝でも待っているっていうの?!」

「仲間を、迎えに行くんだ」

 

このまま自分達だけでも逃げるという雰囲気だったボン・クレーはルフィの言葉を聞いて全身に電流が走った。なんと言った?仲間(ダチ)を、迎えに行く……?仲間の、友達の為に自分達の命までも危ないというのにそれでも進むという覚悟を持って麦わらの一味にボン・クレーは愕然としながら感動した。誰一人として逃げ出そうとしていない、あの臆病なウソップですら逃げようと言っていない。その心意気に打たれたボン・クレーは早く行きましょうと急かす部下達に向かって大声で叫んだ。

 

「此処で逃げるは、ボン・クレーに有らず。命を賭けてダチを迎えに、そのまたダチを見捨てておめぇ、明日食う飯が旨ぇかよぉ!!」

『はっっっっ!!!!???』

 

正に漢と言うべき啖呵とその気迫に部下は皆飲まれながらもその言葉にはっとさせられた。確かにそうだと、この人の言う通りだと思い知らされた。

 

「いいか野郎共、及び麦ちゃんチーム!アチシの言う事、よぉく聞きねぇい!」

 

涙ながらに語るボン・クレーの言葉に麦わらの一味は驚かせながらもボン・クレーの意も言わせぬ雰囲気と任せて欲しいという俠気に任せる事を決めた。一同は船室へと入るとボン・クレーは自分の船へと乗り込み準備を手早く済ませるとメリー号から離れ一気に南へと進め始めた。

 

黒檻のヒナは二手に別れる船を見るが離れていくアヒル船は囮だと見切りメリー号のみ、麦わらの一味を狙おうと考えている。だが

 

「ヒナ嬢!アヒル船に麦わらの一味が乗船しています、囮は羊船の方です!!」

「っ!急いで追いなさい、もう一度陣を敷くのよ!!」

 

速度で劣る帆船を捨て外輪船(パドルシップ)に乗り換えて一気に逃げるつもりなのか、だがこちらとて速度では負けない。大きく回りこむように進路塞ぎそこで一網打尽にしてみせる。遠ざかっている羊船を見捨てて遠ざかろうとしている船へと意識を向ける。流石に外輪船の速度には少々手を焼いたが回りこむには成功し包囲する事に成功した。砲撃準備をさせるが、その時船上へと出てきた麦わらの一味に目を見開いた。

 

「アンタ達がお探しの麦わらのルフィっていうのはアチシの事かぁしらん!?ナ~ッハハハハハ!!!」

 

自分達が麦わらのルフィとその一味だと思っていたのはマネマネの実の能力でルフィへと変装したボン・クレーと変装したその部下達だった。大きく離れてしまった羊船はこの隙を逃すかと言わんばかりに東へと抜けて行く、出し抜かれた事に強く歯軋りしながらボン・クレーを睨み付ける。

 

「アチシ達は変装のエキスパート、そしてっ……麦ちゃん達の友達!!」

 

海軍大佐の船の前にしボン・クレーは堂々と胸を張りながら船の上でポーズを取りながら思うは仲間を大切している友達の事。人として、尊敬出来る気持ちを胸にして命を賭ける彼らをボン・クレーは尊敬した、人として。

 

「男の道をそれるとも、女の道をそれるとも、踏み外せぬは人の道」

 

だからこそ命を張ろうと思える、友達として彼らを助ける。オカマという男でも女でもない自分が進むのは人としての道、そして自分の道。その道は……自分の友達は絶対見捨てない。

 

「散らば諸友 真の空に咲かせてみせよう オカマ(ウェイ)!!! byボン・クレー……」

 

口上に込められる意思と気迫、それにボン・クレーの部下は涙を流す。恐ろしい人だがとても熱い義侠の心を持ったあの人だから此処まで付いてきた、そしてあの言葉に従ったのだから。涙を流しながらも部下の表情は覚悟を決めた戦士の物へと変わっている。顔を上げたボン・クレーの気迫は般若のよう、その覇気に当てられた海兵達は漸く我に返った。

