ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、王女と語らう

「今夜ァ!?」

「此処を出るのか!?」

「まあそろそろ出航しないと厳しいところもあるだろうからね」

 

風呂から上がり部屋で寛いでいた皆に向けてナミが話を切り出した、今夜にはこの国を出ようという内容だった。この国へと来た目的自体はビビを送り届け反乱を阻止すると言うものだった。既に目的を果たし傷の回復や最後まで眠っていたルフィも目覚めている、此処まで来たらもう国を出るべきだとナミは話すが皆はそれに同意していた。

 

「よしアラバスタ料理をもう一回食ったら行こう!」

「直ぐ行くんだよ馬鹿!!」

「いってえ!?レウスなんか今の痛かったぞ!?」

「当たり前だ竜頭で殴ったからな、牙が少し刺さったんだろ」

「殺す気か!!!」

 

お前なら簡単に死なないだろうと信用なのか解らない言葉を洩らしながらレウスが謝ると一人の兵士が部屋へと入ってきた。

 

「失礼いたします、電伝虫が掛かっておりますが」

「誰から?」

「ボンちゃんという方です。友達だと言い張りますのでご確認を兼ねてお願い出来ますでしょうか?」

「ボンちゃん?誰だそりゃ」

 

皆誰だか解らないがルフィが取れば言いと言うのでサンジが兵士が持ってきた電伝虫の受話器を取って見るとそこから聞こえてきたのはレウス以外にとっては聞いた事がある声だった。思わずサンジはそっと受話器を戻すが再び電伝虫が騒ぎ始めるとルフィが受話器を取った。

 

「もしもし俺達になんかようか?」

『あらんその声ったら麦わらちゃんね?アンタ強いじゃなぁ~い、アチシビックラこいたわよ!あっそうそうアチシの事Mr.2って呼んじゃ駄ぁ目よん?念波が海軍に掴まったらアチシ大変だから!』

「バロックワークスの幹部かよ……そいつ。んで何の連絡だよ」

『ああ~そうそうそう、アンタらの船アチシが貰ったから☆』

「「「「「ふざけんなッッッ!!!!!」」」」」

 

一斉に怒鳴り声を上げる一同だがMr.2ことボン・クレーは違うと弁明する、今船はサンドラ川の上流にいると言いながら友達じゃない~!?と笑ってから電伝虫は切られた。一先ず兵士には礼を言いつつ部屋を出て貰いこれから如何するかを話し始めるが如何するかはもう決まっているような物、船を取られている以上向かわない訳には行かない。皆が準備を始める中、一人胸を締め付けられるような思いを味わう姫君(ビビ)。彼女は揺れていた、海賊と王女と言う立場の間で。

 

「ねえ皆……皆、私如何したら……良いの……?」

「ビビ……良く聞いて」

 

荷物を降ろしながらナミはビビに向かってこう言い放った。12時間の猶予の間に心を決めて欲しいと、明日の昼12時ちょうどに東の港に船を寄せる、停泊は難しいだろうが本気で仲間として旅を続けるのであればその時が船に乗るチャンス。来るのであれば大歓迎する、それが精一杯の勧誘。皆が窓から降りていく中、最後にレウスが降りようとした時ビビが声を上げた。

 

「レウス、さん……私……」

「ビビちゃん。……皆ちょっと先に行っててくれ直ぐ行く。忘れ物した」

「何してるのよレウス、早くしてよ~」

「解ってるよナミちゃん」

 

一応断りを入れビビと向きあうレウス、二人の間に流れる沈黙はビビの迷いと戸惑いを表しているかのよう。ぎゅっと握り締める服に出来る皺は今の気持ちのよう。

 

「ビビちゃん、これは君が決める事だよ。このまま王女として、海賊として、対照的と言ってもいい。君自身が決めなければいけないんだ」

「でも、私……楽しかったん、です……。皆と、旅をするの……短い時間だったけど王女だって事も時には忘れたりしてたんです」

 

心の奥底から楽しかった時間だった、大変で命の危険もあったけど皆と一緒に旅をするのは本当に楽しかった。そんな時間をもっと楽しみたいとさえ思えてしまう……でも王女としてこのアラバスタを支えて行く義務とて大切、どちらも大切な物。一つ選ぶには苦しい選択だ。苦しそうにするビビを見てレウスは窓の外から見える夜空を見ながら口を開いた。

 

「君と、王女としての君と会ったのはこんな時だったね。ウィスキーピークで」

「えっ?え、ええそうですね。あの時私はMr.5のペアに命を狙われてたけどレウスさんが助けてくれた」

「そして直ぐにクロコダイルが黒幕だって自分からバラしたよね、あれだけ言えないって騒いでたのに」

「あ、あれはその緊張とか動揺とかしててつい口が滑って……!!レ、レウスさんだってあの時ナミさんに引っ張られて気絶しかかってたじゃないですか!?」

「それは明らかにナミちゃんのせいだからノーカウントだろう?!」

 

