ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、アルバーナへ

「ル、フィ……無事か……!?」

「フォウ、レウスゥ!!」

 

傷ついた身体で一度は気を失いながらも再び立ち上がり身体を引きずりながら探し当てたルフィ、彼も大きな傷を身体に受けながらも一応は無事でいた。今は大量の肉を食い漁りながら近くにいるフードの男と何かを話していたようだった、わき腹を押さえつつ傍に座りこむと男は支えるように肩を貸してくれた。

 

「大丈夫かい君も!?酷い傷だ……」

「大した事じゃない……。それよりアンタは……?」

「私はアラバスタ護衛隊副官、ペルという。君達がビビ様の手紙にあった海賊で間違いは無いな?」

 

その言葉を聞き安堵の息がもれた、ビビの手紙はアルバーナに届いていた。つまりカルーは無事砂漠を横断して首都へと辿り着いていたという事だ、カルーも立派な自分達の仲間。何処か心の中で楔のように突き刺さり心配していた、良かった無事で……。ペルもそれを察したのか軽く肩を叩き肉を食べるように薦める。それを素直に受け取り肉に齧り付く。

 

「君も手当てが必要だな、応急処置ぐらいならしよう」

「すまないなペルさん……ルフィ、クロコダイルは?」

「悪い、負けちまった……でも次は絶対にまけねえ!!」

 

肉を食い千切りながらそう言い切るルフィ、残念ながらクロコダイルとの戦いとは敗れてしまったようだが次は絶対に負けないと宣言している。この船長がそう言っているのだ絶対にそうだと確信できる、それに自分だって敵を倒したがその直後に新しい敵に吹き飛ばされている身、彼を悪く言える身ではない。

 

「こっちもなんとか敵を倒したがまた厄介なのが出てきやがった……まあある意味マシかもしれないが」

「にふぃいっふぁいくっぺらあるばーはへいふぉふぉふう!!」

「……えっとレウス君、今の解るかい?」

「肉いっぱい食ったらアルバーナへ急ごう、かな?」

 

頬を肉で一杯にしながらも力強く肯定するルフィにペルは少し戸惑いながらも自分も肉に手を付けた。食事が終わり次第大急ぎでアルバーナへと向かわなければならない、少しでも体力を付けておかなければ。アラバスタ護衛隊として、この国に住む一人の国民として、この国を愛する男として戦わなければならない……。

 

「ペルさん、こっからアルバーナへ行こうとしたらどの位掛かる?」

「私なら飛べば半日もあれば到着する」

「半日……急がないと間に合わなく……!」

「だが、私も今すぐは飛べん……すまない」

 

ペル自身もクロコダイルのパートナーであるミス・オールサンデーによってかなり大きなダメージを受けている、隼になれる彼とは言え今の状態では満足に飛ぶ事すら儘ならない。かといって自分も飛べたとしてもまともに速度を出す事も出来ない、状況的にはペルと全く同じ。

 

「俺も似たようなもんだ……うっ、くっそあの野郎……!!」

 

脳裏に浮かぶのは自分を吹き飛ばしてくれたティガレックス、肋骨の数本に罅は間違いなく入っているだろう。正直身体に上手く力が入らない。だがやるしかない、あれは恐らく自分ではないと止める事は出来ないだろう。

 

「ルフィ君レウス君、今のうちに寝ておいた方が良い。少し休めば飛べるようになる、今は身体を休め、早朝にアルバーナへ向かおう!!」

「「ああっ!!!」」

 

 

 

-アラバスタ 首都アルバーナ-

 

ビビが恐れ、危惧していた物。身を張りその身がどうなろうと構わず命とて掛ける覚悟で望んだ反乱を止める為の道。16の少女が背負うにはあまりに大きな覚悟と責任、命を張り国民の命を助けようとする覚悟をクロコダイルは嘲うかのように蹴り飛ばした。麦わらの一味が囮となりオフィサーエージョントを引き離し反乱軍の前で身を張って止めようとしたのに、魔の手はそれを越えて行った。

 

『―――!!!』

 

巻き上がった砂塵、ビビの声を遮るように俟った。ビビの傍を通り過ぎていく反乱軍、止める事が出来ないまま反乱は始まってしまった。互いに騙され踊らされている無実の人々は己の胸にある正義と思い込まされた虚実の為に剣を取り交えてしまった。

 