 

「掛かってこいや……!!!」

 

 

「ボンちゃん……!!」

 

遥か遠くで轟く爆音と砲撃音。自分達の囮を買って出たボン・クレー、それらを見つめるルフィ達。激しく鳴り響く砲撃音と上がり火柱、次々と上がる火の手と崩れるマスト。突き刺さって行く鉄の槍、それらを受けても彼らは抵抗、いや戦い続けている。全ては自分達の為、崩壊して行く船を、戦い続けているボン・クレーの侠義に皆号泣していた。

 

「俺達、おめぇらの事、絶対忘れないからなぁぁっ!!」

 

深く深く刻まれる漢の姿、そして彼の雄たけびは海に響くかのように轟いた……。皆はそれを受け止めながら仲間の為に船を進めて行く……。

 

 

約束の12時、東の港近辺へと一時的に船の足を止める。猶予はもう無くなった、此処に居なければビビは海賊にはならないと言う事になるが……姿は見えず町からはビビのスピーチと思われる声が聞こえている。矢張り王女として残り決意をしたのだろうとレウスは思った、それが良いのかもしれないと思いつつ寂しさが胸を過っていた。

 

「な、なあビビじゃないよな!?似てる声なだけだよなレウス!?」

「チョッパー、あれはビビちゃんの声だよ。知ってるだろ、俺達はあの声を何度も聞いてきたんだから」

「で、でも……」

 

チョッパーは受け入れたくなさそうにレウスに違うと言って欲しそうに言葉を投げ掛けてしまった、解っている仲間としてずっと旅をしてきたのだからあの声がビビの物だと。でも否定して欲しかった。言い聞かせるような言葉に顔を俯かせた。まだ居ようと渋るルフィを説得しようとサンジが言葉をかけた時、岩場から一人と一匹の鳥が姿を覗かせた。

 

「皆ァ!!」

 

その声に皆が一斉に後方甲板へとかけ出した、そこからカルーと共に岩場でこちらへと手を振っているビビの姿があった。カルーに乗っている電伝虫を握ると口を開いた。

 

「私は、この国を愛しています、でもこんな気持ちを抱いた事なんてありませんでした。この心の中でざわめくこの気持ちに、素直になりたいんです。だから、私は……行ってきます!!」

『ビビィッ!!!!』

 

電伝虫から伝わって言葉は国中へと広がりながらメリー号に乗っている皆にも伝わりながら歓喜の感情を浮き彫りにさせながら大声を張り上げた。レウスはしょうがない娘だと呆れているつもりだが隠しきれていない笑みと嬉しそうに羽ばたいている翼が彼の内情を示した。船を出すように言うと羽ばたいた彼はビビの元へと飛んだ。

 

「ビビちゃん、全く君って子は……しょうがない子」

「そうさせたのはレウスさんですよ」

「じゃあ、責任を取ろうかな」

 

笑いかけるレウスに表情に一瞬更に高く鳴り響く心臓の鼓動にビビは息を飲んでしまった。彼女の首に真っ赤に輝く宝石のような鱗が飾られているチョーカーが付けられる、そしてビビの手から電伝虫の受話器を取ると声を張り上げて言った。

 

『あ~あ~。こちら麦わら海賊団のレウス・R・リオスだ、たった今ネフェルタリ・ビビ王女は頂戴した!私の口車に簡単に騙され乗ってくれるような素直なお嬢さんに育ててくれた事を心から感謝する』

「えっレ、レウス、さん…?!」

 

突然何を言い出すのか解らないビビは吃驚しながらレウスの顔を見るが唇に当てられウィンクしながら静かに♪という対応にその通りに黙ってしまう。

 