昔話というほどの物では無いがレウスの口から出てくる話は彼と自分の出来事の事だった、本当に凄い出会いだった。最初はラブーンを殺そうとしていた女の子が王女で、そんな彼女を国に送る事になったり波乱万丈な旅だった。気付けばビビは先程とは打って変わって笑顔を浮かべていた。

 

「笑ったねビビちゃん。君は笑顔が一番だ」

「あっ……」

「言ったよね、お姫様に笑顔でいてくれたら嬉しいって」

 

感謝をするなら笑顔でいて欲しい、それが彼の言葉だった。気付けば顔を曇らせてそれを忘れていた、彼との約束なのに少し自分が嫌になった。そんな自分の頭を抱き締めるレウス、そしてすぐに離れてしまった。荷物を持ち窓に足を掛けた彼にビビは立ち上がった。

 

「……個人的な欲を言えばその笑顔を傍で見ていたい、かな」

「あっレウスさん、まってっ!!」

 

そういった言葉よりも早くレウスは窓から飛び降り皆が待っている超カルガモ部隊の元へと駆け出して行ってしまった。小さくなっていく背中を見ながらビビは思わず思ってしまった。決めるのは自分だ、自分で決めなければいけないと言っていたのに最後に傍にいて欲しいなんて言うなんて……。

 

「ずるい、ですよレウスさん……。そんな事を最後に言うなんて……」

 

呟いてしまった言葉、もう自分の心は決まっていたのかもしれない。抱き締められた時から心臓の鼓動が加速してしまっている、今自覚した。自分はあの人が好きなんだ、あの赤い竜になる年上の彼が好きなんだと。でもそんな気持ちを一旦しまうと自分の考えで答えを出すと決めた時、イガラムは息を大きく乱しながら部屋へと入ってきた。

 

「ビ、ビビ様。ル、ルフィ君達は……?」

「海よ。海賊だもの」

「な、なんと……」

 

脱力する彼の手から零れたのは数枚の紙だった、一体何かと見て見るとそれは政府に危険と認められた者に掛けられる指名手配の書類だった。そこにあったのは見慣れた海賊の顔写真だった、一人は笑顔で此方に笑いかけ、一人は刀を肩に置きながら厳しい顔をし、一人は竜の頭を左腕に付けた男が映りこんでいた。

 

海賊狩りのゾロ 懸賞金7000万ベリー

 

空の王者 レウス・R・リオス 懸賞金7500万ベリー

 

麦わらのルフィ 懸賞金1億1000万ベリー

 

 

「なあレウス、何を忘れたんだ?」

「んっ財布忘れてた、これ忘れたらナミちゃん怒るでしょ?」

「勿論!!!」

「うっわすっげえ力入れて肯定しやがったよこいつ」

 

超カルガモ部隊に跨りサンドラ川へと疾走する一同、レウスはチョッパーと一緒に乗っている。アラバスタ最速の名に恥じずにあっという間に砂漠を横断して行くその速度に初めて乗るレウスは舌を巻く。サンドラ川へと到達すると上流のある場所には見事にメリー号が停泊しその上では大柄で"盆暮れ"と書かれた白鳥のコートを着たバレリーナが騒いでいる。どうやらあれが件のMr.2、ボン・クレーらしい。

 

「あらん、アンタとは初対面ねぇ?ボスが呼んだ竜を倒した噂の竜っていうのはアンタの事かしらぁん?」

「多分そうじゃねえか、っというかなんで船を奪った。結果的に俺達は海軍に船を奪われずにすんでいるがお前に何の得がある」

 

思いっきり踏み込んだ質問をするレウス、海軍の追っ手も間もなく迫ってくるであろうと言う時を見計らってかのような行動はかなり怪しい。バロックワークス崩壊を恨んでいるのならば逆の事をしたり罠を張り自分達を打ち取ると言うことも出来るだろうにそれをしていない。腑に落ち無い点が余りにも多い、警戒するような視線を送っているとボン・クレーはサムズアップをしながら、男らしくこう言った。

 

「麦ちゃんと友達だからに決まってるじゃない~!!」

『うぉぉおおおボンちゃぁあああああん!!!!』

「……待ち受けてる海軍を自分達だけじゃ突破出来ないから、とかじゃないのか?俺はそう思ってたんだが」

「そうとも言うわねぇ~ん!!」

『うぉぉぉっ麦わら海賊団の皆さん、我々ボン・クレー様部下共々宜しくお願いします~!!!』

「いたのかよっっ!!!!??」




懸賞金アップの理由。

スモーカーがレウスの力の強さと危険性を認識し危険だと判断しそう報告した結果、ゾロやルフィの懸賞金も上がった。

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