そしてビビを守る為、反乱軍が彼女を踏みつけないようにと翼を広げラクダや馬に踏みつけられようと翼をどけなかったカルー。全身に深く傷を受けたカルーを目にしながら涙を流すが必死に声を出す、諦めない、諦めの悪さなら船で学んだのだからと。そこへウソップがビビを助ける為と参上したウソップだったが事前にMr.2と遭遇していた為に対策として講じられた仲間の印を見せなかった事でそれを打破、襲い掛かってくるそれから逃れようとするビビを助けたのは大怪我をしているカルーだった。

 

『カ、カルー!?』

『クワアアア!!!』

 

全身から流れる血など、激痛など知った事では無いと言うかのごとく疾走するカルー。背後から迫ってくる刺客からビビを守る為に必死に走る、アルバーナの絶壁を登ったカルー。そして目の前で国民同士が殺しあいをしている様を見たビビは直ぐに宮殿へと急ごうとカルーを走らせる、が

 

『な、流れ弾が!!カルゥゥ!!』

 

カルーの脳裏にルフィの言葉が過る、ビビはしっかりと守る、送り届ける。仲間なんだからと。そして自分もその仲間の一人なんだと自らを奮い立たせ銃弾を喰らった身体で戦場を走り、一歩一歩踏みしめるごとに薄れていく意識と戦いながら進むが遂に倒れこんでしまうカルー。それでもカルーはビビを守ろうとMr.2と戦おうとする、叫びビビを助けたのは超カルガモ部隊の仲間、そしてサンジだった。

 

『よくやったな。男だぜカルー隊長、ビビちゃんこいつは俺に任せな。反乱はまだ止まる、だから行きな』

『サンジさん……うん!貴方達カルーをお願い!』

 

この場を託しアルバーナの宮殿へと走り出す、戦場を抜け砲撃を避けながら必死に走り辿り着いた宮殿にて護衛隊副官チャカに命じた。宮殿を破壊して欲しいと。それならば確実に目を引く事が出来る、その隙があれば自分が何とか出来ると。だがチャカはそんな事をしたらと渋るがビビの言葉によって決断した。

 

―――国が何!?国は、今殺し合いをしている彼らの事よ!!!

 

―――良いかチャカ。国とは人なのだ。

 

アラバスタ現国王、ネフェルタリ・コブラと同じ言葉に国王の面影を覚えるとチャカは直ぐにその言葉通りに宮殿に爆薬を仕掛けるように命ずる。疑問を持つ兵士もいるがそれを押し退け爆薬は仕掛けられていく、4000年と言う歴史がある宮殿だとしてもそれよりも人の命が大切だと。その言葉につき動かされ遂に爆破されようとした時、―――三度、砂塵が俟った。

 

『クロコダイル……!!』

 

王下七武海が一角、サー・クロコダイル、宮殿へ。怒りの限りの言葉をぶつけるも笑いながら受け流し残酷なまでの現実を叩き付ける。国の英雄として名を馳せながら裏では国を奪う為に暗躍した男、その男を打ち取る為に兵士達は挑むも相手にされず、ペルと同じく動物系の能力者であるチャカがその牙でクロコダイルを貫こうとするも無駄に終わる。反乱軍のリーダーコーザもその場で最悪のシナリオを思い描き、この反乱が仕組まれた物だと理解する。そこへクロコダイルが更なる絶望の種を芽吹かせた。

 

『4時半、広場に直径5キロを吹き飛ばす砲弾が撃ち込まれる。そして永遠に戦いは終わる。ハハハハッ!!』

 

後20分もない状況、コーザとビビは何とか人々を守ろうと行動する。白旗をあげ戦いを終わらせようとするもコーザがバロックワークスの凶弾によって倒れ一時は戦いが静まろうとしたのにも拘らず再び始まってしまう、必死に叫ぶビビをクロコダイルは首を掴んだ。

 

「後15分……反乱軍の援軍もまだまだ此処へ来る、自らの運命も知らずにな」

「クロコ、ダイルゥ……!!」

 

淡々と現実と絶望を言い続けるクロコダイルにビビは涙を流しながら睨み続けた、何も出来ないそれぐらいしか出来なくてもそれをし続けた。

 

「お前に国は救えねぇ、あばよお姫様」

「ッ!!!!」

 