『たった今彼女の首に私お手製の爆弾型のチョーカーを付けさせて貰った、私の気分一つで彼女の首が噴き飛ぶ代物だ。我々に手を出すのであればどうなるかは保障しないぞ、それでもいいなら手を出して見るがいいさ。それで貴様らの正義が許すのであれば、海軍!!』

 

そう言い切ると受話器を電伝虫へと戻した。ビビは未だにレウスの行動に仰天しながら慌てている、そんなお姫様の姿に笑いながらカルーに手紙が入ったバックを渡しながら彼に目線を合わせながら呟く。

 

「カルー、こいつをコブラさん達に渡してくれ。大丈夫、ビビちゃんは俺達がしっかりと守るさ」

「クエ~……クエエ、クエエ~~!!!」

「解ってるよ。彼女はしっかりと帰って来るよ、ちょっと誘拐されるだけだからな」

「クエッ!!」

 

カルーはビシッ!と敬礼をする、ビビを宜しくお願いします!と言わんばかりの敬礼にレウスも思わず敬礼で返した。そしてビビをその腕で抱くと一気に船へと飛んだ。船へと戻るとルフィとウソップ、そしてチョッパーがお前何言ってるんだよ!?と殴りかかるような勢いで迫ってきた。

 

「お前何言ってんだよ!?爆弾付けたって正気か!?」

「おいレウス早くそれ外せよ!?」

「そうだぞレウスひどい事はやめろ!!」

「ま、待て待てお前ら本気でこれが爆弾だと思ってるのかよ!?嘘に決まってるだろ!?」

「「「へっ嘘?」」」

 

嘘だという事を言われて一気に停止する三人にナミ達が呆れ返ったかのような溜息を漏らした。

 

「あのねぇなんでレウスがあんな事を言ったのか本気で解らないの?一国の王女が自分から海賊になりたいって言ったら大事件よ?国その物が危うくなっちゃうのよ」

「そう言う事だあほ共、レウスはビビちゃんが誘拐されたっていう事にして連れてきたんだよ」

「「「あっそう言う事か!」」」

「ああ、レウスさんらしくないと思ったら……」

「おいビビちゃん君もか」

 

まさかビビまで理解していなかったとは予想外だった、少し考えれば解るような事かと思うが……まあ行きなり言われたから混乱してしまったのだろう。

 

「でもチョーカーは何の意味があるんだよレウス」

「これならビビちゃんが海賊と同じ行動をとっても脅されたからやったって言い訳がしやすいだろ?これから海軍に見られても海賊に働かされている王女、そして何時か国に戻っても海賊に誘拐されても生きて戻って来たって事になるわけだよ。まあ海賊として更に悪評が付いたけど」

 

レウスの行動に納得が行ったルフィ達、そして改めてルフィが聞いた。

 

「ビビはおれ達の仲間、って事で良いんだよな?」

「ああそう言う事」

『やったぁぁぁぁぁっ!!!!!』

 

メリー号は進んで行く、アラバスタの王女を連れて新しい冒険を目指して海を行く。一国の王女を仲間として乗せて騒ぎながら嬉しそうに笑う皆、ビビも皆とまた旅が出来て心から嬉しそうな笑みを浮かべていた。始まる宴は改めて仲間となった彼女を歓迎した。

 

「改めて仲間になったビビに乾杯だぁぁぁぁ!」

『おおおっ!!!』

「皆、これからも宜しくお願いしまぁぁぁす!!!」




やっちゃったぜ!!!
いやぁビビ加入です!!もう此処まで来たら突っ走ってやろうじゃないのこのルート!!
意見を下さった方有難う御座いました!ビビは麦わらの仲間として船に乗ります!!
これからは多分大変だろうけどいけると思う!だってビビは大好きなキャラだから!!
折角の創作なんだから何処かで原作と離れてみたいなぁっと思ったらこれだよ!

原作とは違ったルートを行くONEPIECE 空の王者が海を征す、これからも宜しくお願いします!

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