腕を砂に変えながらビビを離す、何も支える物がなくなったビビの身体はゆっくりと重力に従った下へと落下して行く。それを見ながら大声で笑うクロコダイル、これで目障りな姫は消えると確信の中で太陽の光が僅かにブレたのを見た。笑いを浮かべたまま見上げるとそこには巨大な鳥の上に乗った樽を背負った男ともう一人、翼を広げながら鳥と併走するように飛んでいる赤い者がいた。

 

「クロコダイルゥゥゥゥウウウ!!!!」

「ティガァァアアアアアアアア!!!!」

「ルフィさん!レウスさん!!」

 

麦わらのルフィ、レウス、ペル、アルバーナへと到達。地面へと向かって落ちて行くビビをレウスはそれよりも早く降下していく、地面スレスレの所でビビを助け出すと一気に上昇し街の上を飛んでいく。ペルはその隣に並び立ちながらビビの身を見て安堵する。

 

「間に合った……すまん遅れたなビビちゃん」

「レウスさん……ペル、ルフィさん……広場の爆破まで時間が、ないの……皆、やられちゃった……」

 

悔しそうに涙を流しながら言葉を口にしていくビビを三人は見つめる。不安げに、怒りと悔しさを交えながら嘆くビビをレウスは抱き締める。

 

「もう、私の声は誰にも届かない……!!」

「大丈夫だよビビちゃん、君の声なら……」

「「俺達に届いてる!!!」」

 

強く宣言する二人にビビは嬉しさと笑いが込み上げてくる、まだ希望はある。仲間がいる!!だから諦める必要なんてないと思わされる。そしてやるべき事を解らせてくれる……。

 

「ビビちゃん、君には俺達仲間がいる。泣く必要なんてない、嘆く必要なんてない。だから、あいつの野望を潰そう」

「うん……!!!」

 

地上へとゆっくりと降り立つと竜化を解除しビビをゆっくりと降ろす。ルフィはぐるぐると腕を回しながらエンジンをどんどん加速させていく、目的はクロコダイル唯一人……!!

 

「ルフィィィィィッ!!レウスゥゥ!!良かった二人とも生きてたぁ!!」

「だ、だだだだから言ったろ俺には解ってたぁ!!」

「解ってた奴の顔じゃねえだろ」

「トニー君、ウソップさんサンジさん!!」

「ウソップゥアンタ要らないワザばっかり作るんじゃないわよぉ!!」

「立ててるじゃねえかてめぇ!!」

「ナミさん、Mr.ブシドー!」

 

続々と終結して行く仲間達、その身体はボロボロになっている。あのバロックワークスの精鋭であるオフィサーエージェントを破ってきたのだ、それなりの負傷はしているもののしっかりと生きて此処にいる。それだけでもビビにとっては酷く頼もしい物だった。

 

「レウスアンタ無事だったのね良かった……」

「ああ。なんとかねおいルフィ、絶対あいつを倒せよ、クロコダイルを!」

「肉一杯食ったから血はモリモリだ!任せとけ!次は絶対に勝つ!!」

 

そう宣言するとルフィは宮殿の上部にいるクロコダイルの元へと飛んでいく、彼なら勝てるそう信じている。

 

「ハハハハ、来たな竜よ!!」

 

大声を張り上げながらその場に現れるのは黒い装束を纏った男、見慣れない男だがレウスはその声に覚えがある。自分に一撃を加え吹き飛ばしたティガレックスの声だ、あいつがティガ……。

 

「あいつは俺が何とかする。あいつも俺と同じ竜だ!」

「マジかよ!?じゃあレウス任せるぞ!」

「ああ。皆、砲撃は任せる!」

『任された!!』

 

一斉に散り散りになって砲撃阻止の為に動き始める皆、それを邪魔するかもしれないと竜化し人獣型へとなるが相手はそれを静かに見届けレウスだけを真っ直ぐと見ていた。他の事など興味はなく、砲撃が起きようが起こらないがどちらでも良さそうな表情をしながら。唯同じ竜と戦いたいと言う欲求を満たす為だけに此処に居るかのようだ。

 

「さあ始めようぜ、竜同士の戦いをよぉ!!」

「上等だァ!」

 

同時に駆け出し拳をぶつけ合った竜の力を持った戦士、刻一刻と迫る砲撃のカウントダウン。拳を交えた瞬間には、それすら頭から抜け落ちるほどの興奮と高揚感に身を任せながら。


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